OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

心地良い二番煎じのアメリカ

2010-02-11 14:21:54 | Rock

名前のない馬 / America (Warner Bros. / ワーナーパイオニア)

サイケおやじは所謂「二番煎じ」が嫌いではありません。

というか、映画でも「続」や「新」、あるいは「PRAT-2」が相当に好きですから、それは音楽の世界でも柳の下のなんとやらが大好きなのです。

そして、とくれば、本日の主役たるアメリカはご存じ、CSN&Yの味わいを強く受け継いだ人気3人組として、ご紹介のシングル曲「名前のない馬 / A Horse With No Name」で世界的に大ブレイクしたのが1972年でした。

もちろんそれは我国でも同様で、ちょうど歌謡フォークと生ギターのブームが合致したこともあり、昭和47(1972)年の洋楽ラジオ番組ではチャートのトップを独走するという異常事態! なにしろ当時はレッド・ツェッペリンやディープ・パープル、マウンテン、グランドファンク、フリーあたりのハードロックの直球ど真ん中が絶頂でしたからねぇ。

と同時に、キャロル・キングやジェームス・テイラー、ドン・マクリーン等々のシンガーソングライター組も人気を集め、当然ながらCSN&Yのメンバー各人も大活躍していた頃ですから、こういう「二番煎じ」が堂々の登場となったのは、明らかにブームの流れが変わったことを感じさせました。

それは実際、まるで定番ボサノバの「One Note Samba」の如き抑揚の無い曲メロとシンプルすぎるアコギのカッティング、さらに虚無的なボーカル&コーラスが特徴的なわけですが、これが当時の若者の風潮だった「三無主義」と絶妙にリンクしていたという感じも、今はしています。

しかし演奏そのものは用意周到に組み立てられたもので、軽快なパーカッションと印象的なエレキベースの使い方は、後のフォーキーロック路線に繋がるものでしょうし、何よりも気だるいコーラスワークがCSN&Yとザ・バーズを足して、さらにビートルズの隠し味で仕上げたような、丸っきり王道ポップスファンの琴線に触れまくりのスタイルになっています。

ちなみにアメリカのメンバーはジェリー・ベックリー(vo,g,b,key)、ダン・ピーク(g,vo)、デューイ・バネル(g,vo) という高校時代の学友トリオで、しかもアメリカ人でありながらイギリスからデビューしたという、ちょいと面倒くさいキャリアがあるのですが、それゆえに「名前のない馬」を含むデビュー作のセッションはイギリスで行われています。

とすれば、スタイルはアメリカ西海岸風ながら、どこか霧に霞んだような、あるいは重心の低いロックビートの感じさせ方とか、やはり同年にデビューするイーグルスも最初の公式レコーディングがイギリスだったことを思えば、所謂「1970年代のウエストコーストロック」はイギリスにルーツがあるという、実に納得するのに時間がかかる学説さえ浮かんでくるのです。

そして既に述べたように、グループとしての音楽性にはビートルズの味わいが隠しようも無く、それはこのシングルヒットを含む最初のアルバムに色濃く滲んでいるわけですが、そうした「全て分かっている楽しみ」というのは、意外に心地良いものです♪♪~♪

さらに穿ったことでは、二番煎じの個性というか、それは良いとこ取りかもしれませんが、一説にはロックの進化は1969年の大晦日で終り、以降は順列組み合わせとする意見も肯定出来るところでしょう。

ということで、本日も理屈っぽくなりましたが、この「名前のない馬」ように、素直に好きなものだけやって成功するのは羨ましい限りです。

二番煎じ、万歳!

最後になりましたが、B面集録の「カリフォルニアの仲間 / Everyone I Meet Is From California」はアルバム未収録曲だと思いますので、要注意!

そういうところも、当時のシングル盤ならではの楽しみなのでした。

コメント (2)
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