アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

20220217 米軍と自衛隊が脅かす漁民の生活権

2022年02月17日 | 小松基地(日米共同演習)
米軍と自衛隊が脅かす漁民の生活権

 1月31日に小松基地から夜間訓練のためにG訓練空域に向かって発進したF15戦闘機が小松沖5㎞の日本海に墜落した。小松基地は原因究明が終わるまでは、訓練飛行は再開しないと約束しており、皮肉にも、基地周辺住民は何十年ぶりかの静かで安心な日常生活を過ごしている。
 今回墜落したF15は、2016年に新田原基地から移転してきたアグレッサー部隊(10機)所属で、その後基地周辺住民の騒音被害を1ランク上げてきた。

だれに銃を向けるのか
 アグレッサー部隊とは仮想敵機部隊のことであり、自らは敵機役を演じ、303飛行隊、306飛行隊(F15戦闘機40機)などの攻撃能力を向上させるための部隊である。2隊員の任務は攻撃能力(殺す能力)の向上にあり、その相手は周辺諸国の人々であり、最も非人間的で非生産的な労働に従事してきた。私たちは自衛隊員にたいして、「だれに銃を向けるのか」を問いかけながら、反戦平和運動をおこなってきたが、行政(小松市)はこの問いを発せず、献花台を設け、死亡した2隊員を「英霊」の如く扱っている。
 死はさまざまな形で訪れるが、「私たちが生きて何をしてきたか」を問わずに、「死屍に鞭打つな」として、その死を賛美することは、その生と死をもてあそぶことになるだろう。それは、かつての中国・太平洋諸国への侵略戦争に駆り出され、数千万人のアジア民衆を殺戮し、自らも300万人の戦死を強いられながら、その戦死者の行為の当否を問わずに、「英霊」として賛美することによって、「ふたたび戦争の過ちを繰り返さない」という道を閉ざしてきたのではないだろうか。
 今回のF15戦闘機墜落による2隊員の死に接して、心を鬼にして、行政やマスコミによる「賛美・英霊化」を批判しなければならない。



相次ぐ重大事故
 小松基地開設以来、戦闘機の墜落が相次いできた。列記すると、①1962年2月橋立沖、②1965年4月美川沖、③1966年4月輪島沖、④1967年金石沖、⑤1969年2月金沢市街、⑥1971年5月小松基地内、⑦1974年10月小松沖、⑧1979年4月舞鶴沖、⑨1982年10月小松沖、⑩1988年6月小松沖、⑪1991年12月橋立沖、⑫1995年11月輪島沖、⑰今年1月31日小松沖、合計13回も墜落している(地図)。
 その他、⑬2009年胴体着陸、⑭2004年燃料タンク落下、⑮2011年燃料タンク落下、⑯2017年模擬爆弾落下など、一歩間違えば悲惨な結果を招きかねない重大な事故が相次でいる。

激化する日米共同演習
 小松基地から発進したF15戦闘機による戦闘訓練が日本海域(G空域)で毎日のようにおこなわれているのに加えて、近年の日本海域では、核爆弾搭載可能な戦略爆撃機(B52、B1)と自衛隊機による日米共同訓練が激しくなっている。これこそ、「防衛のための訓練」ではなく、「敵基地攻撃訓練」以外の何ものでもない。
 まさに、自衛隊と米軍は日本海域を領海・領空のように扱い、わがもの顔にのし歩いて、近隣諸国に、「いつでも攻めていくぞ」という脅威を与えているのである。以下に、2020年に日本海域でおこなわれた日米共同訓練を列記する。
①2020.02.04 米空軍B52+小松F15 日本周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
②2020.04.22 米空軍B1+小松F15 日本海・沖縄周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
③2020.05.12 米空軍B1+小松F15 日本海・沖縄周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
④2020.05.27 米空軍B1+小松F15 日本海・沖縄周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑤2020.06.17 米空軍B52+小松F15 日本海・沖縄周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑥2020.07.17 米空軍B1+小松F15 日本海・九州西方 編隊航法訓練 (空自HP)
⑦2020.07.27 米空軍B1B+小松F15 日本周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑧2020.08.07 米空軍B1+空自F15 日本海・沖縄周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑨2020.08.18 米空軍B1B+小松F15 日本海・東シナ海 編隊航法訓練 (空自HP)
⑩2020.09.10 米空軍B1B+小松F15 日本海・沖縄周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑪2020.09.30 米空軍B1B+小松F15 日本海周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑫2020.10.20 米空軍B1B+小松F15 日本海周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑬2020.12.04 米空軍B1B+小松F15 日本海周辺 編隊航法訓練 (空自HP)
⑭2020.12.16 米空軍B1B+小松F15 日本海周辺 編隊航法訓練 (空自HP)

漁民が被害を受ける前に
 墜落や落下物事件の度に、基地周辺住民は、基地撤去を求めて、怒りを込めて抗議してきたが、墜落事故13件中11件(85%)もが日本海で起きておりながら、漁協関係者は沈黙してきた。
 今回も、「船は1隻もでていなかったが、操業できる状態だったら危なかった」(橋立漁協のAさん)、/「事前に捜索場所がわかれば、配慮して操業できる」(橋立漁港のBさん)、/「捜索海域で予定していた刺し網漁を中止する」「捜索優先で、出来る限り協力する」(橋立漁協のCさん)などと、小松基地にたいして協調的なコメントが新聞報道されている。
 他方、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射実験やロシアのミサイル訓練予告報道にたいしては、手のひらを返したように、怒りを込めた漁業関係者のコメントが相次いでいる。
 2021年秋以降の新聞から摘記すると、「漁業者の生活の場が脅威にさらされ、強い怒りを抑えることができない」(2021/9/18「北陸中日」)、/「(ロシアに)漁の最中にこういうこと(日本海でのミサイル訓練)はしてほしくない」(2021/10/4「北陸中日」)、/「6月の出漁まで発射がつづくと、非常に怖い」「国には外交ルートで抗議してほしい」(2022/1/12「北陸中日」)、/「漁場が狭まれば死活問題」「ミサイル発射を自粛するよう、国の方から要請してほしい」(2022/1/16「北陸中日」)、/「いつまで続けるのか。怒りで開いた口が塞がらない」(2022/1/17「北国新聞」)。
 まさに、自衛隊や米軍による脅威には目をつむり、近隣諸国の脅威には声を荒げて非難するのは、排外主義そのものであり、マスコミ報道によって、戦争へと結びつく「国民感情」が形成されている。

ともに、基地撤去の声を上げよう
 日本海G空域は大和堆と重なっており、日本海で操業する漁船にとっては、海中の魚群を見、同時に空を見ながら漁をしなければならず、漁業者の労働の場は墜落の脅威にさらされている。
 県漁連こそが、漁民の立場に立ち、日本海G空域(大和堆)での自衛隊機の訓練や日米共同訓練に抗議の声をあげるべきだろう。
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