山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

日本政府は犯人・イスラム国側と交渉していないし、する気がない

2015年01月30日 22時23分38秒 | Weblog
 今日(2015・1・30)菅官房長官が、記者会見で重大なことを述べた。述べざるをえなかったというのが真実だ。
 囚われている後藤健二さんの妻が29日夜、「イスラム国」の脅しのもとで声明を発表することになった。その声明の中で、1月20日の2億ドル要求のあと「私とそのグループの間で数通の電子メールのやりとりがあり、私は彼の命を救うため、たたかってきました」というくだりがある。12月2日に妻に身代金の要求がメールであったという報もあったはずだが。今日はとにかく20日以後のやりとりが公になった。つまり「イスラム国」が後藤さんを捉え、通信機器を取り上げた段階で妻へのメールが可能になった。正確にはいつから妻への要求がなされるようになったのかはわからないが、メールがあったということは、「イスラム国」のメールアドレスもわかったということだ。後藤さんの妻は早い段階で外務省に伝えていたのだから、外務省=安倍内閣は「イスラム国」への連絡方法は早くからわかっていたはずだ。
 ところが、今日の記者会見で菅官房長官は、「イスラム国」と接触する気はあるかと問われて、「ありません」と答えた。あぜんとする発言だ。そういえばこれまで、「緊張感を持って情報収集につとめる」というのが政府の決まり文句となっていた。交渉するとはついにいっていない。公然と、交渉する気はないといったのだ。ヨルダン政府におまかせ、さらに宗教指導者、部族長などあらゆるチャンネルをつかって救出に努力しているというが、直接交渉するチャンネルがあるのに、それを使おうとはしない。宗教指導者や部族長にお願いするには、タダというわけにはいかない。外交には大金が必要だ。

 わたしは、「イスラム国」の脅迫を外務省につたえた妻の声を無視したと前に書いていたが、政府がいつからか不明だが昨年中に対策室、ヨルダンに現地本部ををつくって対応していたことを先日初めて知った。政府は隠していたから知ることができなかった。フリージャーナリストの常岡浩介さんが、新聞になぜ載せないのかと要求しても、外務省が認めようとしないため確認不能ということで載らなかったといっていた。政府はひた隠しにしていた。誘拐事件で警察に知らせると人質を殺すぞと脅されるのと違って、新聞に載ったら後藤さんの命が危ないという事件ではない。なのに秘密にしてきたのは、安倍首相官邸の総選挙対策だった。選挙後も秘密にし、中東外遊にでかけた。さらに「イスラム国と戦う周辺国に支援を2億ドル贈る」と挑発的発言をした。当然ねらっているのを分かったうえで、あえて挑発した。首相の周りにその原稿に待ったをかける人物はいなかった。
 
 で、世界的問題になってどう対応したかといえば、みずからは交渉のチャンネルをもっていながら、そこからは逃げ続けた。どういうことだ。
 その一方で、国会で、安倍首相は自衛隊を救出のために使えるよう法整備をすすめる意欲を示している。あきらかに方向性が違う。あわよくばこの事件をつかって自衛隊派兵に道をひらこうという考えが見え見えだ。
 そんなことを裏で検討する暇があったら、後藤さんの妻に入ったメールアドレスを使って直接交渉をすべきだ。2か月も交渉ひとつしていない。対策室をつくって交渉しないのであれば何の意味もない。
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創価学会が都構想住民投票に指図

2015年01月30日 14時38分46秒 | Weblog
 1月26日、創価学会は幹部会合を大阪市内で開き、5月17日の都構想をめぐる住民投票について、自主投票の方針を決め、公明党大阪府本部の幹部を呼び、伝えた(『朝日』1月27日付)。
 このニュースにはびっくりした。昨年の総選挙に絡んで、首相官邸の描いた絵に沿って維新との間で密約を結んでいたこと、否決されて存在しなくなった都構想の協定書をよみがえらせ、法定協および2月議会で公明党府市会議員に賛成させるという政治介入をおこなった。公明党は人が納得できる説明はできていない。できるはずもない。しかし都構想そのものには従来と変わらず反対だから安心してと弁解するのがやっとだった。
 だが今度は、都構想の評価自体にも手を突っ込み、反対姿勢を強調しすぎないように公明党府本部に求めた。創価学会は公明党の支持母体だというが、大事な点では指図をするのだ。
 これで喜ぶのは橋下維新だ。公明党創価学会を半分崩した、これでいける、と大喜びしているだろう。
 創価学会がこういう決定をしたのは、4月の大阪府議選、市議選で公明党候補を当選させるために、都構想賛成の保守票を取り込むためだという。密約による豹変と同じ理屈だ。だが、大阪都構想とはささいな政治判断なのか。ちがう。
 大阪都構想が実現すれば、125年の歴史を持つ大阪市は消滅し、政令指定都市として大きな権限と財源を持っていたのが、権限も財源もない「半人前の自治体」に格下げされるのだ。大阪市の市税(個人市民税・法人市民税・固定資産税が主なもの)は6220億円ほどある(歳入全体としては国からの交付金や公債収入、その他が加わる)。大阪府税収入は1兆507億円ほどだ。大阪市は大阪府の6割ほどの税収を持っている。ところが大阪都(法的には大阪府のまま)になると、6219億の75%は府に吸い上げられ、純粋の自主財源は1550億円程度に落ち込む。もちろん吸い上げられた分からいくらかは戻されるが。とにかく法人市民税ととくに税収の中心だった固定資産税が吸い上げられる。政令指定都市でもなくなり、権限はない、財源はない、ないないづくしのスカスカ自治体になる。
 そんな重大な変更なのだ。125年の歴史が途絶えてしまう。その判断をする住民投票の内容的評価を公明党議員の選挙と天秤にかけて、評価はさておき、あんまり反対するなとくぎを刺す。この退廃をなんというべきか。
 もうひとつ。あらためて政教一致があぶりだされた。というより、みずから政教一致を宣言した。政教分離は民主主義の原則、憲法の原則だ。公明党は現に政権を握っているのだから、創価学会という宗教団体が公明党に指図するということの反民主主義は重大だ。
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犯人グループとは接触していない日本政府

2015年01月25日 20時52分50秒 | Weblog
 イスラム国に拘束されている湯川春奈さんが殺害された。「イスラム国」は初めから交渉をするつもりもなかったことを示している。イスラム国は今度は後藤さんと引き換えにヨルダンの刑務所にいるリシャウイ死刑囚の釈放を要求した。
 後藤さんの母は、「交渉の具体的中身などは伝わってこず、もどかしいが日本政府を信じている」という。テレビでも、交渉の中身も進展具合もでてこない。注意深く見ても、なにもない。
 はじめてこれにふれたのが、25日の記者会見で、菅官房長官がイスラム国との接触は「ありません」と答えた。これが唯一だ。26日の『朝日新聞』では「『イスラム国』側との意思疎通について、菅官房長官は25日の記者会見で『ありません』と否定した」となっている。
 「人命第一」とか「緊張感を持って」などといいながら、接触もできていなかったのだ。そもそも後藤さんの事件が起きてから3か月近くたっているのだ。日本政府がターゲットにされてはじめて対策本部をつくり動き出したが、情報を集めるだけでそれより前にはすすんでいない。
 
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テロ集団を挑発し招き入れた安倍首相の責任は重大だ

2015年01月23日 23時07分21秒 | Weblog
 日本人二人を「イスラム国」が拉致拘束し身代金を要求している問題で、ここに至る裏の事情が明らかになるにつれ、安倍首相、安倍内閣の責任が大きいことがはっきりした。
 昨年10月末に、ジャーナリスト後藤健二さん(47)の消息が途絶え、11月には「イスラム国」側から日本の妻に拘束しているとの連絡があり、家族はこれを外務省に伝えていた。以後何度も妻への接触があり、今年1月になって、20億円の身代金要求までするようになっていた。外務省・政府はすべて掌握していた。
 これはわれわれの知るところではなかった。外務省は後藤さんの妻に何の支援もしていなかった。自己責任だとして放置していたのだ。
 ところが、20日午後2時50分、インターネット上に2億ドルの身代金を払わなければ2人を殺害するとの映像が流され、内閣はあわただしい動きをはじめた。なぜもっと早く対応を始めなかったのか。1月早々にも対策を練るべきだった。
 20億円の身代金要求がなされていることを前提に、安倍首相は16日、中東外遊にでかけた。17日にはエジプト・カイロで「ISIL(イスラム国)と戦っている周辺国に2億ドルの支援を約束する」と演説した。
 すでに拉致拘束され身代金を要求されているのに、その相手を名指ししてそれとたたかうために2億ドルを援助すると見栄を切った。直接的な軍事支援ではないから人道支援という解釈だろうが、純粋な人道支援ならばそういうべきであって、イスラム国とたたかうために支出するというべきではない。だが安倍首相の意図は、支出形態は人道支援という区分けになるが、イスラム国への軍事攻撃のクラブの一員としての自覚のもとにカイロ発言をしたのだろう。挑発行為はすべきではないのに、無頓着というより、確信的に発言した。その責任は重大だ。中東外遊もすべきではない。阪神淡路大震災の記念行事にこそ行くべきだった。
 安倍内閣の側から、後藤さんの妻への身代金問題、それを放置したことの責任、にもかかわらず中東外遊し、イスラム国の側からは米英「十字軍」に加入したとみられる行動発言の是非について、まったく説明がなされていない。それを問わない新聞テレビも情けない。
 
 イスラム国は、イスラム教の教義からはほど遠い犯罪テロ集団であることは明らかだ。かつて世界史を教えていたころ、岩波文庫の「コーラン」を読んだ。平等主義、弱者へのいたわりを強調している点に共感を覚えた。イスラムの宗教指導者の影響も及ばないテロ集団なのだろう。そのことはすでに分かっているのだからよく考えるべきだ。米英十字軍にくみするべきではない。従来の日本の中東外交がつちかってきた非軍事の信頼を壊すべきだはない。
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「イスラム国」が日本人を拘束、身代金要求

2015年01月20日 23時32分30秒 | Weblog
 安倍首相が阪神淡路大震災20周年の行事に参加せず、中東歴訪に立ったことにわたしは違和感をいだいていた。
 今日(2015・1・20)、「イスラム国」がかねてから拘束していた日本人2人に身代金2億ドルを72時間以内に払わなければ、2人を殺害するとしたビデオ映像を公開した。身代金を要求する許せないテロ行為だ。
 「イスラム国」は日本がアメリカなどの「十字軍」に加わり、2億ドルを支出したと非難している。日本政府は難民支援として2億ドルを援助することは確かだ。ところが安倍首相は、エジプト・カイロでの記者会見(17日)で、「ISIL(イスラム国)と戦う周辺各国に総額2億ドル程度支援を約束します」「イスラム国への対応としてイラクやシリアなど最前線にある国や周辺国の難民・避難民支援などに総額2億ドルの無償資金協力を行う」「ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止める」と発言していた。あきらかにイスラム国との戦いに2億ドルを支出すると演説した。高揚した気分で大見得を切ったのだろう。
 だが、この発言がテロ勢力に利用された。あくまでも難民支援だとの説明があとから効くのかどうか。心配だ。
 
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あきれはてる安倍内閣の沖縄に対する小児病的対応

2015年01月19日 22時06分20秒 | Weblog
 2014年11月の沖縄知事選挙、12月の総選挙での、沖縄県民の辺野古基地建設拒否の断固たる意思表示への安倍内閣の対応は、大人の風格を欠いた、小児病的なものに終始している。国民としてなさけない。
 翁長新知事が首相および官房長官に会見を何度も申し入れているにもかかわらず、「会う必要はない」といってすべて拒否。逃げているというのが真実だ。沖縄県議会の代表団も首相官邸への意見書提出をもとめた(1・16)が、官邸外で事務職員が意見書を受け取ると返答したため、代表団は意見書を持ち帰った。わざわざ上京したのに、玄関にも入れないという冷たい仕打ちをしたのだ。
 2015年度予算案では、辺野古への新基地建設費として、14年度当初予算と比べて80倍の1736億円を計上した。翁長知事の会見要請から逃げながら、新基地建設は「粛々とすすめる」というのだ。だが、肝心の地元名護市の市長許可をひとつもクリアしていない。予算を付けたからといって自動的にすすむものではない。翁長知事も前知事の承認に瑕疵がなかったかどうかこれから厳密に検証する。
 15年度予算では、沖縄振興費が前年度に比べて162億円減で5年ぶりの削減となった。明らかに翁長知事への政治圧力だ。菅官房長官は、翁長知事当選とは関係ないというが、誰もそうは思わない。陰湿ないじめだ。
 15日には、名護市辺野古での基地建設に向けた作業を再開した。沖縄の民意をことごとく踏みにじる行為だ。
 一連の事態で、沖縄県民の怒りにいっそう火がついている。常識ある人が考えれば、もはや沖縄が安倍内閣に屈伏することは万が一ない。だが安倍内閣には強権的な方法で突き進むしか考えられないのだ。視野狭窄状態だ。このまま、4年のうちに憲法改悪までいきたい、それだけだ。
 だが矛盾は激化するばかりだ。年金基金まで投入して株高を演出しているから今は支持率がとどまっているが、政治的矛盾は蓄積する一方だ。いかがわしい、詐欺師的な橋下持ち上げにまで手を出して、そのしっぺがえしもそう遠からず食らうことになるだろう。
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安倍改憲の一番の助っ人に指名された維新、都構想は憲法改悪の予行演習

2015年01月17日 21時15分22秒 | Weblog
 安倍首相は14日(2015・1・14)、関西テレビの番組で「新しい憲法を自らの手で書いていく」と発言し、任期中の明文改憲への執念を示した。その際、「どの条文ということはこれから議論していくが、維新の党あるいは他の党も賛成していただけるものがあればいい」と述べ、維新への特別の期待を表明した。
 改憲でいちばん頼りにしていた次世代の党(もれももとは維新)が壊滅状態になったので、維新のみ名前をあげて期待感を表明した。公明党ではなく維新というところに重要な意味がある。公明は捨てられたら困ると、よけいににじり寄る関係になるだろう。
 この文脈から、死んだ大阪都構想をよみがえらせるために、創価学会・公明党本部を動かして、公明党大阪府市議団を維新に屈伏させたことの意味が、よりはっきりしてきた。大阪都構想をめぐる公明党の屈伏は、安倍首相官邸のさしがねだったことがもはや動かしがたい。維新と橋下氏の政治生命を浮かび上がらせるための、明文改憲のための策謀だった。
 安倍発言を受けて、橋下氏は15日の記者会見で、「憲法改正は絶対必要だ。もう安倍首相しかできないと思う。できることはなんでもしたい」と改憲協力の要請に応じることを表明した。
 くわえて、5月に行われる見通しの住民投票について、橋下氏は、改憲で必要になる国民投票を引き合いに出して、「大阪は同じような形でこれから住民投票をやる」「まあその予行練習ですよ、大阪都構想は」とのべ、都構想の住民投票を憲法改悪の国民投票の予行演習と位置付けて取り組むことを明らかにした。予想を超える大政治闘争になりそうだ。

 
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天皇の発言に注目(3)

2015年01月16日 09時59分43秒 | Weblog
 2015年の天皇の新年のあいさつの一節も注目に値するものだった。

「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています。」

 戦後70年にあたり、安倍極右内閣が、歴史修正主義的な首相談話を画策しているもとで、天皇の発言は意味を持つ。天皇が、亡くなった国民、日本人といわずに、亡くなった人々というのにも意味がある。日本国民とされた朝鮮人も、アジア諸国民も含めて追悼の意をこめている。
 とくに注目されるのが、「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び」のフレーズだ。1945年の敗戦に至る直接的起点が、1931年9月の満州事変だからだ。足かけ15年、「15年戦争」とも呼ばれるゆえんだ。問題の起点をもっと前に求めることもできる。1945年から50年さかのぼって1994年の日清戦争殻をひとくくりと考え、50年戦争ととらえる研究者もいる。
 70年の節目にあたって、満州事変に始まる侵略戦争の歴史を十分に学ぶことは、今とこれからの日本を考える際に欠かせない。安倍首相らの極右派は、1931年からの(もちろんそれ以前からの侵略もあるのだが)中国侵略の責任をどこかへおいて、1941年12月からのアジア太平洋戦争が欧米からのいじめに対する自衛戦争だったといい、侵略とはみとめない。戦争の拡大は中国侵略の延長であり、アジア太平洋戦争は中国にを中心とするアジアにくわえて太平洋地域をも占領支配しようとしたれっきとした侵略戦争だ。
 天皇が、満州事変からの戦争の歴史を学べというのは、これが切っても切り離せないひとまとまりの歴史だという考えだからだ。天皇の示したまともな歴史観に立って、戦後70年の議論に多くの人が参加することが期待される。
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橋下維新の大阪破壊を許していいのか

2015年01月15日 16時46分54秒 | Weblog
 13日(2015・1・13)大阪府市法定協議会がひらかれ、昨年10月に府市両議会で否決されたのと変わらないものを提案し、首相官邸が仕組んだ裏取引で抱き込んだ公明党の賛成を得て、協定書を決定した。2月議会に提案して、5月17日に住民投票へともっていく動きだ。
 大阪市よりも大きい横浜市でも、京都市でも、神戸市でも、市を破壊するという構想はない。長年にわたって市民の努力でつくりあげられた歴史的都市だから。大阪市はそうではないのか。ちがう。現在の大阪城の建設ひとつとっても市民の力の結晶だ。
 橋下という特異な政治家が登場し、大阪市という存在が悪の権化であるかのようにいい、市民のなかに二重行政で大阪経済が衰退したかのように吹き込んだ。実際は関西財界が大阪を捨てて東京へすり寄った結果だ。橋下氏は、この7年、これを止める策をいっさい打っていない。
 議会での協定書審議では、毎年4000億円の二重行政効果はウソで、1億円程度の効果しかないことが明らかになった。大都市局は「効果額を算出していない」と公式答弁をている。算出したらとんでもないことになるから。
 いまでも、都構想の実施の理由は「二重行政をなくす」、これが一番のスローガンだ。市民の中にも二重行政をなくすために大阪市を廃止するのもやむをえないと思っているひとが相当いる。新聞の街の声の中にもはっきりでている。よくもこれだけ、いかがわしい二重行政論が浸透したものだ。
 大阪市を廃止して、5つの半人前の自治体をつくるのが都構想だ。財源、権限、財産をとりあげられて、区の間に財政格差がさけがたく出る。今ならば、どこに住んでいようと同じ行政サービスを受けることができる。これが根底からくつがえされる。財政調整をするというが、同じには絶対ならない。豊かな東京でも差が出るのだから、大阪の将来は惨憺たるものになるだろう。
 わたしの住む港区は湾岸区にするのだそうだが、ここの区議会の定数は12人だそうだ。30数万人の自治体の議会が12人。ここにも橋下の狙いがみえる。一人の指揮官府知事と特別区の区長中心の、住民自治を形骸化した「自治」の姿だ。
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天皇の発言に注目(2)

2015年01月04日 23時10分46秒 | Weblog
 天皇の発言には注目すべきものがたくさんある。2013年12月の天皇誕生日の発言では、以下のような傾聴に値するものがあった。

「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革をおこなって、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」

 天皇は憲法を遵守擁護する発言をことあるたびにおこなっている。もちろん憲法遵守発言は、憲法99条(憲法尊重擁護の義務)に定められた「天皇又は摂政及び国務大臣(=安倍首相)、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」に沿ったもので当たり前のことだ。ところが安倍首相を筆頭に憲法99条違反が日常化しているがゆえに、天皇の憲法遵守発言が光るのだ。
 1年あまり前の、誕生日における発言は、とりわけ意義が大きい。安倍らとは違って、当たり前ではあるが、憲法をつくったのは日本だとしたうえで、民主的改革をおこなって今日を築いた、その改革改善の努力に感謝する、さらに知日派の米国人=GHQ民政局のひとびとの協力という表現でアメリカの役割も適切に評価している。安倍氏ら改憲派とは深い深い断絶がある。
 だからこの発言に、安倍氏の側近である八木修次氏(ウルトラ右翼「学者」の代表格)はこの天皇発言にかみついた。日頃、天皇制をもちあげる八木氏が天皇の意思をくみとるどころか、日本独占資本とアメリカの支配、憲法改悪・軍国主義復活を第一に考えていることが如実にあらわれた一件だった。NHKもこの大事な部分は報じない。
 
 わたしがまだ現役教師だったころ、なんどか生徒に紹介した天皇発言がある。2001年の天皇誕生日における発言だ。サッカーのワールドカップが日韓共催で行われることにかかわって、韓国への関心、思いを語った部分だ。

 「日本と韓国との人々の間には、古くから深い交流があったことは、日本書紀などに詳しく記されています。韓国から移住した人々や、招へいされた人々によって、様々な文化や技術が伝えられました。宮内庁楽部の楽師の中には、当時の移住者の子孫で、代々楽師を務め、今も折々に雅楽を演奏している人があります。こうした文化や技術が、日本の人々の熱意と韓国の人々の友好的態度によって日本にもたらされたことは、幸いなことだったと思います。日本のその後の発展に、大きく寄与したことと思っています。私自身としては、桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると、続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています。武寧王は日本との関係が深く、この時以来、日本に五経博士が代々招へいされるようになりました。また、武寧王の子、聖明王は、日本に仏教を伝えたことで知られております。
 しかし、残念なことに、韓国との交流は、このような交流ばかりではありませんでした。このことを、私どもは忘れてはならないと思います。」
 
 よくかみしめて味わうべきことばだ。安倍氏を筆頭にする極右の人々は、天皇発言をすこしは学ぶべきだ。
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天皇の発言に注目

2015年01月03日 23時02分02秒 | Weblog
 天皇の発言に注目している。昨年(2014)の天皇誕生日における発言をテレビのニュースで聞いていて、あっとおもった。それは、天皇が「みなさん」という言葉を使ったことだ。これまでの天皇発言は、国民に対して「みな(皆)」とよんでいた。
 今年(2015)の新年の一般参賀のひとたちへの発言でも、「新しい年をみなさんとともに祝うことをうれしく思います」と語った。以前は「皆と」と表現していた。
 宮内庁のHPでみると、「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」でも、去年までは「皆が」という表現があった。今年はそれがない。だが「みなさん」もない。ということは、新年に当たっての感想と一般参賀での発言は別なのだろう。
 誕生日の記者会見での発言(2014)をHPでみると、わたしがテレビニュースで聞いた「みなさん」という言葉がない。これも記者会見での公式発言部分と、あいさつ的な発言との違いなのだろう。
 いずれにせよ、天皇発言で、上下関係をあらわす「皆が」「皆と」という表現をとらず、「みなさん」と表現していることは重要な変化だ。
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