山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

大阪市廃止を再び否決、大阪市民の意思(5)

2020年11月23日 20時59分48秒 | Weblog
 大阪市民は法に基づいた住民投票でふたたび明確な決定をした。大阪市廃止・特別区設置に反対と。住民投票での意思決定は、議会での多数決をも完全に支配するものだ。吉村知事は、投開票当日、「僕たちが掲げてきた大阪都構想はやはり間違っていたんだろうと思います。だから僕自身が大阪都構想に政治家として挑戦することはありません」とのべた。松井市長は、2日の市の幹部会議で「大阪都構想を終了いたしました」「真摯に受け止め謙虚な態度で市政運営をしなければない」といった。
 ところが、その舌の根も乾かぬうちに、松井氏は11月5日、「広域行政一元化条例案を来年の2月議会に提出する。大阪市を残した総合区8区案を公明党から提案することも促した」と住民投票の決定をくつがえす態度に出た。公明党は翌6日、都構想に賛成した段階で総合区は白紙撤回した、総合区案を再提案する考えはないといったが、翌日にはまたしても態度を変えた。
   「広域行政一元化条例案」の詳細はまだ不明だが、その考えはほぼ出ているように思う。広域行政にかかわる427の事務をすべて府に委託し、そのためにかかる費用として市の財源2000億円を府に渡すというものだ。これは政令市大阪市を廃止して特別区に4分割する、そのけっか広域行政を府に移管しその財源2000億を府に譲るという、いわゆる「都構想」なるものの中心部分そのものだ。
 大阪市は残る。だが残る大阪市は抜け殻だ。3度目の住民投票はもうやらないといったが、住民投票なしでその目的を達しようというのが「広域行政一元化条例」だ。住民投票の結果は法的拘束力がある。松井市長、吉村知事はその決定を守り、実行しなければならない。その拘束力は抜け殻の大阪市を残すことではない。政令指定都市としての権限と財源を持った大阪市だ。肝心の権限と財源を脱法的な手法で盗むことは法に反する。全市民対象の住民投票は最高の決定形態だ。議会や条例といえどもこれの下位に位置する。下位の条例でくつがえすことなど認められるわけがない。よくもこんなずるがしこい手を考えたものだ。あのトランプといい勝負だ。
 「総合区8区案」も同様だ。前回住民投票で大阪市存続が決まった後、公明党が持ち出してきた。だが、維新の力に震え上がってこれを撤回し、大阪市廃止4分割構想に寝返った。寝返った時点でこれは消滅した。総合区そのものは大都市での住民自治拡充の方策として地方自治法に取り入れられたものだが、合区押しつけ、4区が否決されたら8区という押しつけは法の精神に反する。住民投票では、大阪市廃止に反対するだけでなく、港区、平野区、阿倍野区、住吉区とそれぞれ由緒ある区を廃止することへの抵抗は極めて強かった。総合区による住民自治拡充をもしいうのならば、いまの24区をそのまま生かすのが市民の願いにもっともかなう。
 公明党は、前回は大阪市廃止5分割にきっぱり反対した。だが知事市長選、議会選での維新の力にすっかりやる気をなくし、維新の足元にひれ伏した。山口代表まで大阪に投入して締め付けをはかったが、多くの公明党支持者はそれに屈せず、自らの良心に従って投票した。それが出口調査での54%の反対だ。維新に屈する際に持ち出したのが、民意だった。維新が民意だ。だからそれに賛同するのが民意だと。民意を言うのなら、こんどの住民投票の結果が、最新の、最終の民意だ。しかも自らの支持者の民意は54%反対という結果だ。維新支持の民意を理由に1年半前に寝返ったが、今度こそは、首長・議員選挙ではなく、大阪市廃止の是非を問う単独のテーマでの投票で出たものこそが、決定的な民意だ。民意を大切にする公明党は最終の民意に従うべきだ。
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大阪市廃止を再び否決、大阪市民の意思(4)

2020年11月16日 18時55分01秒 | Weblog
 こんどの住民投票ほど、世論調査の動きを横目に見ながら運動をしたことはなかった。前回(2015年)はずっと、投票1週間前でさえ反対が賛成を10ポイント上回っていたのに、投票結果は1ポイント弱、1万票の差だった。橋下氏がツイッターで200万ともいわれるフォロワーに連日連夜叱咤激励した効果が最終に結実した。私たちの想像できない運動の世界だった。毎日の街頭では、橋下氏の金切り声で「大阪市はなくなりません、なくなるのは市役所だけです、騙されてはいけません」を叫び続けた。その裏で夜通しツイッターで引き締めをした。彼は手ごたえを感じ、勝ったと思っていた。私たちも勝ったと思っていた。だが思いもよらない僅差だった。それが実態だった。1週間で、一夜で、情勢を逆転させる維新の波及力、突破力に恐怖を覚えた。10ポイントの差が1週間でなくなった現象を理解できなかった。
 2か月ほど前、前回の現象を、実際に追いつめられたというよりも、反対派が高齢者が多く、また通常投票に行かない人が多かったために投票行動につながらなかったためだという解説を読んだ。これは実際ありうるなと納得した。だから、今回、がんばって拮抗、さらに最終的に1ポイント上回ったとしても、足が痛い、体が言うことをきかないという人が相当数いることから数ポイントも上回らないことには勝てないと思っていた。スーパー前で街頭で、「反対や!」と訴えてくる人にたくさんであったが、その人に反対がぎりぎり多数では勝てない、投票に行きたくても行けない人がたくさんいる。その分も上回るくらいに広めないと勝てませんよといいつづけた。だからじょじょに差が縮まってきたが、ぐいっと抜き去らないと勝てないと思っていた。
 世論調査の推移はこうだ。
 2015年5月17日投票の1週間前、賛成33%反対43%、必ず行く層では39%、45%だった。10ポイントの差が、行く層では6ポイントに縮んでいた(朝日新聞)。
 読売新聞では、2018年、賛成36%反対40%。2019年、賛成40%反対47%。2020年4月、賛成43%反対40%だった。今年4月では賛否は接近していた。だがコロナのもとで吉村人気に乗って一気に差が開いた。
 読売9月4~6日調査では、賛成48%反対34%と14ポイントの大差がついた。ABC放送・JX調査でも、9月19・20日、賛成49・1%反対35・3%で13・8ポイントの差がついた。わたしはこの時、結果は知らなかった。早く立ち上がらなければと思いつつ、本格的に地域のなかまとスーパー前で声をあげたのは9月12日(土)だった。大差がひらいた下で声をあげ始めた。
 ABC・JX調査では、10月3・4日賛成45・3%反対40・2%で5ポイント差、2週間で8・2ポイントも差が縮んだ。よろこんだ。このままいけば逆転の可能性もある。この数字を知ればみんなやる気も出るだろう。朝日新聞9月26・27日調査でも、賛成42%反対37%の5ポイント差となった。ただ、今は知るところとなったが、この調査では必ず行く層では賛成51%反対35%という恐ろしい数字がかくれていた。
 ABC・JXでは10月10・11日には賛成45・4%反対42・3%と3・1ポイントまで差を詰めた。ところが、10月17・18日には、賛成47・9%反対40・4%と逆に差が開いた。わたしは、この数字はおかしい、どうなってるんやと思った。すでに市民の反応はするどい変化をしていた。10月4日(日)から反対の意思表明をする人がどんどんでてきた。期日前投票が13日にはじまるとさらに強まった。街の実感とこの数字とのギャップに悩みがつのった。街の実感を信じて突き進むしかないとがんばった。期日前開始とともに市内100の駅頭で夕方日刊ビラの配布宣伝も始まった。
 読売10月23~25日では賛成44%反対41%、朝日10月24・25日では賛成39%反対41%の数字が出た。読売は渋いなあ、朝日には救われたと思った。しかしこれは誤差の範囲だろう。投票1週間前で本当の意味で賛否拮抗にたどり着いた。
 さらなる情勢の激変を実感したのが、10月26日(月)からだった。スーパー前、街頭宣伝で出会う人から、単に反対の意思表明ではなく、それこそ激しい怒りの表明が相次いだ。年老いた女性などは泣きそうな表情で訴えてきた。これまで経験したことのない風景だった。
 この26日は、大阪市財政局が270万人の大阪市を機械的に4分割し67万人の4つの政令市をつくったと仮定した場合の行政コストを計算して毎年218億円増えると発表した。これを毎日新聞夕刊が1面トップで報じた。報道の前から大阪市廃止への怒りは沸点に達していた。これに対して、松井市長は「存在しない架空の数字を提供することは捏造」だと非難した。財政局長を激しく叱責たのだろう。東山潔・財政局長は2度にわたって謝罪会見をさせられた。「誤った考え方に基づき試算した数値が報道され、市民に誤解と混乱を招いた」と釈明した。だが市民は誤解していないしまして混乱していない。正しい判断の材料を提供してくれたことに感謝している。よく捏造だ虚偽だといえたものだ。270万の政令市を4つの政令市に4分割した場合の行政コストを国の基準に従って算出したもので虚偽でも、捏造でもない。大阪市長が現実の数字にもとづいた行政コストを出さないもとで、財政局があえて仮定の計算を示してくれたことが市民にとってどれだけ助かったことか。もともと法定協議会で数カ月前から共産党や自民党から大阪市を4つの特別区に分割するとしたら、行政コストが増えるのか減るのか金額はいくらか出せとしつこく迫ってきたのに、いっさい出さなかったのがもともとの問題だ。松井市長がまともな、普通の市長ならば、財政局が架空の数字で計算したものを出したのに対して、きちんと真正の数字をもとにして責任の持てる数字を出すように命じるのが筋だ。ところが正しいものを出せとは言わずに、避難・叱責をするだけだ。行政に責任を持つ人間とはいえない。最低の詐欺師だ。
 財政局の職員が今、松井市長だけでなく、維新の議員からしつこく攻撃、いじめを受けているらしい。予想されたことだ。でも、あえて攻撃を受ける、冷や飯を食わされることが予想されるにもかかわらず、発表に踏み切った財政局職員は偉い。公務員の鏡だ。国土交通省の赤木俊夫さんは国家公務員は国民に雇われて仕事をしているといった。大阪市の職員は市民の負託にこたえて仕事をしている、このことを実践したのが行政コストの発表だ。もし行政コストが増えるのか、減るのかという、大阪市廃止4分割の一番の基本を市民が知ることなく投票を迎えたならば世紀の悲劇、歴史に残る欺瞞となっただろう。行政サービスが減るという批判のこえが大きくなる下で、松井市長は行政コストを不明にしたまま、投票日までもっていけば勝てると思っていただろう。市民がこれをしらないまま投票したらそれこそ間違った判断をした人がたくさん出ただろう。投票の6日前に、財政局職員の決断によって、大阪の民主主義はかろうじて救われた。ほんとうにありがたい。でも期日前投票をした人の多くはこれを知らないまま投票した。
 世論調査は最終土日で終わりかと思っていたら、なんと10月30・31日にも行われていた。ABC・JXで賛成45%反対46・6%と初めて反対が1・6ポイント上回った。9月19・20日比で反対が11・3ポイントも伸びたのだ。くわえて必ず行く層では、大いに賛成が32・4%強く反対36・7%と4ポイントも差がついた。
 最後の1週間、投票の直前まで情勢の激変がつづいていたのだ。5年前とは逆の方向で。じっさいの有効投票では、反対が賛成を1・26%上回った。世論調査とほぼ同じだ。体が不自由な人、病気の人もたくさんいただろう。でもその人たちも、130年の歴史をもつ大阪市を自分たちの代で亡くしてはいけないという強い思いが行動に駆り立てたのだろう。
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大阪市廃止を再び否決、大阪市民の意思(3)

2020年11月12日 15時42分01秒 | Weblog
 2019年4月の知事・市長入れ替えの選挙、議員選挙以後、自民府連、公明党がすすんで維新に屈服した。自民は大阪市議団の巻き返しで大阪市廃止反対をかかげたが、公明党は維新の脅しに完全に屈服の道を歩んだ。あとは毒を食らわば皿まで。こうして維新は、公明、自民の一部府議を従えて最高の布陣を敷いた。公明党支持層が駒のごとくいうことをきけば、圧勝間違いなしの体制ができた。
 くわえて、大阪には維新翼賛体制という独特のものがある。戦時中の翼賛体制さながらのものだ。それは第4の権力といわれるマスメディアが維新をスポンジでくるんで日常的に持ち上げる風景が定着している。12年前の橋下登場以来、在版テレビは異常ともいえる肩入れをしてきた。維新政治を冷静に扱ったテレビ関係者はやがてはずされていった。国レベルで問題となった忖度ではなく、あからさまな翼賛だ。2020年はこれがいっそうすすんだ。
 新型コロナの流行の下で、メモを見ずにしゃべった吉村知事の人気があがった。連日テレビカメラを前に会見をし、やがて各番組に連続出演するようになった。3か月もテレビに出ない日はなかった。その出方は、11月の住民投票のための事前運動であることは明白だったが、テレビは政治利用への警戒はゼロ。それどころか、これが視聴率稼ぎなるとわかると、もう、見識はおろか、見さかいもない翼賛となった。
 吉村支持率は75%に達した。松井氏は後ろにしりぞいて、すべて吉村知事を前にだした。くわえて、大阪のテレビといえば、吉本芸人が8割がた占領しているのではないかという状況下、維新宣伝のにおいをプンプンさせた芸人がはびこった。
 住民投票に向かう中において、コロナ禍の下、住民投票などやってる場合じゃないとの世論は高く、署名運動もとりくまれた。終わった後でも、コロナのもとでやるべきではなかった、維新が負けた要因のひとつにコロナの下で強行したことがあるとの指摘がある。しかし、松井・吉村氏らは、コロナ重視で延期する気はさらさらなかった。なぜなら、吉村人気絶頂を利用して、それを横滑りさせれば、もともとの最高の布陣をさらにかさ上げすることになるからだ。圧勝間違いなしだった。そのために、全国に自慢したコロナの大阪モデルを新モデルに切りかえる時、赤信号が絶対出ないように基準を緩めに緩めた。策謀そのものだった。コロナを利用しコロナ対策を排して住民投票に突入した。株式取引の時間中にイソジンがコロナに効くなどといかがわしいテレビ利用までした。さらに菅首相に、解散総選挙と住民投票の同日選挙までおねだりした。それは総選挙と同日となれば自由な運動は禁止となり、圧勝はさらに決定的なものになるからだ。だがそれは、公明党にとっては、コロナ下で総選挙準備ができない状況ではありえないことだった。菅氏にとっては公明党は20年以上の連立相手だ。
 維新にとって圧勝の布陣、体制の下で住民投票に突入した。9月初旬の世論調査は、賛成が反対を10ポイントも上回っていた。



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大阪市廃止を再び否決、大阪市民の意思(2)

2020年11月05日 10時56分54秒 | Weblog
 港区が反対の率が一番多かったのには正直驚いた。スーパー前で連日宣伝をしていた実感からすると勝てると思っていた。しかし表には現れない維新支持者の強固な存在を考えると、そう簡単ではないとも思っていた。港区では勝てるが、全体では微妙だと思っていた。
  港区は、前回反対23,351票、賛成21,410票、票差は1,941だった。今回反対24,527票、賛成18,491票。投票率が下がるもとで、反対を伸ばし、賛成を大きく減らした。結果、票差は6,036票となった。票差では平野区8,377、住吉区8,045の方が大きいが、投票数に倍前後の差があるので、反対率では港区が57・02%とトップになった。逆に賛成率は42・98%と24区中最低となった。
 その要因を事実で証明するのは難しい。わたしの関係した範囲のことを紹介して考えてみたい。わたしは、地域の仲間と相談して、9月12日(土)からスーパー前で宣伝を始めた。連日やろうという計画だ。もちろん雨の日もあったし、人との約束でできない日もあったが、計43日おこなった。最後の1週間は1日2回やった。1回に付き、最初は1時間、だんだん伸ばして最後は2時間におよんだ。
ライフ、ドン・キホーテ、関西スーパー、サンデイの4か所を順繰りでおこなった。宣伝には、駅前、路地裏、そしてスーパー前と3つが考えられるが、JR弁天町駅は大阪市以外の人が半分以上、いやもっと多いと思われる。路地裏は大切だが、多くの人と接するという点でスーパー前を選んだ。路地裏はもっぱら女性グループが相当深く入り込んでくれた。スーパーの客は全員が地元の人だ。しかも週に最低1,2回は訪れる。多い人はもっとだ。マイクをもって訴えれば、居ながらにして効率よく多くの人と接することができる。人が多いのは午前10時半から12時、夕方4時から6時の2回ピークがある。当初、後半は路地裏に切りかえようと考えていたが、やはり勝利するためには、港区で少しでも前進しなければならない、そのためには宣伝の効率を重視しなければならないと考え、最後までスーパー前に徹した。1時間10回スポット演説をしたとして数えてきたところ、10月31日で621回のスポットとなった。600回くらいやれば勝てるかなあと思っていたので、まあ達成できたかと自己満足していたら、うれしいことに前進して勝利できた。
 手伝ってくれないとか恨みがましいを言わず、一人でもやると決めて、効率の上がらない日もあると割り切ってとりくんだ。地域の仲間が、土日など多い日は5,6人も来てくれて、にぎにぎしくやった。また東大阪や神戸の支援の人も並んでくれた日は首からぶらさげたポスターが華やかだった。
 特筆すべきは自民党系の人との交流、共闘ができたことだ。二人の女性と演説原稿で交流。白髪の紳士とは10月4日、ライフ前で宣伝の鉢合わせ。自民党の「都構想NO」の看板をもち、小さなマイクで一人でやる態勢だった。話し合ったら意気投合、一緒にやろうということに。これ以後、なんどもいっしょにやった。気持ちの良い関係ができた。とびいりで訴えをさせてくれという人もでてきた。ペットボトルの差し入れも2,3度受けた。
 反応が激変したのが10月4日の日曜だった。ハンドマイクで訴え、ビラを配って話しかけると、向こうから反対です、反対ですという人が次々現れた。これは5年前にも経験した。5年前は5月17日が投票日で、その2週間前の連休に反対、反対のシャワーを浴びた。5年前より早い4週間前に反対シャワーを浴びたことは運動に時間的余裕があることを実感させた。
 さらなる激変は、10月26日月曜から、反対の意思表明が怒りをともなって行われるようになったことだ。年老いた女性は、大阪市をなくすなんて許せないと泣きそうな表情で訴てきた。大阪市財政局が大阪市を廃止4分割すると行政コストが毎年218億円かかると発表し、それを松井市長らが糾弾して「謝罪」会見をしくんだことでいっそう反発がはげしくなった。ある日の夜、渡哲也風の男性が、わたしの横にずっと立って、訴えの区切りが来ると、この問題で怒りをぶちまけた。行政コストという根本問題を明らかにせずに投票日までもちこんでやり過ごそうという松井氏らのやり方は住民投票を冒涜するものだ。
 ハンドマイクの訴えでは、権限と財源が豊かな政令指定都市を投げ出し、都市格では一番下の特別区に格下げになる問題、それに伴う権限・財源の縮小とその結果としての住民サービスの低下、大阪市廃止4分割の一番の理由としてさんざん言い立ててきた二重行政がもうなくなったことなどを訴えてきた。加えて、港区の歴史と大阪市の関係も重視した。最後の10日間はこれを中心にするようにした。130年の大阪市の歴史の中では多くの苦難があったが、最大は大阪大空襲による戦災だ。戦争の出撃基地の港区は集中攻撃を受けた。1944年の11月には23万人の人が肩を寄せ合うように暮らしていたが(現在は80,500人)、終戦後の翌年9月にはなんと8,600人にまで激減した。それでも復興に立ち上がったが、戦後すぐに襲ったのが枕崎台風、5年後のジェーン台風だ。港区など湾岸地域は工業用水のくみ上げで地盤沈下が進み、海抜マイナス2~2・5だった。だから台風のたびに2m浸水し、2,3週間水が引かなかった。市岡高校の歴史が教える。コンクリの建物が区役所と市岡高校ぐらいだったもとでジェーン台風が襲い、地域住民が教室を占領し煮炊きをして住み着いた。生徒の授業は3週間たってもできなかった。この港区が全域水浸しの下で、救いの手を差し伸べたのが大阪市だった。大阪市が国に支援を要請したが國は断った。すると、大阪市は国がやる気がないならいい、大阪市単独でやると決断した。港区、大正区など湾岸被災地域を3mの盛り土かさ上げ工事をするというものだ。莫大な経費と長期の時間を要する。今、津波被害の宮城・岩手のかさ上げ工事をみればその大変さは想像を絶する。戦後5年10年も経つと、家を再建する人も多くなる。家の下にジャッキを入れレールで横にずらし、3mの盛り土をして、さらにジャッキを3mあげて元に戻す。それを一軒ずつ、すべてやりぬいたのだ。途方もない工事だ。これによって港区は救われた。水の底からよみがえった。演説をしたライフもドン・キホーテも、かつては水の底、今は海抜1メートル。港区民が今あるのは大阪市の決断によるものだ。大きい大阪市だからこそできた。港区民はその恩に報いなければならない。いま大阪市が存亡の危機だ。1週間後に、数日後になくされようとしている。ここで私たちがやるべきことは、大阪市に救いの手を差し伸べることではないか。かつて大阪市がやってくれたその恩返しだ。恩返しといってもお金ではない、気持ちだ。敬意と感謝の気持ちをもって大阪市廃止反対の票を投じること、これこそが港区民のなすべきことではないだろうか。若い人がこの盛り土かさ上げ工事の事実を知らないのは当然だが、知っているものは若い人にも伝えて、住民投票に向かわなければならないのではないか。このような訴えをした。やや長いゆえに、急ぐ人にはわからなかったと思うが、立ち止まって聞いてくれる人も目についた。心に訴えなければと思った。
 橋下氏は以前、反対派は高齢者の支持が多いから、やがてそれらの人は亡くなり反対が減るのは確実だというようなことを言っていた。たしかに前回反対してくれた、あるいは運動の中心だった高齢者で亡くなった方がたくさんいる。これは相当痛手だった。でも前進して勝った。「読売」によれば18~29歳の反対の率は70代に次いで高い。これは注目だ。
 港区で反対が57%にも達した要因として、運動面以外で考えられるのは、港区が新淀川区に組み込まれたことがある。港区は安治川と尻無川に囲まれている。港区は淀川に面していないのに新淀川区に入れられ、新北区の福島区、北区、都島区、旭区は淀川に面しているのに入れられないという理不尽への怒りもあった。
 このように、大変なたたかいだった。疲れた。だが大阪市民の良識が勝利した。
 


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大阪市廃止を再び否決!大阪市民の意思(1)

2020年11月03日 22時46分08秒 | Weblog
 11月1日、「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」において反対が多数を占めた。投票率は前回より4・48ポイント低い62・35%だった。全体の票数は、反対50・63%69万2996票、賛成49・37%67万5829票だ。反対多数は14区、賛成多数は10区。反対の得票率の高い順に並べると、港区57・02、住吉区55・02、阿倍野区54・92、平野区54・35、大正区53・46、此花区53・16、旭区52・83、東住吉区52・70、西淀川区52・62、天王寺区52・16、生野区51・93、住之江区51・32、西成区50・71、東成区50・40、東淀川区49・70、城東区49・54、中央区49・02、鶴見区48・90、浪速区48・33、都島区47・39、福島区46・33、西区46・19、淀川区44・93、北区43・93。
 びっくりしたのは、私が住んでいて活動した港区が反対の率でトップになったことだ。前回も勝ち、今回も勝つと信じていたが、ここまで行くとは予想外だった。また若者が多く住み高層マンションが多い北区、西区、福島区で、反対が40%台だが、それぞれ2~4%伸ばしていることにも注目した。

 
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大阪市廃止を問う住民投票に勝利!!

2020年11月01日 23時15分56秒 | Weblog
 大阪市廃止、特別区設置を問う住民投票に勝利!最終的票数はまだですが、完全な勝利です。わたしの港区では前回よりも前進して勝利しました。ありがとうございました。
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