山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

韓国映画・「牛の鈴音」

2009年12月23日 17時23分43秒 | Weblog
 韓国のドキュメンタリー映画「牛の鈴音」を観た。韓国で空前の観客動員をした映画だ。年老いた農民夫婦と30年も働き続けた牛との物語だ。物語といっても何の変哲もない農作業の日々を描くドキュメンタリーだ。
 おじいさんは、不自由な体をおして毎日、田や畑へ向かう。牛の歩みも遅い。おじいさんは機械を使わず、農薬をまかないから、除草に驚くほど手間がかかる。
 毎日のように牛に食べさせる草を刈る。牛に農薬のかかった草を食べさせるわけにはいかないと、農薬を拒否する。おばあさんは、除草剤を使え、私は農作業がつらいと抗議するが、おじいさんは頑固だ。
 おじいさんの顔にきざまれた皺は深い。とても存在感がある。どんな名優でも演じることは不可能だ。河瀬直美監督が、奈良の森を舞台にした映画で有名な賞をもらったのを以前見た。そこに登場するおじいさんは、もちろん俳優が演じているのだが、老けたつくりにしているが妙に体が力強くなまめかしく、違和感があった。「牛の鈴音」のおじいさんは片足がやや不自由だ。それを押して、はいつくばりながら農作業を続けてきた長年の苦労が、頭から足の先までにじみだしてる。40年も生きた牛は老衰で死ぬ。おじいさんも病を得る。
 静かな映画だ。ナレーションがない。音楽もない。音は、おじいさんおばあさんの会話だけだ。といってもおじいさんはほとんど相手をしないから、おばあさんの一方的な愚痴がつづく。牛の首につけた鈴の音がここちよく画面に響く。うぐいすの鳴き声も。それに画面の色がいい。田植えから稲刈り。里山にかこまれた農村の風景が実に色あざやかだ。
 静かな映画だが、ひきこまれる。ゆったりした気持ちを取り戻させてくれる。
コメント (2)
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