OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ザ・バンドの渋味の懐メロ

2012-04-04 13:47:54 | Rock

流れ者 c/w Get Up, Jake / The Band (Capitol / 東芝)

根っから OLD WAVE なサイケおやじを更なるオールディズ趣味へ邁進させた罪作りなレコードとしては、ローラ・ニーロの「ゴナ・テイク・ミラクル」と並んでザ・バンドが1973年に出した「ムーンドック・マチネー」というLPが決定的でした。

もちろん前者同様、それは洋楽懐メロのカパー集という企画アルバムだった事は言うまでもありませんが、それにしては収録されていたのが、我国の一般的なロックファンにとっては決して馴染みの演目ばかりではなく、それゆえに発売当初の評判はイマイチ……。

ただし、ご存じのとおり、当時のザ・バンドは集大成的な名作ライプ盤「ロック・オブ・エイジス」は出していたものの、それゆえに実質的には開店休業状態だった事から、「カフーツ」以来のスタジオレコーディング作という話題性は確かにあったと思います。

そして先行カット扱いでラジオからのオンエア率が日本でも高かったのが、ザ・バンド流儀のゴキゲンなR&R「流れ者 / Ain't Got A Home」でしたから、サイケおやじが思わずも掲載したシングル盤をゲットさせられたのも当然が必然!?!

もちろん背景には経済的な事情により、件のニューLPが買えなかったという真相もありながら、僅か3分ちょっとの歌と演奏に凝縮された、どこかしら下世話なノリと心根を揺さぶられるようなR&Rグルーヴの凄さは圧巻で、まさに45回転の世界を満喫させてくれたんですねぇ~~♪

ちなみにザ・バンドの面々はマルチプレイヤーの集団ということで、ここでのサックスパートはガース・ハドソンの多重録音による一人舞台ですし、すると転がりまくったピアノはリチャード・マニュエルでしょうか?

また何時もはドラムスが定位置のレヴォン・ヘルムが全面的にリードを歌った事から、ここでのドラムスはビリー・ムンディという人物に託された事が後にゲットしたアルバム「ムーンドッグ・マチネー」のジャケットクレジットで知れたのですが、それでもザ・バンドならではの骨太な推進力と暖か味のあるサウンドは失われていません。

そこでサイケおやじの目的意識となったオールディズ趣味に関しては、この「流れ者 / Ain't Got A Home」のオリジナルヒットが1956年に出たクラレンス・フロッグマン・ヘンリーという人気歌手のバージョンであったという事実が重大!

後追いで調べた結果ではありますが、ピアノを要としたブギウギスタイルを弾力的に運用したが如きバネの効いたノリは、クラレンス・フロッグマン・ヘンリーが根拠地としていたニューオリンズ伝来のR&Bスタイルでは根幹であり、実はレヴォン・ヘルムが途中でトーキングモジュレーターを使ったとされる変態声で歌うパートまでもが、クラレンス・フロッグマン・ヘンリーの物真似に敬意を表した稚気であった事も含め、流石はザ・バンドならではの芸の細かさには負けますよねぇ~~♪

いゃ~、オールディズの世界は深~いです。

もちろんサイケおやじがジャズの発祥地とばかり認識していたニューオリンズが、実はそこから発展枝分かれとしていった様々な黒人音楽のルーツにも関与していたという真相に突き当り、忽ち当地で制作されていたR&Bの諸作に心惹かれてしまった経緯も個人的な重要事となりました。

さて一方、B面に収録された「Get Up, Jake」はセカンドアルバム制作時のアウトテイクで、今日ではCD化されているものの、1980年代末頃まではこのシングル盤でしか聴くことが出来なかった幻の名演になっていて、このレコードの存在価値を高めた結果になりました。

ちなみに曲そのものは前述したライプ盤「ロック・オブ・エイジス」にも収録されていましたし、本来が職人気質集団のザ・バンドですから、演奏の骨格はそれほど違うということはなく、むしろ安定的名人芸が何故にこのテイクをボツにしたのか、それを物語ってしまう点に興味が……!?

ということで当然、ほどなくしてLP「ムーンドック・マチネー」をゲットしたサイケおやじではありますが、それでもこのシングルは極めてモノラルに近いミックスが意図的にラジオから流れてくる懐メロ趣味を狙っているようで、愛着は深まるばかりなのでした。

コメント
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