起きた時間が遅かったこともあり、部屋を出たのは5時54分だった。今の時期でもさすがに6時近くだとあたりはもう明るくなっているのだった。
江ノ島から134号を走りながら、もし伊豆一周にチャレンジするとしたらこういうことに注意して走ろうと考えていたことをあらためて確認する。すなわち、「終始焦ることなく心肺と筋肉に負担のかからないペースで走る」ということをあらためて自分に言い聞かせた。
ただそうは言っても追い風だったり、ちょっとした勢いで上れそうな坂だったりしたらついつい調子に乗ってしまうのが自転車乗りの常。またロードで走っているとどうしても遅めのペースに自分自身が苛々してしまうこともあるだろう。そんなことを避けるために考えたのが名づけて「女子部員をエスコート作戦」。学生時代僕はサイクリングクラブに所属していたので、ほとんどのクラブ行事で女子部員と一緒に走っていた。そしてそんなとき最も大事だったことは、いかに目的地まで女子部員に楽に走ってもらうか、ということだった。この点に関しては僕は結構自信を持っていて、一緒の班になった女子から社交辞令だったのかもわからないけれども、「今日はすごく走りやすかった」と言われることが多かった。そしてそんな僕なりのエスコートのこつが、こまめにギアチェンジをさせて終始一定の軽い負荷で走らせるということと、長すぎない休憩をこまめにとる、ということだった。今日はそんな昔の経験を生かして、自分の後ろに女子部員が走っていると仮定して、ペースがあがってるかなと感じたときは後ろを気持ち振り返るような感じですぐにペースを落とすよう心掛けることした。
というわけで、今日は134号のいつもなら上りには感じられない場所も、国道1号のいつもなら勢いで上ってしまうアップもすべてギアを落として足と心肺に負担をかけずに走った。おかげで国道1号の上りでは20kmを切るようなスピードだった。往路でこの速度は普段ならあり得ないですね。でも今日は絶対に焦りませんよぉ。そしてなんとしても西伊豆のために足を残しておくのです!
そんな慎重な、というかのんびりしたペースで早川口に到着。さてここに何時に戻って来れるのか、それとも戻って来れないのか?ここで伊豆をぶった斬れるのか、それともぶった斬れないのか?さぁて、東伊豆に侵入しますかぁ!
早川口交差点着7時19分 距離33.30km 平均24.5km
早川口からはしばらく荒れ気味の海沿いを走ったのち、真鶴道路の旧道へ。旧道はアップダウンが厳しいけれども、一応伊豆一周の目的はアップダウンのきついコースにたいするトラウマ払拭なので避けるわけにはいきません。ここでもときどき(実際に)後ろを振り返りながら仮想女子部員は遅れていないかなと気を使いながら普段より抑え気味のペースで上りをこなし、
景色の開けた場所から青みにかける少しくすんだ海を見下ろした。う~ん、今日は晴れてはいるのだけれども空気はあまり澄んでいないようで、景色がいまひとつぱっとしません。それに風もかなりあります。でもまぁ、雨の心配がないだけいいですね。気温的にも走りやすいし、あまり文句は言えません。でもって、ここまでは自分的にはかなり「楽」な走りができています。これなら東伊豆は楽勝?なんて少し思ったりしました。
真鶴旧道を湯河原に下ると、すぐにまた熱海へのアップがはじまります。去年の秋、唐突に熱海峠を目指したときはこのアップに嫌気がさして、熱海で引き返してきました。でも今日はそのアップも落ち着いてこなしました。そしてほぼ1年ぶりの熱海になかなか快調に到着しました。
熱海着8時29分 距離56.96km 平均23.4km
熱海からも相変わらずアップダウンの繰り返しですね。ここからだんだんどこか上りでどこが下りだったかが思い出せなくなります。確か伊東のあたりに少しフラットがあったような気がしましたが、あとはだいたい小さなアップダウンの繰り返しだったような気がします。
でもって、なんとなくここらでこういうアップダウンの繰り返しといつもそこにある海に飽きてきました。うんざりしてきました。アップダウンはともかくとして、海はきらいなわけじゃないんですけど、今日の海は少し荒れ気味でどうにも安らぎにかけるんですよね。
さて、そうこう言っているうちに川奈方面への分岐に到着です。
ここは一応計画段階から川奈方面へ向かうことにしていました。とりあえず目標は伊豆一周なので、なるべく大回りできるところは大回りしておいたほうがいいかなと。
しかし走りはじめがこんな感じのフラットな道路だったので、「やべっ、楽なコース選んじゃったかな?」と少し気になってしまいました。でも、そんな心配は無用でしたね。この東伊豆では・・・
しっかりした上りがあって一安心です(苦笑)。
そんなしっかりした上りの途中にあらわれた川奈ステンドグラス館。僕は大のステンドグラス愛好家なので当然ここは寄らねばなりません・・・というのは嘘でして、なんとなく今日はぱっとした風景がないのでちょっとこういう建物の前でLEMONDの写真を撮ってみただけです。
確かこのステンドグラス館の少し先からは城ヶ崎海岸の入口までまた少し下ったのだと思います。そしてそこからまた上り返して135号に合流しました。で・・・、ここらあたりで「フレッシュな状態の足で石廊崎まで走るのは無理だな」と思いはじめました。仮想女子部員を後ろに引き連れて抑え気味に走っているにもかかわらずしっかり足が疲れがたまりはじめてしまったのです。
135号の合流地点からも少し緩めのアップダウンになりますが、アップダウンがなくなることはやはりありません。小さな上りのあとの小さな下りでは、ハムストリングやアキレス腱を伸ばしながら下るようになりました。参ったな・・・
穏やかな青い海に少し癒しを与えて欲しかったりもするのですが、
残念ながら海はまるで気持ちを吸い込むような鉛色。このまま「ジャジャ~ン!」と東宝だか東映だかの昔のヤクザ映画がはじまってもおかしくないような癒しとは無縁な様相です。
そんな風景のなかようやく天城峠への道が続く河津の交差点に着いたときはかなりホッとしました。河津というとなんとなく南伊豆の領域のような気がしますものね。
河津着11時26分 距離118.23km 平均22.5km
さて、この交差点にあったセブンイレブンでおにぎりとジュースを買って少し休憩です。ここで少し「このまま天城峠と箱根峠を越えて帰っちゃおうかな」というショートカット案が頭に浮かびますが、すぐにそれさえもかなり厳しいコースなのだということに気づいて愕然としてしまいました。そういう場所にお前はいるんだぞ!と。なんか気楽に走り出しちゃったけれども、大変なことになっているのだということにあらためて気づいた。
もういちいち言う必要はないかと思いますが、河津からまたアップ。それからついでに南伊豆に入って風がさらに強くなってきました。この風に遭遇して思わずアニマル浜口ばりの気合を一発心のなかでかましました(嘘)。
そして河津からの上りの、ピーク近くの展望台から少し青みが増してきた海を見下ろし、
風のせいで荒れ気味の白浜を通過。
そして下田に到着。
下田着12時15分 距離131.41km 平均22.3km
下田で昼飯でも食べようと思っていたのだけれども、ここらでだんだんとこの先の行程に不安を覚えるようになってきた。あまりあれこれ考えず出走してしまったけれども、かなり時間的に厳しそうだぞ、と・・・。そんなこともあってゆっくりと昼飯など食べる気が起こらずに、持ってきた補給食を口に入れながら結局下田の街を通過してしまった。
ただ下田から石廊崎までは気分的にかなり楽に走れた。まずアップがあまりきつくなかったこと。それから海っぺりの道から少し離れられたこと。両方とももうたくさん!という状態だったのでこれは結構嬉しかった。そしてここで足のほうもかなり復活したような気がする。
こんな風景に心を癒され、
銭瓶(ゼニガメ)峠なんて最高に下品な感じの名の峠に笑いを誘われ、
弓ヶ浜にそそぐ青野川の川っぺりにやってきました。
なんか予期せぬところであらわれた日本の正しい故郷のような風景にだんだんと気持ちが温かくなってきたような気がしました。そしてこの川っぺりでのんびりと昼寝でもできたらどんなに素晴らしいかと思ったりしました。
でもね・・・、今日はそれは無理なんですよね。というわけで後ろ髪をひかれるようにこの川をあとにしました。
弓ヶ浜を眺めながら、
あとわずかの距離の石廊崎に向けて走ります。
たまにこういう写真を撮ることで逸る気持ち(&心拍)を抑えながら、
あぁ、ようやく石廊崎!なんちゅうかとっても長かったけれど、ようやく伊豆半分を走ったぞぉ!っと。
石廊崎着13時16分 距離150.98km 平均22.1km
でもって、結局西伊豆に向けて「足は残せましたか?」
う~ん、かなり微妙です。でも下田から石廊崎で足も気持ちもだいぶ楽になった気がするのでこのまま頑張って西伊豆に向かってみようと思います。
ということになったのでした。
「また走りたいと思いますか?」の西伊豆編へ
僕もフラットな道の続く弓ヶ浜辺りは、昔合宿で来た時を思い出しながら寝転がってぼぉ~としようかなと思いながら通過してました。
続く石廊崎周辺での穏やかさと奥石廊の下り坂が、幸か不幸か先に向えばもう後戻り出来ないという不安を麻痺させてくれちゃうんですよね。
一週間前を思い出しわくわくしてきちゃいました(^^)
えぇ~、簡単に感じちゃいました?東伊豆もかなり大変だったんですよ。先が長いのであまり大変と思わないようにしようとは確かに思ってはいたものの。
それから伊豆一周については撤回後も結構うじうじ悩み続けてました。ただ当日の朝はかなりすっきりしてました。多分寝坊したのが良かったんだと思います。
□DEEさん
お二人のエントリーがあってこその手堅い作戦でした(笑)でも本当にお二人のエントリーは役に立ったし、励まされたんですよ。あらためてありがとうございます。
弓ヶ浜のあたりはあまりに気持ち良くてやばかったです。あそこらへんはまたいつかのんびりと走りたいです。
□ちゃり猫さん
仮想女子部員は石廊崎で置いてけぼりにしてしまいました。ひどい先輩です、まったく。
今回は伊豆のつらさばかり味わいましたけど、普通のツーリングであればもっともっと楽しいところなんだと思います、伊豆も・・・