南無煩悩大菩薩

今日是好日也

「そこから何が出てくるか」という楽しみ

2018-11-02 | 古今北東西南の切抜
(gif/Billy Holiday)

独創的な組織論の第一人者として、リーダーシップと組織の両方を深く理解するうえで世の中に大きな影響を与えてきたカール・ワイクは、個人が互いに合図し、集団で行動するときの微妙な点に、特に興味を持っている。つまり、人間にも*変形菌の化学的信号に匹敵する何かがあるのではないかと探究しているわけだ。

ワイクは、「即興こそ命」のジャズ音楽に、大いにヒントを見出してきた。大きなジャズコンサートでは、予期せぬ出来事がお約束だ。だが、即興で演奏する能力は、音楽的なパターンの奥深い理解に加えて、集中して聴き、仲間のミュージシャンがしていることに反応する能力によって支えられている。

ジャズバンドの誰か一人がリードするのではなく、全員がリードするのだ。

ジャズは会話に似ている。あなたと私がジャズバンドで演奏しているとしよう。あなたは直前に演奏されたものに反応していく。楽器の演奏で言葉を返し、私は反応を返す必要がある。どうやって?私があなたの表現の何を繰り返し、私たちは何を一定に保つ必要があるのか?そこから何が出てくるのか?次のフレーズでは、変わらないものを含みながらも、何か小さな変化が生まれるかもしれない。そこから何が出てくるのか?

結局、ジャズでは、決まりごとに集中するだけでなく、新しい展開も必要とされるが、バンド演奏の場合は、集中して聴くこと、すなわち注意深さが必要になる。他者との会話に自己との会話も同時に存在していることが必須であり、少なくとも、途切れずに交互に繰り返されなければならない。

ジャズトランペット奏者のウィントン・マルサリスの観察によると、演奏でも、会話でも、最悪の話し相手、最悪の共演者とはこんな人だという。

「あなたがしゃべっているとき、あなたの話を聞くのではなく、次に何をしゃべろうか考えている人」。

-切抜/GETTING TO MAYBE「誰が世界を変えるのか」より

*変形菌の科学的信号:エサが豊富にある時は単細胞生物であり、エサが欠乏すると多細胞生物になる謎めいた変形菌(粘菌)は、多細胞の時は速く動いて場所を移動し、栄養源を探す。再びえさが豊富になってくると、分裂して、単細胞生物に戻る。ある細胞が局所的な環境で十分なエサを見つけられなくなると、フェロモンを放出する。ほかの細胞には、この物質の痕跡を追跡する能力がある。数個の細胞がフェロモンを放出すると、互いの痕跡を追跡することによって群れをつくり、生存のために自己利益と集団利益の両方を満たす。

Coleman Hawkins and Harry Edison
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