その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

新国立オペラ ヴェルディ<椿姫> (指揮:フランチェスコ・ランツィロッタ)

2024-05-22 07:30:52 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

2年前の公演で中村絵里さんのヴィオレッタが素晴らしかったので、今回の再演も迷うことなくチケット購入。

ストーリーはべたな恋愛悲劇ですが、涙を誘い、終始、優しく美しい音楽であふれ、夫々の歌手の見せ場もたっぷりと用意され、合唱も大活躍という、まさに椿姫はKingというかQueen of 定番オペラであることを再認識し、どっぷりその世界を楽しませてもらいました。

お目当ての絵里さん。初日のせいか、やや硬さが感じられたのと、声量的には絶好調時には至っていないようにお見受けするところもありましたが、安定して美しいソプラノには魅了されます。小柄の体躯をフル動員しての演技は観衆の胸を撃ちます。最終幕の悲しさは、何度も観ているオペラであっても、涙を誘われました。

外国人歌手陣では、アルフレード役のリッカルド・デッラ・シュッカさんは美しいテノールです。お坊ちゃまで未熟な青年をしっかり演じてくれていて、不満はありません。耳をそばだてたのはジェルモン役のグスターボ・カスティーリョ。細身の体格ながら、その低音は地底から這い上がってくるような迫力の歌唱。若い2人を引き離す役柄ですが、その気持ちにも感情移入できるものでした。

そして、いつもながらですが、新国立劇場合唱団の迫力満点のハーモニー。パーティー場面の喧騒や盛り上がりが、歌声を通じてライブ感たっぷりに伝わってきます。

フランチェスコ・ランツィロッタ指揮の東フィルも「椿姫」の世界観を情感豊かに表現していて、ヴェルディのお音楽の素晴らしい差を牡満喫。

舞台は鏡や反射床を活用して、照明効果も映え、とっても美しく洗練されたもの。第3幕のヴィオレッタと他人物を分ける薄い幕など、世界の違いをそれとなく表現していて上手いと感じました。

こういう上演を見ると、やっぱり定番は定番の良さを再認識させられます。予定調和的な感動とも言えなくもないのですが、やっぱり良い作品は良いですし、それをこうしたハイレベルな公演で楽しめるので、嬉しいです。

余談ですが、この日は初日とあってか、ドレスアップしたご婦人も多くお見受けし、あちこちで弾む会話がホワイエに響いてました。外国人や若い人も多く、マーケティングプログラムがあったのかもしれませんが、多様性に富んで、開かれた空気が感じられます。空間そのものが楽しさに溢れていた気がしました。こういう雰囲気って、初めての方にとっても楽しさを感じ取れて、また行きたいって気になるでしょうから大事ですよね。オーケストラの演奏会は、もちろん楽団やプログラムによっても違いはあります(先週のレスピーギ祭りのN響なんかはとっても良い雰囲気でした)が、内向き傾向強く感じることが多いので、頑張ってほしいものです。

(2024年5月16日)

2023/2024シーズン
ジュゼッペ・ヴェルディ
椿姫
La Traviata / Giuseppe Verdi

全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

公演期間:2024年5月16日[木]~5月29日[水]

予定上演時間:約2時間45分(第1幕・第2幕1場 75分 休憩30分 第2幕2場・第3幕 60分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【指 揮】フランチェスコ・ランツィロッタ
【演出・衣裳】ヴァンサン・ブサール
【美 術】ヴァンサン・ルメール
【照 明】グイド・レヴィ
【ムーヴメント・ディレクター】ヘルゲ・レトーニャ
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】CIBITA 斉藤 美穂

【ヴィオレッタ】中村恵理
【アルフレード】リッカルド・デッラ・シュッカ
【ジェルモン】グスターボ・カスティーリョ
【フローラ】杉山由紀
【ガストン子爵】金山京介
【ドゥフォール男爵】成田博之
【ドビニー侯爵】近藤 圭
【医師グランヴィル】久保田真澄
【アンニーナ】谷口睦美
【ジュゼッペ】高嶋康晴
【使者】井出壮志朗
【フローラの召使】上野裕之

【合 唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】三澤洋史

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

 

2023/2024 SEASON

Music by Giuseppe Verdi
Opera in 3 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles

OPERA PALACE

16May - 29 May, 2024 ( 5 Performances )

Running time is approx. 2 hours and 45 mins including intervals.

CREATIVE TEAM
Conductor: Francesco LANZILLOTTA
Production and Costume Design: Vincent BOUSSARD
Set Design: Vincent LEMAIRE
Lighting Design: Guido LEVI
Movement Director: Helge LETONJA

CAST
Violetta Valéry: NAKAMURA Eri
Alfredo Germont: Riccardo DELLA SCIUCCA
Giorgio Germont: Gustavo CASTILLO
Flora Bervoix: SUGIYAMA Yuki
Visconte Gastone: KANAYAMA Kyosuke
Barone Douphol: NARITA Hiroyuki
Marchese D’Obigny: KONDO Kei
Dottor Grenvil: KUBOTA Masumi

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra


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