10年2月4日、横浜地裁大島隆明裁判長は、横浜事件の元被告の遺族に対し、請求どおり刑事補償を認め、実質無罪の判決を言い渡した。これまで無罪をもとめた再審裁判では、治安維持法の廃止と大赦があることから有罪無罪に踏み込まない免訴とされてきた。
稀代の悪法である治安維持法も法だとしても、でっちあげ治安維持法事件は、被告ではなく、でっちあげにかかわった警察・検察関係者、でっちあげに有罪判決をだした裁判官こそが裁かれなければならない。無罪の被告がその名誉を回復するのに、死んだ後でしかかなえられないというのは、あまりにもむごい。
相互に関係のない言論・出版関係者を共産党の再建計画をしたなどとしてひとくくりにして犯罪だとした横浜事件。事実誤認、拷問によるうその自白の強要。さらに、戦争が終わったのだから、ポツダム宣言に照らせば、獄にとらわれた被疑者を無罪放免しなければならないのに、8月の30日から9月にかけてつぎつぎと即決裁判をくりかえし、被告を有罪にしていった裁判所の責任は重い。だから責任追及を恐れて、時期はわからないが、裁判資料を全部破棄したのだ。
戦争に反対し、民主主義を主張する運動に対して、死刑をもってのぞむ治安維持法。この法の下で1600を越す人々が命をうばわれた。横浜事件でも4人が獄死した。いや国家によって殺された。出獄してすぐ命を落としたひとも4人いたはずだ。
死刑法の治安維持法で命をうばわれた人々は裁判で死刑判決をうけて命を奪われたのではない。その手続で死刑になったのは2人だけだ。あとは悪法にさえもとづかず、なぶり殺しにされた。その責任者の処罰はおこなわれないどころか、戦後、大出世している。なぶり殺しにされた人の損害賠償、国家賠償はされていないどころか、名誉回復もされていない。命をながらえた治安維持法犠牲者全般の名誉回復と補償もまったくなされていない。
治安維持法下であっても、拷問を合法化していたわけではない。だが横浜事件でもそうだが、拷問が公然とおこなわれていた。私の指導教授だった歴史学者の鈴木正四先生は、東大在学中特高警察に検挙され、激しい拷問でせめたてられた。江戸時代からのそろばん攻めといわれる拷問をうけた。特高は、鈴木先生を三角の棒を並べた上に正座させ、そのうえに鉄板を3枚のせ、警官がその上に乗って飛び跳ねるということをやった。一連の拷問で、先生の足は戦後長い間、皮膚が黒くなったままでとれなかった。
今度の横浜地裁大島裁判長によって、やっと5人の名誉が回復し、刑事補償もなされた。だが、何万という治安維持法犠牲者の名誉は回復されていない。本来ならば、彼らこそ、平和と民主主義の闘士、真の愛国者として戦後民主主義国家から顕彰されてしかるべき人たちなのだ。
稀代の悪法である治安維持法も法だとしても、でっちあげ治安維持法事件は、被告ではなく、でっちあげにかかわった警察・検察関係者、でっちあげに有罪判決をだした裁判官こそが裁かれなければならない。無罪の被告がその名誉を回復するのに、死んだ後でしかかなえられないというのは、あまりにもむごい。
相互に関係のない言論・出版関係者を共産党の再建計画をしたなどとしてひとくくりにして犯罪だとした横浜事件。事実誤認、拷問によるうその自白の強要。さらに、戦争が終わったのだから、ポツダム宣言に照らせば、獄にとらわれた被疑者を無罪放免しなければならないのに、8月の30日から9月にかけてつぎつぎと即決裁判をくりかえし、被告を有罪にしていった裁判所の責任は重い。だから責任追及を恐れて、時期はわからないが、裁判資料を全部破棄したのだ。
戦争に反対し、民主主義を主張する運動に対して、死刑をもってのぞむ治安維持法。この法の下で1600を越す人々が命をうばわれた。横浜事件でも4人が獄死した。いや国家によって殺された。出獄してすぐ命を落としたひとも4人いたはずだ。
死刑法の治安維持法で命をうばわれた人々は裁判で死刑判決をうけて命を奪われたのではない。その手続で死刑になったのは2人だけだ。あとは悪法にさえもとづかず、なぶり殺しにされた。その責任者の処罰はおこなわれないどころか、戦後、大出世している。なぶり殺しにされた人の損害賠償、国家賠償はされていないどころか、名誉回復もされていない。命をながらえた治安維持法犠牲者全般の名誉回復と補償もまったくなされていない。
治安維持法下であっても、拷問を合法化していたわけではない。だが横浜事件でもそうだが、拷問が公然とおこなわれていた。私の指導教授だった歴史学者の鈴木正四先生は、東大在学中特高警察に検挙され、激しい拷問でせめたてられた。江戸時代からのそろばん攻めといわれる拷問をうけた。特高は、鈴木先生を三角の棒を並べた上に正座させ、そのうえに鉄板を3枚のせ、警官がその上に乗って飛び跳ねるということをやった。一連の拷問で、先生の足は戦後長い間、皮膚が黒くなったままでとれなかった。
今度の横浜地裁大島裁判長によって、やっと5人の名誉が回復し、刑事補償もなされた。だが、何万という治安維持法犠牲者の名誉は回復されていない。本来ならば、彼らこそ、平和と民主主義の闘士、真の愛国者として戦後民主主義国家から顕彰されてしかるべき人たちなのだ。