OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

4人が揃えば全盛期

2010-02-02 15:13:59 | Beatles

The Beatles At Shea 1965
      Genuine Edition with Naked Sound (Innergrove = Bootleg 2 Disc Set)

ビートルズの全盛期を何時にするか、もちろん様々な解釈があるわけですが、ショウビジネスという観点からすれば、それは1965年であったかもしれません。

それ特に実感するのが、当時としては画期的な大イベントになったニューヨークのシェアスタジアムで、なんと5万5千人以上の観客を動員するという破天荒な野外コンサートをやってしまったことです。そしてその模様はテレビ放送の企画としてフィルム撮影され、まず翌年、BBCによって英国で白黒放映され、さらに翌々年になってようやく米国でカラー放送されたわけですが、その狂騒とロック黄金時代の実相は、後に劇場用フィルムやビデオとなって、ビートルズの凄さを後世に伝えています。

しかし同時に、今日では、その一般公開されている放送用フィルムが諸事情により、様々な手直しや詐術の入ったフェイクだったことが明らかになっており、そこで本日ご紹介のCDとDVDRによる2枚組セットのブツによって、それがますますリアルに楽しめるのですから、いくら商売優先のプート屋の企みだったとしても、サイケおやじは喜んで先週末、餌食になったというわけです。

そして結論からいうと、これまでの似たようなプート物の中では最良の仕事!

まず映像のパートですが、前述の放送された番組の構成ではビートルズの演奏シーンをメインにしながらも、前座ミュージシャンの出演場面、観客の熱狂、舞台裏や回想等々が混在した編集によって、必ずしもビートルズのライプだけをストレートに楽しめませんでした。

しかも既に述べたとおり、当時のライプステージの音響システムや録音機材の事情から、残されたマテリアルは完全ではなく、特に音響関係の不備は決定的でした。そこで番組用に編集するにあたり、スタジオでのオーバーダビングでボーカルや演奏に手直しが施され、つまりそれはリアルなシェアスタジアムでのライプ音源ではなかったのです。

そこを今回のブツは、まずビートルズが実際に演じたライプ音源をサウンドボードで調達し、残されているライプ映像にシンクロさせるという丁寧な仕事に愛情がいっぱい♪♪~♪

しかも当日に至るビートルズの行動をニュース映像や例のエド・サリバン・ショウ出演場面のダイジェストで繋ぐというドキュメントタッチの編集が、これまた秀逸です。

☆DVDR:約110分
※Exclusive Opening Footage
 01 Opening Montage
(sound;Help!)
  02 JFK Airport Special Area Arrivals (8月13日 / 字幕入)
 03 Press Conference Warwick Hotel, NYC
(同 / 字幕入)
 04 Ed Sullivan Show Footage (8月14日収録 / 9月12日放送ダイジェスト)
 このパートは1965年夏の北米巡業、その幕開けとなったシェアスタジアムでのコンサートへ向けてのビートルズの動向が、当時のニュースフィルムやテレビ出演録画映像から時系列的に編集されています。
 特に混乱を避けてファンが集合出来ない特別エリアの飛行場に降りたビートルズ、ファジーな記者会見等々は、これが歴史に残るスーパースタアの実相だったという温故知新かもしれませんね。日本語字幕入りですから、今となっては様々な面白さが楽しめますよ。メーカーが独自に入れた解説字幕も親切です。

※Live At Shea 1965 / A Complete Edit with Real Live Sound (8月15日 / 字幕入)
 05 Opening
 06 Introduction

 07 Twist And Shout
 08 She's A Woman (sound only)
 09 I Feel Fine
 10 Dizzy Miss Lizzy
 11 Ticket To Ride
 12 Everybody's Trying To Be My Baby
(sound only)
 13 Can't Buy Me Love
 14 Baby's In Black
 15 Act Naturally
 16 A Hard Day's Night
 17 Help!
 18 I'm Down

 いよいよ本番のコンサートライプは、当時から言われていたように、メンバーのテンションが異様なほどに高いです。日頃は冷静なポールまでもが「A Hard Day's Night」ではリズムとビートを外した歌いっぷりとか、ジョンは自己流儀のハナモゲラ語のMC連発、ジョージのコケまくるギタープレイはご愛嬌ですが、リンゴも「Act Naturally」では調子っぱずれのオトボケが憎めません。
 まあ、このあたりは一説によると、アレでキメていたのかもしれませんが、やはり今では歴史の大観衆とショウビジネスの頂点に立ったというビートルズ本人達の気分の高揚があったのではないでしょうか。
 当然ながら終始熱狂する観客の様子も生々しく映し出され、フェンスを乗り越えたり、失神して運ばれるアメリカのおねえちゃん達の姿やファッションにも、青春の思い出以上のものがあろうかと思います。
 また歴史的にも8月11日には映画「ヘルプ」が封切公開され、13日にはサントラアルバムの「ヘルプ」が発売された最高のタイミングでの巡業スタートであれば、その場の熱気と騒乱も必然でした。
 肝心の歌と演奏、そして映像では、まず「Twist And Shout」が初っ端からジョージのギターがヘタレを演じ、「I Feel Fine」と「Help!」ではボーカルパートの一部が音響か録音システムの不備で聞こえなくなり、もちろんステージモニターも完備されていない時代のライプ演奏とあっては、他の曲の諸々にも拙い点は散見されますが、逆に言えば、ここで追体験出来る喧騒の中で、これだけの纏まったパフォーマンスを演じたビートルズの叩き上げの実力は流石の一言!
 しかしテレビ放送用の素材となれば話は別で、後に細述しますが、幾つかの曲でリメイクやダビングを施したのが、一般に流通しているシェアスタジアムの記録なのです。
 ちなみに、このブツでは演奏曲順を実際のプログラムどおりに編集してありますが、残念ながら「She's A Woman」と「Everybody's Trying To Be My Baby」は素材が現存していないのか、その2曲に限ってはスチール映像が使用されていますので、念のため。
 それと画質なんですが、これまでのブツの中では最良のリマスターが施されています。しかし、それでも例のアンソロジープロジェクトで部分的に使われたシーンの画質に比べると、落ちることは否めません。というか時折、ハッとするほど良い画質が現れるのは、そこからの流用だと思われますが、それでも例えば「Ticket To Ride」とか、ジョンとポールがひとつのマイクで一緒に歌う場面あたりには胸が熱くなること請け合いです!

※abc-TV Broadcast Version
 01 Color Bars
 02 Arthur Fiedler Intro
 03 Programme Opening
 04 I'm Down
 05 (ステージ準備)
 06 Murry The K
 07 The Discotheque Dancers
 08 King Curtis Band
 09 Brenda Holloway
 10 Sound Incorporated
 11 Shea Back Stage
 12 Ed Sullivan Introduction
 13 Twist and Shout
(Shea + Hollywoodbowl Remix)
 14 I Feel Fine (re-make vers.)
 15 Dizzy Miss Lizzy (dubbed bass)
 16 Ticket to Ride (re-make vers.)
 17 Act Naturally (studio LP vers)
 18 Can't Buy Me Love (dubbed bass)
 19 Baby's in Black (dubbed guitar)
 20 Hard Day's Night
 21 Help!
(re-make vers.)
 22 I'm Down (dubbed bass & organ)
 24 ABC Slate - "Invaders" Advert (番組予告)
 こちらのパートは実際にテレビ放送された素材を収めていますが、前述したとおり、曲順もビートルズの動向も編集によって実際とは異なりますし、前座ミュージシャンや解説、ドキュメント等々が入っていますから、これしか無かった頃はありがたかったものが、今では別角度からの楽しみが満載という仕上がりです。
 それは上記のように、各演目に手直しが入っていることに顕著で、「I Feel Fine」「Ticket to Ride」「Help!」のスタジオでのリメイクは、1966年1月5日と記録に残されていますから、その他のペースやオルガンのダビングも同時期と思われます。
 そして「Twist and Shout」が、なんとハリウッドボウルの、多分1965年のライプ音源でしょうが、それとミックスして作られたバージョンという真相には吃驚仰天! ちなみに、そうした注釈はジャケット裏に記載があるわけですが、問題のハリウッドボウルの演奏は、今や幻化している唯一の公式ライプ盤「アット・ザ・ハリウッドボウル」にも収録されていますからねぇ~~、感慨深いですよ。
 しかし、それにしても、リンゴがリアルタイムでやってしまった調子っぱずれは、流石にレコードからの音源に差し替える他はなかったというのが、いやはやなんともですねぇ。それと「Hard Day's Night」でのポールのミスは、回想談話を重ねることで逃げています。
 また映像的な面白さとしては、前座で登場のダンサーグループが演じるゴーゴーシーンで、当時のファッションとボディラインが素敵に楽しめる彼女達を見ているだけで、嬉しくなるのはサイケおやじだけでしょうか、ふっふっふっ♪♪~♪ まあ、それはそれとして、当時の狂乱を今に伝える手際の良い編集は、見事だと思います。
 気になる画質は「-A」程度ですが、これまで出回っていた正規版ビデオよりは良いと思います。

※abc-TV Old Master Version / sample short edit
 24 Color Bars - abc slate
 25 Opening
 26 Twist and Shout / I'm Down
 27 Ending
(abc TV slate)
 こちらのパートは、おまけというか、テレビ放送用のテスト素材だと思われます。

☆CD
※Uncensored Soundboard Live Mix / Aug.15,1965

 01 Opening
 02 Twist And Shout
 03 She's A Woman
 04 I Feel Fine
 05 Dizzy Miss Lizzy
 06 Ticket To Ride
 07 Everybody's Trying To Be My Baby
 08 Can't Buy Me Love
 09 Baby's In Black
 10 Act Naturally
 11 A Hard Day's Night
 12 Help!
 13 I'm Down
※abc-TV Original Soundtrack '66 Mix
 14 I'm Down
 15 Ed Sullivan Introduction
 16 Twist and Shout
(Shea + Hollywoodbowl Remix)
 17 I Feel Fine (re-make vers.)
 18 Dizzy Miss Lizzy (dubbed bass)
 19 Ticket to Ride (re-make vers.)
 20 Act Naturally (studio LP vers.)
 21 Can't Buy Me Love (dubbed bass)
 22 Baby's in Black (dubbed guitar)
 23 Hard Day's Night
 24 Help!
(re-make vers.)
 25 I'm Down (dubbed bass & organ)
 こちらは映像から関連音源だけを抜き出しものです。
 既に述べたように、テレビ放送バージョンの纏まり具合に比べ、リアルなライプバージョンの生々しさが、今となってはたまらないところだと思います。
 しかも映像では些かのトホホも、実は音源だけ聴いていると、そのバンド演奏の楽しさというか、なかなかのロック的な迫力は否定出来るものではないでしょう。もちろん公式の素材を利用していますから、音質的には何ら問題なく聴けますよ。
 私は好きです。

※Anthology 2003 Stereo Mix
 26 I Feel Fine
(Re-make vers.)
 27 Baby's in Black (dubbed guitar)
 28 Help! (re-make vers.)
 29 I'm Down (dubbed bass & Organ)
 このパートはアンソロジープロジェクトで使われた関連音源で、最新のリマスターが施されたステレオバージョンということになっていますが、正直、疑似ステレオっぽい音の広がりが懐かしくも面映ゆいです。
 ただ、映像パートのところでも書きましたが、願わくば残されている映像と音源の完全版リマスター作品の発売は、本当に望まれるところです。

ということで、ビートルズ全盛期を楽しむには最適のブツだと思います。

恐らくは公式再発計画の中にきっちり組み込まれてはいるんでしょうが、それが何時なるかは知る由もなく、結果的にプートに光明を見出すという悲喜こもごもの繰り返し……。だからプートはやめられないし、需要があるから無くならないという言い訳も、このブツの前には無用でしょう。

やはり4人が揃っている映像に接することは、せつなくも幸せな気分になりますね。

コメント
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