尊厳死 のことが あちこちで 話題になっていますが
それは さておき 私の住むこの田舎の集落でも
お葬式は ここ二、三、年180度 様変わりしました。
昔は 集落の中で どなたか亡くなると
まず連絡が入ります。
するとすぐ 同じ班の女衆は米一升を手に 駆けつけ
死者の旅立ちの飯 つまり枕飯を炊きます。
このとき 米を入れる袋は 嫁の手作りで 着物の残り
布 つまり端布で作って いたようです。
そんな時 針仕事を それとなく自慢したのでしょう。
その頃 地区の女衆が 口悔やみに次々 訪ねます。
それぞれ 故人をしのび 悔やみを述べて 帰ります。
夜は 男衆が 通夜に集まってきます。
その家の家族は 葬儀が終わるまで 台所には 一切入れず
その間 近所の方のまかないを 受けることになります。
通夜の裏側で 喪主と 世話人と 親戚で 葬儀の段取り
が決められます。
まず まかないの人数が 女衆に伝えられ 旅立ちの膳
忌明けの膳 の献立が決められます。
それにより 飯の量 豆腐の数など決められ 年増のベテラン
おばさんが 采配を振るいます。
たいていの材料は ありますし 野菜類は 皆が持ち寄ります。
葬儀の当日 男衆は お寺さんの送り迎え 役場の手続き
お膳の使い捨ての 箸作り 死者がお年寄りであれば
出棺のとき 小銭をまくので それを入れるかご など作業小屋で
一杯飲みながらの仕事です。
出棺のとき 死者が二度と帰れないことを 知らせるため
当人の使っていた 飯わんを割って 女衆も皆出て見送ります。
その後 手伝いの女衆は 座敷一杯に そばの種や鉈 釜など
をおきます。 早くこの家の芽が出るように と魔よけの意味が
あるらしいのです。
かたずけや 掃除をして 帰りを待ちます。
その家の主が帰ってくると 忌明けの席となり 準備してあった
膳に 手伝いの人 隣近所の人 親戚と座に着きます。
接待は 喪主と その家の家族がします。
いずれの料理も 質素でお金もかからず 心のこもったもの
でした。
今は JAが 大きな葬祭場を 作ったのでお通夜も葬儀も
そこで行われ 受付と お茶の接待を何人か 手伝うくらいです。
親しかった故人と ゆっくりお別れ することも
なくなりました。