共産党の月刊誌『前衛』2013・10月号の、中京大学教授・大内裕和さんの「奨学金問題を通して若者の困難を考える」を読んで、考え込んでしまった。
奨学金については、定年後、全日制高校に再任用で勤務したときに、3年生の大学予約奨学金の説明会に生徒が押しかけて、1日では教室におさまらず2日に及んだというのを担当者から聞いた。授業では、軽い気持ちで奨学金は借りないほうがいいよ、借金を背負うことになるから、アルバイトでしのげるならそのほうがいいよなどといったりした。私は、働きながら夜間の大学に通っていたので奨学金のお世話にならなかった。奨学金を返すのが重荷だと考えていたことが基本にあった。当時は教員になると返済が免除される制度があったが、教員になる気はそのころはなかった。だが、いまは夜間の大学はほどんどない。大阪市立大学も夜間を廃止した。学費が低目の夜間はじゃまなのだろう。
『前衛』の大内論文を読んで受給者の大佐にびっくりした。2012年の日本学生支援機構奨学生の受給者数の一部を紹介しよう。
≪国立大学≫熊本大学全学生の54・5%、福岡教育大学59・2%、九州大学48・7%、愛媛大学48・5%、大阪大学40%、京都大学27%、岩手大学59・9%、北海道教育大学53・1%
≪私立大学≫京都産業大学35・4%、佛教大学40・5%、大阪音楽大学44・4%、大阪経済大学45・6%、摂南大学53・8%、千里金蘭大学53・1%、帝塚山学院大学46・8%
≪東京近辺の大学≫横浜国立大学33・6%、御茶ノ水女子大学27・8%、東京外国語大学28・1%、一橋大学24・5%、千葉大学31・8%、群馬大学39・8%、筑波大学37・5%、首都大学東京33・6%
予想以上に奨学生の比率が高い。加えて地域格差、大学格差がかいま見える。
わたしのころは国立大学の授業料は年間9600円だった。大内教授のころは30万円だった。それが今は、53万円以上で、初年度納入金は80万円をこえる。国立大学だから安いともいえなくなった。私学は文系で初年度納入金が100万から140万円、理系で125万から160万円だ。1960、70年代は授業料値上げ反対の学生運動がさかんだった。学生運動が消滅するとともに、国立・私学ともに急激な値上げがしくまれた。
だが、民間労働者の平均年収(正規・非正規合わせて)は、ピークの1997年の467万円から減りつづけ、いまや408万円(2012年)になった。奨学金の利用率は、1998年に全学生の23・9%だったのが、2010年には50・7%まで上昇している。労働者の年収の減少と直結している。
かつて奨学金は無利子だった。ところがいまやその多くが有利子だ。育英会も学生支援機構へと変わった。2010年度、無利子が38万人に対し、有利子96万人だ。奨学金は金融事業に変身した。貧困ビジネスだ。回収を民間委託している。有利子で月10万円を4年間借りると480万円、3%の利率で半歳額は646万円となる。奨学金は卒業したら正規の就業が前提にしている。ところが正規切り、非正規置き換え、くわえてブラック企業だ。返済困難な人が増えるのは当たり前だ。かわりに親が年金から払える場合はいい。返せないときは延滞金がおそってくる。なんと10%の高利だ。ますます返せなくなる。これはもはやサラ金だ。
少しの希望は、2012年、愛知の学生が「愛知県 学費と奨学金を考える会」をつくって活動していることだ。また、大内教授や弁護士さんが2013年3月、「奨学金問題対策全国会議」を立ち上げた。すぐに変えなければならないのは、延滞金制度をやめさせることとだと大内さんはいう。抜本的な改革として、連帯保証人をつけるのをやめさせること、有利子奨学金の無利子化、給付型奨学金の導入をあげる。
この4点をかかげた署名運動を始めるそうだ。さらに奨学金や学費問題を選挙の争点にもっていきたいという。全く同感だ。OECD経済協力開発機構34か国のうち、17か国は学費が無料で、残りの17か国のうち16か国に給付型奨学金がある。学費が有料で給付型奨学金がないのは日本だけ、おまけに10%の高利延滞金を取る貧困ビジネス型奨学金をやっているのは日本しかない。
諸課題が山積しているが、この問題を早く政治問題化しなければいけない。
奨学金については、定年後、全日制高校に再任用で勤務したときに、3年生の大学予約奨学金の説明会に生徒が押しかけて、1日では教室におさまらず2日に及んだというのを担当者から聞いた。授業では、軽い気持ちで奨学金は借りないほうがいいよ、借金を背負うことになるから、アルバイトでしのげるならそのほうがいいよなどといったりした。私は、働きながら夜間の大学に通っていたので奨学金のお世話にならなかった。奨学金を返すのが重荷だと考えていたことが基本にあった。当時は教員になると返済が免除される制度があったが、教員になる気はそのころはなかった。だが、いまは夜間の大学はほどんどない。大阪市立大学も夜間を廃止した。学費が低目の夜間はじゃまなのだろう。
『前衛』の大内論文を読んで受給者の大佐にびっくりした。2012年の日本学生支援機構奨学生の受給者数の一部を紹介しよう。
≪国立大学≫熊本大学全学生の54・5%、福岡教育大学59・2%、九州大学48・7%、愛媛大学48・5%、大阪大学40%、京都大学27%、岩手大学59・9%、北海道教育大学53・1%
≪私立大学≫京都産業大学35・4%、佛教大学40・5%、大阪音楽大学44・4%、大阪経済大学45・6%、摂南大学53・8%、千里金蘭大学53・1%、帝塚山学院大学46・8%
≪東京近辺の大学≫横浜国立大学33・6%、御茶ノ水女子大学27・8%、東京外国語大学28・1%、一橋大学24・5%、千葉大学31・8%、群馬大学39・8%、筑波大学37・5%、首都大学東京33・6%
予想以上に奨学生の比率が高い。加えて地域格差、大学格差がかいま見える。
わたしのころは国立大学の授業料は年間9600円だった。大内教授のころは30万円だった。それが今は、53万円以上で、初年度納入金は80万円をこえる。国立大学だから安いともいえなくなった。私学は文系で初年度納入金が100万から140万円、理系で125万から160万円だ。1960、70年代は授業料値上げ反対の学生運動がさかんだった。学生運動が消滅するとともに、国立・私学ともに急激な値上げがしくまれた。
だが、民間労働者の平均年収(正規・非正規合わせて)は、ピークの1997年の467万円から減りつづけ、いまや408万円(2012年)になった。奨学金の利用率は、1998年に全学生の23・9%だったのが、2010年には50・7%まで上昇している。労働者の年収の減少と直結している。
かつて奨学金は無利子だった。ところがいまやその多くが有利子だ。育英会も学生支援機構へと変わった。2010年度、無利子が38万人に対し、有利子96万人だ。奨学金は金融事業に変身した。貧困ビジネスだ。回収を民間委託している。有利子で月10万円を4年間借りると480万円、3%の利率で半歳額は646万円となる。奨学金は卒業したら正規の就業が前提にしている。ところが正規切り、非正規置き換え、くわえてブラック企業だ。返済困難な人が増えるのは当たり前だ。かわりに親が年金から払える場合はいい。返せないときは延滞金がおそってくる。なんと10%の高利だ。ますます返せなくなる。これはもはやサラ金だ。
少しの希望は、2012年、愛知の学生が「愛知県 学費と奨学金を考える会」をつくって活動していることだ。また、大内教授や弁護士さんが2013年3月、「奨学金問題対策全国会議」を立ち上げた。すぐに変えなければならないのは、延滞金制度をやめさせることとだと大内さんはいう。抜本的な改革として、連帯保証人をつけるのをやめさせること、有利子奨学金の無利子化、給付型奨学金の導入をあげる。
この4点をかかげた署名運動を始めるそうだ。さらに奨学金や学費問題を選挙の争点にもっていきたいという。全く同感だ。OECD経済協力開発機構34か国のうち、17か国は学費が無料で、残りの17か国のうち16か国に給付型奨学金がある。学費が有料で給付型奨学金がないのは日本だけ、おまけに10%の高利延滞金を取る貧困ビジネス型奨学金をやっているのは日本しかない。
諸課題が山積しているが、この問題を早く政治問題化しなければいけない。