■L.A. Friday (Live 1975) / The Rolling Stones (Rolling Stones Archive)
ストーンズ自ら蔵出しのアーカイヴ音源第三弾が、これまた強烈でしたっ!
もちろん公式サイトからのネット配信なので値段は安いし、DL状況所為か、極一部にデジタルノイズが微妙に感じられるものの、そんなの関係ねぇ~~~~!
はっきり言って、これぞっ! 悪魔のバンドの本領が堪能出来ますよっ!
01 Honky Tonk Women
02 All Down The Line
03 If You Can't Rock Me
04 Get Off Of My Cloud
05 Star Fucker
06 Gimme Shelter
07 Ain't Too Proud To Beg
08 You Gotta Move
09 You Can't Always Get What You Want
10 Happy
11 Tumblin' Dice
12 Band Intros
13 It's Only Rock N Roll
14 Heartbreaker
15 Fingerprint File
16 Angie
17 Wild Horses
18 That's Life
19 Outta Space
20 Brown Sugar
21 Midnight Rambler
22 Rip This Joint
23 Street Fighting Man
24 Jumping Jack Flash
25 Sympathy For The Devil
と、ノッケから暴走気味の興奮状態で書き始めてしまいましたが、ちょいと冷静に当時のストーンズや音源諸々について考察してみると、まず公式発表されている録音データが1975年7月13日ということは、既にブートでは特に有名なマイク・ミラードという偉人によって客席(?)からの隠し録りされた最高に秀逸なソースがあって、アナログLPでは「1975 Nervous Breakdown / L.A. Friday」という名盤を筆頭に、数多くの人気作が出回っていました。
そしてCD時代になっても、それを継承したブツは途切れることなく市場に流通し、タイトルも「L.A. Friday」という通称があったんですが、その7月13日というのは日曜日が本当のところでしたから、後々まで混乱の原因に!?
さらに当時のストーンズは7月9日~13日まで、連続5日間のLA公演をやっており、しかもリアルタイムの金曜日だった7月11日にはプロショットによるライプ映像が撮られているのですから、もしかしたら今回は、それという推察も出来ました。
しかし当然ながらブートとして出回っている7月11日のソースとこのアーカイヴ音源を聴き比べてみると、明らかに異なっていますし、やはりストーンズ側の発表どおり、1975年7月13日のライプをベースにしている事は確定的だと思います。
ちなみに前述したマイク・ミラードは件の5連続ライプを全て録音していたらしく、それぞれの音源がブートで出回っていますので、今回はそれを基準に比較検討したわけですが、それでも流石はストーンズというか、やはり公式アーカイヴで出すからには様々なパートでの手直しや曲間のカット編集は当然の如く行われています。
また、気になる音源の出所はサウンドボードなんで、例によってボブ・クリアマウンテンによるリミックス&リマスターの精彩は言わずもがな、ドカドカに重低音が効いたサウンド作りと右にキース・リチャーズ、左にロン・ウッドが定位するギターはお約束の安心印♪♪~♪
ですから、当時は巡業用の助っ人扱いだったロン・ウッドの緊張感溢れるプレイや今と違って寸止めではないチャーリー・ワッツのドラミング、さらには「後の先」的なビル・ワイマンのペースに歩調を合わせたキース・リチャーズのファジー&ロッキンな遣り口が、まさにこの時期ならではの尖がり状態で、一般的にはミック・テイラーが脱退して流麗な爽快感が失われた云々と言われていることなんて、全くの戯言だと痛感されるはずです。
というか、ミック・テイラー期とは全然異なるファンキーグルーヴ満載のストーンズロックが楽しめるんですねぇ~♪
それはビリー・プレストン(p,key,vo) にオリー・ブラウン(per,ds) という黒人タッグチームの参戦によるところも非常に大きく、また折しもロン・ウッドがファンキーロックの名盤ソロアルバム「ナウ・ルック」をリリースしたぱかりというタイミングもありましたから、ミック・ジャガーのテンションも異常なほどで、ほとんどテンパッたようなハッスルぶりは空前絶後!
こうして繰り広げられる悶絶のロックショウはワンステージが2時間超に拡大され、しかも野暮なほど当然の若さだったストーンズの面々は終りなき日常の中にも、自分達が楽しんでいるが如き良い雰囲気さえ滲ませている様に感じます。
それは初っ端からリズムとビートの至芸を披露する「Honky Tonk Women」、ハードさを増した「All Down The Line」、ファンキーロックの醍醐味という「If You Can't Rock Me」~「Get Off Of My Cloud」の新機軸メドレーにおけるツカミから圧巻であって、「Honky Tonk Women」は歌詞を追加してロン・ウッドにもソロパートを設けてありますし、「If You Can't Rock Me」~「Get Off Of My Cloud」のメドレー展開ではチャーリー・ワッツのファンキーなドラミングが完全に黒人コンビからの刺激によるものとだけは言えない、物凄いヤル気が最高ですねぇ~~♪
あぁ~、何度聴いても既に興奮度は絶頂で、後は一瀉千里に最後まで持っていかれてしまうんですが、前述した「ファンキー」というポイントでは、なんと言っても「Fingerprint File」が極みつきで、ビル・ワイマンがシンセサイザー、ロン・ウッドがベース、そしてミック・ジャガーがギターを担当することによって演じられたドロドロに熱いグルーヴには、ビリー・プレストンのピアノも重要な役割を果たしていますし、キース・リチャーズも大健闘!
そして驚くなかれ、助っ人参加のビリー・プレストンが主役となった「That's Life」と「Outta Space」のファンキーロック大会も、残されている7月11日の映像でご覧になれるとおり、ミック・ジャガーの宙乗りやビリー・プレストンのダンスに加え、実に楽しそうにギターを弾くキース・リチャーズが憎めませんし、ここだけドラムスがオリー・ブラウンに交代した事も結果オーライでしょう。
まさにその場の観客も、ここで音源を聴くファンも、完璧にノセられてしまう瞬間が提供され、そしていよいよ終盤十八番の展開には、思わず腰が浮いてしまうほどです。
それと同時に素晴らしいと思うのがミック・ジャガーの深淵な企み(?)というか、おそらくは意図的であろうアップテンポにおける原曲メロディの破壊的歌い回しと反比例するようなスロー曲での泣き落とし節で、特にこの日の「Wild Horses」は個人的に大好きです。
ということで、全てのロックファンには絶対に楽しめる音源! と、本日は言いきってしまいます。
特に「スティール・ホイールズ」以降にファンになられたお若い皆様にとっては、ロン・ウッドがすっかりキース・リチャーズの舎弟に満足している様な、極言すればストーンズに居られるだけで納得の姿勢に慣れているかもしれませんが、例えサポートであったにしろ、憧れのストーンズと一緒にやれる喜びを見事な緊張と緩和で表現していた1975年のツアーライプこそ、真骨頂だったと思われます。
なにしろ、そのファンキーなギタープレイがバンド全体をリードしている瞬間さえ感じられるんですからっ!
そして、もうひとつ特筆しておきたいのが、ビル&チャーリーが居てこそのストーンズであるという真実です。全く特有のノリというか、ビル・ワイマンが抜けて以降の妙にタイトすぎるリズムなんて、「現在のストーンズのつまらなさ」を証明する何物でもありませんよねぇ~~。
ご存じのとおり、この当時のストーンズはミック・テイラーの脱退によって新作も出せず、口の悪いファンからは、何の目的意識も無いとまで決めつけられた巡業が、この1975年のライプでした。しかしリアルタイムでの評判は決して低いものではありませんでしたし、実際にブート等々で聴けば、それまでとは別の味わいが出ている事にハッとさせられたものです。
また、これも良く知られているとおり、後に発売されるアナログ盤2枚組ライプアルバム「ラブ・ユー・ライブ」にも、この北米巡業の音源が用いられている事で、つまりは相当数のステージが正式に録音されているはずですから、ここに7月13日とする歌と演奏が蔵出しされても不思議ではありません。
と言う事は、ストーンズが当たり前に得意のライプ盤手直し作業が、ここでもあった懸念(?)は打ち消せず、どうやら前述した本当の金曜日、つまり7月11日の音源もパッチ用として使われた形跡が……!?
あえてタイトルに「金曜日」を使ったのは、マイク・ミラード音源の人気に敬意を表した上でのタネ明かしなのかもしれませんよ??
う~ん、深みから抜け出せません。
現実的には仕事に苦しめられていながら、さあ、もう1回、聴くぜっ!
そんな事を繰り返しているのが、サイケおやじの日常であります。