OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

リヴォン・ヘルムが残してくれた…

2012-04-21 15:32:13 | Rock

Levon Helm (abc)

ザ・バンドのドラマーであり、同時にアメリカンロック屈指のボーカリストでもあったリヴォン・ヘルムの訃報に接しました。

まあ、既に中年者街道真っ只中のサイケおやじですから、年長者の物故は当たり前に受け取らねばならない年齢でありながら、しかしそれは失うものばっかりという哀しい現実を肯定することではありません。

全ての生命は、この世にあった証として、なにかしらの生き様を必ず残していて、例えばミュージシャンならばファンの心に何時までも消えない歌や演奏を響かせてくれます。

それはサイケおやじにとってのリヴォン・ヘルム場合、本日ご紹介のアルバムが特に強く、これは1978年に発表された自己名義2作目のLPなんですが、驚いたことにはジャケ写で故人が担当楽器たるドラムスのスティックを「×印」に構えているとおり、ここに収められた楽曲ではほとんどドラムスを敲かず、ボーカリストに専念したという結果は最高!

 A-1 Ain't No Way To Forget You
 A-2 Driving At Night
 A-3 Play Something Sweet
 A-4 Sweet Johanna
 A-5 I Came Here To Party
 B-1 Take Me To The River
 B-2 Standing On A Mountaintop
 B-3 Let's Do It In Slow Montion
 B-4 Audience For My Pain

という上記演目はR&B主体のカパー物なんですが、基本的に自作で曲を書かないリヴォン・ヘルムにとっては、それが正解という快演熱唱ばかりで、個人的にはレイ・チャールズとアル・グリーンという凄すぎる黒人歌手からの影響を殊更に強く感じさせられましたが、もちろんそこから派生しているリヴォン・ヘルム本人の個性にしても、かなり強引!?

なにしろ十八番のニューオリンズ系R&Bスタイルにどっぷり浸かった「Play Something Sweet」では、緩やかなグルーヴの中の粘っこいソウルフィーリングが最高ですし、アル・グリーンの代表作「Take Me To The River」における黒っぽさはブルーアイドソウルなんていう言葉が意味を成さないほどですよねぇ~♪

また同系の「Let's Do It In Slow Montion」やゴスペル風味がジワジワと効いてくる「Standing On A Mountaintop」も、たまりません♪♪~♪

ちなみにそうしたリヴォン・ヘルムをバックアップしているのが、ジミー・ジョンソン(g)、バリー・ベケット(key)、デヴィッド・フッド(b)、ロジャー・ホーキンス(ds) 等々を中核とする所謂マスル・ショールズ・リズムセクションであり、これが意想外にザ・バンドしていながら、実は唯一無二の屹立した世界を醸し出しているんですから、ニクイですよ、これはっ!

また同じ比重で参加しているのがスティーヴ・クロッパー(g)、ドナルド・ダック・ダン(b)、ウィリー・ホール(ds)、アレン・ルーヴィン(tp)、トム・マーロン(tb)、ルー・マリーニィ(as) 等々の面々による、なんとっ! これは当時のブルース・ブラザーズのバンドそのものですから、素敵なソウルグルーヴはお約束以上ですし、他にもスタジオセッションの世界ではお馴染みのスコット・エドワーズ(b) や暖簾分けしたザ・バンドに在籍するケイト兄弟の参加も有意義でしょう。

このあたりはプロデュースも担当したドナルド・ダック・ダンとリヴォン・ヘルムの意志の疎通があってこその人選としか思えませんし、それは所謂アメリカンロックの保守本流というよりも、サイケおやじは既にして伝統芸能に近いものを感じるほどです。

ご存じのとおり、リヴォン・ヘルムを一躍有名にしたザ・バンドというグループはカナダ人ばかりの中、唯一のアメリカ人がリヴォン・ヘルムだったこともあり、どちらかといえば客観的にアメリカンミュージックを再構築する手法が成功したと評されますが、そんな事はザ・バンドが登場してきた1960年代後半の我国洋楽ファンの大部分には、ほとんど分からなかったはずで、実際にサイケおやじは歴史的大傑作とされる「ビッグ・ピンク」にしても、ミョウチキリンな音楽にしか思えませんでした。

しかし、そこには明らかに自信たっぷりな強いピートが感じられた事も、また確かであって、リヴォン・ヘルムの強靭なドラミングが根底にあればこそっ! と気がついて以降は、たったひとりのアメリカ人が存在してこそのザ・バンドである真実に目が覚めました。

ですから、ロビー・ロバートソンとリヴォン・ヘルムの確執が決定的な解散の要因と報道された事にも、なんら不思議な感覚はなく、むしろリヴォン・ヘルムの本質的魅力がさらに楽しめると期待したところに登場したのが、このアルバムというわけです。

傑作である事は言うに及ばず、それを意識せずとも聴かされてしまう説得力も最高ですから、BGM的に流すことも故人は許してくれるにちがいありません。

機会があれば、ひとりでも多くの皆様に楽しんでいただきたい好盤です。

ということで、長い闘病の末に天国に召されたリヴォン・ヘルムは今頃、きっとリチャード・マニュエルやリック・ダンコに再会し、あの世でザ・バンドをやっているのでしょうか……。

衷心より、合掌。

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