OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スライ・ストーンのライフはロックだぜっ!

2010-03-14 15:04:08 | Soul

Life / Sly & The Family Stones (Epic)

スライ・ストーンの歌と演奏は全てが最高ですから、今日では人気も評価も高く認知されていると思いますが、しかしこのアルバムは、ちょいと影の薄い存在かもしれません。

なにしろ1968年の大ヒット盤「スライと踊ろう」と翌年の超絶ファンク名盤「スタンド」にな挟まれている上に、発売時期がリアルタイムで切迫していたという事情があったからでしょうか。

否、それにしてもここで楽しめる中身の濃さは圧巻というか、ファンクやソウルという以前に極めてロック味も前面に出ていますから、サイケおやじの好みにはジャストミートの1枚です。

 A-1 Dynamite!
 A-2 Chicken
 A-3 Plastic Jim
 A-4 Fun
 A-5 Into My Own Thing
 A-6 Harmony
 B-1 Life
 B-2 Love City
 B-3 I'm An Animal
 B-4 M'lady
 B-5 Jane Is A Groupee

当時のメンバーはスライ・ストーン(vo,key,g,hmc,etc)、フレディ・ストーン(g,vo)、ロージー・ストーン(vo,key)、ラリー・グラハム(b,vo)、グッグ・エリコ(ds)、シンシア・ロビンソン(tp)、ジェリー・マルティーニ(sax) の7人組で、ジャケットからも一目瞭然、黒人と白人の混成グループでした。

しかもスライ・ストーン本人が相当に白人ロック&ポップスに精通しており、このあたりはラジオのDJやプロデューサーとして音楽業界の裏方をやってきた蓄積でしょうし、当時のの流行だったサイケデリックロックを素早く黒人音楽に馴染ませた手腕は、スライ&ファミノーストーンとして正式デビューした1967年から既に顕著でした。

ただし当時のアメリカは黒人公民権運動やベトナム戦争の泥沼という現実的な社会問題がピークに達していた混乱期だったようですから、必然的に流行音楽にも政治的な姿勢が強く求められていた背景を無視出来ないのが、今日までの歴史的な考察になっています。

とはいえ、リアルタイムの我国ではスライ&ファミリーストーンが、どれほど流行っていたのかは記憶にありません。告白すればサイケおやじは、例の映画「ウッドストック」でスライ一味の強烈なパフォーマンスにKOされたのが初シビレだったのです。

そして「スライと踊ろう」というLPを買いましたが、それは他のスライの作品群から比べても、明らかに保守的なR&B色が強くなっていた聴き易さが良かったと思います。だって最初っから「暴動」なんていうアルバムに接してしたら、???の連続だったと思いますよ、当時は。

で、次に買ったのが、この「ライフ」なんですが、聴いた瞬間、うわぁぁぁ~!?! ロックっぽいなぁ~~♪ と思いましたですね。

まずエレギギターが矢鱈前面に出ていますし、そのフレーズやリズムにロック色が濃厚! 加えてホーンの使い方やポップな楽曲構造が、如何にも流行の白人ブラスロックなんですねぇ~。

実は私がこれを初めて聴いたのは1972年でしたから、既にシカゴやBS&Tによってブラスロックの洗礼を受けた後という事情も当然あるでしょう。しかし、この「ライフ」が制作録音されたのは1968年5月という歴史的な事実があって、当時は前述したブラスロックの王者達も未だブレイクする前でしたから、如何にこのアルバムが時代を先駆けていたかが納得出来るんじゃないでしょうか。

個人的には「Plastic Jim」が、なんといってもブラスロックのど真ん中で大好き♪♪~♪ 澄み切った音色でギンギンに弾きまくられるエレキギター、バタバタとロックするドラムスに蠢くベース、そしてカッコ良いブラス! 地味に土台を固めるオルガンも良い感じですし、何よりもロックスタイルのボーカルが黒人音楽としては新しい雰囲気を作り出しているように思います。

しかし流石はスライというか、瞬間的にロック全開のギターイントロからハネたビートを全開させるベースが軸の「Dynamite!」、ファンキー街道驀進の「Chicken」はジェームス・ブラウンのロック的解釈とでも申しましょうか、エレキギターがロックしているのとは逆に重いビートのドラムスが怖いほどですよ。もちろんソウルフルなコール&レスポンスを意識したボーカルリレーにも熱くさせられます。

というように冒頭からの3曲に集約されるファンキーロックな世界は、時には正統派R&Bやモータウンサウンドにも接近しつつ、アルバムの最後まで様々な展開を聞かせてくれますが、それは決して無秩序に収められてはいないと感じます。

ちょっとポール・マッカートニーがやってしまいそうな「Fun」はキャッチーだし、ブラックシネマのサントラの如き「Into My Own Thing」の無機質な熱気、モータウン調の「Harmony」はギターが楽しくて、本当にたまりません。

それはB面にも引き継がれ、グッと前向きの気合いが充実したアルバムタイトル曲「Life」のウキウキした高揚感は、最高です。

ところが続く「Love City」で雰囲気が一変! まさに元祖ニューソウルな、ハードで黒いフィーリングは圧巻ですし、イケイケのドラムスとジャズっぽいフルートの隠し味、さらにエグ味の効いたギターリフ! 全くフェードアウトして終るのが勿体ないほどです。

またファンクなお経節の「I'm An Animal」は好き嫌いがはっきりするかもしれませんが、続く「M'lady」での威勢の良さから、オーラスの「Jane Is A Groupee」で敢然と披露されるサイケデリックロックとソウルミュージックの幸せな結末は、まさに1960年代末の雰囲気がモロ! ほとんどCSN&Yのエレクトリックセットようでもあり、とにかく痛烈にロックぽいエレギギターが重要な鍵を握っているあたりが意味深でしょう。

ということで、こんなに魅力的なアルバムが何故に忘れられたのかと言えば、次に出た「スタンド」が凄すぎましたよっ! この「ライフ」が大好きなサイケおやじにしても、その事実は些かの否定も出来ません。

ご存じのとおりスライ&ファミリーストーンはソウルの中の汎用派であり、デビューアルバムはポップス、セカンドの「スライと踊ろう」はR&B、そして4作目の「スタンド」がファンク! と一言で決めつけるならば、この「ライフ」はロックでしょう。

しかしスライ&ファミリーストーンに過渡期なんて言葉は適用出来るはずもなく、何時だって先端の全盛期だったのでしょう。ですから「暴動」なんていう極北の名盤も作られてしまうんでしょうが、少なくともこの「ライフ」を出していた頃は、煮詰まる前の充実期だったと思います。

そして最後にもうひとつ告白しておくと、これを買ったのは輸入盤のバーゲンセールで、一緒に入手したのが度々タイトル名を出している名盤「スタンド」でしたから、続けて聴けたという贅沢の中に戸惑いも確かにありました。

極言すれば時代性からして、「スタンド」に夢中になった後では、この「ライフ」が物足りないのです……。ところが最近は、「ライフ」の良さがシミジミ分かるといえば不遜かもしれませんねぇ。

とにかく今の気分は「ライフ」であって、そのロックっぽいソウルミュージック、最高!

コメント
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