OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マンフレッド・マンのEPの魅力

2010-03-07 14:09:50 | Rock

No Living Without Loving / Manfred Mann (HMV)

往年の音楽ファンにとって懐かしいアイテムのひとつが、4曲入りのコンパクト(EP)盤でしょう。

これは説明不要というか、7インチシングルと同じサイズのアナログレコード盤に33回転の仕様で片面2曲ずつ、計4曲入りが標準でしたから、特に我国では、ちゃんとしたLPが買えないファンに向けてのサービス品のような意味合いもあり、公式アルバムから人気曲を抜粋したり、あるいはヒット曲だけをベスト盤のように集めた魅力的な商品も作られていました。

しかしイギリスやフランス等々では、このEP盤がひとつの確固たる作品として独自の存在感があったようで、これでしか聴けないという楽曲の存在がウリになっていましたから、遠く離れた日本のファンにとっては、リアルタイムでの入手の難しさもあり、まさに幻への憧れだけが強くなっていたのです。

例えば本日ご紹介のEPは、私の大好きなマンフレッド・マンが1965年秋に発売したイギリス盤ですが、同じ仕様のコンパクト盤がリアルタイムの日本で発売されていたかは知る由もありません。

なにしろ私自身、マンフレッド・マンに興味を抱いたのは1970年代中頃以降の事でしたし、その頃には完全に忘れられた存在というか、少なくとも我国では全盛期のレコードが極めて入手困難なグループのひとつだったと思います。

しかも悪い事(?)に、マンフレッド・マンも1960年代の慣習によって、地元イギリスとアメリカをはじめとする各国でレコードの発売仕様が微妙に異なっていたのですから、純粋に音楽を聴こうと欲すれば、必然的にEPにも手を出さざるをえない状況だったのです。

で、そんな劣悪な環境の中で私が特に欲しかったのが、本日ご紹介です。

 A-1 No Living Without Loving
 A-2 Let's Go Get Stoned
 B-1 Tried Of Trying, Bored With Lying, Scared Of Dying
 B-2 I Put A Spell On You

まず「No Living Without Loving」が如何にもフィル・スペクターからの影響をイギリス流に解釈したような、ちょいと大袈裟なメロディ展開も心地良いR&Bホップス♪♪~♪ 特に女性コーラスやストリングを導入しているあたりは賛否両論かもしれませんが、ポール・ジョーンズの不惑の歌いっぷりが私は好きです。また、ミディアムテンポでドカドカ暴れるドラムスが、フィル・スペクターのセッションでは常連だったハル・ブレイン(ds) への対抗意識というか、憎めませんよ。

ちなみに、この曲は最初、プロモーションオンリーのシングル盤に収録された、言わば試行錯誤段階のデモレコーディングだったらしいのですが、それがこうして正式に世に出たのは幸いだったと思います。

まあ、率直に言えば、ポール・ジョーンズのソロ作品という趣ですからねぇ。

しかしマンフレッド・マンというバンドの存在感は流石に強く、アメリカの黒人コーラスグループのドリフターズもやっていた「Let's Go Get Stoned」は、全くアル・クーパーが演じているかのような泣き節と如何にもイギリス流儀のセンスが見事に融合した名唱名演♪♪~♪ 粘っこい中にも、せつないグルーヴが存分に満ち溢れたプロデュースの妙も素晴らしいかぎりで、告白すればサイケおやじは、これが聴きたくて、入手に必死だったのです。

そしてB面は、いきなり痛快な白人R&B天国が現出するオリジナル曲「Tried Of Trying, Bored With Lying, Scared Of Dying」が、もう最高! エグ味の強いボーカル、爆発的なビートをブッ叩くドラムス、転がりまくったのピアノに狂熱のロックギター! これぞっ、ロック全盛期の証でしょうねぇ~~♪ こういう熱気は唯一無二だと思います。

極言すれば同時期のストーンズよりも、熱さでは勝っているのでは!?

という暴言は自分でも額に汗が滲むほどではありますが、続く「I Put A Spell On You」はご存じ、スクリーミング・ジェイ・ホーキンズの代表曲ということで、そのオリジナルの味わいを大切にしつつも、サックスのアドリブソロやオルガン伴奏のツボの押さえ方共々、そのクールで熱い雰囲気がたまりません。

というように、何れのトラックも完成度が高く、しかもワイルドなカッコ良さに満ちています。

今日では上手くCDに纏められているはずですが、実は4曲入りというサイズが聴くにはジャストミートというか、80分近い長丁場のCD聴きでは些か狂熱が過ぎて、集中力が持続出来ないという贅沢も言いたくなるのです。

それほどマンフレッド・マンの歌と演奏は密度が濃い、と言えばそれまで!?!

もちろんLP片面の25分前後でもOKなんでしょうが、こういうシングル盤サイズの徳用品はコレクターズアイテムとしての魅力も捨て難いと思います。

ちょっと危険な罠ではありますが……。

コメント
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