端布に恋した私

小さな端布を 縫い集めてつくるパッチワークは 
私の楽しい趣味の一つです。

ネルの着物

2005-12-23 | 家族
子供の頃 お正月といえば 特別の 特別の行事だった。

十二月になると 母は町の呉服屋で子供それぞれに 合った
ネルの着物地を買ってきて 仕立ててくれた。
それが 楽しみで 学校から帰ると 飽きることなく 母の
手元を見ていた。
母は 手を動かしつつ 縫い物に興味のない私に それとなく
縫い物のコツや 技を言い聞かせていた。

覚える気のない私は 上の空。
そんな私を見て 明治生まれの父は「オギヤーと生まれた
赤ちゃんに 洋服は着せられないのだから」といい 母に 
和裁の手ほどきを受けるように くどいように 言っていた。

なんでも 揃っている 現代のベビー用品売り場を 亡くなった
父が見たら なんと言うだろう。

まだ 化学繊維が珍しい時代だったので ネルの生地が豊富に
出回っていた。 縫いあがった着物は新しい下着 下駄 足袋
とともに 元日の朝おろして着ていた。
一年前の 古いネルの着物は 寝巻きになり そのあとは湯たんぽ
の着物になった。

下手の長糸や 晴れの着物の袖は一尺三寸とか 上の空で 聞いた
母の言葉が 今でも耳に残っている。 
コメント (2)
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