■Michelle / Bud Shank (World Pacific)
西海岸派のジャズプレイヤーとしては特に有名なバド・シャンクは、また同時にハリウッドポップスのセッションにも欠かせない優れた人材でしたから、所謂イージーリスニング物でもヒット盤を多数出しいてます。
特に本日ご紹介のアルバムは1967年頃に世に出た、まさにそうした中の代表的な1枚でしょう。
A-1 Michelle
A-2 Petite Fleur / 可愛い花
A-3 Girl
A-4 As Tears Go By / 涙あふれて
A-5 You Didn't Have To Be So Nice / うれしいあの娘
B-1 Love Theme, Umbrellas Of Cherbourg / シェルブールの雨傘
B-2 Sound Of Silence
B-3 Ture! Turn! Turn!
B-4 Yesterday
B-5 Blue On Blue
収録された上記演目は、リアルタイムでのポップスヒットであり、また永遠のスタンダード曲ばかりという構成ですから、ボブ・フローレンスによるアレンジも当時流行のボサノバ~ボサロックを基調にしたライトタッチのグルーヴが良い感じ♪♪~♪
しかも演奏にはバド・シャンク(as,fl) と同格に参加するチェット・ベイカー(tp,flh) のメロディアスなプレイが随所に聴かれるという、なかなか最初っからの狙いが鮮やかにキマっているんですねぇ~♪
ちなみにアルバムセッションに参加したメンツでジャケットに明確な記載があるのは前述の3人だけですが、もちろん脇を固めたのは当時のハリウッドではトップのスタジオ系ミュージシャンである事は、あらためて言うまでも無いと思います。
で、とにかく爽やかにして心地良い演奏は、A面ド頭に置かれたビートルズのリアルタイムでの代表曲「Michelle」から全開で、お洒落でアンニュイな原曲メロディがソフト&ジャジーなアレンジで彩られる時、バド・シャンクのアルトサックスはクールな色っぽさを表出させますし、オリジナルに忠実な裏メロをジェントルに吹奏してくれるチェット・ベイカーは流石の上手さですよ。
あぁ、もう、ここだけで辛抱たまらん状態なんですが、その意味でボビー・ヴィントンが1963年に歌った大ヒット「Blue On Blue」におけるストレートなジャズっぽさでは、バート・バカラック十八番の節回しを巧みなモダンジャズに解釈したチェット・ベイカーのアドリブが最高♪♪~♪
そしてもうひとつ、特筆すべきは全体のアレンジから濃厚に感じられる我国歌謡ポップスへの影響の大きさで、特に女性コーラスの使い方やバンドアンサンブルの中のリズムアレンジ等々は同時代以降の昭和歌謡曲や歌謡ムードミュージック、おまけにテレビ&映画サントラ音源に親しむほど、溜息が出てくるでしょう。
中でもビートルズの「Girl」やバーズの「Ture! Turn! Turn!」は、あの「Play Girl」の元ネタがミエミエですし、同じく「夜明けのスキャット」になっている「Sound Of Silence」、いずみたく~中村雅俊の「ふれあい」系「シェルブールの雨傘」には、おもわずニヤリですよねぇ~~♪
さらにボサロックアレンジの上手さという点では、シドニー・ベシェというよりもザ・ピーナッツの「可愛い花」やストーンズの「涙あふれて」が秀逸で、もちろんアドリブパートの出来過ぎも憎めません。
ということで、美女ジャケとしての価値観も含めて、如何にも和みの演奏集なんですが、こういうレコードが昭和の我国では普通の喫茶店あたりの定番BGMになっていましたですね。
なにしろサイケおやじにしても、学生時代の友人のアパートの近くにあった喫茶店にモーニングサービスを目当てに行くと、ほとんど毎回のようにこれが流れていて、実は告白すると、そこですっかり気に入ってしまい、店のマスターにレコードを教えてもらってゲットしたのが、掲載の1枚というわけです。
で、その所為でしょうか、今でもこのアルバムを聴くと珈琲とトースト、ゆで卵なんかが欲しくなってしまうというパブロフの犬なんですよ!? 我ながら失笑してしまいますが。
結局、それほど刷り込まれ易い作りになっている事の証なんでしょうねぇ。
モロジャズじゃ~無いことは全ての外観において一目瞭然ではありますが、虚心坦懐に楽しめるアルバムに違いはありません。