湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

チベット

2006年07月07日 | 日常生活
3日前のNHKのニュースで、チベットのラサまでの鉄道路線が開通したということを知った。なんでも崑崙山脈のなかの標高5000mの峠を越える世界最高所の鉄道らしい。また昨日のNHKのニュースで、国境を巡って長らく紛争を続けてきた中国とインドが和解をして、チベットとインドのシッキムとの国境(ナトゥラ峠)が遂に開放されたということを知った。

学生の頃の話だけれども、チベットをひとりで自転車で走ったことがある。中国ネパール友好道路を通ってラサからネパールへ至る一番のメジャールートだったのだけれども、僕にとってはかなりの大冒険だった。当時はチベット情勢がかなり不安定で、出発地点のラサに辿り着くことができるのかさえはっきりしない状況だった。そんな状況のなか香港や広州、成都を経由してラサに到着し、ポタラ宮の姿を見上げたときは「これでチベットを自転車で走ることができる」ととにかくほっとしたものだった。

チベットでのルートもいくつか考えた。中国ネパール友好道路ではなく、シルクロードに抜けるチャンタン高原を走ってみたいという気持ちもないわけではなかった。でもこちらのほうは冒険度があまりに高く、諦めざるを得なかった。今回開放されたナトゥラ峠に関しては、地図でその存在は知ってはいたけれども、当時は国境線をめぐる中印の対立がかなり激しかったこともあって、検討にすら値しないコースだった。

そんなことが過去にあったこともあって、この二つのニュースにはある種の感慨を感じざるを得なかった。

そうか、ラサまで鉄道で行けるようになったのか。
インドと中国の国境が開放されるような時代になったのか。

そんなことをしみじみ思ってしまった。そしてあれからずいぶんと時間がたったのだということをあらためて実感したりした。

そう、あれからもうずいぶんと時間がたったのだ。チベットを取り巻く環境や情勢が変化していっても全然おかしくないのだ。調べてみると僕がチベットを走った翌年にポタラ宮が世界遺産に登録されている。だからそれから急速にチベットの観光化が進んでもおかしくはなかったのだ。そういった意味では、今回の鉄道開通も遅すぎるくらいなのかもしれない。

それにチベットだけでなく、僕のほうだってあの頃からは相当変わったのだ。ドキドキしながら世界地図を広げるようなこともなくなったし、あの頃漠然と考えていたようなことに思いを馳せることもほとんどなくなった。今回のニュースを見て、自分でも意外なほど僕は感慨深くなってしまったのだけれども、結局のところそれはそんなことを考えてしまったからなのかもしれない。


5000mを越えるところでテントを張ったことも数回。いま思うと嘘のような、遠い昔のことである。