■いとしのルネ / The Left Banke (Smash / 日本ビクター)
GS全盛期に流行った曲の中には、過剰な少女趣味を狙ったのでしょうか、そのひとつの典型として、クラシック調のアレンジを歌謡曲に応用したものが幾つも作られました。
例えばタイガースの「落葉の物語」や「光ある世界」、ランチャーズの「教えておくれ」あたりは代表格だと思いますが、そのお手本はもちろんビートルズの「Yesterday」や「Eleanor Rigby」、そしてストーンズの「As Tears Go By」等々の他にも挙げきれないほどです。
で、そんな中にも特にサイケおやじが好きなのが、本日ご紹介の「いとしのルネ / Walk Away Renee」という邦題もせつない大名曲♪♪~♪ ハープシコードやストリングスが魅惑のメロディを彩るサウンド作りは、今も新鮮に楽しめますよ♪♪~♪
演じているレフト・バンクはアメリカのグループで、この「いとしのルネ」が1966年の公式デビュー曲としてメガヒットしたという事になっていますが、しかしリアルタイムの昭和41~42年、我国でこれがヒットしていたという記憶がサイケおやじにはありません。
まあ、このあたりの状況は当時の洋楽が如何に凄いものばっかりだったか!? という真実に加え、サイケおやじが基本的に「いとしのルネ」のような軟弱(?)なものに関心が無かったという事でしょう。
なにしろビートルズの「Yesterday」だって、最初はちっとも良いとは思えず、「Eleanor Rigby」に至っては、なぁ~~んて不穏な曲だろうと……。
しかし流石はプロのソングライターやアレンジャーは感性が進んでいたわけで、当然ながらビートバンドとして世に出たGSの多くのグループが、きっちり売れていくためには所謂「格調の高さ」が求められた時、「いとしのルネ」のようなバロックロック(?)が絶好のお手本になったであろう事は想像に易いと思います。
ちなみにレフト・バンクのメンバーはスティーヴ・マーティン(vo)、リック・ブランド(g)、マイケル・ブラウン(key)、トム・フィン(b)、ジョージ・キャメロン(ds) という5人組が表立っていますが、実際のレコーディングにスタジオミュージシャンが使われている事は当時の常識として、言わずもがな、だからこその完成度が、この「いとしのルネ」を際立たせているはずです。
それは優美なストリングの完璧なアレンジと演奏に特に顕著であり、それをバックに歌うスティーヴ・マーティンの胸キュンのボーカルは、その声質がジャストミート♪♪~♪ おそらくはバンドメンバーによるコーラスも刹那の仕上がりですよ♪♪~♪
ただし、このあたりが裏目に出たのでしょうか? レフト・バンクは実際の巡業ステージではビート系のロックをメインに演じていたそうですから、失速は時間の問題……。一応は続くシングル曲「夢見るバレリーナ / Pretty Ballerina」をヒットチャート上位に送り込んだものの、「いとしのルネ」を含む多くの演目を作っていた中心人物のマイケル・ブラウンが1967年春頃には辞めてしまったことから、実質的にレフト・バンクは解散したと言われています。
さて、そこでサイケおやじが「いとしのルネ」の魅力に目覚めたのは、既にレフト・バンクが消滅してしまった昭和47(1972)年頃の話で、ラジオから偶然流れてきた、その素敵なメロディと儚いムードの素晴らしさには、完全KOされましたですねぇ~♪
実は告白すると、その時に聞いていた番組は文化放送の「セイ!ヤング」という深夜放送の金曜日だったんですよ。
知っている人は知っているはずですが、その頃の金曜日担当DJはレモンちゃんの愛称で抜群の人気があった落合恵子♪♪~♪ 本来はラジオ局のアナウンサーですから、その優しいお姉様系の話術にだけシビれていれば良いはずが、当時は深夜放送が社会現象とまで言われた空前のブームでしたから、彼女本人も雑誌のグラビアやテレビにも登場するほどで、もちろんラジオでの「声」と同じイメージのルックスが最高に良かったというわけです。
そしてサイケおやじは、「いとしのルネ」を聴くとパブロフの犬の如き反応で落合恵子を想うのです。
当然ながら速攻で掲載したシングル盤を中古屋でゲットしたのは、なにか憧れの対象を代用した気分なんで、幾分倒錯しているのですが、それはサイケおやじの変態の証明として、ご容赦願いところです。
しかし、そんな事を抜きにして、とにかく「いとしのルネ」は素晴らしい! 歌詞の内容と優しいメロディが、憧れの女性のイメージと重なるナチュナルな感性も、まさに唯一無二の奇蹟というところかもしれません。