■The Brussels Affair '73 / The Rolling Stones (Rolling Stones Archive)
すっかりデジタル時代の今日、音楽の売買も急速にネットが主流になりつつありますが、もちろんそれは「音源」中心主義であって、まあ、聴ければそれで良し! みたいな風潮はサイケおやじの様な者にとっては些かどころか、かなり寂しいなぁ……。
しかし「音」という見えない対象を、例えばCDのような見える「物体」に変えない流通手法は、ブートという違法音源業者にとっては僥倖であり、しかもデジタル化したそれらの音源が瞬時に換金出来る商売は、さらなる市場の活性化に繋がったようです。
なにしろブート屋に足を運ばなくとも、ネットで検索すれば海外の業者がどっさり紹介されますし、お目当てのミュージシャンが残した珍しい音源が手当たりしだいにゲット出来る環境なんて、一昔前には相当に難しい事でしたからねぇ。
ちなみにここまでの経緯で書いておきたいのが、ブート業者の流通手法のそれまでの苦労のひとつで、入手した貴重音源からCDをプレスしても、それをジャケット付きのケースに入れて商品化すれば、その過程で触法という事から、CD本体とジャケット&プックレットは別々に運搬し、販売場所で直前にケース収納するという遣り口が一般的だったようです。
したがって、それらの行為を伴わないネットによるDL販売は渡りに船!
業界の活性化も充分に納得出来るわけですが、もちろんミュージシャン側のエージェンドやレコード会社も黙っている事は出来ず、長年の被害者だったストーンズがついに自らそういう手段によっての秘蔵音源蔵出し事業のスタートは大歓迎♪♪~♪
本日ご紹介は昨年晩秋に出た、まさに公式ブートと称されるのも当然が必然の人気作として、ファンには嬉しい1973年秋の欧州巡業ライプからの放送用音源であり、実はブートの定番でもあったんですが、驚いたことには完全なる初出と思われるトラックが入っていたんですから、心底感涙でした。
01 Opening ~ Brown Sugar (1st show)
02 Gimme Shelter (2nd show)
03 Happy (2nd show)
04 Tumbling Dice (2nd show)
05 Starfucker (2nd show)
06 Dancing With Mr.D. (2nd show) ※
07 Doo Doo Doo Doo Doo (2nd show) ※
08 Angie (2nd show) ※
09 You Can't Always Get What You Want (2nd show) ※
10 Midnight Rambler (1st show)
11 Honky Tonk Women (2nd show) ※
12 All Down The Line (2nd show)
13 Rip This Joint (2nd show)
14 Jumping Jack Flash (2nd show) ※
15 Street Fighting Man (1st show)
結論から言うと既に述べたとおり、基本的にはラジオ放送用に録られたものですから音質は秀逸の極みなんですが、今回は新たにボブ・クリアマウンテンがリミックスを施したらしく、それゆえにストーンズ十八番のパート差し替え技も随所で使われているのは決定的です。
実は不様な言い訳になりますが、本当はもっと早くに書くべき音源でありながら、それらを聴き比べ検証するのに手間取り、今日に至ってしまいました。
で、肝心の音源データなんですが、基本的には1973年10月17日にブリュッセルで行われた2回のステージから抜粋構成してあり、その中の幾つかはアナログLP時代から、例えば「ベッドスプリング・シンフォニー」とか「ナスティ・ミュージック」等々の歴史的名盤となり、CD時代にも「ヨーロッパ'73」や「ロスト・ブリュッセル」等々に受け継がれた有名なものです。
ところが今回、ついに公にされた音源は、そこには入っていなかった「2nd Show」からのトラックが大部分を占めているんですから、たまりません♪♪~♪
もちろんそれにしても、中途半端な音質で流通していたトラックが有るにはあったんですが、ここまでの高音質で、しかも完奏している初出の曲が揃っているとなれば、これは大事件!!
一応、※印がそれに該当するはずですが、逆説的に言わせていただければ、全体に音が綺麗に纏まり過ぎた感も強いリマスター&リミックスにより、手持ちのブート音源の幾つかとはあまりにも印象が異なってしまい、確信が持てないんですよねぇ……。
しかし「All Down The Line」のミック・テイラーのギターは既発音源を聴けば一発! 何故か途中で音が出なくなっていますから、これは差し替えが明らかです。
また「Midnight Rambler」終了後のミック・ジャガーのMCも、おそらくは転用だと思われますし、「Tumbling Dice」や「Honky Tonk Women」等々でキマリすぎるミック・テイラーのオカズのフレーズも、オーバーダビングの疑惑が濃厚!?
ということは、既に本人はストーンズを離れているわけですから、リアルタイムでは表沙汰にはならなかったそういう手直しがあったとすれば、ストーンズは本気でライプ盤を企画していたのかもしれません。
その意味で冒頭の「Brown Sugar」は実に意味深で、ホーンセクションがミックスされたチャンネルの相違が、これまで世に出たブツでは度々問題視されていたところを、今回は右チャンネルに相当大きな音量で入れられるという公認改定版になっています。
ちなみに気になるギターのミックスでは右にキース・リチャーズ、左にミック・テイラーという基本姿勢が遵守されていますから、ご安心下さい。
そしてもちろんキースのヘタウマプレイは言わずもがな、ミック・テイラーの何時も同じようなフレーズが積み重なっていく快感プレイは最高で、例えば「Brown Sugar」では前半がスライド、後半が単音弾きによるギターソロは既にして圧巻ですよ♪♪~♪
また前述したボブ・クリアマウンテンの新ミックスは、得意技である重低音強調主義が貫かれ、ドラムスの重量感やベースのタメとモタレが直截的になっていますから、ヘッドホンでも、あるいはR焼きでオーディオ再生しても、なかなかに強引なライプ音源の楽しみが満喫出来ると思います。
ただし演奏そのものは、この時期のストーンズのライプの中では特別に良いということは無いと思いますし、それだけ安定的に凄いステージが日常化していた、まさにひとつの全盛期の証が楽しめるわけです。
そしてそれゆえにというか、前年の北米巡業時に比べると、なにかスマートさが増したような演奏がサイケおやじにはイマイチ、ノリきれません。
当然ながら、ミック・テイラーはここを境にストーンズを辞めてしまうのですから、とんでない贅沢な戯言なのは自覚しているつもりなんですが……。
ということで、入手はストーンズの公式サイトで簡単&安価に可能なんですが、これをプレスCD化して売っているブート業者も存在するんですから、いやはやなんとも!?
実は同様の事態は他のミュージシャンにもあって、例えばビートルズ物なんかは貴重で珍しい音源が堂々とネット配信販売されていますので、ブート業者の中にはそれ等をプレス盤やR焼きにし、如何にものジャケットを付けて販売するというのが、今日の現状のようです。
う~ん、ブート業界も厳しく変化していますよねぇ。
まあ、それはファンにとっては、良くも悪くも歓迎すべき事なのかもしれませんし、ミュージシャン側が積極的に関わってくれる状況が続くのであれば、結果オーライでしょう。
なにしろストーンズにしても既に1975年のLA、そして1981年のハンプトンという既成ブート音源の定番をネット配信販売しているほどですから、今後の楽しみも尽きないのでした。