「膨大な貿易収支累積黒字分をドルでアメリカに預けてきた」というこの問題はよく誤解されるように、金持ちの日本が利子の高いアメリカに「自由意思による投資を続けてきた」ということとは全く意味合いが異なる。先回に見た通り円高にならぬように、日銀を大元にした銀行などが輸出企業の在米ドル代金を引き受けて代金を円で立て替えたり、またさらに歴史的に円売りドル買いを重ねるということを繰り返してきたのだが、それでもなお円高圧力がかかり続けるという、そういう状況があり続けたのであった。つまり、「アメリカに置いておかざるを得ない資本」なのである。そしてさて、こういうことの結末を作者はこう表現する。
「金融への負担は1980年代から加速度的に増大し、1990年代半ばから最後の貸し手である日銀の能力の限界を試すような事態になっている。円の切り上げを避け輸出を拡大して黒字を蓄積した結果、厄介な歪みを抱え込んだ。この10年間の歪みは慢性的なデフレとなって日本経済を蝕んできた」(P73)
なお作者は「純債権大国は、物価が上昇しにくい構造である」として、英米の過去を例にとって、以下の3点を指摘している。過剰な設備投資が既に存在すること。長期的な円高傾向から輸入品の価格がどんどん下がってきたこと。資本輸出で流動性の高いベースマネーを失っているので、銀行貸出金を積極的にのばせなくなっていること、この三つである。
こういう純債権大国日本の結末のさらに大詰めはこうである。
「日銀はデフレに対して決して手を拱いて見ていたわけではない。日銀の総資産は1994年3月末の約50兆円から2005年3月末の約150兆円へと3倍に急増しており、名目GDP比で10%から30%に達している。(中略)アメリカのFRBの6%、ヨーロッパ中央銀行の12%に比べてはるかに高い」(P132)
「日銀が紙幣をどんどん刷り、銀行預金が増えているのに、地価も株価も物価も低落が長期化しており、力強い経済成長軌道への復帰はなかった。かって経験したことのない状況である」(P134)
以上を要約してまとめると、こんなことになるのであろう。
輸出企業が儲けた金は総てアメリカにあり、その企業周辺には日銀などが立て替えた金が回っていても、それ以外では設備投資は進まず、雇用は増えず、安い輸入品で国産品は圧迫され、こうして健康な投資が全く進まないので、円が銀行などにじゃぶじゃぶしているだけの、そんなデフレ状況がもう15年も続いてきたということだと。
他方アメリカはと言えば、国を挙げての借金繁栄、いわゆるバブル好景気という状況が続いてきた。
(その③に続く)
(皆さんへ。こういう連載の間も別の投稿を入れて下さって一向に構いませんので、よろしく。また、連日連載とは限りません)
「金融への負担は1980年代から加速度的に増大し、1990年代半ばから最後の貸し手である日銀の能力の限界を試すような事態になっている。円の切り上げを避け輸出を拡大して黒字を蓄積した結果、厄介な歪みを抱え込んだ。この10年間の歪みは慢性的なデフレとなって日本経済を蝕んできた」(P73)
なお作者は「純債権大国は、物価が上昇しにくい構造である」として、英米の過去を例にとって、以下の3点を指摘している。過剰な設備投資が既に存在すること。長期的な円高傾向から輸入品の価格がどんどん下がってきたこと。資本輸出で流動性の高いベースマネーを失っているので、銀行貸出金を積極的にのばせなくなっていること、この三つである。
こういう純債権大国日本の結末のさらに大詰めはこうである。
「日銀はデフレに対して決して手を拱いて見ていたわけではない。日銀の総資産は1994年3月末の約50兆円から2005年3月末の約150兆円へと3倍に急増しており、名目GDP比で10%から30%に達している。(中略)アメリカのFRBの6%、ヨーロッパ中央銀行の12%に比べてはるかに高い」(P132)
「日銀が紙幣をどんどん刷り、銀行預金が増えているのに、地価も株価も物価も低落が長期化しており、力強い経済成長軌道への復帰はなかった。かって経験したことのない状況である」(P134)
以上を要約してまとめると、こんなことになるのであろう。
輸出企業が儲けた金は総てアメリカにあり、その企業周辺には日銀などが立て替えた金が回っていても、それ以外では設備投資は進まず、雇用は増えず、安い輸入品で国産品は圧迫され、こうして健康な投資が全く進まないので、円が銀行などにじゃぶじゃぶしているだけの、そんなデフレ状況がもう15年も続いてきたということだと。
他方アメリカはと言えば、国を挙げての借金繁栄、いわゆるバブル好景気という状況が続いてきた。
(その③に続く)
(皆さんへ。こういう連載の間も別の投稿を入れて下さって一向に構いませんので、よろしく。また、連日連載とは限りません)