ちょっと雪が降ったくらいで、都会では喧噪の日々のようだ。
小倉は雪を知ってるから、自傷気味にコメントしている。
きのう見た秘湯温泉の旅は、雪国の人間にも沁みる映像だった。
場所は奥小安の阿部旅館と泥湯温泉。定番の乳頭温泉でなかったのがいい。
女の子はこれも定番のタオルを巻いて入っていく。両肩に湯を掛けながら
しかしお湯の成分・感覚についての感想がない。なぜか、発想が貧困な
せいもあるだろう。私はあのタオルが邪魔している気がしてしょうがない。
あんな恰好して、入ったことがないので、どんな感覚かは分からない。
しかし全身に温泉を感じるのとは、明らかに違う気がする。
ま、いいでしょう。温泉は効能も大事だが、身体を温めるだけで
気分が違うことが、最近分かったから。
その露天風呂だが、さすが秘湯を守る会の宿、天井のタルキも見事。
立て替えても、昔の材料は極力残す。
外を見れば、厚く積もった雪以外のものは何もない。山も木々も雪を
被って、しんしんと上からも降ってくる。
もう一つ大事なのは、文明を感じさせる物音がひとつもしない、
ということだ。雪が音を吸収することもあって、自分の声以外は
何も聞こえない。この静寂性。静寂性を作る景色。
これを見ていて、太平洋側の人が、あこがれる気持ちが分かった。
同時に、雪国に住む自分にも、秘湯の良さが伝わってきた。
真っ白な雪は、何者にも変え難い。白銀の世界なんて形容する
必要などない。この自分の心と正反対の、静かにたたずむ圧倒的な
量の雪。これには相手は語らねど、語りかけてくるような
胸にせまるものが、あるに違いない。そう思えた。
泥湯温泉のほうも、一軒宿だが、こっちの雪の量もすごい。
夏場しか行ったことがないが、イオウの黄色に染まった川原毛地獄方面
からは、有毒なガスも流れてくる。流れてくるというよりは、低い場所に
貯まる。そのために命を落とした旅行客もいる。
イオウの香りならいいが、硫酸系の香りがしたらヤバイと
思った方がいい。
自然と人間はいつも、危険と隣り合わせなのだ。