OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

シカゴ&ガルシア組の裏名作

2012-09-19 15:21:49 | Movie

Tell Me c/w Prelude / Chicago (Columbia / CBSソニー)

それなりに社会で成功を掴み、お金が入ってくると、それで映画を作ってしまう奇特な人は今も後を絶ちませんが、その映画の良し悪しに関しては、概してマイナスが多い現実も、また……。

そこには何か周囲の僻み、あるいは本人の勘違いがあるのかもしれません。

しかし名作が無いか? と問われれば、それは否!

例えばシカゴのプロデューサーとして、一躍業界の大立者になったジェームス・ウィリアム・ガルシオが自ら制作、監督、音楽を担当した1973年公開の「グライド・イン・ブルー / Electra Glide In Blue (United Artists)」は、田舎の白バイ警官を主役に、倦怠した日常の中に抑えきれない心の葛藤を描いた裏名作としての好評があり、個人的にも好きな1本です。

しかも皆様がご推察のとおり、シカゴ本隊からテリー・キャス、ピーター・セテラ、リー・ロクネイン、ウォルター・パラゼイダーが俳優として出演し、劇伴音楽にも関わっているのですから、楽しみは倍増!?

物語はロバート・ブレイクとビリー・ブッシュが演じる2人の白バイ警官が、それぞれ自分の生き方に疑問を持ちつつも、自己完結型の信念で職務を遂行する日々の中、ロバート・ブレークは熱血であり、ビリー・ブッシュは刹那的……。

そして案の定、ビリー・ブッシュは弱い者イジメはするし、警官を辞めて以降は、どうやら悪いクスリにも浸る、ぐうたら生活であり、一方のロバート・ブレイクは殺人課の刑事を目指し、麻薬売人の変死事件へ積極的に参加するという展開です。

ちなみに題名にある「エレクトラ・グライド」とは、アメリカの白バイに採用されているハーレーの大型バイクであり、これをゴキゲンに乗り回すビリー・ブッシュには思わず共感してしまうサイケおやじではありますが、このあたりは既にアメリカン・ニューシネマの大名作「イージー・ライダー」を意識したであろう事がラストシーン共々、些かの減点対象とされています。

しかし、これはあくまでも、裏名作!

一度でも鑑賞すれば、前述「イージー・ライダー」を取るか、こちらを偏愛するかは、十人十色の感性でしょう。

さて、そこで本日掲載のシングル盤は、そのサウンドトラック扱いとして1974年1月、我国での封切に合わせて発売されたものですが、実はアメリカでは既に出ていたサントラLPがユナイテッド・アーティストから、そしてこれと同じカップリングのシングル盤は米国コロムビアから、ジェームス・ウィリアム・ガルシオ名義だったものが、日本では、なんとっ!

シカゴのニューシングル!?!

もちろんそれは当時のシカゴの破格な人気があればこそ、A面収録の「Tell Me」は映画のラストシーンで流れた哀切の名曲で、歌っているのがテリー・キャス♪♪~♪

しかも7分41秒の長尺でありながら、テリー・キャスのソウルフルな歌声とバックの女性コーラス、そしてドラマチックに盛り上がっていく展開は決して飽きることのない感動的な仕上がりなんですよっ!

ただし演奏はシカゴではなく、天才アレンジャーとして歴史に名を刻すジミー・ハスケルの編曲とスタジオセッションミュージシャンによる「お仕事」でありながら、これまた別次元の良さがあるんですから、曲を書いたジェームス・ウィリアム・ガルシオは充分に納得していたのではないでしょうか。

ですから、B面のインスト曲「Prelude」がジャズ寄りの演奏になっていても、これが後追いで聴けば、1970年代中頃のシカゴが傾倒していたソウルジャズ系の仕上がりなのは興味深いところだと思います。

う~ん、中盤からのトロンボーンのアドリブソロはジェームス・パンコウみたいに聞こえないこともありませんよ。

しかし、これがシカゴ名義だからと言っても、後々のベスト盤に収録されるなぁ~んてことはなく、前述したサントラアルバムのL中では、一番にシカゴっぽい仕上がりなんですから、罪な話です。

また、当然ながら、実際の映画フィルムに使われた音源とレコード化された歌と演奏は別物!?

そこでビデオ時代になって、輸入盤が日本で発売された時、映画本篇よりもシカゴファンは「音」ばっかりに集中する為に、ソフトを買っていたという真相もありましたですねぇ~~♪

ちなみに映画本篇ではシカゴの弟バンド扱いだったマデュラというロックジャズ系のグループも登場し、そのライプ会場の警備にあたるのが主役の白バイ警官という、些か強引な演出は賛否両論でしょうが、そこでは事件解決の糸口を掴む物語展開もあるんで、まあ、いいか……。

ちなみに前述のサントラアルバムにも、マデュラの演奏は入れられているものの、フェードアウトがちょいと勿体無いですねぇ。

で、肝心の映画「グライド・イン・ブルー」、これが5年ほど前になりましょうか、我国で「コレクターズエディション」としてDVD化され、件のサントラアルバムがCDとしてオマケ封入されたのですから、たまりません♪♪~♪

サイケおやじは迷う事なく、ゲ~~~~ット!!

つまり、この「Tell Me」も初CD化となりましたんで、要注意ですよ。

しかもリマスターが映像&音源の両方で、なかなか秀逸♪♪~♪ 特に映像の綺麗さは以前のビデオ版、あるいは海外版DVDよりも、かなり良いと思います。

ということで、これは警察官なんていう、一般社会の嫌われ者を主役にした風刺劇であり、また、ひとりの人間としての悩みや欲望に苛まれる姿の喜劇性を逆説的に用いながら、上手くアメリカ社会の混迷を描いた傑作だと思います。

そしてもろちん、それはアメリカばかりなく、権力者が存在する世界の全ての国、あるいは社会にも共通する事象でしょう。

ご存じのとおり、シカゴと言えば、公式デビュー当時からの積極的な政治的姿勢の開陳、特に合衆国大統領選挙におけるマクガヴァン候補への資金援助を目的としたコンサートライプ等々は有名ですが、結局はニクソンに敗れたあたりから、それも後退……。

むしろファンやリスナーの内面に政治意識を浸透させようと方向転換を図ったようなところが、この映画制作にも反映しているように感じるのですが、いかがなものでしょう。

当然ながら、「シカゴ≒ジェームス・ウィリアム・ガルシオ」という美しき関係が、当時は未だ破局していなかった証でもあり、ジェームス・ウィリアム・ガルシオの映像作家としての才能も、認められるべきと思います。

どうか皆様には、機会があれば、ご覧いただきたい映画であり、聴いていただきたい名曲であります。

コメント
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