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アジアと小松

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小松基地問題研究会

3/8不二越控訴審判決について(1)

2010年03月17日 | 戦後補償(特に不二越強制連行)
3/8不二越控訴審判決について(1)

 3月8日、名古屋高裁金沢支部は不二越強制連行訴訟に不当な請求棄却判決をくだした。今回は「1 骨子」を引用し、「2 本件勤労挺身隊等に関する事情(原判決の補正)」についての感想と評価をおこなう。

第4 当裁判所の判断
1 骨子(8P~)
 当裁判所は、本件勤労挺身隊員等に関する事情にふまえ、次のとおり、控訴人らの請求をいずれも棄却すべきであると判断する。その理由は、事項以下に判示するとおりである。
(1)被控訴人らが、若年の本件勤労挺身隊員に対し、勉学の機会を保障することが極めて困難か絶望的な状況であるにもかかわらずこれが十分保障されているかのように偽って、勤労挺身隊員に勧誘し参加させたことに関しては、被控訴人国の国家無答責の法理にかかわる主張は採用することができず、かつ、被控訴人らの共同不法行為に該当するものというべきである。
(2)控訴人らの国際法に基づく請求は認めることはできない。
(3)被控訴人国と本件勤労挺身隊員等との間に安全配慮義務を生ずべき特別の社会的接触関係を肯定することはできず、被控訴人国に対する債務不履行(安全配慮義務違反)に基づく請求は認めることはできない。
 被控訴人会社は、雇用者の立場にあるものとして、従業員となるべき、かつ、実際に従業員となった本件勤労挺身隊員に対し、勉学の機会が十分保障されているかのような説明等をし、もって、適切な説明をすべき義務に違反した例があったものと解するのが相当であり、かかる行為は債務不履行にあたるものというべきである。
(4)被控訴人らの不法行為ないし被控訴人会社の債務不履行を理由とする控訴人らの請求権は、いずれも、本協定2条により、裁判上訴求する権能を失ったというべきであるから、上記各請求権に基づく控訴人らの請求はいずれも棄却を免れない。
(5)謝罪広告の掲載要求についても、本件協定2条により裁判上訴求する権能を失ったというべきであり、いずれも棄却を免れない。

2 本件勤労挺身隊等に関する事情(原判決の補正)(9P~)
★原判決では原告への賃金未払いを断定的に判決していたが、控訴審判決では、「控訴人の記憶によれば」とか、「受領した記憶はない」として、事実認定の後退が見られる。例えば、
 原告11番ナ・・さんの場合は「支給されたことはない」が「もらっているはずで、預金されているものだと思っていたが、どうなったかは承知していない」とされ、原告16番キム・・さんの場合は「賃金を支給されたことも、賃金についての説明を受けたこともない」が「賃金についての説明を受けたり、賃金を受領した記憶がない」とされている。
★募集のために学校に来た人を、原判決では「日本から来た男性」とされていたが、「被控訴人会社の男性職員」とされ、勧誘に来た男を不二越の職員と特定し、不二越の不法行為を明確にしており評価できる。(11P)
★しかし、日本人勤労動員、学徒動員をとりあげることによって、朝鮮人強制連行を勤労動員・学徒動員と並列化し、民族差別に基づく強制連行・強制労働の実態を薄めようとしている感がする。(13P)
★判決は「宣伝、従業員募集、銓衡のため、(引用者注:被控訴人会社の)多数の要員係が各地を歴訪した」「(引用者注:新聞広告での募集を)特定の期日に京城府庁に出頭しあるいは京城府に書類を持参するよう呼びかける内容」等、不二越による共同不法行為の重要な根拠として認定している。(13P)
★判決は「親の反対や抗議を事実上受けつけられなかった例」「母を慰安所に送るなどと脅かされて勤労挺身隊へ参加した例」など、募集の強制性・悪質さを指摘している。(14P)
★判決は「本件勤労挺身隊員にとっては年齢、経験に比して厳しい労働であった」「空腹を水でしのぐ思いをした者がいるほどだった」と原告たちの訴えを認め、不二越での労働、生活実態の過酷さを認定する一方、浴場、読書室、病院、理髪所などがあり、日本人と変わらない待遇であったかのように強調して、強制連行の性格を薄めようとしている。
 製造工場で、油にまみれて働く労働者のために浴場や理髪所を設けるのは当然のことではないか。強労働と栄養不足によって病人やけが人が多発している工場に、もしも治療する施設がないとすれば、それこそ中世の奴隷労働といわれるだろう。これらの施設は近代の工場労働者には最低限の設備である。(14P~)
★不二越は「日本人との賃金格差がなかった」と主張しているが、それは帳尻を合わせただけであり、実際に支払わなければなんの意味もない。
 判決では「朝鮮からの勤労挺身隊員については帰国時に交付する趣旨ないし予定の下に預金したこととされていた者が大多数であったものと考えられる」「終戦時の混乱下において実際には給料相当額を受領出来ないままとなった勤労挺身隊員が多数存在し、これらの者については事実上いわゆるタダ働きの結果となってしまったことが認められる」と認定している。
 ここでは「終戦時の混乱」と言い訳をして、不二越に同情しているようであるが、「強制貯金」とはそもそも「賃金を支払わないシステム」であることを認定すべきである。(15P~)
★控訴審判決では「韓国国内において慰安婦と勤労挺身隊員が区別されずに認識されていたこともあって、勤労挺身隊員であった者は長年にわたり周囲の目線を非常に気にしなければならないなど、多くの者が苦痛を経験する結果となった」と、混同による戦後被害を認めているが、現在の問題ではなく、過去の問題にしている。(17P)

 以上のとおり、事実認定については、基本的に原判決よりも深く認定しており、「共同不法行為」を認定する道筋となった。これに対して、不二越は「共同不法行為などが認定され、会社の主張が認められなかった」と打撃感を露わにしている。

(今後、国家無答責、共同不法行為、国際法、日韓請求権協定などについて、順次報告する)
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