OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

1966年秋のスティーヴ・ウィンウッド

2010-02-21 16:00:06 | Rock

Autumn '66 / The Spencer Davis Group (Fontana)

白人達が黒人R&Bに敬意と憧れを露わにして演じるのが、所謂ブルーアイドソウルで、もちろん本家には絶対に勝てないのですが、サイケおやじは、これがなかなか好きです。なんというか、一途な情熱を感じてしまうんですねぇ。

中でもスティーヴ・ウィンウッドが在籍していた当時のスペンサー・デイビス・グループは大好きで、本日のご紹介は、イギリスでは3枚目に出されたアルバムです。

 A-1 Together 'Til The End Of Time / 愛の終わる日まで
 A-2 Take This Hurt Off Me
 A-3 Npbody Knows You When You're Down And Out
 A-4 Midnight Special
 A-5 When A Man Loves A Woman / 男が女を愛する時
 A-6 When I Come Home
 B-1 Mean Woman Blues
 B-2 Dust My Blues
 B-3 On The Green Light
 B-4 Neighbour Meighbour
 B-5 High Time Baby
 B-6 Somebody Help Me

発売されたのは1966年秋、ということはスペンサー・デイビス・グループにとっては代名詞ともなった不滅のヒット「愛しておくれ / Gimme Some Lovin'」と同時期に制作が進められたのですから、その充実度は言わずもがと思います。

そしてここにはグループとしての、もうひとつの大ヒット「Somebody Help Me」が収められているのも嬉しいわけですが、しかしサイケおやじとしてはカパー曲の出来栄えの素晴らしさに、グッと惹きつけられました。

ちなみに当時のメンバーはリーダーのスペンサー・デイビス(g,vo,hmc) 以下、スティーヴ・ウィンウッド(vo,g,key,per)、その兄のマフ・ウインウッド(b)、そしてピート・ヨーク(ds) からなる4人組でしたが、もちろん一座のスタアは未だ十代のスティーヴ・ウィンウッドで、その驚異的な黒っぽさが、このアルバムでも大きな魅力♪♪~♪

まずはA面ド頭の「愛の終わる日まで」が、これはブレンダ・ハロウェイがオリジナルの無情世界のラヴソングをカパーしたものですが、そのじっくりと構えてジワジワと盛り上げていくスティーヴ・ウィンウッドの歌いっぷりは圧巻! せつない曲メロのフェイクの上手さと演奏パートでのオルガンの使い方が本当にツボを外さない名唱名演ですよ。あぁ、ほどよい力みとピアノの間奏も憎たらしいほどに、キマッていますねぇ~♪

そして続く「Take This Hurt Off Me」もミック・ジャガーが憧れたドン・コヴェイの書いた南部系R&Bのカパーですが、ここでのスタックス調のグルーヴは、似たようなことをやっていたストーンズを凌駕するカッコ良さですし、もちろんスティーヴ・ウィンウッドのタイトで猥雑なボーカルは最高! ファルセットのコーラスは親分のスペンサー・デイビスでしょうか? もうほとんどサム&デイヴの白人版って感じですよ。本当にシビレます!

さらに「Npbody Knows You When You're Down And Out」が、今度はピアノの弾き語り調で演じられるジャズブルースの世界♪♪~♪ もちろん、その表現には未熟なところもあるんですが、十代にしてこの雰囲気の醸し出し方は、確実に良いムードを演出しています。ご存じのとおり、この曲は後にエリック・クラプトンが十八番にするのですが、その意味がないとはいえ、比較すれば熱くて上手いのは、スティーヴ・ウィンウッドが持ち前の資質でしょう。

そのあたりは、あまりにも有名なパーシー・スレッジの絶唱として黒人R&Bの古典になった「男が女を愛する時」が、単なるカパーを超えた強烈な印象を残しています。しかも時期的には、そのオリジナルバージョンがリアルタイムでヒットしていた頃に、あえて取り上げたという、実に勇気ある挑戦なんですが、ここまでの完成度を聞かせてくれれば文句無し! イントロの厳かなオルガンから、若気の至りを滲ませる熱唱が逆に素晴らしくて、もう完全にKOされること、請け合いです。演奏パートの重量感も良い感じ♪♪~♪

後年には、こうしたスタイルがホール&オーツやポール・ヤング等々の白人ソウルシンガーに継承される歴史も、そのルーツを探るれば必ずしも真っすぐではありませんが、この時期のスペンサー・デイビス・グループ、もっと言えばスティーヴ・ウィンウッドに突き当たるのは明白でしょうねぇ。

ですから「When I Come Home」や「Mean Woman Blues」における軽いノリ、あるいは「Dust My Blues」でのヘヴィなブルースロックの解釈が、ちょいと面映ゆい感じもするんですが、ギターでもキーボードでも、演奏の主要なパートを組み立てているのがスティーヴ・ウィンウッドの非凡な才能の一部であることを思えば、しっかり納得出来るかと思います。

それは親分のスペンサー・デイビスが主役で歌った「Midnight Special」や「Neighbour Meighbour」のトホホ感を尚更に強調する結果にもなっているのですが、しかしアルバム構成の流れからすれば、LP片面の中の息抜き箇所に配置されたプロデュースの冴えを見直すことになるのかもしれません。

実際、A面では熱い熱唱が続いく3曲目までがあって、気抜けのビールみたいな親分の歌……、そして厳かに始まる「男が女を愛する時」とくれば、それは美しすぎる流れとなって中毒症状は必至ですよ。

もちろんB面も同様ですが、こちらはオーラスの「Somebody Help Me」へと収斂していく起承転結というところでしょうか。

う~ん、それにしても「Somebody Help Me」はブルーアイドソウルの決定版のひとつでしょうねぇ~♪ 何度聴いても血が騒ぐというか、実は我国のスパイダースに、このあたりのグルーヴや曲調がパクられている感じまでしてきます。

ということで、実はご存じのとおり、スティーヴ・ウィンウッドはほどなくグループを脱退し、トラフィックを結成! 一躍、サイケデリックロックの先端を走るわけですが、個人的にはもっとブルーアイドソウルの路線をリアルタイムで演じて欲しかった気分です。

まあ、当時はそれが如何にも時代おくれだったわけですが、このアルバムに顕著な完成度の高さがあれば、決してシラケることはなかったでしょう。

それとLPというメディアを使ったアルバムは、トータル性を重んじる傾向が、ようやくこの頃から提唱され始めましたが、大部分はヒット曲とその他のおまけ、なんていう構成でしたから、後は曲順プログラムの良し悪しが勝負ということに限れば、これは名盤!

告白すれば最初、親分のトホホの歌を外し、代わりに「愛しておくれ」や「I'm A Man」が入っていれば!? なんて思っていましたし、実際にそうして作ったカセットも楽しみましたが、それだと確実に疲れるんですよ……。

つまりそれほどスティーヴ・ウィンウッドの歌は押しが強いんです。

そのあたりも含めまして、皆様に楽しんでいただくことを願っております。

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