■The Circle Game c/w Woodstock / Joni Mitchell (Reprise / ワーナー)
ということで、本日はジョニ・ミッチェルです。
サイケおやじが、このシンガーソングライターの才女に気を惹かれたのは、やはりCSN&Yの「Woodstock」、そしてバフィー・セントメリーの「The Circle Game」という二大ヒット曲を書いたという存在感でした。
そこでいよいよ作者本人のバージョンを聴くべく、前述の2曲が収録のLP「レディズ・オブ・ザ・キャニオン」を狙ったものの、経済的な理由によってそれは断念……。しかし、救いの神はサイケおやじの前に、本日ご紹介の夢のようなカップリングシングルを登場させてくれました。
で、結論から言うと「The Circle Game」は、それなりのフォークっぽい仕上がりになっていて、原曲メロディもそれほどバフィー・セントメリーのバージョンと変わることが無かったのですが、もうひとつの「Woodstock」が???
というのも、CSN&Yのバージョンはテンションの高いエレクトリックギター中心のロックアレンジだったものが、ジョニ・ミッチェルは、これが作者の本音というやつなんでしょうか、如何にも煮え切らないモヤモヤ感がすっきりしません。
正直、レエピの弾き語りによる、なんともお経のようなメロディの連なりと浮遊しながら、どっかへ入ってしまいそうなファルセット気味の歌い回しは、今でこそ「ジャジー」の一言で片づけられるかもしれませんが、昭和47(1972)年当時、高校生だったサイケおやじには、到底納得出来る世界ではありませんでした。
それでも乏しい小遣いから買ったレコードは貴重品でしたから、両面とも意地になって聴いた日々が確かにあって、するとそういう苦行が快感に変わるという、丸っきりのM的覚醒!?
もちろん親しみ易いA面の「The Circle Game」を頼りにしていた事は言わずもがな、不思議な響きを滲ませるアコースティックギターに和気藹々のコーラスを従えたジョニ・ミッチェルの歌は、妙に人懐っこいフィーリングが素敵です。
ちなみにジョニ・ミッチェルのギター及び曲作りは、常識外の変則チューニングを使っている事が今日では判明済みながら、リアルタイムのサイケおやじには全くコードが取れず、そのあたりにも神秘的なものを感じていましたですねぇ。
つまり唯一無二と言うよりも、孤高の個性!?
それこそがジョニ・ミッチェルを「ジョニ・ミッチェル」にしている核心じゃないでしょうか?
ですから、作者本人バージョンの「Woodstock」がサイケおやじのような者に理解してもらえなくとも、それは一向に差し支えないわけでして……。
突っぱねられて、尚且つ魅せられる自分勝手な思惑に、なんとなく片思い的な胸キュンを感じてしまうわけです。
う~ん、今日は自虐的な告白になってしまいましたねぇ、お恥ずかしい。
しかし自分の中のジョニ・ミッチェルに対する想いは、決して素直ではありません。
同時期にブレイクした女性シンガーソングライターのキャロル・キングやローラ・ニーロには、ストレートに好きだっ! そう言えるサイケおやじも、ジョニ・ミッチェルには、何か憚られるものがあります。
そして、そんな折、ようやく知ったのは、ジョニ・ミッチェルがジュディ・コリンズの歌で大ヒットした「青春の光と影 / Both Sides Now」という、これまたサイケおやじが大好きなフォーク系ポップスの作者だったという真実で、本当にタイトルどおり、裏も表も、さらには過去も未来も全てを愛してこそ、理解出来る事象があるっ!
それこそが、ジョニ・ミッチェルに対するサイケおやじのとるべき態度です。
ご存じのとおり、ジョニ・ミッチェルはフォーク系のシンガーソングライターとしてスタートしながら、何時しかジャズやフュージョンの手法に自らの語法を重ね合わせることで世界を広げ、ついにはコンピューターの打ち込みや現代音楽のシュールな変奏までも薬籠中のものにした楽曲を発表し、今日に至っています。
ですから、その全てが聴き易いなんて事は絶対に無く、必然的に商業的な成功も僅かなんですが、根強いファンの多さでは誰にも負けないミュージシャンのひとりでしょう。
ただ、問題は、何時如何なる時に彼女のファンになるか?
あるいは、なれるか?
そんな運命(?)の瞬間と悪戯(?)が必要なのかもしれません。
そしてサイケおやじは、比較的に早い時期にジョニ・ミッチェルに出会えたという幸運を、本当に大切にしたいと思っているのでした。