OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

チキン・シャックのブルースな純情

2010-02-22 14:45:36 | Rock

40 Blue Fingers Freshly Packed & Ready To Serve
                                                      / Chicken Shack (Blue Horizon)

1960年代後半からのブルースロックの大ブームは、本場アメリカの黒人ブルースに憧れ、畏敬の念で自分達なりにコピーしていたイギリスの白人達が、その成果を結実させたものかもしれません。

もちろんビートルズの世界的な大ブレイクによって誘発された、所謂ブリティッシュ・インヴェンションのひとつの形だったのでしょうが、最初はあくまても裏街道だったと思われます。

ところがその中からエリック・クラプトンやジェフ・ペックという偉大なスタアギタリストが登場するに及び、ついにはそのルーツとなったブルースを得意とするギタリストが在籍するバンドこそが人気を集める異常事態!

それまではボーカリストがあまくでも主役だったポップスの世界が、ロックではギタリストも同等に脚光を浴び、そしてブルースこそがロックの王道なんていう、今となっては懐かしいブームがブルースロックのひとつの側面だったように思います。

で、本日の主役たるチキン・シャックも、スタン・ウェヴというモダンブルースにバリバリの影響を受けたギタリストを看板とするイギリスのハンドでした。本日ご紹介は1968年に本国で発売されたデビューアルバムです。

 A-1 The Letter
 A-2 Lonesome Whistle Blues
 A-3 When The Train Comes Back
 A-4 San-Ho-Zay
 A-5 King Of The World
 B-1 See See Baby
 B-2 First Time I Met The Blues
 B-3 Webbed Feet
 B-4 You Ain't No Good
 B-5 What You Did Last Night

これが作られた当時のメンバーはスタン・ウェプ(vo,g)、クリスティーン・パーフェクト(vo,p,key)、アンディ・シルヴェスター(b)、デイヴ・ビドウェル(ds) の4人組でしたが、こうしてレコーディングが行えたのも、マイク・ヴァーノンというブロデューサーの目論見でした。

というのも、もちろんマイク・ヴァーノン自身が黒人ブルースに敬意を抱いているのは明らかでしょうが、そうやって制作したジョン・メイオールとエリック・クラプトンの競演アルバムが1966年に発売されるや、驚異の大ヒット! 今やロックの殿堂入りは確実の大名盤になったのですから、ブルースロックの次なる流行にも確信があっと思われます。

そこで自らのレーベル「ブルーホライズン」を設立し、チキン・シャックを売り出し始めたのですが、その頃にはフリートウッド・マックやサボイ・ブラウンという同系のグループも含めた、通称「ブリティッシュブルースの三大バンド」を手掛ける剛腕は特筆されるものでした。

そして中でも特にブルースに拘り抜いたのが、チキン・シャックに他ならず、その魅力はスタン・ウェプのギター! とにかくフレディ・キングやB.B.キングに強い影響を受けた「泣き」と「エグ味」の世界は、コピーの領域を超えた物真似の至芸!

もちろん、この言い方は個性が無いというものではなく、素直な情熱の発露だと私は感服するのです。

まずはA面初っ端のスローに泣く「The Letter」からして、これぞブルースロックの醍醐味が満喫出来ますし、同系ではグッと重心の低いビートで演じられる「King Of The World」が、ジョン・リー・フッカーのオリジナルバージョンに深い尊敬を抱きつつの自己流コピーが、良い感じ♪♪~♪ またバディ・ガイの十八番として有名な「First Time I Met The Blues」も、その思わせぶりがニクイばかりですし、当然ながらエキセントリックなボーカルの味わいまでも、必死のコピーがニンマリの世界です。

一方、アップテンポの演奏ではホーン隊を従えた「Lonesome Whistle Blues」や「See See Baby」でのイナタイ感じとか、些かお気楽ムードが強いんですが、流石にギターソロは熱いですし、インストの「San-Ho-Zay」では特に自分に素直なプレイに好感が持てます。

それは当然ながら、フレディ・キングというロックにも多大な影響を与えたブルースマンのギタースタイルがモロに表出された熱演なんですが、率直に言えば、良くも悪くも、その世界から抜け出せない頑固さが賛否両論かもしれません。

ですから結果的に後年には基本的なブルースロックしか出来ないことが弱点となり、同じようなスタート地点にいたはずのエリック・クラプトンやピーター・グリーンあたりと比較すると、失礼ながらスケールが小さい感じは否めないと思います。

まあ、そこがスタン・ウェブとチキン・シャックの魅力でもあるんですが、サイケおやじがこのバンドを気にかけていたのは、紅一点のクリスティーン・パーフェクトの存在が、もうひとつの理由でした。

まず当時の音楽雑誌に掲載されていた彼女の写真が、これまた私の大好きな女優さんの八代万智子様に似ていたんですねぇ~♪ このことについては以前も書きましたが、このアルバムの裏ジャケットにあるバンドの集合写真でも、私は彼女しか目に入らないほどです。

しかし彼女の実力は本物で、このアルバムでも「When The Train Comes Back」と「You Ain't No Good」の2曲で歌っていますが、それは自身のオリジナル! 正直、歌いっぷりはイマイチなんですが、その倦怠したブルースフィーリングは捨て難く、スタン・ウェプのギターも控えめな主張がシブイですよ。

ご存じのようにクリスティーン・パーフェクトは、後にフリートウッド・マックのジョン・マクヴィ(b) と結婚し、そのバンドへと移籍! しかも更なる大ブレイクへとグループを導いたのですから、ますますチキン・シャックは見切りをつけられた証になるんでしょうか……。

個人的には決して、そうは思いたくありません。

それは「Webbed Feet」や「What You Did Last Night」というスタン・ウェプのオリジナル曲のピュアな世界を聴けば、幾分なりとも霧散するところだと自分に言い聞かせています。ノリが良いインストの「Webbed Feet」は、まあご愛嬌かもしれませんが、スローの「What You Did Last Night」では、なんとか自分達の個性を出そうと奮闘する姿勢に好感が持てるのです。

ということで、今となっては時代遅れの遺物かもしれませんが、その昔、確実にロック青少年を熱くさせたのがブルースロックの大ブーム! その代表選手だったチキン・シャックの真剣さが、私は忘れられません。

しかし告白すれば、このレコードを鳴らす時には、裏ジャケットを見ているんですけどね♪♪~♪ 理由は言わずもがなの笑止ですが。

コメント
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