アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

領土問題や戦後補償問題が激突する情勢に際して

2012年08月18日 | 尹奉吉義士
反日ナショナリズムについて
 李明博大統領の行動(独島上陸)を「ナショナリズムに訴えて求心力」と解説する人たちがいるが、非常に軽薄な評論である。この間の戦後補償問題などに関する韓国世論の動向を見極めて発言すべきである。

(1)日本大使館前でおこなわれている日本軍慰安婦による水曜行動は1000回を超え、解決するまで決して引き下がらない決意でたたかわれている(「水曜デモ」の要求項目は①戦争犯罪の認定、②真相糾明、③公式謝罪、④法的賠償、⑤戦犯の処罰、⑥歴史教科書への記載、⑦追悼碑と史料館の建設)。

(2)2011年8月には、韓国憲法裁判所は「元日本軍慰安婦の損害賠償について、韓国政府が日本と交渉しないのは違憲」と決定し、2012年5月、韓国の大法院(最高裁)が植民地時代の三菱重工と新日本製鉄への徴用について、「損害賠償の請求権は消滅していない」という判断を示した。
 これを受けて、韓国人の元徴用労働者や遺族が相次いで、日本企業(不二越など)を相手に損害賠償を求めて集団訴訟が準備されている。

(3)2012年5月、さまざまな障害を乗りこえて、韓日の労働者市民の力(カンパ)で、ソウル市内に「戦争と女性の人権博物館」がオープンした。この博物館は日帝時代の日本軍慰安婦問題をテーマにした人権博物館である。
 この博物館と日本大使館前の少女像に「竹島は日本の領土」と記した杭を打ち込んだが、これに対して即座に日本大使館にトラックを突入させ抗議の意志を示した。

(4)李明博政権が進めていた「日韓軍事情報保護協定」は締結直前になって、与党セヌリ党などの反対で、署名が延期された。対中国、対北朝鮮情勢がどんなに逼迫したとしても、日本との間では軍事同盟を結ばないという韓国人民のスタンスが現れている。

(5)石原東京都知事が「尖閣3島購入」を打ち出し、人民を巻き込むためにカンパを募った。日本政府は「政府購入方針」を打ち出し、東京都と競い合うように排外主義を扇動している。河村名古屋市長は「南京大虐殺はなかった」と発言し、東京都知事も擁護した。
 日本の領土拡張・排外主義攻撃に対して、中国人民は激しく反応し、釣魚台に上陸し、中国の領有を訴えている。

 中国や韓国の為政者の思惑からではなく、人民自身が日本の領土拡大・侵略主義に反応し、抗議の声を上げているという現実を受け止めねばならない。この現実をすり替えて、「(為政者が)ナショナリズムに訴えて、求心力」を高めるなどという皮相な解説は、自らをブルジョア評論家の位置に落とし込める者だろう。

 かつて、日本が朝鮮民族を解体し、日本人化しようとしていたことにたいして、数十万の命を奪われながら、1945年、韓国・朝鮮人民は独立を手にしたのである。にもかかわらず、未だに日本が日露戦争のどさくさに紛れて韓国・朝鮮から奪った独島を日本領だと主張し、強制連行・軍隊慰安婦政策について謝罪も補償もしていないのだ。

 韓国人民にとって、独立は未完であり、植民地支配を謝罪・補償しない日本に対して、独島の領有を主張し、植民地支配の心からの謝罪を求めるのは当然である。韓国人民の「第2の独立運動」を支えるイデオロギーとして、ナショナリズムやコムニズムなどがあり、旧宗主国人民(日本)が旧植民地人民(韓国)の「ナショナリズム」を否定して、ことたれりとする姿勢は間違っている。

月進会の呼びかけに応えるために
 解放後、独裁政権に押さえ込まれていた日帝に対する責任追及の意志が金大中大統領、盧武鉉大統領の時代に開花し、李明博親日政権の成立でふたたび押さえ込まれたかに見えたが、李明博政権が「死に体」になる中で、ふたたび韓国社会の中で沈潜していた植民地支配への怒りが頭をもたげ、軍事独裁政権が結んだ「日韓条約」の否定にまで手が届きはじめた。

 それは、植民地支配下で奪われた領土(朝鮮半島と付属島)の回復、創氏改名、農地強奪、徴用・徴兵、強制連行、軍隊慰安婦などの民族差別に基づく不本意な支配を日帝に謝罪させ、補償させるための、決定的な再出発だ。

 このような事態について、日本人から「ナショナリズムに訴えて、求心力」と、李明博大統領を論難することによっては、韓国人民の中に長年にわたり沈潜してきた意志を見誤ることになるだろう。盧武鉉大統領から李明博大統領に変わり、歴史の歯車が逆回転していたかのような様相だったが、韓国人民のたたかいはついに親日派李明博大統領をして、独島の領有を明示させ、軍隊慰安婦問題の解決を迫り、天皇の責任と謝罪を追及させるまでに至ったのだ。

 李明博政権は確かに親日政権であり、このまま過去の歴史にけじめをつけることができるかどうか分からないが、韓国社会は親日政権にまで、領土問題(独島)、慰安婦問題、韓日軍事情報提供協定の署名中止など、日帝との対決を選択させる力を持ち始めたといえるのである。

 李明博政権を転換させた韓国人民のたたかいは、李明博大統領が登場後の労働問題での強圧的な態度、済州島カンジョン海軍基地建設の強行を転換させる力さえ内包している。

 韓国月進会からは、日本(日帝)にたいする抑えがたい怒りを抑え、東北アジア平和連帯行動(韓、日、中、蒙)が提案されているが、曖昧な文言の中に含まれる厳しい中身を見抜く力を必要としている。北東アジアの平和を阻害しているさまざまな要因(独島問題、軍隊慰安婦問題、強制連行強制労働問題、最高責任者天皇の謝罪など)とのたたかいを、日本の側からこそ提案しなければならない。

 月進会が掲げる「東北アジア共同体」は鳩山元首相(民主党)による北東アジア共同体構想とは似て非なるものである。鳩山のそれはかつての大東亜共栄圏構想の今日版である。資本主義国家が呼びかける「(経済)共同体」とは食うものと食われるものが混在する国家集団であり、共同体の中に弱肉強食の世界が展開されることを忘れてはならない。

 すなわち、月進会の希望(「東北アジア共同体」)は資本主義の打倒によって、はじめて満たされるのだ。

 さいごに、現代においては、尹奉吉の顕彰とは日帝とのたたかいの継承と継続を意味する。韓国人民は日帝の再侵略とたたかうために、尹奉吉を通して、日本人民に連帯を呼びかけているのである。この呼びかけに対して、1930年代、尹奉吉が生きた時代の日本人民の敗北をくり返さず、韓国人民とともに日帝を打倒することを共同の課題にしなければならない。
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