OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

あ~ぁ、驚いた!

2005-11-26 16:29:02 | Weblog

正直言って、今日は驚きました。なんと映画館が満員♪ それも邦画ですよ! 作品は「三丁目の夕日」でした。何にせよ、めでたい、めでたい♪ 無性に嬉しくなったですよ。映画館は潰したらダメです。

肝心の映画本篇も楽しめました。私の世代には、子供の頃の懐かしい風景がいっぱいです。今度はGS映画とか歌謡映画みたいな世界、作って欲しいですね。

ということで、本日もギタリスト特集、その第2弾――

Tal / Tal Farlow (Verve)

1950年代モダンジャズ期において、最高のギタリストはタル・ファーロウだと思います。

この人は白人でギターは何と独学だったらしいのですが、そのスピード感、ごまかしが無い歌心満点のアドリブ・フレーズ、そしてリズムに対する変幻自在のアプローチ等々、とにかく物凄いテクニックとジャズ魂を持っているのです。

で、このアルバムは1956年に、当時のレギュラー・バンドで吹き込んだ傑作で、メンバーはタル・ファーロウ(g)、エディ・コスタ(p)、ヴィニー・バーグ(b) というドラムレスのトリオになっていますが、当時、長期クラブ出演をメインとして活動するバンドは、この編成が普通でした。つまりこういうピアノ・トリオが恒常的に出演している店に、ワンナイトの契約でいろいろなバンドや歌手がタイバンという形で登場していたのです。当然、演奏は一晩に3~4セットはやっていたようです。したがって、この録音時にはメンバー間の息もピッタリということで、比類なき快演が残されたというわけです。

まず、冒頭は和みのスタンダード曲「Isn't It Romantic」で、ここでも定石どおりにミディアム・テンポで演奏されていますが、いきなりギターとピアノのユニゾンで流れてくるテーマが素敵な響きです。そしてアドリブ・パートに入っては、タル・ファーロウが高音域で弦をミュートさせた巧なソロを聞かせ、そのまんま中音域に移っては得意の早弾きフレーズを披露、さらにタメのあるプルース系のリックまで入れ込んで、素晴らしい展開で聴き手を圧倒してくれます。なにしろアドリブ・フレーズが皆、歌になっているという素晴らしさ! これは本当に驚異です。さりげなく入れるハーモニックスも憎い限りです。

そして続くエディ・コスタのピアノが、これも持ち味の硬質スイング全開で、ひとりフーガのパターンまで聞かせてくれます。それと聴き逃せないのがヴィニー・バークの強靭なベース・ワークで、ソロとバッキングの両方で実力者としての本領を発揮しています。

という、この演奏全体は和やかなムードで、ジャズ喫茶でも激しいレコードの次にこの盤のこの曲が鳴り出すと、店全体がホノボノとなるのでした。しかしその演奏密度は非常に高く、特にギターを演奏する皆様ならば既にお気づきのように、タル・ファーロウの弾くフレーズは物凄く難しいのです。というか、いったいこんなフレーズはどうやってフレットを押さえているのか、不思議になるはずです。実は、後で知ったのですが、この人は手がとても大きかったそうですよ、ハハハハハッ……。

そういうわけですから、続く「There Is No Greater Love」での超絶アドリブにも、ただただ、感銘して聴きいるのみです。特にテーマのフェイク、アドリブに入る直前のブレイクから続くソロパートの何気ないスピード感は最高です。もちろん弾きだされるメロディは高低音を満遍なく使っています。

そして次の「How About You」はさらにテンポアップして迫ってきますが、何の淀みも無くバリバリ引きまくるタル・ファーロウには完全に脱帽です。しかもスケール練習的なフレーズが皆無なのですから、本当に凄い! またエディ・コスタのピアノが快調ですし、ヴィニー・バーグのベースも最高です。

さらに急速調のA面ラスト「Anything Goes」ではバンドのコンビーネーションが最高調に達していて、三者三様の思惑と暗黙了解が素晴らしく、中でもタル・ファーロウの何のごまかしも無いソロは、パンクテイストまである音の歪みとハーモニックスまで聞かせる荒っぽい迫力が見事です。またエディ・コスタも得意の打楽器奏法の片鱗を出しています。

B面に入っては、まず「Yesterdays」が強烈至極! 普通、この曲はゆるやかなテンポで演奏されるのですが、ここでは激しい急速バージョンにアレンジされていますから、バンド全体の目論見は半端ではありません。なにしろ、エディ・コスタの打楽器奏法が最初のテーマの部分から表出していますし、タル・ファーロウのギターが、またしてもド迫力です。しかし、この曲ではやっぱりエディ・コスタです。低音域で炸裂する、その激しい鍵盤叩きは、ほとんど前衛ジャズのセシル・テイラー(p) 状態! ちなみにこの人は、我国の大西順子(p) にも大きな影響を与えていますし、隠れファンも多いことが、今では周知の事実になっています。

しかし一転して次の「You Don't Know What Love Is」はスローな展開で、ジンワリとしたムードが心地よく広がっていきます。ただしそれは、軟弱ではなく、あくまでも骨太の雰囲気がハードボイルドで魅力があるのです。

その硬派な部分は続く「Chuckles」のガッツ溢れる演奏に受け継がれます。ここでは全員が白人ながら、なかなかファンキーな演奏が展開され、アレンジされた部分とアドリブ・パートのコントラストも鮮やかです。

そしてフィナーレの「Broadway」は、全く隙の無いフレーズを綴るタル・ファーロウが、本当に見事です。この流れるようでいてメリハリの効いたソロは、軽く弾いているようでいて、しかし聴くほどにその恐ろしさが身に染みてまいります。凄い……!

ということで、このアルバムはアップテンポの曲が多いのですが、それでいてドラムスがいないことが全く気にならないという、驚異の出来栄えです。そのスイング感はバンド全体が良く纏まっている証であり、トリオのメンバーがお互いの音を良く聴いて演奏しているのが自然と感じ取れます。全曲が名演・快演の必聴盤♪ 例によってジャケ写からネタ元へリンクしてあります。

コメント (2)
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