妄 想
毎年 暮れに新聞販売店から 高島暦の薄っぺらなものが 届きます。
地元紙の 読者にサービスで配布するものですが そこは田舎のこと朝日新聞の我が家にも 販売店は 届けてくれます。
信仰心は薄い私ですが この高島暦だけはいつも 興味深く めくっています。
それに田舎の伝統的な行事や古いしきたりは こんな暦で 行われることが多いからです。
この暦によると 私の生まれた七赤金星の適職は あれ?と思うものがたくさん出ています。
七赤金星の星の元に生まれたお方がすべて 芸術家や弁護士や 外科医だったら 大変です。
が もしかしたら 人生間違ったのかもしれないと棺桶に 片足入れているような年齢になって 思うことがあります
えっ それがどうしたですか?
この古ーい二枚のタオル 着物の肩当と いしきあてに使ってありました
まあまあ 私の妄想を聞いてください。
とても所帯持ちの良い そうです私のような 嫁がいました。
まず酒屋の手ぬぐい 焼酎の広告ですが この手ぬぐいの酒屋はすでに 廃業しありません。
多分亭主は呑み助で いつも徳利を片手に この酒屋から焼酎を買っていたに違いありません。
暮れに 頂いたこの手ぬぐいも 大事に箪笥にしまいこんでいたのでしょう。
そしてもう一枚の 畳屋さんの手ぬぐい 電話の番号は 有線です。 時代が想像されます。
始末の良かった嫁は 畳屋さんに裏返しや表替えを 依頼し 家もこざっぱりしていたのでしょう。
自分の着物も大事に 縫い返したり 繕ったりしていましたが 一重の着物を仕立てるとき 肩当といしきあての 晒の布がないのに気が付きました。
呉服屋さんまで 買に行くのには半日かかります。
箪笥を探したら 丁度手ぬぐいが ありました。
肩には 畳屋さんの粋な手ぬぐい いしきあてには酒屋の手ぬぐいを使い 着物はさっぱりと 仕上がりました。
この 所帯持ちの良い 嫁の住んでいたのは多分 この酒屋と 畳屋さんに近い場所 私はそこまで 推理します。
梅雨も上がり 晩酌を楽しむ 親父のそばで 仕立てあがった一重の着物の 所帯持ちのいい女房 つつましい昔の田舎の暮らしです。
古い布で 袋を作っていると 色々な 物語に出会います。
昨日はあんなに いいお天気だったのに 今日は又梅雨空です。
ポーチが一個 出来上がりました。 全部で三個 並んでいます。
なんの物語もない 布たちですが 作った私には 一枚一枚の小さな布たちに 物語があります。