■恋するチャック / Ricke Lee Jones (Warner Bros. / ワーナー)
一度聴いただけで忘れられなくなる歌、楽曲、そして歌声は必ずやあるもので、サイケおやじにとっては本日ご紹介の「恋するチャック / Chuk E's In Love」を自作自演したリッキー・リー・ジョーンズも、そのひとりです。
しかし彼女の場合、一応はシンガーソングライターというジャンルに分類されながら、その本質はジャズっぽい節回しというにはキワモノすぎる歌い方ゆえに、意味不明の歌詞共々、聴きづらいのも確かでしょう。
実際、サイケおやじのヒアリング能力では、全く理解出来ない言語が使われている感じがして、とりあえずは英語なんでしょうが、果たして英語圏で日常生活を営む人達にしても、これが自然に受け入れられるのか?
そんな疑問を強くする次第です。
ところがリッキー・リー・ジョーンズの魅力は、まさにそこにあると思えるんですから、確信犯と言っては失礼だと思います。
なにしろ、この「恋するチャック / Chuk E's In Love」がデビュー曲にして、1979年の大ヒットになったのも、シンコペイトした歌い方が最初に出来てこその作曲技法があったに違いない!?
それほどの天才性が強く感じられるんですからねぇ~♪
ちなみに演奏パートに参加しているのはスティーヴ・ガッド(ds)、ウィリー・ウィークス(b)、ビクター・フェルドマン(p,per)、ニール・ラーセン(key)、フレッド・タケット(g) 等々の超一流メンバーで、彼女もまたギターやキーボードを巧みに弾きこなすセンスを持ち併せているのですから、侮れません。
実は後に知った事ではありますが、リッキー・リー・ジョーンズは子供時代から典型的な引き籠り少女だったとか、家出してからは悪いクスリや酒に溺れつつ、放浪と乱れた性愛の繰り返しという、なかなかマイナスのイメージをウリにしていたところがあって、それがある意味ではイヤミであった事は書いておきます。
またメジャーデビューのきっかけとして、既に飲んだくれのシンガーソングライターとして人気を確立していたトム・ウェイツの同棲相手だったとか、リトル・フィートで居場所を失っていたローウェル・ジョージのお気に入りだったとか、とにかく1970年代後期のハリウッド芸能界では、それなりに知られるまでの経緯云々が、失礼ながら一般的な美人とは言い難い彼女の佇まいと相まって、非常に強いインパクトを与えてくれたのは避けられない事情でしょう。
ですから、リアルタイムでのラジオ、あるいは既に人気があったプロモーション映像がメインのMTV等々で接するリッキー・リー・ジョーンズが滲ませる退廃のムードが、妙に親しみ易かったのは結果オーライでした。
う~ん、これは見事なイメージ戦略?
そんな穿った憶測も飛び交う中、しかし確かに「恋するチャック / Chuk E's In Love」は素敵な歌と演奏であり、リッキー・リー・ジョーンズはサイケおやじにとって、コンプリートな蒐集の対象になったのです。
そして個人的にはローラ・ニーロ、キャロル・キング、ジョニ・ミッチェル、カーリー・サイモン等々、1970年代前半に大ブレイクした女性シンガーソングライターの系譜に連なるひとり! という分類に賛同は致しますが、同時に、これはフィービ・スノウにも共通するんですが、生粋のジャズボーカリストとして評価されるべきかもしれないと思う気持もあります。
ところが、後に本人もその気(?)で作ったであろう、如何にもジャズ寄りの作品がイマイチつまらないのも不思議なほどで、結局は狙ってはダメっていうのが、リッキー・リー・ジョーンズの本質なのかもしれません。
もちろん、それゆえにデビューヒットの「恋するチャック / Chuk E's In Love」が最高峰と言っては、贔屓の引き倒しになるわけですが……。
ということで、局地的にしか人気が無いと思われがちなリッキー・リー・ジョーンズではありますが、虜になっては別れられない魅力が確かにあるんですねぇ~♪
機会があれば、まずはこの「恋するチャック / Chuk E's In Love」から、お楽しみ下さいませ。