■負犬の唄 / 川谷拓三 (キャニオン)
昭和40年代以降の映画やテレビドラマの中で強い印象を残した俳優のひとりが、川谷拓三でした。
良く知られている様に、川谷拓三は東映の大部屋組からジワジワと伸びていき、まだまだスタアシステムが活きていたプログラムピクチャーでは、しぶとくも個性的な脇役を演じ、それは笑いも涙も、裏切りも絶望も、そして卑小な弱虫も、ベタベタに表現しながら、思わず共感せずにはいられないハードボイルドな男の世界を見せつけていた事を忘れていない皆様も大勢いらっしゃるはずです。
そして川谷拓三は、その演技同様、なかなか味わい深いレコードも幾枚か出しており、本日掲載したのは昭和51(1976)年に発売されたシングル盤なんですが、このA面収録曲こそが同時期にNET(現・テレビ朝日) 系列で放送されていた時代劇「必殺からくり人」の主題歌として人気も高い「負犬の唄」でして、その味わい深い歌の世界は、川谷拓三ならではっ!
とにかく一度聴いたら、もう一度、ど~しても聴きたくなる様な不思議な魅力をサイケおやじは感じております。
それは作詞:荒木一郎&作曲:平尾昌晃、そして編曲:竜崎孝路という、今では夢の強力スタッフから提供された哀切の歌謡曲で、実は曲タイトルの「唄」は「ブルース」と読ませているとおり、強いビートを伴ったミディアムテンポの曲調を誠実に節回す、まさに川谷拓三の芝居と演技を知っているほどに泣けてくる仕上がりなんですねぇ~~♪
湿っぽいフレーズを弾くギターやマンドリン、せつない音色のトランペットも効果抜群だと思います。
ちなみにこのシングル盤に収録されているのは当然ながら、テレビ放映で使われたバージョンとは異なり、そちらはショートバージョンの別テイクですし、劇伴用のインストバージョンも残されているんですが、個人的にはレコード化されたスタジオレコーディングバージョンをまずは聴いていただきというございます。
決して上手いとは言い難い川谷拓三の歌唱があればこそ、この楽曲も活きていると書けば贔屓の引き倒しになるかもしれませんが、それがあってこその成功作だとサイケおやじは思います。
ということで、ご存知のとおり、川谷拓三は平成7(1995)年末、肺癌を患い、その脂の乗り切った時期であった54歳にして鬼籍に入ってしまったのですが、その死の数日前まで、体調不良を隠してテレビの収録に臨んでいたという気迫にも、頭が下がる思いです。
そして死後、故人のメモリアル番組等々で俳優仲間や知人・友人から語られる人柄や仕事に対する諸々、そして紆余曲折のあれやこれやと等々は、本当に人間味溢れる、また人間であればこその生き様として、今もサイケおやじは忘れておりません。
もちろん、齢重ねた今でも、サイケおやじは迷い道ばかり……。
そして時折に口ずさみたくなるのが、この「負犬の唄」というわけです。