山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

白井聡『長期腐敗体制』(角川新書)を読んで「2012年体制論」を考える

2022年10月25日 17時19分12秒 | Weblog
 白井聡さんの『長期腐敗体制』(角川新書、2022年)と白井聡・望月衣塑子『日本解体論』(朝日新聞出版、2022年)を読んだ。
 白井さんは『永続敗戦論』で一躍注目された気鋭の政治学者だ。望月衣塑子さんは言わずと知れた東京新聞の有名記者だ。
 ここでは『長期腐敗体制』について感想を述べたい。
 まず章立てを記そう。
 序章 すべての道は統治崩壊に通ず――私たちはどこにたっているのか?
 第一章 2012年体制とは何か?――腐敗はかくして加速した
 第二章 2012年体制の経済政策―アベノミクスからアベノリベラリズムへ
 第三章 2012年体制の外交・安全保障Ⅰ――戦後史から位置づける
 第四章 2012年体制の外交・安全保障Ⅱ―「冷戦秩序」幻想は崩壊した
 第五章 2012年体制と市民社会――命令拒絶は倫理的行為である
 見てわかるとおり、この本は「2012年体制」について論じた本である。2012年体制という概念は、政治学者の中野晃一さんが発案し、白井さんが展開したものだ。2012年体制とは推測がつくように、第2次安倍政権以後の政治体制をさしている。中野さんは安倍政権から菅政権に代わるときにこの概念を提起した。
 安倍政権が登場して3、4年で「安倍一強体制」という言葉がメディアに登場した。そして長期政権へと展開していく。長期政権は佐藤、中曽根、小泉政権などがあるが、安倍政権については単なる長期政権ではなく、「一強体制」として認識されていった。安倍政権が終わって、中野・白井氏によってこれが「2012年体制」として捉えなおすことが提起された。
 当然、「1955年体制」が想起される。分裂していた社会党が統一したことを引き金に、危機感を抱いた保守勢力がこれに対抗して自由党と保守党と保守党が「保守合同」をなし遂げた。のちに「55年体制」とよばれる。米英の2大政党制になぞらえてそこまでは行かない1・5大政党制ともいわれた。ただ改憲を可能にする自民党3分の2を阻止していた点で歴史的役割を果たしてきた。1993年自民党過半数割れ、細川経験誕生によって「55年体制」は終わった。
 2009年の民主党政権を経て、2012年第2次安倍政権が登場する。以後の安倍政権が単なる長期政権でなく体制と呼べる政治を築いてきた。白井氏は、安倍政権とその継続の菅政権の特徴を不正、無能、腐敗ととらえる。これはコロナ対策に如実に表れ、迷走をくりかえした。それまでのアベノミクスなる経済政策しかり、ソ連崩壊後対米自立を放棄して対米従属を自己目的化、選挙利用しか念頭にない朝鮮政策、とくにロシア外交の馬鹿さ加減にいたっては安倍信者も手を引く状況だ。
 わたしが「安倍2012年体制」のコアだと考えるのは、ひとことで言えば憲法無視の立憲主義破壊の政治手法だ。内閣人事局をもうけて官僚人事を一手に握ることで、官僚を憲法・法に基づく仕事からトップの顔色をうかがってうごめく忖度官僚に変質させた。日本の官僚制の根本的な変質をなしとげた。そして内閣法制局長官を安倍直系の外交官にすげ変えて、9条解釈を専守防衛をすてて集団的自衛権行使容認へと180度転換というクーデターを実行した。これで9条改憲なしでも実質改憲をなし遂げた。森友、加計、桜を見る会にいたっては、法制度も、国家財政も、国家行事も私物化する。私物化に何の恥じらいもない。腐敗の極みだ。しかしすでに私物化した官僚が法を踏みにじって最高権力者をガードする。民主主義国家の仮面をかぶった権威主義国家だ。これが私のとらえる「2012年体制」の核だ。
 この政治システムと政治思想は体制として出来上がっているので、菅政権にも受け継がれる。無能と腐敗はコロナでいかんなく発揮されたが、受け継いだ「2012年体制」の象徴は日本学術会議議員の任命拒否だ。これは日本学術会議法という法に明らかにそむいて、気に入らない候補者を排除したものだ。戦前の滝川事件に匹敵する大事件だ。法治国家もどこへやら、中国の香港政策といい勝負だ。岸田政権も体制の政治と思想を引き継いでいる。安倍国葬の強行にあらわれている。佐藤栄作元首相の葬儀に当たって、内閣法制局が憲法上国葬は無理だとして、以後ずっと封印されてきた国葬をいとも簡単に解禁した。その手助けをしたのが、安倍によって憲法の番人から政権の番犬に変質させられた内閣法制局だ。「2012年体制」脱却は自覚的な立憲主義回復によってしか成しえない。
 







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腐った自民党政治のシンボル・山際大臣やっと辞任

2022年10月25日 09時52分54秒 | Weblog
 山際大志郎経済再生担当大臣が24日やっと辞任した。本来なら8月の内閣改造で再任してはいけないのに、岸田首相は統一教会問題で正常な判断ができずに再任した。
 山際氏は、安倍、細田、萩生田氏とともに統一教会ともっとも深い関係を持ち日本政治を腐敗させてきた人物だ。彼自身はこの間のふるまいで十分わかるように小物だが。
 自らの行動の事実確認を求められても、物事の分からない子どものように意志が表情に現れない対応をしてきた。この人の頭はどうなっているのかといつも思った。いや、もしかしたら頭を使った高等演技か。学歴を見たら、山口大学獣医学部卒・東大大学院修了というから、相当の悪党だ。
 それが、自らと統一教会に関することについては記憶が一切ないというのだ。ほかの記憶はどうなんだ。もしほんとに記憶喪失なら元から大臣は不可能だ。くわえて文書も電子的な記録も1年ですべて廃棄してきたという。これも本当なら大臣はもとより政治家の資格もない。
 統一教会の総裁と一緒に写真に写っているのを示されて、写っているのだったらそうなんだろうと他人事のようにして認める。記憶も記録もないから進んで責任を取らなくていいかのようにして。ナイジェリアやネパールで統一教会の会合に出席していたのも記憶がなくて、外部から指摘されて「報道に出ているものを見る限り出席したと考えるのは自然」(8月25日)と答えていた。そこでスピーチをしたのではと問われ「記憶していない」と答えた。わたしならネパールに行き、スピーチまでしたら一生忘れない。ネパールに統一教会から旅費を出してもらっていたのではと問われると「自費で出張した」と明言した(19月19日)。記録もなく、統一教会の記憶は忘れているはずなのに、金を出してもらったという指摘にだけは明確に否定する。反社会集団からお金をもらっていたとなったらまずいから。
 とにかく、記憶喪失者のように装って罪を逃れようとする、最悪の人間だ。獣医で東大大学院を出た自民党大臣が、アホを装って、国会と国民をだます。それを罷免もせずに擁護し続ける。もう岸田政権も自民党も腐っているとしかいいようがない。これまで自民党を支持してきた人たちの見識が問われる事態だ。


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ようやく岸田首相が統一教会解散請求の要件変更、まともな法解釈に回帰

2022年10月22日 14時06分52秒 | Weblog
 岸田首相は19月19日の参院予算委員会で、統一教会の解散請求の要件について民法の不法行為も含まれると表明した。従来、刑事罰を受けていないものについては解散請求できないという姿勢をとり続けてきたが、国会での政府追及がはじまり、この前日18日も立憲民主、共産両党から民法を含めないのは法の趣旨に反すると鋭く追及された。
 宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」場合、宗教法人の解散を裁判所が命じられるとしている。この「法令に違反して」が、東京高裁のオウム解散命令判決「刑法等の実定法規の定める禁止規定または命令規範に違反」の「刑法等」を意図的または恣意的に解釈して民法上の不法行為は該当しないと主張してきた。だがこれは到底、公正な解釈とはいえない。被害者弁護団や共産党は「法令に違反して」の「法令」には当然民法も含まれると批判してきた。それが国民的批判のつよまりと事実暴露の広がりのもと、見た目にも統一教会を擁護していると思わざるを得ない態度をもうこれ以上続けられないと判断しての解釈、態度の変更だ。
 これまで長年にわたって、刑事罰を受けていないから解散請求はできないとかたくなに突っぱねてきたのは、はっきり言えば、自民党が反社会行為を繰り返している統一教会と深いつながりがあるのを歴代政府は十分知っているがゆえに、解散請求の前に立ちはだかる仕業をくりかえしてきたといえよう。とくに第2次安倍政権以後の10年間は、悪行が知れ渡った統一教会から「世界平和家庭連合」へと名称変更を下村文科大臣とつるんで強行した。だからますます解散請求に追及の手が及ばないように、子供だましの解釈をつづけてきた。
 岸田氏は、このままでは統一教会とともに自らの政権も火だるまになりかねないとようやく気が付いた。そこで、参院の議論が始まる前に何としても解釈変更をしないとやばいと、夜を徹して、法務省・文科省の関係者を集めて結論を急いだのだろう。まともな法解釈だから難しいことはない。でも長年、統一教会とつるんできた自民党、特に安倍政権でのとんでもない癒着ぶりから、これを清算する見通しもつけつつ解釈変更をするということだから、それは混乱しただろう。
 でも国民的批判の高まりが法解釈を正すことができた。安倍政権によって憲法9条の解釈をねじ曲げて、専守防衛を捨て、集団的自衛権行使容認に踏み込んで以来、憲法も法も権力の一存でどうにでもなるという、立憲主義破壊が常態化してきた。菅政権の学術会議法違反の任命拒否、岸田政権の安倍国葬に憲法違反・法律違反の立憲主義破壊がつづいて安倍政治がもはや体制化してきただけに、今回のまっとうな法解釈への回帰は歓迎したい。
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プラスチック被覆肥料でマイクロプラスチック汚染がすすんでいる

2022年10月19日 22時45分46秒 | Weblog
 日本のコメ作りにおいて、肥料の一粒一粒をプラスチックで覆った被覆肥料が使われている。肥料の養分がじょじょに溶け出し、夏に追肥をする必要がないことから広く使われているようだ。
 だが問題はプラスチック被膜の一部は田んぼから川へ、さらに海に流れ出すことだ。海洋のマイクロプラスチック汚染が大問題になっているときに、便利だ、省力化できるという目先の利益にまどわされて環境破壊をすることは許されない。
 プラスチックではなく自然に分解還元される物質におきかえる研究もやられているようだが、それが出来上がるまではプラスチックを続けるというのは許せない。すぐに規制すべきだ。
 農薬天国のゴルフ場も芝生の養生にプラスチック被覆肥料を相当使っているようだ。これも規制すべきだ。きれいな芝生よりも環境の方が大事だ。環境破壊たれ流しのゴルフ場を放置してはいけない。
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ウクライナ4州併合を強行したプーチンのロシア帝国主義(2)

2022年10月09日 21時18分05秒 | Weblog
 9月11日のウクライナのハルキウ州奪還によるロシアの戦略変更のもうひとつは、ロシア編入を求める「住民投票」と「編入条約」による併合だ。
 9月21日プーチン大統領は、ロシア編入を求める「住民投票」が23~27日におこなわれると発表した。東部2州はいちおう「独立国」と称しているから形ばかりの行政機関があるのかもしれないが、南部2州はロシアが任命した知事や市長が傀儡行政機関を名乗っているのだろう。それらが「住民投票」を求め、実施した体裁をとっている。しかし実態はプーチンロシアが情勢変化に慌てふためいて、ロシア編入を強行してこれ以後のウクライナによる奪還はロシア領土への攻撃だとして戦争の体制を立て直そうとしたものにほかならない。
 「住民投票」の結果は賛成率と投票率をタス通信が発表している。有権者数、投票数、賛成・反対の数など基本的な数字はわからない。発表していないのだろう。東部ルハンスク州は投票率94・2%、賛成率98・4%、ドネツク州はそれぞれ97・5%、99・2%、南部ザポリージャ州は85・4%、93・1%、ヘルソン州は76・9%、87・1%となっている。
 この数字には重大な疑義がある。「朝日新聞」10月1日は、ドネツクの元新聞記者レオニドさん(72)は、自身は投票に行かなかったし、家族や友人も投票した人はいない。ドネツク州の投票率は97・5%だと報じられるが、レオニドさんは「(投票率は)最大でも30%だろう。フェイクだ」と報じている。
 読売オンライン(キーウ・上杉記者)の報告も興味深い。26日までは、親ロ派関係者による戸別訪問ですすめてきたが、最終日の27日は各所の投票所で実施した。27日午後4時に投票終了。各州の親ロ派勢力は26日夜までに投票の成立要件となる投票率50%を上回ったと主張。ヘルソン州のの男性(28)は銃で武装した兵士が1軒ずつ訪問し、「事実上、脅して投票を強要している」と証言している。侵略前のヘルソン市の人口は30万人だが現在は半減。ヘルソンにはロシア兵による略奪でロシア支持は揺らいでいる。投票を棄権すると話していたが、反ロ的な言動をすると拘束されるので、投票を拒否できない状況にある。選管業務をしている人の話として、急遽決まったため、投票用紙が不足していると述べ、「まともな集計をせず、賛成多数の結果を発表するのは目に見えている。ロシアのいつものやり口だ」となまなましい報告だ。
 4州に住むロシア人のなかには急に持ち出された併合住民投票でも賛成票を投じに行く人がある程度いるかもしれない。だが、ウクライナ人、侵略に反対のひと、ロシア併合に同意できない人は多数にのぼるだろう。ロシアに親近感が強い地域でも上のように略奪にあって反感をつのらせた人も多いはずだ。だから住民投票をもちだしてもうまくいかないことは当然予測されたことだ。だから「茶番劇」のシステムが必要だ。予定通りの結果を演出するための段取りは大変だ。相当の経験がないとにわかにはむづかしい。上の、「いつものやり口」という指摘が説得的だ。
 イギリスBBCが、銃で武装した兵士が一軒ずつ訪問して票を集めていたという証言や投票がまったく行われていないという証言も報じている。日本のテレビでも外国の画像だろうが、銃を持った兵士が家々を回り投票用紙に記入させている脅迫投票の映像が流された。これだけでこの「住民投票」が民主的な投票とはいえない「茶番劇」であることを証明している。映像では、各区の投票所で透明のおおきな投票箱に投票する秘密投票まるでなし投票が映し出された。しかもその投票所でも開票場面も映され、投票用紙はきわめて少ないことがまるわかりだった。
 民主的な投票は膨大な事務作業が必要とされる。有権者名簿の整備、投票用紙の印刷、投票所の設営・運営、自由・秘密投票の保障、選挙監視立会人の配置、投票箱の運搬、開票、集計、そのための他の部署からの職員の確保などが必要だ。お金もかかる。人口275万人、有権者225万人の大阪市の住民投票(2020年)は10億円もかかった。
 ロシア主導の「住民投票」が読売・上杉記者がいう親ロ派関係者による戸別訪問投票が26日までの4日間やられたというのはおどろきだ。上杉記者の文脈では4州ともそうだったようだ。5日間という異常に長い投票日は戸別訪問のためだった。4州とも26日夜まで投票率50%を上回ったと親ロ派が主張したから、とにかく戸別訪問で決着をつけようということだったのだ。でも、訪問して説明し記入させて小さい投票箱に投票させる、これを有権者の半分におこなうことが実際可能か時間的に。投票していない地域もあるとの証言もある。もし、26日までに成立要件の50%にめでたく達したとしても、あと1日で40数%もの人が投票所に詰めかけたとはとても考えられない。映像での投票所の様子、投票用紙が透明箱の下にすこしたまっているのからはウソとしか思えない。
 「いつものやり口」で投票率、賛成率をはじき出したのだろうが。あまりに数字が高すぎる。国際的な常識を知らないから、いつもの数字を並べてしまったのだろう。
 4州の親ロ派が23~27日におこなった「住民投票」でロシア編入が多数だったとして、これを受けてロシアが編入を受け入れるという形式を踏んだ。30日、2つの国と2つの州をあわせてロシアに併合する「編入条約」にロシアのクレムリンで調印した。
 これを当然ながらウクライナのゼレンスキー氏は「茶番だ」というし、国連のグテレス事務総長は「併合をすすめるいかなる決定も国際的な法的な枠組みと両立しない。国連の目的と原則を侮辱している」ときびしく非難した。
 2月の侵略開始の時、プーチンは東部2つの「独立国」との集団的自衛権の行使だとして侵略を開始した。その際、ウクライナ民族主義者の「集団殺害から住民を守るため」、さらに「ロシア、そして国民を守るためにはほかに方法がなかった」と主張していた。
 この時も国際法的な正当性はまったくなかったが、ロシア・プーチンはインチキ住民投票で民意を捏造して4州の併合を強行した。グテレス氏がいうように国連憲章違反、国連を侮辱した最悪の行為だ。





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ウクライナ4州併合を強行したプーチンのロシア帝国主義

2022年10月05日 14時38分44秒 | Weblog
 ロシアは2022年9月30日ウクライナ4州併合を強行した。プーチン大統領は29日、ヘルソン,ザポリージャの南部2州を「独立国」と承認し、30日、2月に「独立」承認していた東部ルハンスク、ドネツクと合わせ4州を併合する
「編入条約」を親ロ派勢力と調印した。
 プーチンは、東部2州の親ロシア勢力が「独立国」と称していたのを承認し、その3日後にウクライナ全土への「特別軍事作戦」と称する侵略戦争を始めた。 「独立国」であるルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国との間の集団的自衛権行使として「特別軍事作戦」を始めたという論建てだった。
 プーチンはウクライナ制圧は短期間でできると踏んで全面侵略に出たが、ウクライナ側の抵抗にあって首都キーウ制圧作戦を投げ出した。戦況は変化し、ロシアは東南部に力を集中した。
 ところが9月11日、ウクライナ・ゼレンスキー大統領はロシアに半分近く占領されていたハルキウ州の奪還を宣言した。ロシア軍は崩壊状態で退散した。    これを機にプーチンは、キーウ撤退に次ぐ戦略の変更に出た。
 ひとつは死傷者の増加と士気の低下を前に、戦力増強のために「部分的な動員令」の発令に踏み切った。これまでは戦争ではない「特別軍事作戦」だったから国民を動員する戦争ではないといって世論をごまかしてきた。だが戦況が思わしくなく、志願兵だけではまかないきれなくなった。そこで予備役を動員せざるを得なくなった。30万人動員予定だという。「特別軍事作戦」の破綻を告白したようなものだ。志願兵による国民からは遠い「軍事作戦」が、突如、身近な「戦争」になった。自分に、家族、親族に召集令状が来るかもしれないという恐怖に包まれることになった。道理のない「戦争」に国民全体が向き合わなければならなくなった。
 しかも予備役招集とはごまかしで、予備役に登録されていない大学生、年齢基準以下の若者、高齢者や、抗議活動をした人などに手当たり次第に徴兵している実態が報告されている。こうなると恐怖心が際限なく広まる。「朝日」10月5日付けによれば、2014年に親ロ派が「独立」宣言をした東部ドネツク州では、すでに2月の侵攻開始直後から親ロ派勢力によって徴兵を始まっていた。給水所に並ぶ男性を連行したり、爆発物があるとして避難指示をしたうえで出てきたところを捕まえるなどの報告がある。多くの家庭では夫や息子がいる場合は見つからないように 細心の注意を払って息をひそめているという。
 徴兵への抵抗も拡大している。公然とした街頭抗議活動も全国で起きた。2000人以上が拘束された。抵抗は外国への脱出という方法もある。飛行機で脱出するほかに、陸路からはジョージアやカザフスタンへの大移動がおこなわれている。何十キロも渋滞が起きるほどの実態が報告されている。
「部分的な動員令」で無理やりかき集めても士気は低く、脱走も起きるだろうし、「永続的な動員令」へと変更を迫られるだろう。




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日本政府・日銀は足元見透かされている

2022年10月04日 21時33分34秒 | Weblog
 9月22日政府は何兆円もの為替介入を「断固として」行い、その日は140円レベルにあげたが、すぐに戻す事態になった。10月初旬には145円で完全に元の木阿弥だ。日本政府が単独で、何兆円も使って、何度やっても、為替相場を永続的に操作することは不可能だ。円安が強まれば輸入物価の高騰は続き、国民生活はさらにしめあげられる。
 そもそも日本だけとなったマイナス金利に加え、異次元の量的金融緩和を続けているのはもはや日本だけとなった。しかも黒田日銀総裁は、あと2、3年はこれをつづけると世界に公言したのだから始末が悪い。世界に対して安心して円売りをしてもいいですよとすすめているようなものだ。
 政府が日銀と反対の方向で為替介入をしてもやる前から意味がないことはわかっている。でも政府が為替介入に踏み切らざるを得ないのはわかる。安倍氏が日銀を政治的道具として利用してきたのだから、いまさら日銀の独立性もなかろう。談判して協調しろと言ったらよかろう。

 

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