OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ホット・ツナのホノボノ熱いブル~ス

2010-02-25 16:44:43 | Rock

First Pull Up Then Pull Down / Hot Tuna (RCA)

最近、すっかりブルースロック街道を歩んでいるサイケおやじは、ついに今日、これを引っ張り出してしまいました。

主役のホット・ツナというグループは、ジェファーソン・アエプレインのヨーマ・コウコネン(g,vo) とジャック・キャサディ(b) が1969年頃から始めたサイドプロジェクトで、幼馴染みのふたりが大好きなブルースに専心するという、半ば趣味性の強いバンドでした。

しかしイギリスあたりのブルースロックバンドと異なっていたのは、本場アメリカの黒人伝承歌やフォークブルースを積極的に演じ、また同様に黒人大衆芸能を再発見させる温故知新が、そんなものを知らない白人層はもちろん、遠く離れた東洋の島国に生まれ育ったサイケおやじをもシビレさせたのです。

それはデビュー盤となったLP「ホット・ツナ」では生ギターとベースがメインのシンプルなライプセッションとなって登場し、続く本日ご紹介のアルバムではエレキギターも積極的に使ったバンド形態の演奏となって結実しています。

それゆえに1971年に発売された時の邦題は「エレクトリック・ホット・ツナ」になっていたほどですが、しかしアコースティックなフォークブルースの味わいも大切に残された名演が実に楽しいかぎり♪♪~♪

 A-1 John's Other
 A-2 Candy Man
 A-3 Been So Long
 A-4 Want You To Know
 B-1 Keep Your Lamps Trimmed And Burning / ランプの火を燃やせ
 B-2 Never Happen No More / それは再び起こらない
 B-3 Come Back Baby

録音はデビュー盤と同じくライプセッションになっていますが、今回は特にパパ・ジョン・クリーチ(vln)、ウィル・スカーレット(hmc)、サミー・ピアッツァ(ds) を加えた本格的なバンド編成となっている所為で、尚更にブルースロックの楽しさが横溢しています。

しかし繰り返しますが、それは例えばフリートウッド・マックやポール・バターフィールド等々が演じる路線とは明らかに異なった世界です。なんというか、もっと広くアメリカの大衆芸能を取り入れているような、ちょっとライ・クーダーあたりが追及している部分との共通点も感じられるのです。

それはホット・ツナが元々から持っていた音楽性でもありますが、ここにパパ・ジョン・クリーチという黒人ヴァイオリン奏者が加わったことで、一風変わった味わいが違和感無く楽しめるんですから、まさに目からウロコ!

ちなみにパパ・ジョン・クリーチはこの時、既に初老でしたが、そのキャリアはジョー・ターナーや多くの有名ブルースマンと共演を重ねてきた知る人ぞ知る存在だったようで、どういう経緯かは知る由もありませんが、サンフランシスコに流れてきたところをジェファーソンズのメンバーに発見され、グループに客演していたそうです。

ただし1970年頃のジェファーソンズは前年に大傑作アルバム「ボランティアーズ」を出した余波から燃え尽きたのか、マーティ・ベイリン(vo) とスペンサー・トライデント(ds) が脱退!?! さらにグレイス・スリック(vo) の出産等々が重なって休業状態でしたから、臨時編成でのライプ巡業の必要性もあり、おそらくはパパ・ジョン・クリーチもその流れで仲間に加わったものと推測しております。

もちろんヨーマ・コウコネンとジャック・キャサディが、あえてホット・ツナと名乗って活動し始めたのも、ジェファーソンズの停滞ゆえに許しが出たんじゃないでしょうか。

まあ、それはそれとして、実際、このアルバムで聴かれる演奏はホノボノと楽しく、それでいて哀愁とブルースだけの情熱がたっぷり♪♪~♪

最初っからバカ正直なテーマリフが楽しいR&Rインストの「John's Other」は、パパ・ジョン・クリーチの飄々としたヴァイオリンとブルースロック保守本流のエレキギター&ハーモニカが、素直に自分達の楽しみという感じなんですが、演奏が進むにつれ、パパ・ジョン・クリーチの実にアグレッシヴなアドリブソロに圧倒されますよ!! はっきり言えば、他の白人小僧が顔色無しの名演だと思います。

しかしヨーマ・コウコネンも負けてはいません! 十八番のメカニカルなフィンガービッキングに移行した「Candy Man」では、素っトボケたボーカルも良い感じ♪♪~♪ それに同調するウィル・スカーレットのハーモニカにも和みますし、ジャック・キャサディも快演ながら、またしてもパパ・ジョン・クリーチのヴァインオリンが、良い味出しまくり! 本当に脱帽してしまうですよ。♪♪~♪

そのあたりは如何にもジェファーソンズというロックなフォーク「Been So Long」、懐古調の「Want You To Know」でも素敵なコラポレーションになっていて、特に後者はイノセントなジャズ者にも楽しい世界じゃないでしょうか。

そして、いよいよのクライマックスがB面ド頭に据えられた「ランプの火を燃やせ」です。あぁ、とにかく最初っからヘヴィなビートで演じられるシンミリ&ホノボノした歌と演奏は、黒人フォークブルースの巨匠で説教師でもあるブラインド・ゲイリー・デイビスの有名オリジナル曲なんですが、ヨーマ・コウコネンの凄いフィンガービッキングのギタースタイルは、実はこの偉人の影響が非常に大きく、そのキモがほとんどコピーされているほどです。

しかも前作のデビューアルバムではアコースティックでやっていたスタイルを、このセッションではエレキで演じるんですから、たまりません。中盤からのグイグイと盛り上げていくバンドのノリは豪快にしてドロドロとした蠢きが最高! ジャック・キャサディのベースワークも本領発揮のジコチュウなエグ味が全開です。

あぁ、ついついボリュームを上げてしまいますねぇ~~♪

そうした良い雰囲気は、続くホノボノブルースの「それは再び起こらない」の和みへと見事に繋がり、ちなみのこの曲もまた黒人ラグタイムブルースの大御所だったブラインド・ブレイクのオリジナルですから、またまた十八番のフィンガービッキングが冴えまくりのヨーマ・コウコネンとユーモラスで哀愁さえ滲むパパ・ジョン・クリーチのヴァインオリンが素敵です。

こうして迎える大団円が、なんとライトニン・ホプキンスの看板曲だった「Come Back Baby」ですらか、そのオリジナルのエグイ表現を如何にして白人ブルースロックに変換するかが、ひとつのキーポイントとして楽しめるわけですが、そこに起用されたパパ・ジョン・クリーチの存在感の強さが大正解! 引っ張られるように力演を聞かせてくれるバンドの勢いが感度良好です。

ということで、既に述べたようにシカゴブルースやモダンブルースに影響された世界ではありませんから、決してイメージ的に王道ではありませんが、しかし、これもまた立派なブルースロック!

パパ・ジョン・クリーチのヴァイオリンやウィル・スカーレットのパーモニカは明らかに電気増幅されていますし、ジャック・キャサディのペースはもちろんエレキですから、素朴な黒人フォークブルースをやったところで、結果はロックのグルーヴが横溢し、サミー・ピアッツァの重いビートのドラミングがそれを煽るという構図が快感なのです。

そしてヨーマ・コウコネンがジェファーソンズ本隊ではあまり聞かせてくれなかった、懐古趣味のギターワークが実に新鮮♪♪~♪ それは前述のとおり、ブラインド・ゲイリー・デイビスやブラインド・ブレイクといった黒人ブルースマンからの伝承コピーを基本にしているわけですが、最初に聴いた時のシビレ具合はヤミツキになるほど凄いです。

もちろん遡って、その偉人達のオリジナル演奏を聴き、尚更に仰天させられたのは言うまでもないんですが、そのきっかけはホット・ツナでした。

結論から言えば、このバンドはその後、だんだんとハードな路線を追求し、ついにはクリームやジミヘンみたいな、所謂ハードロックでブルースなトリオ演奏までも聞かせる道を歩み、それはそれで私は大好きなんですが、やっぱりデビュー盤から、このセカンドアルバムあたりの素朴で和みのフォークブルースな世界が忘れられません。

機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。

コメント
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