大谷の練習試合まで午前中することを探していて。はたと閃いたのが座礁した船のことだった。
下浜海水浴場と言っていたから、到着したら分かるだろう。多少砂浜を歩く覚悟で行ってみた。
そしたらまさに、海水浴場ピッタリに、その船は座礁していたのだった。
280km離れた奥尻島から、自走して来たのだと言う。エンジンは動いていて、所有者の船長がひとり、船の中で倒れていた。というのが、きのうのニュース。
ポツポツと訪れる人があったが。オレも船に向かう。まず目の前まで来て、手を合わせた。写真、撮らせて下さい、とお願いした。
近くに居たおじさんが、どっから来たんだっけ?と聞く。「奥尻島からったスな」と答える。
しばし写真を撮っていると、少し離れた所に青年が座っているのが見えた。濡れた砂浜に直に座っている。そしてザックを置き、メガネを外し、涙を拭っている。遠くを見つめ、悲嘆に暮れた顔をしていた。
それで引き寄せられて。声を掛けた。「関係者の方ですか?」
彼の答えは波音に掻き消され、判読出来なかった。
仕方なく引き下がるしか無かった。
「息子です」と言ったのかも知れないし、「違います」と言ったのかも知れない。
ただ、親族なら遺体と一緒に居るはずだ。
でも悲しみに暮れている。
気にはなったが、そっとして置いてあげよう。
海水浴場は、季節風のせいで、道路に砂が積もり。四駆でないと危険な場所もあった。駐車場に止まった車に、若い男女が乗っていて。こっちと目が合った。いや、のぞき見するつもりじゃ・・。