OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

酩酊飛行の強烈ライブ

2010-03-16 17:05:04 | Rock

Bless Its Pointed Little Head / Jefferson Airplane (RCA)

サイケデリックロックの全盛期を作った幾多のバンドの中でも、特に最高峰としてファンからも業界からも、常に熱い支持を得たのがジェファーソン・エアプレインだったことは間違いありません。

その先進的な理想を追求する姿勢は高い演奏能力に裏付けられ、それでいてチャートを賑わす大ヒットも放ちながら、決してシャリコマなんて批判を浴びなかったのですから、まさに稀有の存在だったと思います。

それは当然ながら、時には凝り過ぎ? と思えるようなスタジオ録音のアルバムも作っていた賛否両論が今日まで継続してはいるんですが、しかしライプの現場で披露される凄すぎる歌と演奏は、文句のつけようがありません。

本日ご紹介のアルバムは、そうしたジェファーソン・エアプレインの特化した姿を生々しく楽しめる人気盤! 録音は1968年10~11月、ニューヨークとサンフランシスコにあった東西の両フィルモア劇場でのライプセッションですから、まさに当時の流行最先端の現場に渦巻くロック黄金期の熱気が、しっかりと記録されています。

 A-1 Clergy
 A-2 3/5's Of A Mile In 10 Seconds / 恋して行こう
 A-3 Somebody To Love / あなただけを
 A-4 Fat Angel
 A-5 Rock Me Baby
 B-1 The Other Side Of This Life / 人生の裏側
 B-2 It's No Secret
 B-3 Plastic Fantastic Lover
 B-4 Turn Out The Lights
 B-5 Bear Melt

しかし流石はジェファーソン・エアプレインというか、まずA面冒頭の「Clergy」が意味不明のナレーションや観客の笑い声、そしてブーイング!?! 実は後で知ったことですが、なんとライプショウがスタートする前に特撮映画「キングコング」の一場面が映し出され、「おぉ、飛行機だっ!」なんていう台詞が確認出来るところからして、そういうシーンだったのでしょう。う~ん、なんて洒落がキツイ演出でしょう!?!

ところがそんなざわめきの中、スベンサー・ドライデンがヴィヴィッドなビートを叩き始めると、その場は完全にロック天国♪♪~♪ ソリッドなエレキギターが唸り、ベースが奔放に暴れる「恋して行こう」や大ヒット曲「あなただけを」は、何れもスタジオバージョンを遥かに凌駕するド迫力で、マーティ・バリンとグレース・スリックが自己主張満点の掛け合いを演じれば、ヨーマ・コウコネンのギターはエグ味を強め、ジャック・キャサディのペースが激しくウネリます。

そしてバンドではもうひとりの立役者だったボール・カントナーがサイケデリックに耽溺する「Fat Angel」は、なんと同時期の英国からフォークロックでブレイクしたドノバンのカパーなんですが、演奏パートの浮遊感溢れるアドリブ合戦も含めて、これぞっ、流行最先端のライプパフォーマンスを披露しています。

さらにA面ラストが、これまたリアルタイムでトレンドだったブルースロック大会! 演目の「Rock Me Baby」はご存じ、B.B.キングの十八番ですが、ここでは主役のヨーマ・コウコネンとジャック・キャサディが、直後にサイドプロジェクトとして始めるホット・ツナの予行演習というには、あまりにも見事な存在感を示すのです。

というように、メンバー各々が強烈に自己主張しながら、ガッチリ纏まっていたのがジェファーソン・エフプレインの全盛期でした。

その勢いはB面に入ると尚更に加速度を増し、これまたフレッド・ニールのカパー曲ながら完全なジェファーソンズのスタイルに変換された「人生の裏側」の痛快さは、筆舌に尽くし難いです。あぁ、この2本のエレキギターとベースが三位一体となり、ドラムスが鋭く煽るバンドコンビネーション、そして激しく熱いボーカルとコーラスの絡み! 本当に陶酔させられますよっ!

それはデビューアルバムに入っていた「It's No Secret」の激烈エレキバージョン、またセカンドアルバムからの「Plastic Fantastic Lover」という、おそらくは当時のライプでは定番だったと思われる手慣れたというにはあまりに強靭で安定した演奏にも感じられますが、マーティ・バリンとグレース・スリックの時には息苦しいほどに熱いボーカルの圧倒的な威力にも完全降伏です。

そして短い即興演奏のような「Turn Out The Lights」を経て始まるのが、いよいよのクライマックスとなる「Bear Melt」で、これはもう、ドロドロにブルージーでハードなサイケデリックの極致といって過言ではないでしょう。おそらくは毎回、その場の雰囲気で作り上げられていったであろう曲展開は、このライプレコーディングに率直なものが入っているかは知る由もありませんが、とにかくここに記録された10分を超える長尺トラックは、時代を超えてリスナーを悶絶させること必至だと思います。

ということで、何度聴いても熱くさせられる名盤ライプアルバム!

演奏展開は、同じサンフランシスコを根城としていたグレイトフル・デッドの遣り口に共通するものを感じますが、ジェファーソン・エアプレインの方が緊張と緩和のバランスにイケイケの姿勢があるというか、グレイトフル・デッドがユルユルな快楽を追及していくとすれば、かなり前向きな勢いがロックの本質に近いように思います。

これが世に出たのは1969年、我国でも「フィルモアのジェファーソン・エアプレイン」という邦題で同時期に発売され、各方面から絶賛されていたと記憶しています。

と書いたのも、当然ながらリアルタイムのサイケおやじは小遣いが乏しくて聴くことが叶わず、しばらく後に友人から借りて楽しむのがやっとでしたが、それでも熱くさせられましたですねぇ~♪ それは次に出る大名盤「ヴォランティアーズ」を迷わず買う原動力となったのは言わずもがな、1970年代に入って国内盤よりも安価で入手出来る輸入盤を今日まで聴きまくってきたという個人史になっています。

どうやら近年のリマスターCDにはボーナストラックも入っているようですし、これ以前の5月のライプ音源を纏めた正規盤CDもあるようですから、食指が動きます。

しかし最も望まれるのは、当時のライプ映像の発掘でしょうねぇ。

このアルバムを聴いているだけでも濃厚に感じられるステージでのライトショウや様々な視覚的演出、またメンバー各人の個性溢れるパフォーマンスは、リアルタイムの音楽雑誌を飾ったグラビア写真でも知っていましたが、やりは映像の強みには及ばないものがあるはずです。

まあ、贅沢を言えば限り無い話ではありますが、凄すぎるライプアルバムには付き物の罪な欲望ということで、今日は自嘲して聴いております。

最後になりましたが、ジャケ写で酔い潰れているのはジャック・キャサディで、「空っぽ頭にご加護を」という原盤アルバムタイトルにジャストミート!

それもまたジェファーソンズらしくて、最高! 

コメント (2)
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