OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

バーナード・パーディのハミングバード

2010-02-28 15:30:06 | Rock Jazz

We Can't Go On Meeting Like This / Hummingbird (A&M)

ハミングバードはボビー・テンチ(g,vo)、マックス・ミドルトン(key)、そしてクライブ・チャップマン(b,vo,hmc) という、1970年代のジェフ・ペックを支えた縁の下の力持ち達がやっていたスタジオプロジェクトのバンドで、もちろんその音楽性はキャリアに裏打ちされたクロスオーバー&フュージョンのファンキーロックでした。

その最初のアルバムは1975年に発売され、玄人筋を中心に評判を呼びますが、その気持良すぎる仕上がりとは裏腹に参加メンバー間には確執があったそうで、結果的にメインで曲作りをやっていたコンラド・イシドアという素晴らしいドラマー兼ソングライターが去り、ここに仕切り直しのレコーディングとなって完成されたのが、本日ご紹介の妖しいジャケ写も眩しいアルバムでした。

メンバーは前述の3人に加えて、バーニー・ホランド(g)、ロバート・アーワイ(g)、バーナード・パーディ(ds)、そして女性コーラス隊としてマデリン・ベル、ジョアンヌ・ウィリアムス、リサ・ストライクが顔を揃えていますが、注目はなんといってもファンキードラマーの大御所たるバーナード・パーディでしょう。

そのキャリアはアメリカ黒人音楽のビートを司ったといって過言ではなく、スタジオセッションからモダンジャズの現場、あるいは歌伴や音楽監督の仕事等々、マイルス・デイビスやクインシー・ジョーンズ、アレサ・フランクリン、スティーリー・ダンさえも頭が上がらないという、なんでもござれのスーパードラマーですから、ハミングバードに参加したのも、おそらくはジェフ・ペックとの仕事の繋がりだったと推測されます。

そして1976年夏頃に発売されたこのアルバムには、思わず腰が浮く、本当に凄いビートと享楽のソフト&メロウがぎっしり♪♪~♪ もちろん当時はフュージョンやAORが全盛期でしたから、忽ちの大ヒットになりました。

 A-1 Fire And Brimstone
 A-2 Gypsy Skys
 A-3 Trouble Maker
 A-4 Scorpio
 A-5 We Can't Go On Meeting Like This
 B-1 The City Mouse
 B-2 A Friend Forever
 B-3 Heaven Knows (Where You've Been)
 B-4 Snake Snack
 B-5 Let It Burn

とにかくA面ド頭の「Fire And Brimstone」からバーナード・パーディのファンキードラミングが全開! もう、それだけで演奏全体が押しきられているんですよっ! そこになんとか存在意義を見出さんと奮闘するクライブ・チャップマンのペースが必死なのも感度良好なんですが、それをまた逆手に活かしてバンド全体のグルーヴをキメまくるバーナード・パーディは流石の貫録です。ドカドカ煩い中にビシバシのアクセント、パンッパンッという十八番の連発にもシビレますが、猥雑なボーカルとコーラスを完全サポートする基本も蔑にせず、ですから間奏パートが完全にリズム主導のビート天国で構成されているのも納得されますよ♪♪~♪

極言すれば、この1曲にアルバムの魅力が全て詰まっていると思うほどです。

しかし他のメンバーも負けてはいません。特にマックス・ミドルトンはエレピやムーグシンセを適材適所に使いながら、アドリブもバンドアンサンブルも用意周到に演じています。、

例えばメロウな「Gypsy Skys」や某有名曲をモロパクリした「The City Mouse」あたりのフイールソーグッドなインスト演奏では、その資質が存分に発揮されています。そして実際、本当に気持E~~♪

またギターがメインで活躍する「Scorpio」は、如何にも当時の流行というフュージョンにどっぷりですが、バーナード・パーディの花を持たせる演出が効いていますし、我国のAOR歌謡曲にもパクられまくったアルバムタイトル曲「We Can't Go On Meeting Like This」は、スティーリー・ダンの下世話な解釈として、その周辺でも強い存在感を示していたバーナード・パーディのヘヴィなドラミグがあればこそ♪♪~♪

まあ、そういう流行に敏感な体質はスタジオ系ミュージシャンの特質でもありますが、その意味でハーモニカを使い、リー・オスカーやトゥーツ・シールマンスあたりを想起させられる「A Friend Forever」には、失礼ながら、ちょいと失笑……。しかし、それもバーナード・パーディをメインに聴くことで、良い気持になるんですから、流石でしょうね。マックス・ミドルトンのエレピもイカシていますよ。

そしてウェザー・リボートかリトル・フィートを意識した「Snake Snack」が、これまたゴキゲンな二番煎じの決定版! これは決して、ほめ殺しではなく、むしろそのふたつのバンドに先駆けたファンキーロックな演奏が、たまたまフュージョンに近づいたということで、ご理解願いたいところなのですが、それにしてもアルフォンソ・ジョンソンみたいなクライブ・チャップマンのベースワークが賛否両論かもしれません。

そのあたりの目論見はマックス・ミドルトンが随所でやってしまうジョー・ザビヌルの真似っこにも顕著なんですが、そこはバーナード・パーディの凄いグルーヴに免じて、ニンマリするしかないでしょうね。私は憎めません。

ということで非常にジャズフュージョンした内容なんですが、どっこい、本質は英国産ロックジャズ、そしてロック魂を決して捨てていない矜持が確かにあります。それはオーラスの「Let It Burn」で滲み出るブルージーな味わいのゴスペルロックに顕著! ボブ・テンチの歌いっぷりが、どっぷりとブリティッシュなんですねぇ~♪

当然ながらアルバム全篇の色合いを決定づけてしまったのは、バーナード・パーディの凄すぎるドラミングで、それだけ聴いていても満足するのは確かです。否、それを楽しむために、このアルバムが存在すると断言しても後悔しません。

しかし同時に、ハミングバードというイギリスのロックジャズバンドが、極めてアメリカっぽい音作りに挑戦し、見事に自己流の結果を出した名演になったのも、また間違いの無い事実でした。

そして実際にレコードを聴いた時、多くのリスナーは瞬時にシビレて、グウのネも出せないほど気分が高揚させられるのです。

もちろん当時はスタッフとかジェントルソウツとか、似たような事をやっていたスタジオミュージシャンによるバンドが幾つもありましたが、我が国ではハミングバードを意識したバンドも相当にあったと思います。それはロック寄りの姿勢が強かったからじゃないでしょうか。

全く見事な1976年の音!

レアグルーヴとはちょいと違いますが、ファンキーロックやファンクジャズに少しでも興味が抱ける皆様であれば、ぜひともお楽しみいただきたい人気盤なのでした。

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