湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

気楽に出走!1day伊豆一周チャレンジ

2006年10月13日 | 自転車生活
前日のエントリーから続く

でもって、当日妙に気持ち良くすっきりと目覚めたのが朝5時過ぎ・・・。伊豆一周にチャレンジするなら遅くとも4時には走り出そうと思っていたのに。ただこの時間に起きたことでなんとなく気持ち的に楽になったような気がする。完全走破は無理でも行けるところまで行けばいいか、と素直に思えた。そんなわけで1day完走を狙うには時間的にちょっと厳しかったけれども、輪行袋をザックに入れて6時少し前に走り出したのだった。

「足は残せましたか?」の東伊豆編
「また走りたいと思いますか?」の西伊豆編
「死闘とよんでもいいですか?」の箱根越え、そして江ノ島まで編

「足は残せましたか?」の東伊豆編

2006年10月13日 | 自転車生活


起きた時間が遅かったこともあり、部屋を出たのは5時54分だった。今の時期でもさすがに6時近くだとあたりはもう明るくなっているのだった。

江ノ島から134号を走りながら、もし伊豆一周にチャレンジするとしたらこういうことに注意して走ろうと考えていたことをあらためて確認する。すなわち、「終始焦ることなく心肺と筋肉に負担のかからないペースで走る」ということをあらためて自分に言い聞かせた。

ただそうは言っても追い風だったり、ちょっとした勢いで上れそうな坂だったりしたらついつい調子に乗ってしまうのが自転車乗りの常。またロードで走っているとどうしても遅めのペースに自分自身が苛々してしまうこともあるだろう。そんなことを避けるために考えたのが名づけて「女子部員をエスコート作戦」。学生時代僕はサイクリングクラブに所属していたので、ほとんどのクラブ行事で女子部員と一緒に走っていた。そしてそんなとき最も大事だったことは、いかに目的地まで女子部員に楽に走ってもらうか、ということだった。この点に関しては僕は結構自信を持っていて、一緒の班になった女子から社交辞令だったのかもわからないけれども、「今日はすごく走りやすかった」と言われることが多かった。そしてそんな僕なりのエスコートのこつが、こまめにギアチェンジをさせて終始一定の軽い負荷で走らせるということと、長すぎない休憩をこまめにとる、ということだった。今日はそんな昔の経験を生かして、自分の後ろに女子部員が走っていると仮定して、ペースがあがってるかなと感じたときは後ろを気持ち振り返るような感じですぐにペースを落とすよう心掛けることした。

というわけで、今日は134号のいつもなら上りには感じられない場所も、国道1号のいつもなら勢いで上ってしまうアップもすべてギアを落として足と心肺に負担をかけずに走った。おかげで国道1号の上りでは20kmを切るようなスピードだった。往路でこの速度は普段ならあり得ないですね。でも今日は絶対に焦りませんよぉ。そしてなんとしても西伊豆のために足を残しておくのです!



そんな慎重な、というかのんびりしたペースで早川口に到着。さてここに何時に戻って来れるのか、それとも戻って来れないのか?ここで伊豆をぶった斬れるのか、それともぶった斬れないのか?さぁて、東伊豆に侵入しますかぁ!

早川口交差点着7時19分 距離33.30km 平均24.5km



早川口からはしばらく荒れ気味の海沿いを走ったのち、真鶴道路の旧道へ。旧道はアップダウンが厳しいけれども、一応伊豆一周の目的はアップダウンのきついコースにたいするトラウマ払拭なので避けるわけにはいきません。ここでもときどき(実際に)後ろを振り返りながら仮想女子部員は遅れていないかなと気を使いながら普段より抑え気味のペースで上りをこなし、



景色の開けた場所から青みにかける少しくすんだ海を見下ろした。う~ん、今日は晴れてはいるのだけれども空気はあまり澄んでいないようで、景色がいまひとつぱっとしません。それに風もかなりあります。でもまぁ、雨の心配がないだけいいですね。気温的にも走りやすいし、あまり文句は言えません。でもって、ここまでは自分的にはかなり「楽」な走りができています。これなら東伊豆は楽勝?なんて少し思ったりしました。

真鶴旧道を湯河原に下ると、すぐにまた熱海へのアップがはじまります。去年の秋、唐突に熱海峠を目指したときはこのアップに嫌気がさして、熱海で引き返してきました。でも今日はそのアップも落ち着いてこなしました。そしてほぼ1年ぶりの熱海になかなか快調に到着しました。



熱海着8時29分 距離56.96km 平均23.4km

熱海からも相変わらずアップダウンの繰り返しですね。ここからだんだんどこか上りでどこが下りだったかが思い出せなくなります。確か伊東のあたりに少しフラットがあったような気がしましたが、あとはだいたい小さなアップダウンの繰り返しだったような気がします。

でもって、なんとなくここらでこういうアップダウンの繰り返しといつもそこにある海に飽きてきました。うんざりしてきました。アップダウンはともかくとして、海はきらいなわけじゃないんですけど、今日の海は少し荒れ気味でどうにも安らぎにかけるんですよね。

さて、そうこう言っているうちに川奈方面への分岐に到着です。



ここは一応計画段階から川奈方面へ向かうことにしていました。とりあえず目標は伊豆一周なので、なるべく大回りできるところは大回りしておいたほうがいいかなと。



しかし走りはじめがこんな感じのフラットな道路だったので、「やべっ、楽なコース選んじゃったかな?」と少し気になってしまいました。でも、そんな心配は無用でしたね。この東伊豆では・・・



しっかりした上りがあって一安心です(苦笑)。



そんなしっかりした上りの途中にあらわれた川奈ステンドグラス館。僕は大のステンドグラス愛好家なので当然ここは寄らねばなりません・・・というのは嘘でして、なんとなく今日はぱっとした風景がないのでちょっとこういう建物の前でLEMONDの写真を撮ってみただけです。

確かこのステンドグラス館の少し先からは城ヶ崎海岸の入口までまた少し下ったのだと思います。そしてそこからまた上り返して135号に合流しました。で・・・、ここらあたりで「フレッシュな状態の足で石廊崎まで走るのは無理だな」と思いはじめました。仮想女子部員を後ろに引き連れて抑え気味に走っているにもかかわらずしっかり足が疲れがたまりはじめてしまったのです。

135号の合流地点からも少し緩めのアップダウンになりますが、アップダウンがなくなることはやはりありません。小さな上りのあとの小さな下りでは、ハムストリングやアキレス腱を伸ばしながら下るようになりました。参ったな・・・

穏やかな青い海に少し癒しを与えて欲しかったりもするのですが、



残念ながら海はまるで気持ちを吸い込むような鉛色。このまま「ジャジャ~ン!」と東宝だか東映だかの昔のヤクザ映画がはじまってもおかしくないような癒しとは無縁な様相です。

そんな風景のなかようやく天城峠への道が続く河津の交差点に着いたときはかなりホッとしました。河津というとなんとなく南伊豆の領域のような気がしますものね。

河津着11時26分 距離118.23km 平均22.5km



さて、この交差点にあったセブンイレブンでおにぎりとジュースを買って少し休憩です。ここで少し「このまま天城峠と箱根峠を越えて帰っちゃおうかな」というショートカット案が頭に浮かびますが、すぐにそれさえもかなり厳しいコースなのだということに気づいて愕然としてしまいました。そういう場所にお前はいるんだぞ!と。なんか気楽に走り出しちゃったけれども、大変なことになっているのだということにあらためて気づいた。

もういちいち言う必要はないかと思いますが、河津からまたアップ。それからついでに南伊豆に入って風がさらに強くなってきました。この風に遭遇して思わずアニマル浜口ばりの気合を一発心のなかでかましました(嘘)。



そして河津からの上りの、ピーク近くの展望台から少し青みが増してきた海を見下ろし、



風のせいで荒れ気味の白浜を通過。



そして下田に到着。

下田着12時15分 距離131.41km 平均22.3km

下田で昼飯でも食べようと思っていたのだけれども、ここらでだんだんとこの先の行程に不安を覚えるようになってきた。あまりあれこれ考えず出走してしまったけれども、かなり時間的に厳しそうだぞ、と・・・。そんなこともあってゆっくりと昼飯など食べる気が起こらずに、持ってきた補給食を口に入れながら結局下田の街を通過してしまった。

ただ下田から石廊崎までは気分的にかなり楽に走れた。まずアップがあまりきつくなかったこと。それから海っぺりの道から少し離れられたこと。両方とももうたくさん!という状態だったのでこれは結構嬉しかった。そしてここで足のほうもかなり復活したような気がする。



こんな風景に心を癒され、



銭瓶(ゼニガメ)峠なんて最高に下品な感じの名の峠に笑いを誘われ、



弓ヶ浜にそそぐ青野川の川っぺりにやってきました。



なんか予期せぬところであらわれた日本の正しい故郷のような風景にだんだんと気持ちが温かくなってきたような気がしました。そしてこの川っぺりでのんびりと昼寝でもできたらどんなに素晴らしいかと思ったりしました。



でもね・・・、今日はそれは無理なんですよね。というわけで後ろ髪をひかれるようにこの川をあとにしました。



弓ヶ浜を眺めながら、



あとわずかの距離の石廊崎に向けて走ります。



たまにこういう写真を撮ることで逸る気持ち(&心拍)を抑えながら、



あぁ、ようやく石廊崎!なんちゅうかとっても長かったけれど、ようやく伊豆半分を走ったぞぉ!っと。

石廊崎着13時16分 距離150.98km 平均22.1km

でもって、結局西伊豆に向けて「足は残せましたか?」

う~ん、かなり微妙です。でも下田から石廊崎で足も気持ちもだいぶ楽になった気がするのでこのまま頑張って西伊豆に向かってみようと思います。

ということになったのでした。

「また走りたいと思いますか?」の西伊豆編

「また走りたいと思いますか?」の西伊豆編

2006年10月13日 | 自転車生活
石廊崎で持ってきたアミノバイタルやカロリーメイト、それから薄皮あんぱんを補給。さらに少し柔軟体操なども。そしてここで仮想女子部員を見捨てることにする。ごめんなさい、多分ここからは自分の面倒だけできっと精一杯だと思うので・・・。ここまでありがとう、ほんとに。

さて、ここで一度気持ちをリセットしていよいよ西伊豆ですね。頑張りますよ!

石廊崎からは少し下って、また上り(笑)。あまりに上り下りが多すぎて、もう僕の頭では詳細なコース報告は無理っス。



そして奥石廊の展望台でさっそくひと休み。



絶景を眺めながら「俺を慰労してくれ~」なんてしょうもないことを考えてしまったのはまだ余裕があるからなのか?それとももっと別の理由によるものなのだろうか?



で、この展望台からの道を下ろうとしていたらちょっと度肝を抜かれる光景が・・・。かなりの上り坂なのに70は確実に過ぎていると思われる老人がママチャリに乗ってすごい勢いで上ってきたのです。げっ、やっぱ昔の人ってすごいんだ!って本当に驚いた。しかもその人はすごく楽そうに上ってくるんです。これはママチャリでヤビツを上ったmasaさん以上かも!いや絶対にmasaさん以上だ!と思ったのだけれども、結局近くまで来て確認したら電動アシストママチャリでした。あ~、驚いた。いやぁ、冷静に考えればあり得ないものな、あのスピードは・・・。でもこれが多分街中だったらすぐに電動アシストチャリだって気づいたのかもしれないけれど、ここは奥石廊ですよ。なかなか考えつきませんよね。まぁとにかく、自分のこれまでの自転車人生を振り返らされた一瞬ではありました。

さて奥石廊からは昔から数々のサイクリストに泣きを入れさせてきた(もちろんでも素晴らしいコースです)マーガレットラインです。とりあえず僕は海岸線を走って伊豆一周をしているつもりなんですけど、この道って



なんというか全然海の近くの道って感じがしません。ま、地図を見れば当たり前のことだし、僕はこういう道のほうが好きだったりもするのだけれども、なんというか違和感はあります。



で、そんな僕の違和感なんて無視して道はどんどん山のなかへ。



あははは。海岸線はどこに行った?あの橋はどこへ?



しかし上らせるよなぁ。でもはっきり言って僕は東伊豆のごちゃごちゃした小さなアップダウンより、車の少ない西伊豆のはっきりしたアップダウンのほうが好きですね!と少しでも前向き思考で前進します。

そしてちょこっと下って、またちょこっと上り返したところで



蛇石への標識。でも僕はマーガレットラインをこのまま行きます。えっと、一応僕の目標はアップダウンの連続する難コースにたいするトラウマ払拭なのですから・・・。ただそうは言っても、ここまでずっと激しいアップダウンを繰り返してきて「峠」に向かうってかなり勇気のあることだとここで思いました。マーガレットラインと蛇石峠、どちらがきついのかわかりませんが、東伊豆を走ったあとでこんなところを走っているだけでこれは相当なことなんだ!ってここでかなり強く思いました。

そしてここらから数日前に伊豆一周をしたDEEさんとTETさんが感じた苦しみのようなものを僕も今まさに感じているのだと思うようになりました。そしてその苦しさの共感、共有がへこみそうになる僕の気持ちをどんなに励ましてくれたことか・・・。



マーガレットラインは本当にきつくて、上りのスピードはほとんどの部分で10km以下でした。そして2つめの大きなアップ?の途中で休憩してまた補給を。やっぱり下田で昼飯食べなかったのはまずかったかな。



で、また下って向うの道をまた上る。やはり東伊豆より僕はこっちのほうが雰囲気的に好きだけれども、ちょっと足がやばいです。ハンガーノックも少し心配になってきました。そんなふうに2時間近くマーガレットラインで格闘してようやく松崎へ到着したときは、「これでハンガーノックはまぬがれた!」とかなりほっとしました。

松崎着15時23分 距離184.04km 平均21.3km



そして松崎のコンビニでようやく昼食です。せっかく伊豆に来たのだから本当は美味しいお魚の定食を食べたかったんですけど、注文してから食べ終えるまでの時間を考えるとこの程度で我慢せざる得ませんね。残念です。

さて20分ほどの遅めの昼食休憩の後、また走り始めます。もうここまで来てしまったらなんとしてでも沼津までは走りきらなければなりませぬ。でも気持ちは結構萎え気味ですよ。



まだ15時台なのに松崎を出てすぐのところで早くも夕暮れの気配です。こん畜生!

松崎から堂ヶ島、宇久須あたりは今までに比べるとわりに穏やかなアップダウン。そして黄金崎といった景勝スポットがあったりもするのですが、立ち寄る余裕は残念ながらありません。一応自称ツーリング派の人間にとってはそういうのがちょっと心苦しかったりもするのですが、今日はもう仕方ありませんね。まぁでも今日は飽きるくらい海を眺めているのでこれはこれで良いのでしょう。



ただ黄金崎には寄れなくても、寄りたくもないこういった岬は国道沿いにあるせいで寄れちゃったりするのがなんとも悔しい・・・。まぁ、この岬は今日の僕にとっては変人岬ということにしておこう。好き好んでわざわざ伊豆一周なんてものにチャレンジしている変人・・・。



で、変人岬あたりはまたアップダウンが結構きついです。



そしてミラノ~サンレモを思わせる海沿いの道も。



そんな道をこなしてようやく土肥温泉に到着です。もう陽はかなり傾きかけて少しずつ心細くなってきました。

土肥温泉着16時52分 距離207.71km 平均21.1km

土肥温泉で少しだけ足休めをして、戸田に向かいます。そして「もうこんな安易な命名は勘弁してくれよ、伊豆!」と思わされた



旅人岬を越えて、さらに上っているところで



日が暮れました。残念ながら西伊豆からの夕日は望むことはできませんでした。



完全な暗闇に包まれるまで、もう時間の問題ですね。

そしてミニ・マーガレットラインと言って過言ではない土肥~戸田間のアップダウンをなんとか頑張って、



ようやく戸田に到着しました。もう肉体的にも精神的にも臨界点に達しつつあります。

戸田着17時56分 距離224.06km 平均20.7km

でも、ここからまた上って大瀬崎を目指さないといけません。



もう、大瀬崎までの12kmの距離が果てしなく遠いものに感じられます。そして戸田の町を出てすぐに、街灯など一切ない完全な山道になりました。正直ここからは本当に心細かったです。ただ数日前にやはりこの真っ暗な道をDEEさんとTETさんが多分今の僕と同じようにボロボロになりながら走っているわけです。お二方とも分別のある大人だからそんなにきつさを強調されてませんでしたけれども、本当になんとか自分を励ましながら頑張ったのだろうと思いました(違っていたらすみません)。そんなお二人の気持ち、そして走りがここでも僕を勇気づけてくれました。逆に言えば、お二人のチャレンジ、エントリーがなかったらここはこれ以上にこたえたと思いました。

で、せっかくなので街灯のない伊豆の山道を走る絵を撮ろうと思ったのですが、なんだか恐ろしくて暗闇のなかでシャッターを切る勇気がありません。変なものが写っていたりしたら怖いですからね。



というわけで、写真は途中でぽつりとあらわれた街灯の下で。

しかし陽が落ちてからの戸田から大瀬崎までのアップダウンは本当に厳しいものがあります。上りなんて7kmくらいですよ。それに加えて夜道を走るプレッシャー。時間を稼ぎたい下りでもスピードを抑えなくてはならないつらさ。僕もDEEさんと同じキャットアイの高輝度LEDをつけているのでまだ救われているような気はするのだけど、それでも。

大瀬崎に向かうひとつ目のアップを越えて、もうひとつめの上りにかかります。DEEさんのエントリーにあった最後のトンネルがもう待ち遠しくてたまりません。でもそのトンネルの前で果てそうになりました。そこで自転車から降りて、最後に残っていた補給食を口に入れました。もうここまで来れば食べきっちゃってもなんとかなりますよね・・・っていうかこれ食べなければ絶対にハンガーノックという状態でした。

そして・・・



そこから100mくらい先が大瀬崎に抜けるトンネルでした!あぁ、これでようやく伊豆のアップダウンから解放だ!

このトンネルを抜けてからは真っ暗闇のなかをライトを頼りに慎重に下ります。そしてそんなストレスフルな下りののちに大瀬に着いたときは思わず心の中で「うりゃ!」って叫んじゃいました。

大瀬からは海のすぐ間近の道を心肺と足に負担にならない程度にひたすらペダルを回します。沼津からどうするかはともかく、ここで足を回復させねばなりませぬ。しかし夜の海のすぐ脇の道ってすごく不気味ですね。茫漠とした隣の闇に吸い込まれそうな気がしました。

そんな不安な気持ちでペダルを漕ぎながら、ようやくのこと沼津の市街地に入ってきました。もうここまででもちろんお腹はいっぱいです。でも本当のお腹のほうは結構空っぽだったりするわけで・・・



沼津で松屋に飛び込み、なんだか妙に美味そうな味噌豚あいもり定食なるものを注文して食しました。そしてひと息つきながらこの先のことをどうするかと・・・

沼津の松屋着20時08分 距離257.82km 平均20.4km

ここでまず考えたことがこの先も含めて「自走での伊豆一周」をやっておきたいかということ。で、これはやはり可能ならやっておきたいと思いました。そして次に考えたのが、「ここまでのコースをもう一度走りたいと思うかどうか?」ということ。これはもう明らかにはっきりしてます。絶対に走りたくない!

となると・・・。ここでチャレンジしておく以外ありませんね。ちょっと時間的にはかなり無理がありますが、このようにしてこの先のことが決まったのでした。

「死闘とよんでもいいですか?」の箱根越え、そして江ノ島まで編

「死闘とよんでもいいですか?」の箱根越え、そして江ノ島まで編

2006年10月13日 | 自転車生活
さて箱根越えをすると決めましたが、あらためて考えるとこれは間違いなくこれまで以上に限界ギリギリの走りになることが予想できました。(多分)総アップ数2000m以上をこなし、260km近く走ってからの箱根越え。一概に比較できないですけれど、直江津ランのときのフラットを230km走ったあとの渋峠越え、そして道志ランのときのヤビツと山伏峠を越えてからのスバルラインよりも厳しいのではないかと思いました。

ただ、もしこれが反時計周りの逆コースであったならばそれはそれでかなり厳しかったのだと思います。箱根は最初に越えてしまっているものの、最後に嫌らしい小刻みなアップダウン。そして道路沿いには伊豆急や東海道線の誘惑が。そう考えると僕は峠越えに関してはそれなりにこだわりがあるので、やはりこれで良かったのだと感じました。そして最後がこだわりのある峠越えなのだからここはなんとしても頑張ってみようと思いました。

沼津の市街地を出る前に量販系の薬局でアミノバイタルを3個購入。スバルラインのときはおにぎりばかりの補給だったのでその後なかなか疲れが抜けなかったのかもと思ったりしていたので、ここはその後の日常生活のためにしっかりしておきましょう。



そしてなんとか自分を励ましながら最後の上りへ。



箱根は上りはじめこそ快調だったけれども、最初の登坂車線ですぐに減速。そしてそこからはタタカイの走りに。ここできつかったのが勾配もさることながら、悪魔的に吹き荒れる風。標高を稼ぐにつれてどんどん風が強くなって、しまいには風が咆哮というかうなり声をあげはじめた。普段はあまりハンドルに力を込めずに上る僕も、しっかりとハンドルやブラケットを抑えないと自転車が風に持っていかれそうになってしまった。そしてその風はまったくありがたいことに芦ノ湖方面から吹いてくるのです。

また途中まではところどころあった街灯がなくなったのも精神的にこたえた。暗闇に吹きすさぶ強風というのはいろいろな想像をかきたてるのです。闇の中でざわめく木々、カラカラと音をたてて転がる空き缶などのゴミ、そういったものがすごく恐ろしく感じる。そしてそういうときに限って、心霊写真のこととか幼少の頃に読んだポプラ社のミステリーに描かれていた妙に恐ろしい挿絵なんかを思い出してしまったりするんです。でもって、繰り返すけれども前方からは自転車を押し戻すような向かい風。これは本当に泣きそうになりました。

かなりへとへとになって何かの建物があらわれたと思ったら山中城跡。地図で見るとまだここから峠まではもう少しあるようです。あぁ~、もういつ果ててもおかしくないぞ!足だって痛みこそないけれど、力はもうない!

でもここからまた勾配のきつい登坂車線が長く続くんです(少なくともそのときの僕にはそう感じた)。とにかく我慢するしかありません。とにかく少しでも前進して峠までの距離を短くしていくしかありません。

そしてメーター上で峠に近づきはじめた頃にあらわれた「箱根峠2km」の標識。げっ、まだここから2kmもあるの?そう思わざる得ませんでした。だからそこから1kmくらいで峠に着いたのはラッキーだったと言っていいのでしょう。とにかく、なんとか箱根も上ったぞ!もうこんな時間だけれども・・・



箱根峠着22時45分 距離281.61km 平均19.2km

箱根峠では峠のドライブインに隠れて眠気覚ましの意味もあって暖かいコーヒーを。それからレッグウォーマー、ウィンドブレーカーなどの防寒も。そして、ここであらためて風が芦ノ湖方面から吹いてきていたことを実感。芦ノ湖の反対側にあたる建物の陰ではほとんど風を感じなかったので。

箱根を越えたことでだいぶ精神的に楽にはなったのですが、ただまだ不安は消えませんでした。芦ノ湖からの上り返しと下りをどうするか悩んでいたからです。

箱根の旧道は上り返しは少なそうですが、街灯がほとんどあてにできないのが気になります。そして金曜の夜ということもあって走り屋たちの存在も心配です。ただ国道1号は国道1号で上り返しがきつそうなのが嫌なのです。そして旧道に比べて勾配がなだらかな分下りに時間がかかりそうなのも気になりました。結局どっちを進むかは国道1号と旧道の分岐まで結論を出すことはできませんでした。

さて峠からはかなり快適に下れました。そしてやはり不気味に感じた芦ノ湖沿いの杉林を抜けて、いよいよ最後の上り返し&下り。でもって、ここは分岐まで来て一度国道1号に入り込んだにもかかわらずすぐに引き返して結局旧道を下ることにしました。旧道ちょっと怖いけど、もう必要以上の上りはほとほと嫌だったのです。

旧道の下りはペダルを漕ぐ必要は皆無なので自転車のコントロールだけに集中しました。そして暗闇のダウンヒルをこなしながら、以前買ったキャットアイの高輝度LEDが本当にありがたく感じました。これがなければここまで来ることは不可能だったと思います。



そして夜中の七曲を慎重に下り、



夜中の三枚橋!ここに到着したときの安堵感はもう言いようがありません。

そして、そして、



朝ここを通り過ぎてから約17時間半後にようやく、ようやく、早川口に戻ってきた。ということは、つまりここで伊豆半島を斬ることができたのだ。伊豆一周のことを考えはじめた頃からここで伊豆を斬れるかが一番の関心事だったのでこれは本当に嬉しかった。

早川口着23時51分 距離301.76km 平均19.4km

ただ走りはじめる前、もしこの場所に戻ってこれたならここで挑発的に首を掻き切るポーズでもするか、なんて僕は冗談まじりで少し考えたりしていたのだけれども、実際伊豆を一周して箱根を越えてこの場所に戻ってきてみれば、そんな気はまったく起きなかった。ここで感じたのはなんというか敵と思っていた人間と何かにたいして一緒に共闘したような妙な気持ちだった。うまく言えないのだけれども、ここに戻ってきて僕が感じたのはそんな気持ちだった。

上の部分、あとから読み直したらちょっと問題があるというか誤解を受けかねない一文のような気がしてきました。僕が挑発的に首を掻き切ってみせようと思った相手は、伊豆半島に他なりません。そして敵とたとえた相手はこれでもかとアップダウンを繰り返す伊豆の難コースです。でも苦しめられながらここまで戻ってくると、そっと“彼”の肩を叩きたいようなそんな気持ちになりました。お互い頑張ったよなぁ、みたいなそんな気持ちだったのです。

ここから江ノ島までは最後の踏ん張り。とにかくあとは生きて部屋に帰り着くことのみ。ただもうあと少しで日付が変わっちゃいますね。部屋にたどり着いたとしても、これで1day伊豆一周と言えるのだろうか?とそんなことが少し頭をよぎったりも。でもそんな考えはすぐに振り払った。そんなことはもうどうでもいいんです。ほんとに。とにかく伊豆一周は本当に厳しいコースなので、そんなことにチャレンジするだけで価値のあることなんだって思った。これは西伊豆のあたりを走っている最中にも何度も思ったことだけれども、本当に心からそう思った。

小田原から134号に入る手前の大磯あたりで警察に一度職務質問を受けた。どうやら最近この付近で多発している痴漢捜査のよう。「この時間よくここらを通りますか?」って訊かれたけれども、まぁ通るわけありませんね。それにもしこんな疲弊した状態で痴漢なんてできたとしたら、それは正真正銘モノホンの変態だと思う。



そして国道1号から134号に入るすぐ手前のところで、あまりの眠さと気持ち悪さで一度休憩を入れないとどうにもならない状態になってしまった。ここの歩道でザックを枕に10分くらいだけどうとうとした。

この休憩で少しだけ復活してあとは江ノ島まで15kmほどを最後の走り。そして朝部屋を出て19時間半後にようやく部屋に戻ってきた(江ノ島の写真はなし。いまとなると残念だけれども、そんな余裕はもうありませんでした)。

江ノ島着 10月14日1時32分 距離335.19km 平均19.6km

前日寝る前にLEMONDとブリヂストン号のポジションを比較して、ロングライドではダメージの少なかったブリヂストン号のポジションにサドル位置などを近づけていたせいもあって体のダメージはスバルラインよりは少ないのだけれども、やはり疲れ果てた。走る前から予想していたことではあるけれども、自分のなかではこのロングライドが一番走り応えがあった気がする。

というわけで、ちょっとおおげさだけれども、この伊豆一周は本当に死闘だったと思ってしまった。なんかこういう言いようもどうかと思うけれども、今の僕には本当に死闘だったなと、そう思いました。

ところで僕はこのブログをはじめて少しした頃にこういうエントリーをしています。もう学生の頃にやった耐久的な走りなんてする自信はないけれども、今年はせっかくこんな自転車中心のブログをはじめたわけだから一度くらい限界ギリギリの走りをやってみたいなとこの頃漠然と思っていました。で、今回の伊豆一周はそれに近い走りだったような気がします。まぁでもそのかわり、もう2度とこんなことはできないかも?なんて思ってしまったりもしているわけですが(苦笑)

ま、とにかく、僕の伊豆一周はこんな感じで終わりました。