竹田恒泰氏は、言いたいことをはっきり言う人ですね。さすがJOC会長の
息子です。メダルを噛むのは品がない。それは確か。そして獲った人間が
やりたくなる気持ちは分かる。胸に手を当てる習慣は日本にはない。
直立不動で歌え。なるほど、皇統の系譜だけに正論でしょう。
国費を使っていて、予選落ちしたのに「楽しかった」はない。
同じ姓を名乗る、竹田圭吾氏(ニューズウィーク日本版元編集長)は
異論を唱える。「選手はお国のために競技しているわけではありませんよ」
はい、それも正論です。つまりみんながみんな、オリンピックは特別なもの
という別格扱いしている、という点では一致している。
そこが、真央ちゃんがはまる、大きなワナなんだと思う。
オリンピックで金を取らなければ、どんなにグランプリシリーズで
いい成績を取ろうと意味がない、とまで考えているに違いない。
その特別な思いが、彼女の体の筋肉の一本一本まで固くする。
いつも見ていて考える。もっと楽に滑ればいいのに、と。
芸術の領域まで到達している浅田真央は特別な存在だと
思う。その自覚もある彼女が、4年に一度しかない最高の
舞台で、自分を表現できる機会を与えられた、世界で数少ない
エリートのひとりなのだ、となぜ思えないのか。
それが残念です。最高のお膳立てをしてもらった舞台で、
思ったことを表現できる。これほど恵まれた人間は
数えるほどしかいないのだ、となぜ思えないのか。
硬くなる必要なんかない。むしろ喜びでいっぱいに
ならなければいけない。それが「ゾーンに入った」
感覚なのだと思う。
結果には私は期待していない。
ただ、その境地に到達してもらいたい。
それだけを願っている。
ただし、それもこれもプーチンの手のひらで
踊るひとりの人間に過ぎないのだけれど。
この大会は、プーチンの、プーチンによる、
プーチンのための、オリンピックなのだから。