メモ/韓国の政治・経済情勢と労働者階級 20170402
(1)2016年韓国10大ニュース
インターネットで、韓国の2016年の「10大ニュース」を検索すると、以下の2件がヒットした。崔順実ゲートとキャンドルデモ、韓国経済の不振、労働運動の前進があげられている。
<1> 「韓国聯合ニュース」2016年10大ニュース
1.崔被告の国政介入と朴大統領の弾劾
2.2016年11月~全国で大規模なキャンドルデモ…「市民革命」
3.北朝鮮の核挑発と開城工業団地閉鎖、集団脱北
4.2016年4月総選挙で与党セヌリ党が惨敗
5.金品授受禁止法の施行
6.THAAD韓国配備と中国の反発
7.世界トップ級の韓国人囲碁棋士と人工知能の対局
8.韓進海運の経営破綻と造船海運産業の構造調整
9.法曹界の不正が明るみに
10.2016年9月慶州で史上最大規模の地震発生
<2> 「韓国経済速報」2016年産業界10大ニュース
①28年ぶりのトップ聴聞会…崔順実いない李在鎔(イ・ジェヨン)聴聞会
②造船の涙
③無責任・無能力・無対策…海運の没落
④李在鎔時代のニューサムスン
⑤現代・起亜車の危機
⑦激しくなっている保護貿易の壁
⑧ハーマン買収にワンショット法の弾力…速くなる事業再編
⑨大企業集団基準10兆ウォンを上方…25社の足かせ解決
⑩強い労組の時代
(2)韓国経済情勢
<1> 2016年韓国経済概略
「韓国経済速報」の「2016年産業界10大ニュース」(2016.12.24)によれば、韓国経済はここ数年主力産業が不振だという。造船業では大規模な構造調整を強いられ、韓進海運と現代商船の経営も行き詰まり、韓国の造船と海運が没落しているという。鉄鋼業界は世界的な保護貿易主義のなかで、米国と中国、欧州連合など主要国から反ダンピング規制を受け、中国の非関税障壁(関税以外の方法によって貿易を制限すること)に産業界は打撃を受けている。
現代自動車・起亜自動車は韓国国内市場を国内競合会社と輸入車に奪われ、売上・営業益・占有率を下落させた。精油と化学企業各社は、原油安とウォン安、低成長基調の中でも非製油部門の好実績をもとにアーニング・サプライズ(予想されていなかった情報にたいする株価の反応)を出して「一人好況」を続けた。
また、サムスンは崔順実ゲートとGalaxy Note7発火など韓国内外の悪材料の中でも、市場で予想もしなかった米国オーディオ機器メーカーのハーマンを80億ドルで買収し、次世代事業の新しい道も開いた。(この項は「韓国経済速報」による)
<2> 保護貿易障壁
米国と中国、欧州連合(EU)など世界各国がますます保護貿易障壁を高めており、韓国産業界が最大の被害者になっている。現在、韓国を相手に進行中の輸入規制は反ダンピング関税規制(調査中の件数を含む)132件を含め、計182件だ。品目別では、鉄鋼ㆍ金属が88件で全体の48.4%で半分に迫る。韓国を相手に今年(2016年)新たに輸入規制が始まった件数は11月までに計39件だった。
2017も世界経済の低成長の持続と米トランプ新政権の保護貿易主義政策の拡散が懸念される。米国は今後の「公正貿易」の必要性を強調して、中国を主なターゲットとしている輸入規制措置を強化する可能性が高い。中国の電気車バッテリー認証のように見えない非関税障壁も徐々に高まっている(注)。(この項は「韓国経済速報」による)
(注)今回の措置は韓国政府のTHAAD配備決定にたいする報復措置と言われている。
<3> 開城工業団地閉鎖
2016年2月に開城(ケソン)工業団地が閉鎖された。閉鎖に伴う進出企業の被害総額は8,152億ウォン(約815億2,000万円)規模に上っており、今後さらに拡大するとみられている。
ムーディーズは「南北和解の最後の象徴として残っていた開城工業団地の閉鎖は(朝鮮半島の)地政学的危険を高めるもので、韓国の信用度に否定的」「2010年4月の北朝鮮による韓国軍艦(天安艦)沈没事件以後、韓国は北朝鮮に対して種々の貿易と投資関連制裁を実施してきた」「(だが)開城工業団地の閉鎖は前例がないことで、38度線一帯に深刻な緊張を呼び起こしている」「開城工業団地(で創出される年間付加価値)は韓国国内総生産の0.04%に過ぎないので経済に及ぼす影響は大きくない」とした(2016.2.16「ハンギョレ新聞」)。

<4> THAAD配備と中韓貿易
2015年11月3日の韓国「聯合ニュース」は「中国の成長率鈍化に伴う輸出不振の懸念が大きくなる状況で、韓国貿易の中国傾斜が深刻化している」と伝えている。
2016年の韓国の輸出は前年比5.9%減の4,954億6,600万ドル(2年連続の減少)、輸入は7.0%減の4,060億6,000万ドルとなった。世界経済・貿易の伸び悩み、主力製品の単価下落、自動車業界のストライキなどで、主要輸出品目の大半が減少した。(2017.1.31)
2016年7月8日韓国国防省と在韓米軍は高高度領域防衛(THAAD)ミサイル及びXバンドレーダー配備を正式に発表した。THAADの射程距離が中国にまで及ぶことに、中国は強く反発し、中韓貿易のマイナス要因となった。
2017年3月、THAADミサイルの配備先をロッテが所有する星州郡のゴルフ場に決定し、それを受けて中国は自国の旅行代理店に団体韓国ツアーの販売自粛を指示した。韓国の観光業は外国人観光者(1720万人)のうち、中国人観光客は47%の804万人を占めている。中国の国営メディアと草の根的な政治団体が、人気韓国製品のボイコットを呼びかけ、現代自動車製の車を破壊する映像がソーシャルメディアや国内ニュースサイトに掲載されている。
ここ数年間韓国ウォン高によって輸出額は減少し、それでも中韓貿易は順調に推移してきたが、THAAD配備によって中韓貿易に暗雲が立ちこめている。

<5> 韓国経済の構造的問題
韓国は1997年にIMF管理下におかれ、海外資本が浸透し、大手製造業と銀行のほとんどが外国資本の支配下に入った(資料1、2)。
韓国の直接投資受入額(1962~2009年累計)のシェアは米国が27.0%で、日本が15.0%であり、以下オランダ、ドイツ、英国、マレーシア、フランス、シンガポール、カナダと続いている。
韓国の対日米欧輸出額は全体の26%(対中国26%)で、対日米欧輸入額は31%(対中国16%)である(2013年資料3)。日本以外での貿易は黒字だが、日本に対しては赤字である。
韓国は自動車や電機の生産・輸出に力を入れてきたが、これらを作る(組み立てる)ための部品や素材(中間財)、設備や工作機械類(資本財)などは主に日本からの輸入に頼っているので、輸出が増えると、比例して対日赤字が増加するという構造的な問題がある。韓国は輸出で稼いだ外貨を日本に支払うので、韓国経済全体の利潤率が抑制されている。
資料1に見るとおり、韓国の大手銀行10行のうち9行までが海外資本が大株主で、配当比率は70~85%で、その利益のほとんどが海外に持ち出されている。ポスコ(製鉄)、現代自動車、SKテレコム(韓国最大の通信会社)、サムスン、LGの外資比率は50~60%も占め、利益配当は40~60%も出され、韓国の富が日米欧に巻き上げられている。
2010年4月には、28億6000万ドル(2380億円)が配当として海外に流出した。韓国経済は利益を上げても海外に吸い上げられる構図になっており、その中で利益を確保しようとすれば、韓国人民に犠牲を転嫁(セウォル号事件など)せざるを得ないのだ。

(3)朝鮮半島をめぐる政治・軍事情勢
<1> 在韓米軍情勢
米韓軍事演習
3月1日から4月末までの予定で、米韓軍事演習「フォールイーグル」が実施されている。13日からは韓米定例合同軍事演習「キー・リゾルブ」も始まった。
昨年の両演習は史上最大規模だった。最新の「作戦計画5015」に基づいて、「双竜作戦(内陸深く侵攻し、朝鮮の主要都市を陥落させる演習)」や「斬首作戦(朝鮮の指導部を急襲し、その首をはねるという作戦訓練)」を強行した。中東でウサマ・ビン・ラディンを殺害した米軍特殊部隊が参加した。
8月後半から9月はじめには大規模な軍事演習「乙支フリーダム・ガーディアン」がおこなわれた。それは①戦争危機の醸成、②主導権確保作戦、③戦争支援作戦、④平壌占領作戦、⑤政府統治支援という、侵略戦争の予行演習であった。(『統一評論』)
今年はさらに大規模な軍事演習となっている。「聯合ニュース」や「朝鮮日報」などによれば、これまでのフォールイーグルには、米陸・海・空軍などの特殊部隊から約1000人が参加していたが、今回は参加する部隊がさらに多様化し兵力も増え、過去最大規模になる。米海軍の原子力空母とF35ステルス戦闘機、米海軍特殊部隊シールズ(SEALs)が参加している。
「キー・リゾルブ」では地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を活用した訓練や北朝鮮の軍事施設を事前に破壊する作戦も展開するという。15日には米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」が釜山港に入港した。
今回の演習にはレンジャー、デルタフォース、DEVGRU、グリーンベレーなど米国の代表的な特殊部隊がそろって出動する。特にDEVGRUは「特殊部隊中の特殊部隊」に挙げられる最精鋭部隊で、ウサマ・ビン・ラディンを暗殺した。朝日新聞は、米海軍の特殊部隊SEALsが空母「カール・ビンソン」に乗り込み、韓国周辺海域で訓練に臨んでいると伝え、「米韓は金正恩委員長ら北朝鮮高官の暗殺や誘拐も含む作戦計画を策定している」と報じた。
韓国軍も、今年12月ごろ創設される「北朝鮮首脳部除去」特殊任務旅団を、今回の演習に本格投入する計画だ。韓国軍の特殊戦司令部(特戦司)隷下に創設される特殊任務旅団はおよそ1000人規模。両国の特殊部隊は、米軍のMC130特殊戦輸送機・MH47特殊戦ヘリなど特殊作戦用航空機を用いて、平壌の主席宮など北朝鮮の戦争指導部がいる場所へ夜間潜入し、要人を除去する状況を想定した訓練をおこなうといわれている。さらに両軍は、北朝鮮指導部が隠れている地下バンカー(掩蔽壕〈えんぺいごう〉)の位置を確認し、GBU27「バンカーバスター」など精密誘導爆弾を用いた爆撃の終末誘導の訓練も実施する予定。
THAADミサイル配備
昨年7月には、「北朝鮮のミサイル脅威に対する防御システム」として、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を2017年中に慶尚北道星州郡に配備して運用することを確認した。
7月13日、THAAD配置に抗議し慶尚北道星州郡の住民5000人がデモに参加した。参加者たちは「自分たちの土地に米国のミサイルを配置する計画は地元住民の合意を得る「誠実で透明」なプロセスを素通りして承認されたため、違法である」と考えている(『聯合ニュース』)。
8月15日、「星州THAAD配備撤回のための闘争委員会」はTHAAD配備撤回を求める集会を開き、住民908人が一斉に髪をそり、政府に抗議した(『新華社』)。
THAAD配備に関する国民世論調査では、「早期配備支持」が33.8%、「配備反対」が26.7%、「次期政府が配備を決定すべき」が24.8%、「わからない」が14.7%だった。「配備に反対」または「次期政府が配備を決定すべき」とする意見が半数を超える51.5%となった(「リアルメーター」2016.12.30)。
しかも、THAAD配備を進めてきた朴槿恵政権は崩壊し、黄教安首相も次期大統領選挙(5/9)から撤退したにもかかわらず(3/15発表)、3月17日に米韓(ティラーソン×黄教安)会談では、ティラーソンは、対北朝鮮政策の「戦略的忍耐」はすでに終わったとして、軍事力行使を含む「すべてのオプションを検討する」と説明し、当初予定(2017年中)を前倒ししてTHAAD配備を強行しようとしている。

<2> 南北対立動向
韓国政府は延坪島(ヨンピョンド)の近くで沈没した天安艦事件(注)を北朝鮮の仕業だとこじつけて、それを大々的に宣伝して、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との対立を煽ってきた。
(注)天安艦(チョナンハム)事件:2010年3月26日午後9時45分頃、天安は朝鮮半島西方黄海上の北方限界線(NLL)付近(白翎島西南方)で、船体後方が爆発し、船体がふたつに切断され沈没、乗組員104人のうち46人が行方不明になった。韓国国防省は「"北朝鮮製魚雷によって天安艦が攻撃された"という結果は、各国の専門家が数ヶ月かけて検証し導き出したものだ」としているが、韓国地震研究所のキム・ソグ所長は「韓国海軍が放置した機雷が爆発の原因である可能性が高い」と話した。(ウィキペディア)
北朝鮮は2016年に2回の核実験(1月と9月)、スカッド、ノドン、ムスダンなどの弾道ミサイルやSLBM(潜水艦発射ミサイル)の発射実験をおこなって、日米韓軍事体制の強化に塩を送った。
トランプ新政権下で、2017年3月から昨年以上の規模で米韓演習がおこなわれており、北朝鮮は「戦争演習を中止しない限り、核武力を中枢とする自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化していく」と、南北の緊張が高まっている(この項は『北陸中日』2017.2.15)。
<3> 日韓関係(摩擦)
日韓軍事情報保護協定
2016年11月23日に日韓軍事秘密情報包括保護協定(日韓GSOMIA)が締結された。締結直前の21日から22日にかけて、日本軍「慰安婦」合意無効のための大学生対策委員会は21日午前、ソウル鍾路区の政府ソウル庁舎で記者会見し、22日の国務会議で上程される日韓GSOMIAを阻止するため、24時間座り込みをおこない、「日韓GSOMIAの目的が北朝鮮の核とミサイルを防ぐための情報共有ではない」「北東アジアの新冷戦体制を構築し、軍備競争を拡張することはもちろん、「慰安婦」合意で勢いをつけた安倍政権に翼を与えることになる。売国的な日韓GSOMIAの強行を中断せよ」と訴えた。
「共に民主党」、国民の党、正義党の野党3党が「拙速・売国交渉」と反対しており、朴槿恵は失職し、保守系有力候補の潘基文や黄教安首相は大統領選挙から撤退を表明しており、次期大統領によって日韓GSOMIAは破棄される可能性が高い。
少女像問題
2015年12月28日の日本軍「慰安婦」をめぐる日韓合意を支持する韓国の世論は10%を切った。「最終的・不可逆的」に合意をしたというが、外交においては「最終的・不可逆的」などというものはあり得ない。しかも日本と韓国の「合意文」を発表しておらず、口頭での約束で、韓国国会の批准も受けていない。国民の合意はもちろん「慰安婦」にされた本人の同意もなく、10億円という腐れ金・端金をもらって、少女像を撤去すると「約束」させられた。
日本政府やマスコミは「約束を守らない、詐欺じゃないか」と言っているが、韓国がかつて歴史のなかで受けた被害を清算しようとしているのに、日本は「金だけ取って約束を守らない」と、被害者と加害者を逆転させている。これは「忘却の合意」であり、話にならない。(1/29新春講演会でのソ・スンさんの講演より)
日本軍性奴隷制被害者たちが韓国政府にたいして、「2015日韓合意」の責任を問う裁判で、韓国政府が提出した1月19日付および3月15日付準備書面で、「2015日韓合意」の法的な性格について「2015日韓合意は条約のような法的拘束力のある合意には該当しない。法的拘束力のない国家間合意は、相互の信義に基づく政策遂行上の合意であって、法的なものではなく、政治的または道義的なものだ」と述べた。
現在、出馬を有力視されている候補全員が、「慰安婦」問題解決のために2015年12月の「日韓合意」の破棄または再協議を主張しており、「2015日韓合意」は風前の灯火だ。
昨年12月30日、韓国釜山領事館の前に「慰安婦」問題を象徴する少女像が新たに設置されたことをうけ、安倍政権は駐韓大使の一時引き揚げ(1/9→4/4帰任)や日韓通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を強行しているが、外交音痴もいいところだ。
文化財略奪問題
2017年1月26日、韓国大田(テジョン)地裁が「観世音菩薩座像」の所有権を韓国・浮石寺にあるとの仮処分決定をおこなった。日本のマスコミはこぞって地裁決定を非難し、排外主義をあおりたてている。
2012年、対馬の海神神社の重要文化財「銅造如来立像」(統一新羅時代)、観音寺の長崎県指定有形文化財の「銅造観世音菩薩坐像」(高麗時代)、多久頭魂神社の長崎県指定有形文化財の「大蔵経」が盗まれ、韓国で発見されたという事件が起きた。
忠清南道瑞山市にある曹渓宗の浮石寺(プソクサ)が「観音寺の銅造観世音菩薩坐像は、元々倭寇に略奪された仏像である」と主張して返還しないよう求めた。観音寺の田中節孝前住職は、「仏像は李氏朝鮮時代の仏教弾圧から守るために対馬に持ち込まれたもの」と語っているが、大田地裁は「所有権は浮石寺にあり、正常ではない過程で観音寺に移された」として、「観音寺がこの像を正当に取得したことが訴訟で確定するまで、韓国政府は日本政府に引き渡してはならない」と判断し、仏像の浮石寺への引き渡しを命じた。
金沢市兼六園にある「海石塔」は朝鮮出兵時に持ち帰ったものであり(戦前の絵はがきには、「朝鮮征伐時の戦利品」との説明書き)、皇居にある「鴻臚井の碑」は日露戦争で旅順を占領した日本軍が略奪してきたものである。かつて靖国神社敷地内に置かれていた「北関大捷碑」も同時期に東京に送られた(2005年返還)。
植民地時代には、日本は朝鮮の土地を奪い、人を奪い(強制連行)、言葉を奪い、さまざまな文化財も略奪してきた。韓国文化財庁国立文化研究所は仏国寺舎利塔(1905年略奪→1933年返還)、栗里寺跡の八角石塔(1910年代略奪)、利川浄土寺五重塔(1918年略奪)など6万1409点の文化財が日本にあると発表している(2010年)。まさに日本は略奪文化がはびこる国である。

領土問題―独島(竹島)、対馬
2014年文部科学省は中学、高校の学習指導要領解説書を改定し、中高生に釣魚台(尖閣諸島)、独島(竹島)を「わが国固有の領土」と教えるよう指示している。教科書会社は政府におもねって、2014年度の小学校教科書には独島(竹島)、釣魚台(尖閣諸島)を「日本固有の領土」と記述された(右表)。
2017年2月文科省は学習指導要領の改定案を発表し、小中学校の社会科で独島(竹島)、釣魚台(尖閣諸島)を「日本固有の領土」と明記した。
このような日本の領土拡張主義にたいして、2016年7月には韓国のプロ棋士と歌手が独島(竹島)で対局し、8月15日にはセヌリ党国会議員ら10人が独島(竹島)に上陸した。
とある会合(昨年)で、参加者から「対馬の土地の80%が韓国人に買い占められている」との発言があり、帰宅後インターネットで調べてみると、これは真っ赤なウソで、元東京都港区議会議員山本へるみのブログに、「島全体の0.26%(5500坪)が韓国人によって買収されている」(対馬市長、2008年ごろの答弁)との記述があった。わずか0.26%を80%と「針小棒大」の表現で、「日本の領土が外国人に買い占められている」「日本が危ない」などと排外主義をあおっている。
麻生首相(2008~9年当時)でさえも、「土地は合法的に買っている。日本がかつて米国の土地を買ったのと同じで、自分が買ったときはよくて、他人が買ったら悪いとは言えない」と、珍しく冷静に述べている(バブル期のハワイでは日本人がホテル、ゴルフ場、住宅地を買い漁っていた)。
対北朝鮮「制裁」
2016年北朝鮮の核実験(1月)、弾道ミサイルの発射(2月)を受け、安倍政権は「独自制裁」を決定した。北朝鮮船籍の船舶の入港禁止の他、北朝鮮のミサイル・核計画に関係する団体1つと個人10人の資産凍結が含まれている。北朝鮮のすべての個人と機関にたいして、10万円以上を北朝鮮に送金する場合は、日本政府に通達することを義務付けた。
安倍晋三首相は12月2日、国家安全保障会議(NSC)と北朝鮮による日本人拉致問題に関する関係閣僚会合を開催し、北朝鮮の核実験(9/5)や弾道ミサイル発射について「新たな段階の脅威である」として、独自制裁を決定した。在日本朝鮮人総連合会幹部など北朝鮮訪問後に日本に再入国できなくする対象者を拡大する。北朝鮮に寄港した船舶は日本籍船舶を含むすべての船舶の日本への入港も禁止する。北朝鮮に寄港した船舶は日本籍船舶を含むすべての船舶の日本への入港も禁止する。
(4)韓国労働運動情勢
<1> たたかう韓国労働者階級
10月下旬から始まった朴槿恵弾劾キャンドルデモには前史がある。「レイバーネットニュース」の2016年9月末以降の記事を検証すると、そこには韓国経済の不況による賃金未払い、不当解雇があり、それとたたかう民主労総がある。
記事を拾ってみよう(カッコ内は記事掲載月日)。
(09/30)「9月27日の公共運輸労組に続き、28日には金属労組と保健医療労組がストライキに突入し、ゼネストに速度がついた。公共運輸労組6万人をはじめ、今日は金属労組11万人、保健医療労組4千人がゼネストに合流した」
(10/01)「公共運輸労組労働者5万人が汝矣島に集結して、ストライキを続けた。午後3時から始まった公共運輸労組ゼネスト総力闘争大会には、韓国労総の公共連盟1万人も合流」
(10/03)「約3万の市民と労働者がペク・ナムギ農民追慕と成果年俸制阻止のために 10月1日、ソウル市大学路に集まった」
(10/11)「連休をすぎても公共部門ストライキが続き、長期化している。ソウル市大学路に集まった約3万の公共部門労働者は、無期限ストライキも辞さないという意志を示した」
(10/17)「今回のストライキは二大労総の公共部門労働者たちが共に立ち上がった史上最大のストライキに進んでいる」
(10/19)「韓国昌原市にある日本企業サンケンの韓国法人が整理解雇を行おうとしている。これに反対する労組(金属労組慶南支部韓国サンケン分会)が整理解雇撤回を求めてたたかっている。しかし権限のない現地法人との交渉は進まず、10月18日、労組が来日し、本社に対して整理解雇を撤回させるための闘争を始めた」
(10/30)「9月23日の金融労組ストライキを始め、同月27日には公共部門労働者たちが成果年俸制阻止を掲げてストライキに入った。鉄道とソウル地下鉄、都市鉄道、釜山地下鉄労働者が列車を止め、ソウル大病院などの病院や国民年金、健康保険などの公団の労働者が仕事を止めた。その上10月10日には貨物連帯までストライキに突入して物流と交通が止まった」「公共運輸労組ソウル京畿支部所属のソウル市公営駐車場分会の労働者たちは10月26日午前、ソウル市に問題の解決を要求してソウル市庁ロビー座り込みに入った」「鉄道労組が連日、最長期ストライキ記録を更新している」「10月19日、貨物連帯のストライキが10日目に幕を下ろした」
(11/13)「(11月12日)ソウル市庁広場から青瓦台包囲デモ行進を始めた市民は午後7時半頃に100万になった。これは1987年6月の民主化抗争以来最大の規模で、光化門などソウル都心は全国から集まった市民で麻痺した」
(11/27)「(11月26日)主催側は午後9時40分現在、ソウル市光化門の参加者数が150万人、地方では40万人で、 全国合計190万人が集結したと明らかにしました。…国内50地域だけでなく、海外でも20か国で朴槿恵大統領の退陣を要求するキャンドルが燃え上がりました」
(11/30)「11月30日の民主労総ゼネストを中心として退陣行動(朴槿恵政権退陣非常国民行動)が平日にも最大キャンドル集会を予定し、闘争を拡大している」「民主労総は大統領談話が発表された翌日の今日、22万の組合員がゼネストに突入し、ソウルで2万、全国で6万人が即刻退陣を要求するゼネスト大会とキャンドル集会を続けた」

(12/04)「朴槿恵大統領の3次談話以後、怒った市民がまた街に出てきた。…全国で232万の人波が通りに出た。ソウル市の光化門に170万人、地方62万人など232万を超える市民が…朴槿恵大統領の無条件の即時退陣を要求した」
(12/10)「朴槿恵大統領弾劾訴追案が国会で圧倒的な票差で可決された。弾劾訴追案の採決を控え、国会前には2万人の市民が弾劾訴追案の通過を叫び、集会とデモを続けた」
(12/26)「大韓航空操縦士労働組合が12月22日0時から10日間のストライキに突入した」
(12/27)「現代重工労働組合が12年ぶりに民主労総に復帰する」「韓国サンケン使用者側の生産職勤労者大量解雇は不当だという地方労働委員会の判定が出てきた」
(12/31)「史上最長の全面ストライキ記録を作ったゴールデンブリッジ投資証券支部が4年ぶりに再ストライキを予告した」
(01/01)「韓国GM昌原工場の下請企業に所属する非正規職労働者たちが解雇の一日前の30日、使用者側の雇用継承を引き出した。11月30日に解雇を通報されたことで全面ストライキなどの闘争を始めてから一か月目だ」
(01/05)「起亜自動車労組華城社内下請分会のキム・スオク分会長が、起亜車正規職労使の20%選別採用強行に反対して無期限ハンスト座り込みに突入した」
(02/09)「造船業不況で大規模な構造調整の中にある巨済・統営・固城地域の昨年の未払い賃金申告額が、他の地域と比べて急激に増加していることが明らかになった。昨年、全国の未払い賃金が約10%増加したのに比べ、巨済・統営・固城地域の未払い賃金は約270%増加」「大田地裁民事21部は1月31日、全国鉄道労働組合が出した仮処分申請を認め、 成果年俸制の効力を臨時に停止すると明らかにした」
(02/19)「民主労総の前・現職の人々が共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)大統領選挙走者に対する支持を本格化した。…民主労総はこのような動きについて『民衆進歩陣営の独自的政治勢力化と大統領選挙対応方針を揺さぶる意図』だと強く批判しており、労働運動陣営内部での大統領選挙方針をめぐる混乱が予想される」
(03/10)「憲法裁判所が朴槿恵大統領の罷免を全員一致で決定した。弾劾審判から92日目だ。大統領弾劾が承認されたのは憲政史上初めてだ。憲法裁判所の宣告の後、憲法裁判所前の市民は『キャンドルの勝利』と歓呼した。しかし弾劾反対派の集会参加者は『大韓民国は死んだ』とし、国民抵抗運動が必要だと怒りを見せた」
労働者人民のなかに朴槿恵政権と財閥体制にたいする怨嗟の声が満ちあふれ、たたかいが先行しており、それが空前のキャンドルデモとなって現れている。民主労総は11月30日には、平日にもかかわらず、ソウルで2万、全国で6万人が即刻退陣を要求するゼネスト大会を開きキャンドル行動と結びついた。
韓国経済界の反応
韓国経済界も「今年(2016年)は、鉄道労組、貨物連帯、現代自動車グループなどストが全方位に拡散し、ストによる損失が10年間で最高値を記録した。第3四半期にストによる労働損失日数が98万2000日に達する。現代自動車は今年24回にわたってストと12回の特別勤務拒否で14万2000台の生産支障をきたし、約3兆ウォン以上の損失を出した。起亜自動車も22回のストで9万台、1兆9000億ウォンを失った」と労働者人民のたたかいに悲鳴をあげている(韓国経済速報)。
<2> ペク・ナムギさん虐殺事件
2015年11月14日、賃金制度改悪に反対する民衆総決起集会・デモ(全国民主労働組合総連盟など)がソウルの光化門周辺で開かれた(13万人)。参加したペク・ナムギさん(70)が、警察の高圧放水銃に当たり意識不明の重体に陥り、意識不明だったが、事故から317日が経った9月25日に亡くなった。
事件後、市民団体らは対策委員会を結成し、当時のカン・シンミョン警察庁長など7人を未必の故意による殺人未遂容疑で告発した。さらに、国とカン元警察庁長を相手取り、2億4000万ウォン(約2200万円)の損害賠償を求める訴訟を提起した。これにたいし、警察は「放水銃とペクさんの状態の因果関係ははっきりしない」とし、過度な鎮圧を否定していた。
司法当局は「ペクさんの死亡原因などを明らかにするため司法解剖が必要」との立場を明らかにしたが、対策委員会は「検察の司法解剖の方針は、『ペクさんが倒れたのは警察の放水銃に当たったからではない』と言い逃れをするためのもの」と主張し、司法解剖に反対している。同委員会の会員が司法解剖などを阻止するためにソウル大病院の葬儀場前で座り込み、司法解剖を阻止した。(この項は「韓国経済速報」「レイバーネットニュース」などによる)

(5)崔順実ゲートとキャンドルデモ
崔順実(チェ・スンシル)ゲートが韓国を揺るがしている。昨年(2016年)10月27日にわずか400人で始まった朴槿恵弾劾キャンドルデモが10月29日には3万人(第1回)になり、その後毎週土曜日ごとにキャンドルデモがたたかわれ、12月3日にはソウルで160万人が集まり(第6回)、青瓦台100メートルにまで迫った。
12月9日、ついに韓国国会は朴槿恵弾劾決議を圧倒的多数で可決した。12月31日、ソウル鍾路区光化門広場で第10回ろうそく集会「送朴迎新・汎国民行動」が開かれ、ろうそく集会に参加した延べ人数が1000万人を突破した。
今年に入っても、「レーバーネットニュース」によれば、第15次(2・11)、第16次(2・18)国民行動にはそれぞれ80万人が集まり、2月25日朴槿恵大統領就任5年目の民衆総決起大会には30万人が集まった。
<1> 朴槿恵政権退陣非常国民行動11/9記者会見
11月9日、政権退陣を要求する市民の国民的怒りを集めて、「朴槿恵政権退陣非常国民行動(略称:退陣行動)」が結成された。民衆総決起闘争本部、ペク・ナムギ闘争本部、4・16連帯(セウォル号)、民主主義国民行動、市民社会団体連帯会議など1500あまりの団体が参加している。
「退陣行動」は11月12日に100万人を集める民衆総決起に全力を尽くし、時局宣言、キャンドル集会など政権退陣のための国民行動を組織していくと明らかにした。
「退陣行動」は発足式で、 △朴槿恵政権は直ちに退陣、 △徹底した真相究明のための独立特検導入、 △言論は公正報道をして真実の声を伝えること、 △野党は国民の要求に応えろ、 △幻想に過ぎない挙国中立内閣の議論中止などを要求した。
統一問題研究所の白基玩(ペク・キワン)所長は「今、われわれ国民が望むのは朴槿恵退陣、ただ一つのスローガン」「朴槿恵退陣という国民的熱望に背を向けるすべての野党は退かなければならない」と声を高めた。
民主労総のチェ・ジョンジン委員長職務代行は「新自由主義の中で積み重なった財閥構造を振り返らなければならない」「労働者・農民・貧民が死んでいく状況の中で、国民は新しい世の中を要求する熱気を作っている」「ゼネストをはじめ、財閥解体、非正規職撤廃、労働三権保障を必ず抱えて行く」と約束した。
民主社会のための弁護士会のチョン・ヨンスン会長は「問題の核心は憲政秩序を壟断したということだ。 韓国社会の最も根本的な秩序である憲法を蹂躙して侮辱した。いかなる謝罪でも容赦できず、解決しない」「犯罪の核心にいる当事者、大統領の退陣だけが解決方法」と話した。
全国流通商人連合会のイン・テヨン会長は、伝統市場と自営業者が崩壊する原因は、財閥中心の経済政策だと批判し、「この事態の財閥は被害者ではなく、不正腐敗の元凶であり主導者である。セヌリ党は財閥の手先であった」と話した。
「退陣行動」は記者会見文を通して「言葉で言っても大統領が降りなければ、もう行動で引き下ろすほかはない」とし「11月12日、100万民衆総決起で! 汎国民行動で! 国民の力で朴槿恵政権を追い出そう!」と訴えた。(この項は「レイバーネット日本」より)
<2> 朴槿恵政権退陣緊急国民行動1/11記者会見
「退陣行動」は新年のメッセージで「1987年、護憲撤廃(大統領間接選挙を規定した憲法の改正を求める)や独裁打倒のときの声を上げ市民主権時代を開いたとしたら、30年後の今は世界史に残る市民革命の1ページを再び書き込んでいる。驚くべき時間を貫通している」「私たちが生きる世の中をこれ以上ヘル(地獄)朝鮮などとは書かないだろう。力がなくても分かち合える世の中を作るだろう。1987年に市民が憲法を変えたなら、2017年に私たちは世の中を変えるだろう。反則と覇権を壊し、正義と真実、民主主義が勝利する世の中、主権者が統治する共に生きる世の中を作るだろう」と宣言した。
出席者からは、「朴槿恵当選以来、身を投げ絶望していた非正規職、解雇労働者たち、貧困のために追いやられて死んでいった人びと、セウオル号犠牲者たち、国家暴力によって犠牲になったペク・ナムギ農民と民主主義を守って監獄にとらわれた良心囚たち」「韓国史教科書を国定化し、日本軍「慰安婦」問題を密室で合意した。平和を脅かすTHAADの配備配置を強行し、一般的解雇指針で墜落させた」「文化芸術家たちのブラックリストを作成し、管理し、開城工業団地を閉鎖した」「セウオル号惨事の真相糾明、ペク・ナムギ死亡に関する特別検察、THAAD配備の中止、マスコミ掌握の中断と放送法改正、成果年俸制の阻止、韓国史教科書国定化阻止」などの発言があった。
①朴槿恵退陣、②黄教安の国民査察、③朴槿恵と共犯者の処罰、④財閥体制をはじめとする特権と犯則の秩序、不平等と不公正、排除と差別の改革が確認された。(この項は1/15「ハンギョレ新聞」など)
<3> 政権交代への道筋
12月9日、国会で朴槿恵大統領弾劾訴追案が可決(国会議員299人中、賛成234,反対56,無効7,棄権2)された。朴槿恵の支持率は4%にまで下落した(11/25ギャラップ社発表)。
それは崔順実ゲートだけが問題なのではない。4年前に朴槿恵は国民大統合(地域や世代間の対立を超える)、経済民主化(財閥などへの富の集中是正)を掲げて大統領に当選したが、まったく違う方向に進んだ。「大統合」どころか、極右の尹昶重(ユン・チャンジュン)を大統領府報道官に据え、民主化陣営の人びとを遠ざけた(談:金万欽・韓国アカデミー院長3/13『北陸中日新聞』)。
朴槿恵が公約として掲げた高齢者へ月20万ウオン支給、大学授業料を半額、保育園無料化などが空手形となり、財閥が大手を振り、社会格差が拡大し、青年層の失業率が増加した。セウォル号事件、「慰安婦」合意、開城工業団地の閉鎖、機動隊による農民ペク・ナムギさん(70)の虐殺などが相次いだ。
3月6~8日の世論調査(リアルメーター)では、文在寅(革新・共に民主党)36.1%、安熙正(革新・共に民主党)12.9%、黄教安(保守・首相)14.2%、安哲秀(中道・国民の党)9.9%、李在明(革新・城南市長)10.5%、潘基文(保守)は不出馬を表明した(資料4)。
大統領の有力候補を見ると、革新系の「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)は「大統領に当選するならば、アメリカよりも北韓を先に訪問する」と公言しており、李在明(イ・ジェミョン)城南市長は「アメリカが倍にしろと言っているので、どれだけ増額するかと悩むのではなく、ドイツ水準(21%)に減額するとすべきだ。すでに韓国は77%を負担しているではないか。もはやわれわれは、アメリカ軍の撤退に対処して自主国防をすべきだ。作戦権まで外国に渡し、自らは作戦を遂行できない。そのような国が世界のどこにあるのか」と怒っている。
3月上旬の世論調査では、文在寅(36.1%)がトップを走っているが、金万欽さん(前出)は「文氏は制度改革について保守的な側面があり、…文氏が現在の勢いを維持するのは難しい」と話しており、「レイバーネットニュース」(2/19)では、民主労総内には文在寅支持と不支持の動きがあると伝えている。
3月15日、黄教安(保守・首相)は「大統領選挙に出馬しない」と表明し、保守系は有力候補を失った。

<4> 朴槿恵罷免から大統領選挙へ
キャンドル大衆は、政局の主導権を既存政界に渡さない、自分たちの直接的な政治が憲法裁判所の判決よりも根本的だと考えている。そして「自己統治」は今始まったばかりだと表明し続けている。100万の人々が叫ぶスローガンのなかには、財閥解体、非正規職撤廃、労働三権保障、南北統一など体制内的野党によっては担いきれない重い内容が連ねられている。
『ワーカーズ』(25号)のホン・ソンマン編集長は「抗争と革命の岐路」(11/17)と語り、朴槿恵政権退陣緊急国民行動は1/11記者会見で「市民革命の1ページ」「世の中を変える」「主権者が統治する共に生きる世の中を作る」というメッセージを発している。韓国人民のなかで「革命」が公然と語られている。
2017年2月13日にマレーシア・クアラルンプール国際空港で金正男(キム・ジョンナム)がVXガスで殺害された。この事件が朴槿恵罷免をめぐる韓国世論に影響を与えるのではないかと、注視していたが、3月10日憲法裁判所は全会一致で朴槿恵を罷免し、朴槿恵は失職した。3月31日朴槿恵は13件の容疑で逮捕された。

そして5月9日に大統領選挙が実施される。民主労総は3月26日民衆連合党のキム・ソンドン候補と会い、4月11日にはシム・サンジョン正義党大統領候補と会い、共に民主党の文在寅大統領候補とも懇談会の日程を協議している。4月20日には中央執行委員会を開いて大統領選挙の投票方針を最終的に決定する予定だ。
キャンドル大衆は、李明博―朴槿恵による9年間の保守反動に終止符を打ち、新たな政治を模索している。
参考資料
『レイバーネットニュース』(2016.9.30~2017.3.10)、『韓国経済速報』、『ハンギョレ新聞』、『聯合ニュース』『朝鮮日報』『1/29ソ・スンさん講演録』『統一評論』など。写真はインターネット上から添付。
(1)2016年韓国10大ニュース
インターネットで、韓国の2016年の「10大ニュース」を検索すると、以下の2件がヒットした。崔順実ゲートとキャンドルデモ、韓国経済の不振、労働運動の前進があげられている。
<1> 「韓国聯合ニュース」2016年10大ニュース
1.崔被告の国政介入と朴大統領の弾劾
2.2016年11月~全国で大規模なキャンドルデモ…「市民革命」
3.北朝鮮の核挑発と開城工業団地閉鎖、集団脱北
4.2016年4月総選挙で与党セヌリ党が惨敗
5.金品授受禁止法の施行
6.THAAD韓国配備と中国の反発
7.世界トップ級の韓国人囲碁棋士と人工知能の対局
8.韓進海運の経営破綻と造船海運産業の構造調整
9.法曹界の不正が明るみに
10.2016年9月慶州で史上最大規模の地震発生
<2> 「韓国経済速報」2016年産業界10大ニュース
①28年ぶりのトップ聴聞会…崔順実いない李在鎔(イ・ジェヨン)聴聞会
②造船の涙
③無責任・無能力・無対策…海運の没落
④李在鎔時代のニューサムスン
⑤現代・起亜車の危機
⑦激しくなっている保護貿易の壁
⑧ハーマン買収にワンショット法の弾力…速くなる事業再編
⑨大企業集団基準10兆ウォンを上方…25社の足かせ解決
⑩強い労組の時代
(2)韓国経済情勢
<1> 2016年韓国経済概略
「韓国経済速報」の「2016年産業界10大ニュース」(2016.12.24)によれば、韓国経済はここ数年主力産業が不振だという。造船業では大規模な構造調整を強いられ、韓進海運と現代商船の経営も行き詰まり、韓国の造船と海運が没落しているという。鉄鋼業界は世界的な保護貿易主義のなかで、米国と中国、欧州連合など主要国から反ダンピング規制を受け、中国の非関税障壁(関税以外の方法によって貿易を制限すること)に産業界は打撃を受けている。
現代自動車・起亜自動車は韓国国内市場を国内競合会社と輸入車に奪われ、売上・営業益・占有率を下落させた。精油と化学企業各社は、原油安とウォン安、低成長基調の中でも非製油部門の好実績をもとにアーニング・サプライズ(予想されていなかった情報にたいする株価の反応)を出して「一人好況」を続けた。
また、サムスンは崔順実ゲートとGalaxy Note7発火など韓国内外の悪材料の中でも、市場で予想もしなかった米国オーディオ機器メーカーのハーマンを80億ドルで買収し、次世代事業の新しい道も開いた。(この項は「韓国経済速報」による)
<2> 保護貿易障壁
米国と中国、欧州連合(EU)など世界各国がますます保護貿易障壁を高めており、韓国産業界が最大の被害者になっている。現在、韓国を相手に進行中の輸入規制は反ダンピング関税規制(調査中の件数を含む)132件を含め、計182件だ。品目別では、鉄鋼ㆍ金属が88件で全体の48.4%で半分に迫る。韓国を相手に今年(2016年)新たに輸入規制が始まった件数は11月までに計39件だった。
2017も世界経済の低成長の持続と米トランプ新政権の保護貿易主義政策の拡散が懸念される。米国は今後の「公正貿易」の必要性を強調して、中国を主なターゲットとしている輸入規制措置を強化する可能性が高い。中国の電気車バッテリー認証のように見えない非関税障壁も徐々に高まっている(注)。(この項は「韓国経済速報」による)
(注)今回の措置は韓国政府のTHAAD配備決定にたいする報復措置と言われている。
<3> 開城工業団地閉鎖
2016年2月に開城(ケソン)工業団地が閉鎖された。閉鎖に伴う進出企業の被害総額は8,152億ウォン(約815億2,000万円)規模に上っており、今後さらに拡大するとみられている。
ムーディーズは「南北和解の最後の象徴として残っていた開城工業団地の閉鎖は(朝鮮半島の)地政学的危険を高めるもので、韓国の信用度に否定的」「2010年4月の北朝鮮による韓国軍艦(天安艦)沈没事件以後、韓国は北朝鮮に対して種々の貿易と投資関連制裁を実施してきた」「(だが)開城工業団地の閉鎖は前例がないことで、38度線一帯に深刻な緊張を呼び起こしている」「開城工業団地(で創出される年間付加価値)は韓国国内総生産の0.04%に過ぎないので経済に及ぼす影響は大きくない」とした(2016.2.16「ハンギョレ新聞」)。

<4> THAAD配備と中韓貿易
2015年11月3日の韓国「聯合ニュース」は「中国の成長率鈍化に伴う輸出不振の懸念が大きくなる状況で、韓国貿易の中国傾斜が深刻化している」と伝えている。
2016年の韓国の輸出は前年比5.9%減の4,954億6,600万ドル(2年連続の減少)、輸入は7.0%減の4,060億6,000万ドルとなった。世界経済・貿易の伸び悩み、主力製品の単価下落、自動車業界のストライキなどで、主要輸出品目の大半が減少した。(2017.1.31)
2016年7月8日韓国国防省と在韓米軍は高高度領域防衛(THAAD)ミサイル及びXバンドレーダー配備を正式に発表した。THAADの射程距離が中国にまで及ぶことに、中国は強く反発し、中韓貿易のマイナス要因となった。
2017年3月、THAADミサイルの配備先をロッテが所有する星州郡のゴルフ場に決定し、それを受けて中国は自国の旅行代理店に団体韓国ツアーの販売自粛を指示した。韓国の観光業は外国人観光者(1720万人)のうち、中国人観光客は47%の804万人を占めている。中国の国営メディアと草の根的な政治団体が、人気韓国製品のボイコットを呼びかけ、現代自動車製の車を破壊する映像がソーシャルメディアや国内ニュースサイトに掲載されている。
ここ数年間韓国ウォン高によって輸出額は減少し、それでも中韓貿易は順調に推移してきたが、THAAD配備によって中韓貿易に暗雲が立ちこめている。

<5> 韓国経済の構造的問題
韓国は1997年にIMF管理下におかれ、海外資本が浸透し、大手製造業と銀行のほとんどが外国資本の支配下に入った(資料1、2)。
韓国の直接投資受入額(1962~2009年累計)のシェアは米国が27.0%で、日本が15.0%であり、以下オランダ、ドイツ、英国、マレーシア、フランス、シンガポール、カナダと続いている。
韓国の対日米欧輸出額は全体の26%(対中国26%)で、対日米欧輸入額は31%(対中国16%)である(2013年資料3)。日本以外での貿易は黒字だが、日本に対しては赤字である。
韓国は自動車や電機の生産・輸出に力を入れてきたが、これらを作る(組み立てる)ための部品や素材(中間財)、設備や工作機械類(資本財)などは主に日本からの輸入に頼っているので、輸出が増えると、比例して対日赤字が増加するという構造的な問題がある。韓国は輸出で稼いだ外貨を日本に支払うので、韓国経済全体の利潤率が抑制されている。
資料1に見るとおり、韓国の大手銀行10行のうち9行までが海外資本が大株主で、配当比率は70~85%で、その利益のほとんどが海外に持ち出されている。ポスコ(製鉄)、現代自動車、SKテレコム(韓国最大の通信会社)、サムスン、LGの外資比率は50~60%も占め、利益配当は40~60%も出され、韓国の富が日米欧に巻き上げられている。
2010年4月には、28億6000万ドル(2380億円)が配当として海外に流出した。韓国経済は利益を上げても海外に吸い上げられる構図になっており、その中で利益を確保しようとすれば、韓国人民に犠牲を転嫁(セウォル号事件など)せざるを得ないのだ。



(3)朝鮮半島をめぐる政治・軍事情勢
<1> 在韓米軍情勢
米韓軍事演習
3月1日から4月末までの予定で、米韓軍事演習「フォールイーグル」が実施されている。13日からは韓米定例合同軍事演習「キー・リゾルブ」も始まった。
昨年の両演習は史上最大規模だった。最新の「作戦計画5015」に基づいて、「双竜作戦(内陸深く侵攻し、朝鮮の主要都市を陥落させる演習)」や「斬首作戦(朝鮮の指導部を急襲し、その首をはねるという作戦訓練)」を強行した。中東でウサマ・ビン・ラディンを殺害した米軍特殊部隊が参加した。
8月後半から9月はじめには大規模な軍事演習「乙支フリーダム・ガーディアン」がおこなわれた。それは①戦争危機の醸成、②主導権確保作戦、③戦争支援作戦、④平壌占領作戦、⑤政府統治支援という、侵略戦争の予行演習であった。(『統一評論』)
今年はさらに大規模な軍事演習となっている。「聯合ニュース」や「朝鮮日報」などによれば、これまでのフォールイーグルには、米陸・海・空軍などの特殊部隊から約1000人が参加していたが、今回は参加する部隊がさらに多様化し兵力も増え、過去最大規模になる。米海軍の原子力空母とF35ステルス戦闘機、米海軍特殊部隊シールズ(SEALs)が参加している。
「キー・リゾルブ」では地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を活用した訓練や北朝鮮の軍事施設を事前に破壊する作戦も展開するという。15日には米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」が釜山港に入港した。
今回の演習にはレンジャー、デルタフォース、DEVGRU、グリーンベレーなど米国の代表的な特殊部隊がそろって出動する。特にDEVGRUは「特殊部隊中の特殊部隊」に挙げられる最精鋭部隊で、ウサマ・ビン・ラディンを暗殺した。朝日新聞は、米海軍の特殊部隊SEALsが空母「カール・ビンソン」に乗り込み、韓国周辺海域で訓練に臨んでいると伝え、「米韓は金正恩委員長ら北朝鮮高官の暗殺や誘拐も含む作戦計画を策定している」と報じた。
韓国軍も、今年12月ごろ創設される「北朝鮮首脳部除去」特殊任務旅団を、今回の演習に本格投入する計画だ。韓国軍の特殊戦司令部(特戦司)隷下に創設される特殊任務旅団はおよそ1000人規模。両国の特殊部隊は、米軍のMC130特殊戦輸送機・MH47特殊戦ヘリなど特殊作戦用航空機を用いて、平壌の主席宮など北朝鮮の戦争指導部がいる場所へ夜間潜入し、要人を除去する状況を想定した訓練をおこなうといわれている。さらに両軍は、北朝鮮指導部が隠れている地下バンカー(掩蔽壕〈えんぺいごう〉)の位置を確認し、GBU27「バンカーバスター」など精密誘導爆弾を用いた爆撃の終末誘導の訓練も実施する予定。
THAADミサイル配備
昨年7月には、「北朝鮮のミサイル脅威に対する防御システム」として、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を2017年中に慶尚北道星州郡に配備して運用することを確認した。
7月13日、THAAD配置に抗議し慶尚北道星州郡の住民5000人がデモに参加した。参加者たちは「自分たちの土地に米国のミサイルを配置する計画は地元住民の合意を得る「誠実で透明」なプロセスを素通りして承認されたため、違法である」と考えている(『聯合ニュース』)。
8月15日、「星州THAAD配備撤回のための闘争委員会」はTHAAD配備撤回を求める集会を開き、住民908人が一斉に髪をそり、政府に抗議した(『新華社』)。
THAAD配備に関する国民世論調査では、「早期配備支持」が33.8%、「配備反対」が26.7%、「次期政府が配備を決定すべき」が24.8%、「わからない」が14.7%だった。「配備に反対」または「次期政府が配備を決定すべき」とする意見が半数を超える51.5%となった(「リアルメーター」2016.12.30)。
しかも、THAAD配備を進めてきた朴槿恵政権は崩壊し、黄教安首相も次期大統領選挙(5/9)から撤退したにもかかわらず(3/15発表)、3月17日に米韓(ティラーソン×黄教安)会談では、ティラーソンは、対北朝鮮政策の「戦略的忍耐」はすでに終わったとして、軍事力行使を含む「すべてのオプションを検討する」と説明し、当初予定(2017年中)を前倒ししてTHAAD配備を強行しようとしている。

<2> 南北対立動向
韓国政府は延坪島(ヨンピョンド)の近くで沈没した天安艦事件(注)を北朝鮮の仕業だとこじつけて、それを大々的に宣伝して、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との対立を煽ってきた。
(注)天安艦(チョナンハム)事件:2010年3月26日午後9時45分頃、天安は朝鮮半島西方黄海上の北方限界線(NLL)付近(白翎島西南方)で、船体後方が爆発し、船体がふたつに切断され沈没、乗組員104人のうち46人が行方不明になった。韓国国防省は「"北朝鮮製魚雷によって天安艦が攻撃された"という結果は、各国の専門家が数ヶ月かけて検証し導き出したものだ」としているが、韓国地震研究所のキム・ソグ所長は「韓国海軍が放置した機雷が爆発の原因である可能性が高い」と話した。(ウィキペディア)
北朝鮮は2016年に2回の核実験(1月と9月)、スカッド、ノドン、ムスダンなどの弾道ミサイルやSLBM(潜水艦発射ミサイル)の発射実験をおこなって、日米韓軍事体制の強化に塩を送った。
トランプ新政権下で、2017年3月から昨年以上の規模で米韓演習がおこなわれており、北朝鮮は「戦争演習を中止しない限り、核武力を中枢とする自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化していく」と、南北の緊張が高まっている(この項は『北陸中日』2017.2.15)。
<3> 日韓関係(摩擦)
日韓軍事情報保護協定
2016年11月23日に日韓軍事秘密情報包括保護協定(日韓GSOMIA)が締結された。締結直前の21日から22日にかけて、日本軍「慰安婦」合意無効のための大学生対策委員会は21日午前、ソウル鍾路区の政府ソウル庁舎で記者会見し、22日の国務会議で上程される日韓GSOMIAを阻止するため、24時間座り込みをおこない、「日韓GSOMIAの目的が北朝鮮の核とミサイルを防ぐための情報共有ではない」「北東アジアの新冷戦体制を構築し、軍備競争を拡張することはもちろん、「慰安婦」合意で勢いをつけた安倍政権に翼を与えることになる。売国的な日韓GSOMIAの強行を中断せよ」と訴えた。
「共に民主党」、国民の党、正義党の野党3党が「拙速・売国交渉」と反対しており、朴槿恵は失職し、保守系有力候補の潘基文や黄教安首相は大統領選挙から撤退を表明しており、次期大統領によって日韓GSOMIAは破棄される可能性が高い。
少女像問題
2015年12月28日の日本軍「慰安婦」をめぐる日韓合意を支持する韓国の世論は10%を切った。「最終的・不可逆的」に合意をしたというが、外交においては「最終的・不可逆的」などというものはあり得ない。しかも日本と韓国の「合意文」を発表しておらず、口頭での約束で、韓国国会の批准も受けていない。国民の合意はもちろん「慰安婦」にされた本人の同意もなく、10億円という腐れ金・端金をもらって、少女像を撤去すると「約束」させられた。
日本政府やマスコミは「約束を守らない、詐欺じゃないか」と言っているが、韓国がかつて歴史のなかで受けた被害を清算しようとしているのに、日本は「金だけ取って約束を守らない」と、被害者と加害者を逆転させている。これは「忘却の合意」であり、話にならない。(1/29新春講演会でのソ・スンさんの講演より)
日本軍性奴隷制被害者たちが韓国政府にたいして、「2015日韓合意」の責任を問う裁判で、韓国政府が提出した1月19日付および3月15日付準備書面で、「2015日韓合意」の法的な性格について「2015日韓合意は条約のような法的拘束力のある合意には該当しない。法的拘束力のない国家間合意は、相互の信義に基づく政策遂行上の合意であって、法的なものではなく、政治的または道義的なものだ」と述べた。
現在、出馬を有力視されている候補全員が、「慰安婦」問題解決のために2015年12月の「日韓合意」の破棄または再協議を主張しており、「2015日韓合意」は風前の灯火だ。
昨年12月30日、韓国釜山領事館の前に「慰安婦」問題を象徴する少女像が新たに設置されたことをうけ、安倍政権は駐韓大使の一時引き揚げ(1/9→4/4帰任)や日韓通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を強行しているが、外交音痴もいいところだ。
文化財略奪問題
2017年1月26日、韓国大田(テジョン)地裁が「観世音菩薩座像」の所有権を韓国・浮石寺にあるとの仮処分決定をおこなった。日本のマスコミはこぞって地裁決定を非難し、排外主義をあおりたてている。
2012年、対馬の海神神社の重要文化財「銅造如来立像」(統一新羅時代)、観音寺の長崎県指定有形文化財の「銅造観世音菩薩坐像」(高麗時代)、多久頭魂神社の長崎県指定有形文化財の「大蔵経」が盗まれ、韓国で発見されたという事件が起きた。
忠清南道瑞山市にある曹渓宗の浮石寺(プソクサ)が「観音寺の銅造観世音菩薩坐像は、元々倭寇に略奪された仏像である」と主張して返還しないよう求めた。観音寺の田中節孝前住職は、「仏像は李氏朝鮮時代の仏教弾圧から守るために対馬に持ち込まれたもの」と語っているが、大田地裁は「所有権は浮石寺にあり、正常ではない過程で観音寺に移された」として、「観音寺がこの像を正当に取得したことが訴訟で確定するまで、韓国政府は日本政府に引き渡してはならない」と判断し、仏像の浮石寺への引き渡しを命じた。
金沢市兼六園にある「海石塔」は朝鮮出兵時に持ち帰ったものであり(戦前の絵はがきには、「朝鮮征伐時の戦利品」との説明書き)、皇居にある「鴻臚井の碑」は日露戦争で旅順を占領した日本軍が略奪してきたものである。かつて靖国神社敷地内に置かれていた「北関大捷碑」も同時期に東京に送られた(2005年返還)。
植民地時代には、日本は朝鮮の土地を奪い、人を奪い(強制連行)、言葉を奪い、さまざまな文化財も略奪してきた。韓国文化財庁国立文化研究所は仏国寺舎利塔(1905年略奪→1933年返還)、栗里寺跡の八角石塔(1910年代略奪)、利川浄土寺五重塔(1918年略奪)など6万1409点の文化財が日本にあると発表している(2010年)。まさに日本は略奪文化がはびこる国である。


領土問題―独島(竹島)、対馬
2014年文部科学省は中学、高校の学習指導要領解説書を改定し、中高生に釣魚台(尖閣諸島)、独島(竹島)を「わが国固有の領土」と教えるよう指示している。教科書会社は政府におもねって、2014年度の小学校教科書には独島(竹島)、釣魚台(尖閣諸島)を「日本固有の領土」と記述された(右表)。
2017年2月文科省は学習指導要領の改定案を発表し、小中学校の社会科で独島(竹島)、釣魚台(尖閣諸島)を「日本固有の領土」と明記した。
このような日本の領土拡張主義にたいして、2016年7月には韓国のプロ棋士と歌手が独島(竹島)で対局し、8月15日にはセヌリ党国会議員ら10人が独島(竹島)に上陸した。
とある会合(昨年)で、参加者から「対馬の土地の80%が韓国人に買い占められている」との発言があり、帰宅後インターネットで調べてみると、これは真っ赤なウソで、元東京都港区議会議員山本へるみのブログに、「島全体の0.26%(5500坪)が韓国人によって買収されている」(対馬市長、2008年ごろの答弁)との記述があった。わずか0.26%を80%と「針小棒大」の表現で、「日本の領土が外国人に買い占められている」「日本が危ない」などと排外主義をあおっている。
麻生首相(2008~9年当時)でさえも、「土地は合法的に買っている。日本がかつて米国の土地を買ったのと同じで、自分が買ったときはよくて、他人が買ったら悪いとは言えない」と、珍しく冷静に述べている(バブル期のハワイでは日本人がホテル、ゴルフ場、住宅地を買い漁っていた)。
対北朝鮮「制裁」
2016年北朝鮮の核実験(1月)、弾道ミサイルの発射(2月)を受け、安倍政権は「独自制裁」を決定した。北朝鮮船籍の船舶の入港禁止の他、北朝鮮のミサイル・核計画に関係する団体1つと個人10人の資産凍結が含まれている。北朝鮮のすべての個人と機関にたいして、10万円以上を北朝鮮に送金する場合は、日本政府に通達することを義務付けた。
安倍晋三首相は12月2日、国家安全保障会議(NSC)と北朝鮮による日本人拉致問題に関する関係閣僚会合を開催し、北朝鮮の核実験(9/5)や弾道ミサイル発射について「新たな段階の脅威である」として、独自制裁を決定した。在日本朝鮮人総連合会幹部など北朝鮮訪問後に日本に再入国できなくする対象者を拡大する。北朝鮮に寄港した船舶は日本籍船舶を含むすべての船舶の日本への入港も禁止する。北朝鮮に寄港した船舶は日本籍船舶を含むすべての船舶の日本への入港も禁止する。
(4)韓国労働運動情勢
<1> たたかう韓国労働者階級
10月下旬から始まった朴槿恵弾劾キャンドルデモには前史がある。「レイバーネットニュース」の2016年9月末以降の記事を検証すると、そこには韓国経済の不況による賃金未払い、不当解雇があり、それとたたかう民主労総がある。
記事を拾ってみよう(カッコ内は記事掲載月日)。
(09/30)「9月27日の公共運輸労組に続き、28日には金属労組と保健医療労組がストライキに突入し、ゼネストに速度がついた。公共運輸労組6万人をはじめ、今日は金属労組11万人、保健医療労組4千人がゼネストに合流した」
(10/01)「公共運輸労組労働者5万人が汝矣島に集結して、ストライキを続けた。午後3時から始まった公共運輸労組ゼネスト総力闘争大会には、韓国労総の公共連盟1万人も合流」
(10/03)「約3万の市民と労働者がペク・ナムギ農民追慕と成果年俸制阻止のために 10月1日、ソウル市大学路に集まった」
(10/11)「連休をすぎても公共部門ストライキが続き、長期化している。ソウル市大学路に集まった約3万の公共部門労働者は、無期限ストライキも辞さないという意志を示した」
(10/17)「今回のストライキは二大労総の公共部門労働者たちが共に立ち上がった史上最大のストライキに進んでいる」
(10/19)「韓国昌原市にある日本企業サンケンの韓国法人が整理解雇を行おうとしている。これに反対する労組(金属労組慶南支部韓国サンケン分会)が整理解雇撤回を求めてたたかっている。しかし権限のない現地法人との交渉は進まず、10月18日、労組が来日し、本社に対して整理解雇を撤回させるための闘争を始めた」
(10/30)「9月23日の金融労組ストライキを始め、同月27日には公共部門労働者たちが成果年俸制阻止を掲げてストライキに入った。鉄道とソウル地下鉄、都市鉄道、釜山地下鉄労働者が列車を止め、ソウル大病院などの病院や国民年金、健康保険などの公団の労働者が仕事を止めた。その上10月10日には貨物連帯までストライキに突入して物流と交通が止まった」「公共運輸労組ソウル京畿支部所属のソウル市公営駐車場分会の労働者たちは10月26日午前、ソウル市に問題の解決を要求してソウル市庁ロビー座り込みに入った」「鉄道労組が連日、最長期ストライキ記録を更新している」「10月19日、貨物連帯のストライキが10日目に幕を下ろした」
(11/13)「(11月12日)ソウル市庁広場から青瓦台包囲デモ行進を始めた市民は午後7時半頃に100万になった。これは1987年6月の民主化抗争以来最大の規模で、光化門などソウル都心は全国から集まった市民で麻痺した」
(11/27)「(11月26日)主催側は午後9時40分現在、ソウル市光化門の参加者数が150万人、地方では40万人で、 全国合計190万人が集結したと明らかにしました。…国内50地域だけでなく、海外でも20か国で朴槿恵大統領の退陣を要求するキャンドルが燃え上がりました」
(11/30)「11月30日の民主労総ゼネストを中心として退陣行動(朴槿恵政権退陣非常国民行動)が平日にも最大キャンドル集会を予定し、闘争を拡大している」「民主労総は大統領談話が発表された翌日の今日、22万の組合員がゼネストに突入し、ソウルで2万、全国で6万人が即刻退陣を要求するゼネスト大会とキャンドル集会を続けた」

(12/04)「朴槿恵大統領の3次談話以後、怒った市民がまた街に出てきた。…全国で232万の人波が通りに出た。ソウル市の光化門に170万人、地方62万人など232万を超える市民が…朴槿恵大統領の無条件の即時退陣を要求した」
(12/10)「朴槿恵大統領弾劾訴追案が国会で圧倒的な票差で可決された。弾劾訴追案の採決を控え、国会前には2万人の市民が弾劾訴追案の通過を叫び、集会とデモを続けた」
(12/26)「大韓航空操縦士労働組合が12月22日0時から10日間のストライキに突入した」
(12/27)「現代重工労働組合が12年ぶりに民主労総に復帰する」「韓国サンケン使用者側の生産職勤労者大量解雇は不当だという地方労働委員会の判定が出てきた」
(12/31)「史上最長の全面ストライキ記録を作ったゴールデンブリッジ投資証券支部が4年ぶりに再ストライキを予告した」
(01/01)「韓国GM昌原工場の下請企業に所属する非正規職労働者たちが解雇の一日前の30日、使用者側の雇用継承を引き出した。11月30日に解雇を通報されたことで全面ストライキなどの闘争を始めてから一か月目だ」
(01/05)「起亜自動車労組華城社内下請分会のキム・スオク分会長が、起亜車正規職労使の20%選別採用強行に反対して無期限ハンスト座り込みに突入した」
(02/09)「造船業不況で大規模な構造調整の中にある巨済・統営・固城地域の昨年の未払い賃金申告額が、他の地域と比べて急激に増加していることが明らかになった。昨年、全国の未払い賃金が約10%増加したのに比べ、巨済・統営・固城地域の未払い賃金は約270%増加」「大田地裁民事21部は1月31日、全国鉄道労働組合が出した仮処分申請を認め、 成果年俸制の効力を臨時に停止すると明らかにした」
(02/19)「民主労総の前・現職の人々が共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)大統領選挙走者に対する支持を本格化した。…民主労総はこのような動きについて『民衆進歩陣営の独自的政治勢力化と大統領選挙対応方針を揺さぶる意図』だと強く批判しており、労働運動陣営内部での大統領選挙方針をめぐる混乱が予想される」
(03/10)「憲法裁判所が朴槿恵大統領の罷免を全員一致で決定した。弾劾審判から92日目だ。大統領弾劾が承認されたのは憲政史上初めてだ。憲法裁判所の宣告の後、憲法裁判所前の市民は『キャンドルの勝利』と歓呼した。しかし弾劾反対派の集会参加者は『大韓民国は死んだ』とし、国民抵抗運動が必要だと怒りを見せた」
労働者人民のなかに朴槿恵政権と財閥体制にたいする怨嗟の声が満ちあふれ、たたかいが先行しており、それが空前のキャンドルデモとなって現れている。民主労総は11月30日には、平日にもかかわらず、ソウルで2万、全国で6万人が即刻退陣を要求するゼネスト大会を開きキャンドル行動と結びついた。
韓国経済界の反応
韓国経済界も「今年(2016年)は、鉄道労組、貨物連帯、現代自動車グループなどストが全方位に拡散し、ストによる損失が10年間で最高値を記録した。第3四半期にストによる労働損失日数が98万2000日に達する。現代自動車は今年24回にわたってストと12回の特別勤務拒否で14万2000台の生産支障をきたし、約3兆ウォン以上の損失を出した。起亜自動車も22回のストで9万台、1兆9000億ウォンを失った」と労働者人民のたたかいに悲鳴をあげている(韓国経済速報)。
<2> ペク・ナムギさん虐殺事件
2015年11月14日、賃金制度改悪に反対する民衆総決起集会・デモ(全国民主労働組合総連盟など)がソウルの光化門周辺で開かれた(13万人)。参加したペク・ナムギさん(70)が、警察の高圧放水銃に当たり意識不明の重体に陥り、意識不明だったが、事故から317日が経った9月25日に亡くなった。
事件後、市民団体らは対策委員会を結成し、当時のカン・シンミョン警察庁長など7人を未必の故意による殺人未遂容疑で告発した。さらに、国とカン元警察庁長を相手取り、2億4000万ウォン(約2200万円)の損害賠償を求める訴訟を提起した。これにたいし、警察は「放水銃とペクさんの状態の因果関係ははっきりしない」とし、過度な鎮圧を否定していた。
司法当局は「ペクさんの死亡原因などを明らかにするため司法解剖が必要」との立場を明らかにしたが、対策委員会は「検察の司法解剖の方針は、『ペクさんが倒れたのは警察の放水銃に当たったからではない』と言い逃れをするためのもの」と主張し、司法解剖に反対している。同委員会の会員が司法解剖などを阻止するためにソウル大病院の葬儀場前で座り込み、司法解剖を阻止した。(この項は「韓国経済速報」「レイバーネットニュース」などによる)

(5)崔順実ゲートとキャンドルデモ
崔順実(チェ・スンシル)ゲートが韓国を揺るがしている。昨年(2016年)10月27日にわずか400人で始まった朴槿恵弾劾キャンドルデモが10月29日には3万人(第1回)になり、その後毎週土曜日ごとにキャンドルデモがたたかわれ、12月3日にはソウルで160万人が集まり(第6回)、青瓦台100メートルにまで迫った。
12月9日、ついに韓国国会は朴槿恵弾劾決議を圧倒的多数で可決した。12月31日、ソウル鍾路区光化門広場で第10回ろうそく集会「送朴迎新・汎国民行動」が開かれ、ろうそく集会に参加した延べ人数が1000万人を突破した。
今年に入っても、「レーバーネットニュース」によれば、第15次(2・11)、第16次(2・18)国民行動にはそれぞれ80万人が集まり、2月25日朴槿恵大統領就任5年目の民衆総決起大会には30万人が集まった。
<1> 朴槿恵政権退陣非常国民行動11/9記者会見
11月9日、政権退陣を要求する市民の国民的怒りを集めて、「朴槿恵政権退陣非常国民行動(略称:退陣行動)」が結成された。民衆総決起闘争本部、ペク・ナムギ闘争本部、4・16連帯(セウォル号)、民主主義国民行動、市民社会団体連帯会議など1500あまりの団体が参加している。
「退陣行動」は11月12日に100万人を集める民衆総決起に全力を尽くし、時局宣言、キャンドル集会など政権退陣のための国民行動を組織していくと明らかにした。
「退陣行動」は発足式で、 △朴槿恵政権は直ちに退陣、 △徹底した真相究明のための独立特検導入、 △言論は公正報道をして真実の声を伝えること、 △野党は国民の要求に応えろ、 △幻想に過ぎない挙国中立内閣の議論中止などを要求した。
統一問題研究所の白基玩(ペク・キワン)所長は「今、われわれ国民が望むのは朴槿恵退陣、ただ一つのスローガン」「朴槿恵退陣という国民的熱望に背を向けるすべての野党は退かなければならない」と声を高めた。
民主労総のチェ・ジョンジン委員長職務代行は「新自由主義の中で積み重なった財閥構造を振り返らなければならない」「労働者・農民・貧民が死んでいく状況の中で、国民は新しい世の中を要求する熱気を作っている」「ゼネストをはじめ、財閥解体、非正規職撤廃、労働三権保障を必ず抱えて行く」と約束した。
民主社会のための弁護士会のチョン・ヨンスン会長は「問題の核心は憲政秩序を壟断したということだ。 韓国社会の最も根本的な秩序である憲法を蹂躙して侮辱した。いかなる謝罪でも容赦できず、解決しない」「犯罪の核心にいる当事者、大統領の退陣だけが解決方法」と話した。
全国流通商人連合会のイン・テヨン会長は、伝統市場と自営業者が崩壊する原因は、財閥中心の経済政策だと批判し、「この事態の財閥は被害者ではなく、不正腐敗の元凶であり主導者である。セヌリ党は財閥の手先であった」と話した。
「退陣行動」は記者会見文を通して「言葉で言っても大統領が降りなければ、もう行動で引き下ろすほかはない」とし「11月12日、100万民衆総決起で! 汎国民行動で! 国民の力で朴槿恵政権を追い出そう!」と訴えた。(この項は「レイバーネット日本」より)
<2> 朴槿恵政権退陣緊急国民行動1/11記者会見
「退陣行動」は新年のメッセージで「1987年、護憲撤廃(大統領間接選挙を規定した憲法の改正を求める)や独裁打倒のときの声を上げ市民主権時代を開いたとしたら、30年後の今は世界史に残る市民革命の1ページを再び書き込んでいる。驚くべき時間を貫通している」「私たちが生きる世の中をこれ以上ヘル(地獄)朝鮮などとは書かないだろう。力がなくても分かち合える世の中を作るだろう。1987年に市民が憲法を変えたなら、2017年に私たちは世の中を変えるだろう。反則と覇権を壊し、正義と真実、民主主義が勝利する世の中、主権者が統治する共に生きる世の中を作るだろう」と宣言した。
出席者からは、「朴槿恵当選以来、身を投げ絶望していた非正規職、解雇労働者たち、貧困のために追いやられて死んでいった人びと、セウオル号犠牲者たち、国家暴力によって犠牲になったペク・ナムギ農民と民主主義を守って監獄にとらわれた良心囚たち」「韓国史教科書を国定化し、日本軍「慰安婦」問題を密室で合意した。平和を脅かすTHAADの配備配置を強行し、一般的解雇指針で墜落させた」「文化芸術家たちのブラックリストを作成し、管理し、開城工業団地を閉鎖した」「セウオル号惨事の真相糾明、ペク・ナムギ死亡に関する特別検察、THAAD配備の中止、マスコミ掌握の中断と放送法改正、成果年俸制の阻止、韓国史教科書国定化阻止」などの発言があった。
①朴槿恵退陣、②黄教安の国民査察、③朴槿恵と共犯者の処罰、④財閥体制をはじめとする特権と犯則の秩序、不平等と不公正、排除と差別の改革が確認された。(この項は1/15「ハンギョレ新聞」など)
<3> 政権交代への道筋
12月9日、国会で朴槿恵大統領弾劾訴追案が可決(国会議員299人中、賛成234,反対56,無効7,棄権2)された。朴槿恵の支持率は4%にまで下落した(11/25ギャラップ社発表)。
それは崔順実ゲートだけが問題なのではない。4年前に朴槿恵は国民大統合(地域や世代間の対立を超える)、経済民主化(財閥などへの富の集中是正)を掲げて大統領に当選したが、まったく違う方向に進んだ。「大統合」どころか、極右の尹昶重(ユン・チャンジュン)を大統領府報道官に据え、民主化陣営の人びとを遠ざけた(談:金万欽・韓国アカデミー院長3/13『北陸中日新聞』)。
朴槿恵が公約として掲げた高齢者へ月20万ウオン支給、大学授業料を半額、保育園無料化などが空手形となり、財閥が大手を振り、社会格差が拡大し、青年層の失業率が増加した。セウォル号事件、「慰安婦」合意、開城工業団地の閉鎖、機動隊による農民ペク・ナムギさん(70)の虐殺などが相次いだ。
3月6~8日の世論調査(リアルメーター)では、文在寅(革新・共に民主党)36.1%、安熙正(革新・共に民主党)12.9%、黄教安(保守・首相)14.2%、安哲秀(中道・国民の党)9.9%、李在明(革新・城南市長)10.5%、潘基文(保守)は不出馬を表明した(資料4)。
大統領の有力候補を見ると、革新系の「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)は「大統領に当選するならば、アメリカよりも北韓を先に訪問する」と公言しており、李在明(イ・ジェミョン)城南市長は「アメリカが倍にしろと言っているので、どれだけ増額するかと悩むのではなく、ドイツ水準(21%)に減額するとすべきだ。すでに韓国は77%を負担しているではないか。もはやわれわれは、アメリカ軍の撤退に対処して自主国防をすべきだ。作戦権まで外国に渡し、自らは作戦を遂行できない。そのような国が世界のどこにあるのか」と怒っている。
3月上旬の世論調査では、文在寅(36.1%)がトップを走っているが、金万欽さん(前出)は「文氏は制度改革について保守的な側面があり、…文氏が現在の勢いを維持するのは難しい」と話しており、「レイバーネットニュース」(2/19)では、民主労総内には文在寅支持と不支持の動きがあると伝えている。
3月15日、黄教安(保守・首相)は「大統領選挙に出馬しない」と表明し、保守系は有力候補を失った。

<4> 朴槿恵罷免から大統領選挙へ
キャンドル大衆は、政局の主導権を既存政界に渡さない、自分たちの直接的な政治が憲法裁判所の判決よりも根本的だと考えている。そして「自己統治」は今始まったばかりだと表明し続けている。100万の人々が叫ぶスローガンのなかには、財閥解体、非正規職撤廃、労働三権保障、南北統一など体制内的野党によっては担いきれない重い内容が連ねられている。
『ワーカーズ』(25号)のホン・ソンマン編集長は「抗争と革命の岐路」(11/17)と語り、朴槿恵政権退陣緊急国民行動は1/11記者会見で「市民革命の1ページ」「世の中を変える」「主権者が統治する共に生きる世の中を作る」というメッセージを発している。韓国人民のなかで「革命」が公然と語られている。
2017年2月13日にマレーシア・クアラルンプール国際空港で金正男(キム・ジョンナム)がVXガスで殺害された。この事件が朴槿恵罷免をめぐる韓国世論に影響を与えるのではないかと、注視していたが、3月10日憲法裁判所は全会一致で朴槿恵を罷免し、朴槿恵は失職した。3月31日朴槿恵は13件の容疑で逮捕された。

そして5月9日に大統領選挙が実施される。民主労総は3月26日民衆連合党のキム・ソンドン候補と会い、4月11日にはシム・サンジョン正義党大統領候補と会い、共に民主党の文在寅大統領候補とも懇談会の日程を協議している。4月20日には中央執行委員会を開いて大統領選挙の投票方針を最終的に決定する予定だ。
キャンドル大衆は、李明博―朴槿恵による9年間の保守反動に終止符を打ち、新たな政治を模索している。
参考資料
『レイバーネットニュース』(2016.9.30~2017.3.10)、『韓国経済速報』、『ハンギョレ新聞』、『聯合ニュース』『朝鮮日報』『1/29ソ・スンさん講演録』『統一評論』など。写真はインターネット上から添付。