湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

矢吹丈に会いに行った日

2007年01月18日 | 日常生活
 すっかり1~2日遅れのエントリーが定着してきて、こんな感じが楽でいいかななんて自分でも思いはじめていたのですが、さすがにそろそろやばい気がしてきました。最近はすっかり記憶力が低下して、ほんの数日前のことさえ思い出すのが覚束なかったりもしますからね。もっともそうは言ってもこのブログは別に日記ではないんで別にその日起こったことを書く必要はないんですけど、それでもやはり一度流れが途切れたらそのままずるずるといってしまいそうなので、ここらでぼちぼちまた少しずつ流していきたいと思います。

 かなりどうでもいいことだけれども、この日は仕事帰りに実家に寄って矢吹丈に会ってきた。この前日に『梶原一騎伝』を読み終えたら、なんだかやたら『あしたのジョー』が読みたくなってしまったのだ。

 たまたま手に取ったのは、ライセンスを持たない丹下ジムをボクシング界に強引に認めさせるために、ジョーがウルフ金串に喧嘩をしかける巻。へらへらと笑いながらウルフを挑発し、放たれたストレートにあわせてクロスカウンターを叩き込むその瞬間に、えーと、いい歳してしびれた。

 昔、部屋にあった大量のマンガ本を処分する際に、これだけは残しておこうと思ったのがこの『あしたのジョー』と手塚治虫の『ブラック・ジャック』だった。あれから15年、本当に久し振りに『あしたのジョー』を読んだわけだけれども、これはやはりすごいマンガなのだとあらためて思いましたね。この2つのマンガを残しておくことを決めたのは、どちらかというと直感的にだったのだけれども、これはかなり的を得た直感だったような気がする。

 で、気づいたらあっという間にその巻を読み終えていた。そのまま他の巻にも手を伸ばしたいような気もしたのだけれども、結局その1巻だけでやめておいた。何冊かを江ノ島に持ち帰ったりもしなかった。うまく言えないけれども、そのほうが良いような気がしたので。

 『あしたのジョー』は梶原一騎とちばてつやとの真剣勝負によって生み出された傑作だと言われている。梶原一騎は自分の書いた原作には一切手を入れさせない作家だったらしい。もともと強引な気性の持ち主であり、また『巨人の星』で成功をおさめた彼にはそういうことが可能だったのだ。しかし、ちばてつやはその梶原一騎と真っ向から対峙した。物語に膨らみをもたせるために積極的に原作に手を入れた。ジョーがドヤに流れてきて丹下段平と出会う(ぶちのめす)最初の名シーンも実は原作にはないものだったらしい。連載がすすんでもまったく原作通りに物語が進行しないことに梶原一騎は激怒した。しかし結局彼はちばてつやに自分の原作に手を入れさせることを認めた。それはすなわち、ちばてつやの情熱と力量を彼が認めたということだった。

 そうして『あしたのジョー』は梶原作品としては異例中の異例、漫画家が原作をいじることを許された唯一の作品となる。そして二つの相反する個性が交わることによって、素晴らしい展開をみせる。

 二人は多忙の合い間をぬい、できるだけ顔を合わせて打ち合わせをするようにした。しかしそれでも梶原の意図をちばが誤って解釈したことも少なくなかったらしい。力石徹を梶原はジョーと同じような体形の持ち主と考えていた。それをちばがジョーよりかなり大柄に描いてしまった。元々二人を闘わせるつもりでいた梶原はそのことをかなり悩んだという。しかし、それが後に階級をさげて矢吹丈と闘うためのあの壮絶な減量シーンを生み出すことになる・・・

 今度時間のあるときにあらためてまた丈に会いに行ってみよう。そして次はその丈と力石の闘いを読んでくるとしよう。