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サイケおやじの生活と音楽

義理よりマイ・ファニー~♪

2006-01-23 18:17:01 | Weblog

職場ではもう、バレンタイディの話題が蔓延しはじめています。

やれ、義理チョコだの、本命だの……。どうせ本命なんて貰えるわけないし、もしも貰ったとしたら、かえって大変な事になりますからねぇ。そんな事はもっと真摯に行動してもらいたいもんです。たとえ義理でも、貰ったらお返しせねばならない立場も考えもらいた……。百円や二百円のチョコでも、こっちはその倍以上、お返しせねばならんのですぜっ!

そりゃ~あ、義理でも貰えるのは、嬉しくないと言えばウソになる部分はありますが、こんな風習は止めるべきだ! チョコ屋には申しわけありませんがねっ!

ということで、本日の1枚は、極当たり前に――

My Funny Vlentine / Miles Davis (Sony)

あまりにも名盤、名盤過ぎる名盤です。モダンジャズのひとつの完成形を残したといっても過言ではないかもしれません。それほど充実した演奏が聴かれます。

メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、今では夢のオールスターズ! 録音は1964年2月12日、ニューヨークのフィルハーモニック・ホールでのライブ盤です。ちなみにこの日の録音からは「Four & More」と名付けられたもう1枚のアルバムが作られており、そっちはアップテンポ曲中心、こちらはスロー物中心の編集になっております。

まずA面は必殺の名演「My Funny Vlentine」でスタート、ハンコックが奏でる思わせぶりなイントロから、これも押さえた感情を露呈するマイルスのテーマ吹奏が始まった瞬間、完全にその世界に引きづりこまれます。この空間美がまず見事です。

この頃のマイルスは俗にフリー・ブローイングと呼ばれる自由度の高いライブ演奏を得意としており、それはひとつの演奏の中で自在にテンポを変え、メロディをフェイクして雰囲気を作り出すという展開が聴きどころになっています。

そういう遣り口は、特にリズム隊に柔軟さが求められ、次にマイルスが何をどう発展させていくのか、現場は緊張感がいっぱい! また逆にリズム隊に煽られてマイルスが動揺する場面もあったりして、なかなか凄い演奏が展開されるのです。

例えばここでは、さんざん思わせぶりをやった挙句、2分50秒目あたりから一気に4ビートの展開にもっていき、熱く燃えるノリを披露した後、再び内向モードに戻していくという完璧な展開が楽しめます。そして黒いグルーヴに満ちた最後の感情が、続くジョージ・コールルマンに委ねられるというわけです。

そういう手法が全篇で楽しめるこの作品は本当に名演の連続で、続く「All Of You」ではジョージ・コールマンとハンコックが大熱演、特にハンコックは生涯を通じての名演のひとつだと思います。また、そのバックでは地味ながらロン・カーターのベースも素晴らしい!

B面では「Stella By Starlight」がいきなりの大名演で、マイルスの緩急自在のアドリブに激した観客が、1分52秒あたりでおもわず「イェ~」と叫べば、マイルスもそれに応えるかのように熱いフレーズを綴って行くあたりは、もう最高です。当然、観客からは大拍手♪ ここではリズム隊のコンビネーションにも聞き逃せないものがあります。

そして次の「All Blues」は、このアルバムでは唯一のアップテンポ曲で、テーマでのバンドの絡みとコンビネーションは完璧ですし、アドリブパートでのストレートなノリはやはり楽しいものがあります。そしてこういう曲調になると、トニー・ウィリアムスの繊細かつ激烈なドラムスに耳を奪われます♪

こうして訪れる大団円の「I Thought About You」はクールなカッコ良さを追求するマイルスが素晴らしく、そのあまりのカッコつけにトニー・ウィリアムスがキレたかのようなオカズを入れる場面が多々あります。そこで、そうかい分かったよ、というように比較的ストレートにアドリブを継承するジョージ・コールマンの物分りの良さも、憎めません。これがジャズなんですねぇ~♪ それはハンコックとても同じ気持ちらしく、ロン・カーターと結託してトニーに花を持たせる瞬間が、確かにあるのでした。

そしてそれを横目で睨みつつ、マイルスが静謐なラストテーマを奏でるあたりが、この作品のクライマックスになっています。

というこの作品は、ジャズ入門者にはキツイかもしれませんが、ハマると抜け出せない魅力がある大名盤に違いありません。義理チョコ贈ろうとしている貴女は、止めてこのアルバムを買いましょうね。

コメント (2)
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