OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

和みの1枚

2005-11-10 18:51:20 | Weblog

ひぇ~、もう、こんな時間だ……、1日が早いなぃ~、仕事もトラブル、いろいろとやってくれるしなぁ~。

こんな時は心和むもの、聴きたいと思います――

It's Nice To Be With You - Jim Hall In Berlin (MPS)

なんか、こう、援助交際風のジャケ写ですが、ジム・ホールは1950年代から活躍している白人ジャズギタリストの巨匠で、今では人気も実力も認められていますが、1960年代は地味な存在だったようです。それは当時、ジム・ホールの音楽性とは別種なものが流行していたからで、私がジャズを聴き始めた頃には、その名はほとんど語られることがありませんでした。おそらくロックが似合わないギタリストの筆頭でしょうね。

そんな中で突如、発表されたのが、このアルバムです。録音は1969年の6月、発売は翌年のようです。メンバーはジム・ホール(g)、ジミー・ウーディ(b)、ダニエル・ユメール(ds)というトリオ編成ですが、曲によってはジム・ホールによるギターの多重録音が行われており、ジャズは瞬間芸という基本に大きく逆らったところが非常に新しく、私には新鮮に感じられました。

ド頭は当時のポップス・ヒット「ビートでジャンプ:Up,Up And Away」がラテン・ジャズ・ビートを上手く使って爽やかに演奏されますが、この1曲だけで、このアルバムの録音の素晴らしさが分かります。ドラムスのサワサワ刻まれるブラシの微妙な音、ベースの躍動感、そしてギターから弾き出されるコードの複雑な響きの一体感と分離感、そのバランスが秀逸です。もちろん演奏そのものも素敵♪

2曲目の「My Funny Valintine」はビル・エバンスとデュオで演じたバージョンが歴史的名演になっていますが、それをここでは多重録音で再現・再挑戦しています。つまり擬似カルテット演奏ですが、これが素晴らしい! ジム・ホールを一番よく知っているのはジム・ホール自身ということで、これでもかと微妙・繊細な音が積み重ねられているのです。ダニエル・ユメールのドラムスも溌剌としたシンバル中心ですが、煩くないのは流石です。

3曲目の「Young One,For Debar」は1人多重録音のスローな美曲で、作り物感覚が良い方向に作用した和みのトラックです。ちなみにこれはジム・ホールのオリジナル曲♪

そしてA面ラストの「Blue Joe」は溌剌としたトリオの絡み合いが見事なモダンジャズ曲で、3人がバラバラをやっているようですが、実は暗黙の了解をきちんと守っているのです。特にダニエル・ユメールのドラムスが最高の素晴らしさを聞かせてくれますよ。これがジャスです!

B面に入っても、まずタイトル曲「It's Nice To Be With You」が和みの極み、クールにテーマ・メロディを崩していくジム・ホールのハーモニー感覚には驚嘆させられますし、ベースとドラムスのソロ&サポートも完璧です。

続く「In A Sentimental Mood」も多重録音によるジム・ホールの一人舞台、普通こういうあざとい部分は日本のジャズ評論家の先生方には受けが良くないのですが、この演奏はリアルタイムで褒められていましたね。実際、緊張感たっぷりでありながら、その場の空気が和んでいく素晴らしい演奏です。

さらに「Body And Soul」では前曲のイメージを引き継いでジム・ホールの純然たるソロ演奏から、ベースとドラムスが順次絡んでいく構成が見事です。

そしてアッという間のオーラス「Romine」はジム・ホールのオリジナルで、これまたボサ・リズムの和み系美曲です。短い演奏ですが、ジム・ホールならではの和声感覚が表出した名演です。おそらくパット・メセニーに似ていると感じる皆様がいらっしゃるでしょうが、ジム・ホールに大きな影響を受けていると、メセニー本人が白状している、その証拠がこの曲なのでした。

ということで、このアルバムは演奏が秀逸なうえに、録音が大変に素晴らしい名盤中の名盤です。CD復刻もされていますので、ぜひとも聴いて欲しい1枚、必ず和みます。

コメント (2)
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