OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

サテンの夜の刹那の境地

2010-03-23 14:57:01 | Rock

サテンの夜 / The Moody Blues (Deram / キングレコード)

プログレといえば絶対外せないのがムーディー・ブルースです。

だいたいその分野はアルバム指向で鑑賞するのが王道とされていますが、しかしムーディー・ブルースの場合は立派にシングルヒットも放つ親しみ易さがあって、本日のご紹介は誰もが一度は耳にしたことがあるはずと、まさに断言の代表曲♪♪~♪

最初に発売されたのは1967年末頃らしいのですが、本国イギリスはもちろんのこと、世界各国で度々のリバイバルヒットとなって、我国でも歌っていたGSが幾つかありましたし、その中ではビーバーズの日本語バージョンがレコーディングされているほどの人気でした。

で、掲載した私有のシングル盤は昭和47(1972)年にアメリカを中心にリバイバルヒットした時の再発物ですが、実はここまでの間、私はムーディー・ブルースに対して、全くのノーマークでした。もちろん前述したとおり、曲そのものはGS時代を通して知ってはいたのですが、それがプログレにジャンル分けされている事なんて露知らず、当時はビージーズみたいなポップスグループのオリジナルだと思っていたのですから、いやはやなんとも……。

しかしムーディー・ブルースは知るほどに紆余曲折があったバンドで、最初の公式デビューとなった1964年頃には流行のR&B系ロックバンドとして、翌年には「Go Now」というヒットを放っていたそうですが、一番驚いたのはポール・マッカートニーの子分としてウイングスに加入していたデニー・レイン(g,vo,key,b) が、そのオリジナルメンバーだったことです。

そしてそれなりに売れっ子だったムーディー・ブルースが転換期を迎えたのは1966年、デニー・レインが脱退したことにより、メンバーの出入りが激しくなり、こうして1967年当時にはジャスティン・ヘイワード(vo,g,key)、マイク・ピンダー(vo,key,g)、ジョン・ロッジ(b,vo,key,per)、グラハム・エッジ(ds,per,key)、レイ・トーマス(vo,fl,sax) という黄金期の顔ぶれが揃うのです。

今日の歴史では、ムーディー・ブルースといえばメロトロンというキーボードでストリングオーケストラの音が作り出せる楽器が代名詞になっていますが、しかし1967年の新生時には決してそうではありませんでした。

というのも再デビューのきっかけとなったのが、ステレオレコード普及のためのデモレコーディングとして、オーケストラと共演するロック風味のクラシック演奏が出来るバンドという条件に、ムーディー・ブルースの目指す新しい音楽性が符合していたからだそうで、つまりこの「サテンの夜 / Nights In White Satin」にはメロトロンが使われていません。

もちろん企画性からシングルヒット狙いが先にあったわけでもないでしょう。

そうして作られた最初のアルバム「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」は一説によればドボルザークの「新世界より」をモチーフにしたレコード会社からの押し付けだったと言われているそうですが、些か大仰な構えの中にあって、収録されたメロディ優先主義の歌と演奏は、意外なほどにどっしりとしたロックのリズムに支えられ、輝いています。

中でも、この「サテンの夜」は流石に出色で、緩やかなテンポで泣きを含んだメロディを刹那の境地で歌いあげるボーカル、地味ながら強い存在感を示すアコースティックギター、フルートとキーボートとストリングオーケストラで作りだされる華麗なる彩り、そして覚え易いキメのメロディがテンコ盛り♪♪~♪

本当に唯一無二の完成度で、例えば「メリー・ジェーン / つのだ★ひろ」等々、後々まで強い影響を受けた幾多のヒット曲が続いているほどです。

ちなみにウリとなったメロトロンが導入されるのは1968年以降のことですし、さらにムーディー・ブルースは決してスローで感傷的な演奏ばかりではなく、ロックだけの力強さと初期のR&Bバンドとしての本質も失うことがありませんでした。

しかし、この「サテンの夜」のイメージは、やはり絶大!

それゆえに続々と作られる新作アルバムは、当然ながらトータル性とクラシック趣味が横溢していないとファンは満足せず、現実的なライプの現場では相当なハードロックもやっていたそうですが、そんなこんなから煮詰まりも早かったのでしょう、ついに1973年頃からは活動休止……。

ところが既に述べたように、なんらかの因果があったのでしょうか、ちょっと勉強不足で真相が分からないのですが、1972年になって「サテンの夜」が突如のリバイバルヒット! 我国でもラジオの深夜放送で流れまくり、その深淵なメロディと刹那のボーカル、神聖にして情念が封じ込められたようなオーケストラアレンジの妙が、夜の底に沈んでいくような青春ど真ん中の気分を高揚させてくれたのです。

そしてシングル盤をゲットしたサイケおやじは、遅まきながらムーディー・ブルースの作品群を後追いしたのは言わずもがな、実はキング・クリムゾンに繋がる因縁とか、まさに英国プログレ界の光と陰を知ることになるのですが、それは別の機会に譲りたいと思います。

ちなみに前述したビーバーズの日本語バージョンも、リバイバルヒットに便乗する状況でシングル発売され、これまた味わい深いのでした。

コメント
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