アジアと小松

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小松基地問題研究会

20120819小松基地セクハラ事件 「審理辞退届」について

2012年08月19日 | 小松基地(総合)
「審理辞退届」について

 2008年9月17日付けの「毎日新聞」に「左目を失明したのは上司の暴行が原因」として、航空自衛隊小松基地(石川県小松市)に所属していた袋井市在住の元空士長の男性(24)が国に約5700万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、地裁浜松支部(布村重成裁判長)であった。

 国は暴行は個人的なトラブルがもとであり、暴行と失明の因果関係についても全面的に争う姿勢を示した。

 訴状などによると、小松基地消防小隊に勤務していた男性は、昨年8月に同基地内で開催された市民との交流会の帰り道、酒に酔った上司の3等空曹から左目や頭、腕を殴ったり首を絞められるなどの暴行を受け、意識を失って一時入院。同年9月に視神経障害により左目を失明したとしている。男性は今年3月末に退職した。原告代理人の塩沢忠和弁護士は「交流会という業務の一環で、上司が部下に注意をするという形で暴行が行われたのであり、国の責任は明白だ」と話している。

 この事件は2011年に和解が成立したが、三宅勝久著『自衛隊という密室』(68~79P)に詳しい。それでも、原資料で確認しようと思い、4月20日、「懲戒処分実施報告(CH-P1-AR)」の情報開示を請求した。3ヶ月後の7月20日に開示決定が出され、8月13日に開示文書が届いた。

 開示文書を開くと、なんと54ページ中、ほとんどが墨塗りで、事件の実態をうかがい知ることさえできなかった。特に、供述調書10ページ中、開示されている文字数は100字以下で、表題、日付、懲戒補佐官(2名)の階級と名前が記されているだけだ。まさにこの制度は「情報隠蔽制度」以外の何ものでもない。(写真は54枚の開示文書)

 墨塗りされた文書の中で、かろうじて生き残っている文書に、「審理辞退届」といものがある。小松基地セクハラ事件でも同じ文言の文書が綴じられていたが、「私の規律違反被疑事実について送達された被疑事実通知書記載の事実は相違ありませんので自衛隊法施行規則第85条第2項の規定により審理を辞退します」と自書されている。

 自衛隊法施行規則85条は下記のとおりだが、被疑者は密室で、懲戒補佐官に取り囲まれて、供述調書を作成され、その中身が不本意な内容であっても、「審理辞退届」を書かされてしまえば、そのまま処分が確定する。

 第74条には、「懲戒権者は、被審理者が申し出たときは、隊員のうちから弁護人を指名しなければならない」と書かれているが、弁護人は自衛隊外部の人物にしなければ、この制度も絵に描いた餅である。

 まさに、自衛隊員にとっては、この75条、85条の存在によって、自衛隊に抗う術を失っているのである。今回の事件は上官によるパワハラであり、許されないが、自衛隊員には無条件に適正な審理を受ける権利が必要である。
 かつて、旧日本軍では「軍法会議」が設置され、適正な裁判も行われないまま、多数の兵士が処刑されていったが、現在の自衛隊法もそれと同質である(2012年8月14日NHK特集)。

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自衛隊法施行規則
(弁護人の選任)
第七十四条  懲戒権者は、被審理者が申し出たときは、隊員のうちから弁護人を指名しなければならない。

(懲戒手続の特例)
第八十五条  懲戒権者は、規律違反の疑がある隊員に係る規律違反の事実を調査した結果、その事実が明白で争う余地がない場合において、当該規律違反の事実に対する懲戒処分が五日以内の停職、減給合算額が俸給月額の三分の一をこえない減給又は戒告(以下「軽処分」という。)に相当すると認めるときは、本節中第七十一条以下の審理に関する規定にかかわらず、懲戒補佐官の意見をきいて、懲戒処分を行うことができる。但し、当該懲戒処分の行われる前に規律違反の疑がある当該隊員が審理を願い出たときは、この限りでない。
2  規律違反の事実が軽処分をこえる場合においても、その事実が明白で争う余地がなく、且つ、規律違反の疑がある隊員が審理を辞退し、又は当該隊員の所在が不明のときは、前項本文の規定に準じて処分を行うことができる。
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