山の記憶 (百名山・二百名山・三百名山)

山スキー、その他の山行もあります。

百名山の記録 妙高山(その2)

2014年09月05日 | 日本百名山

  ダケカンバの華

 彼は、少し酔った調子で「赤いカンバの華が咲いている」と言う。何のことか、よく分からず聞き返すと、自分は長い間山に登ってきたが、「カンバの華」を見るのは今回が初めてだと言う。カンバとはダケカンバのことですかと聞くと、そうだと言う。この時期、ダケカンバに華が咲くはずはないのだが、今小さな華が咲いているそうだ。何かが私の頭の中で動き出した。「日翳の山 日向の山」に出てくる、「岳妖」の話が浮かんできた。「本当にあった話である」との書き出しがあり、作者は、上田哲農。そしてこれは、実に奇妙な冬山遭難の話だ。「見たのと・・・違うかしら」と言う言葉がこの物語のいいようもない不安感を残す。
 

 大体「赤いみぞれ雪」など降るはずは無いと思うのだが、その日、東北の名山朝日岳の麓では「赤いみぞれ雪」が降っていたそうな。朝日鉱泉で休憩した3名の登山者は、雪の降る中、鳥原小屋を目指して出発し、以後消息を絶つ。
 遺体は、数ヶ月後救助隊により発見されのだが、遭難場所やメンバー構成から見て疑問だらけ。3遺体の倒れている位置関係や装備品の散乱とザックのひものなぞ。
 読者は、「なぜ」という人間の知的な欲求を満たされることなくなく、一抹の不安や疑問を心の中に残すことになる。
  何故かこの時、この一連の物語が思い出された。「赤いみぞれ雪」、「季節はずれの赤いカンバの華」。私は、傾き初めた陽を浴びながら、湿原の中に延びる木道を急いだ。途中、「カンバの華を見ることができるかもしれない」と、幾ばくかの期待を持ちながら周囲の木々に目をやるのだが、「無いよりましな」眼鏡にそれらしきものを捉えることはできなかった。
               

                              日暮れは近い

                      

 

 12曲がりまで下り、少し安心する。曲がり角を数えながら下りる。沢の水音を聞き、もう大丈夫と思う。時計は5時前、まだ明るい、この調子で行けば何とか明るい中に帰れるだろうと思いながら歩く。しかし、間もなく薄暗くなり、道標の識別もままならなくなってきた。急いでいたせいもあってか、間違えるはずもない道を間違えてしまう。広い方の道を行けば間違いはないだろうと安易に考えていたのがいけなかった。ある地点で、内心「おかしいな」と感じた。しかし、もうゴール近いし「大丈夫だろう」と安易な判断をしたのが間違いのもとだった。
 行けども行けども駐車場に到着しない。5時半はとっくに過ぎ、ますます暗くなる。時間的にはもう着いているはずなのだがその気配はない。その内、だだっ広い草原のような所に出る。記憶にない場所だ。暗がりの中で、朽ちた道標を見つける。な、なんと方向違いがこの時ハッキリする。引き返そうと思うが暗がりのためどちらからやって来たのかよく分からない。
 感を頼りに引き返し、不安になりこの時初めてヘッドランプを出す。軽量、小型の最新式だが、光は遠くまで届かず、せいぜい足元を照らくらいの代物だ。テントの中で使うのなら十分だが、広い屋外での使用には向かないなとこの時初めて気づく。それでも無いよりましだ。足の痛さを忘れ、無我夢中で歩く。気がつけば空にはお月さん。ふと、「カンバの赤い華」が頭に浮かぶ。月も心なしか赤みを帯びているように思える。ビバークも考えたりしながら歩いていると、「おかしいな」と感じた地点までたどり着いた。ヘッドランプで周囲を照らして見るに、間違った方向とはやや反対方向の木陰の中に、きちんとした道があるのを見つける。

 やれやれと思い気を持ち直して道を急ぐと、記憶にある木道に到着した。ここからはもう間違えることもない一本道と安堵して沢を渡り先を急ごうとしていると、何かが後ろから追いかけて来るような気がする。真っ暗闇の中、何だろうと後ろを照らして見るのだが何も見えない。しかし、何か追いかけてくるようだ。またまたイヤな気分になる。暗闇の中から、突然ボワッと光るものが現れた。光は徐々に大きくなり、人の足音が聞こえ出す。この時間にこんな所で人に会うなどとは考えもしないことなのでギョッとする。光は、硬直したように立ち止まる私を無視するかのように、さっさと行ってしまった。足音の主は、まだ若い登山者だった。暗闇の中で近づいてくるものに対する不安と緊張。この時、自分の顔はどんな形相だったのだろうか。

  駐車場到着が7時。1時間以上さまよったことになるが、もの凄い体験したように感じた。荷物を整理していたら、先ほどの若者がやって来て話しかけてくる。自分は明日は「高妻山」へ登る予定だけれどご一緒できないかという。当初の予定では、高妻山も計画に入れていたのだが眼鏡や膝痛のこともありお断りすることにする。月夜の晩のだだっ広い駐車場。若者も不安らしいと分かる。あれこれ誘うのだが、しばらくお話に付き合ったが別れることとする。
 「痛い膝、超見にくい眼鏡」を掛け、夜の上信越自動車道に乗る。途中のPAで車中泊した後、翌27日(金)午後6時50分無事帰宅する。


 


百名山の記録 火打山~妙高山

2014年09月05日 | 日本百名山

 9月25日(火) 

                              
   朝から雨。激しくないのだが、一面のガスの中で登山しようかどうかとまごつく。時折カミナリの音。それでも、登山者の姿を見る。雨具を着ては、登山口へと消えて行く。
 できれば雨の日の山登りはしたくないなと思う。今日は山小屋泊まりだから夕方までに小屋に着けばいい。ガイドブックによれば、高谷池ヒュッテまで約3時間だ。天気の回復を待つこととして「下界」に下りてみることにする。妙高高原駅まで下り、観光案内所で町の説明を聞き、温泉に向かう。
 

  土産物店の中にあるお風呂に入る。こ

こで大変なことをしてしまった。めがねを掛けたままサウナに入ったのがいけなかった。眼鏡の表面の膜がサウナの熱で変化してしまい眼鏡を掛けても前がよく見えなくなって、一瞬頭の中が真っ白になった。
 初めは、自分の目がおかしくなったのかとも思った。強度の近眼なので、視力が出なければどうすることもできない。眼鏡を冷やしたり、拭いたりあれこれしてみるのだがどうしようもない。薄い雲の掛かったような状態の「ないよりましな眼鏡」を掛け、笹ヶ峰キャンプ場まで戻ることにする。
 

   午後2時20分、よく見えない眼鏡を掛け、登山開始。天気は嘘のように回復し、青空が広がる。登山道入り口からしばらくは木道が続く。緩やかな登りの後、道は水量のある沢とぶつかる。橋を渡ると間もなく、12曲がりの急登が始まった。急登ではあるが、直登でないからその分だけいくらかは楽だ。穴の中から抜け出したような地点が、12曲がりの終点。さらに登りは続くが、全体として緩やかな登りとなり、富士見平に着く。ここは、高谷池ヒュッテと黒沢池ヒュッテとの分かれでもある。どちらに行っても時間的な差はないが、真っ直ぐ高谷池ヒュッテに向かう。
 

天気はすっかり回復し、夏を思わせれような青空が広がる。視力は低下しているが、心持ち気分も晴れる。5時10分、高谷池ヒュッテ着。 
 若い管理人から小屋のルールを聞き、久しぶりの山小屋泊まりに幾分安堵する。何パーティーかの先着者は既にご機嫌のようで、聞くとは無しに聞いていると、やはり午前中の登山は雨の中大変だったようだ。

                                              (駐車場2:20~高谷池ヒュッテ5:10)

                            高谷池ヒュッテ

              

  9月26日(水)
 

  昨夜、右ヒザに違和感を覚え、心配していたことが今朝になって現実のものとなってしまった。年甲斐もなく無理をしたためだろうか、ヒザ関節が痛み出し小屋の階段の上がり下りすらままならなくなっていた。眼鏡の件といい、またヒザの故障といい、良いこと無しだ。天気は素晴らしく、昨夜の放射冷却のせいだろうか外は薄氷が張っている。小屋のすぐ前にテントが2張り、湿原の池の脇に寒そうに張ってあった。
                                

                              天狗の庭 から見る火打山  

                  

 

 

   6時20分、ストックを頼りに歩き始める。高層湿原と池塘は、全国各地にあるのだが、ここのそれは火打山を背景にこじんまりとまとまっている。花の季節は既に過ぎて、紅葉の時期には幾分早すぎるという中途半端な季節の火打山ではあるが、高原の牧歌的な雰囲気が何とも言えない。まだ早いからなのだろうか、こんなに良い天気なのに誰一人見えない。緩やかな登りの後、天狗の庭に出る。もう目の前に火打山が早く来いと待ちかまえているように見える。雷鳥広場から最後の登りに掛かる。足は痛いのだがとにかく頑張って歩く。7時50分 火打山登頂 2462m。
 

 周囲の山々の写真を撮り、記念撮影をする。焼山の方に向かうパーティーもあり心ひかれたが、妙高山への時間配分もあり下山することとする。痛む足を引きずりながらやっと天狗の庭まで下りる。改めて見上げる火打は、夏の終わりのけだるい青空の下に、孤高を保つかのように静かに横たわっていた。「百花繚乱、花の火打」の季節にもう一度やって来たいものだと思いながら次の目的地妙高山へと向かう。
                                

                                  妙高山

                       

 

 茶臼岳への緩やかな登りを終えると、眼下に黒沢池ヒュッテが見えてくる。妙高山を後ろに控えさせ、湿原を前にしたこの山小屋の佇みが美しい。高谷池ヒュッテもそうなのだ自然との絶妙なバランスが何とも言えない。今はシーズンオフなので人影もまばら。この素晴らしい景観に静かに浸れる幸せをかみしめながら山小屋に向かう。  
 

  11時、黒沢池ヒュッテ前に荷物を置き妙高山に向かう。火打とは違い、登り道はゴッゴツした岩や石コロで歩きずらい。途中、燕温泉の方から登ってきたと思われる登山者の群れと出会う。大倉乗越にさしかかると、長助池の近くに青い小さな建物のようなものが見る。初めはよく分からなかったが、後でテントらしいと分かる。ガイドブックにはないテント場なのだろう。長助池分岐より急登となる。荷物は置いてきたあるのでいくぶん楽だ。あえぎながらも順調に頂上に着く。誰もいない頂上に、大岩がどっかりと座している。何万年、何十万年の時を経た「妙高の骨」だ。
 

  今日は眺望抜群。遙かに北アルプスの山々が見えているようだ。一人だけの眺望を満喫して下山にかかる。明るい中に笹ヶ峰まで下りなければいけないのだが、膝の調子が悪くどれくらい時間が掛かるのか見当も付かず気が急く。しかし、こんな体調でよくここまで来たものだと我がことながら感心したりもする。
                        

                                妙高頂上

                     

  黒沢池ヒュッテまで下りると、ベランダの前で景色を見ながら悠々と酒を飲んでいる年配の男性に声を掛けられる。話すと、かってはある県の山岳会の会長を務めたりもした経験のある山の大ベテランとわかった。70も後半なのだが、テントを担いでの単独行とのことだ。おもしろいお話を聞きながらも帰りの時間が気になりだした。そわそわし出したのが分かったのか、「5時半を過ぎると暗くなるからそれまでに下山せよ」とのご指示を頂いた。別れ際に、妙なお話を聞いた。一瞬耳を疑った。


百名山の記録 雨飾山

2014年09月04日 | 日本百名山

9月24日(月)

  早めに起床し、テントをたたむ。登山口に近い下の駐車場に車を移し、出発の準備に掛かる。今日もまずまずの天気だ。簡単な食事の後、水と行動食、カメラをザックに詰めスタート。心なしか気が弾む。しばらく湿地帯の中を行く。湿地帯と言えば、湖沼をイメージしがちだが、ここは大海川の川岸沿いに付けられた木道を歩いていることになる。ほぼ水平な道に気分を良くしていると、ブナの急登に入った。荒菅沢までを第一目標として地道に歩く。荒菅沢は雨飾山へ突き上げる沢であり、見上げると「フトンビシ」が圧倒する。岩登りにおもしろいようなスラブや岩峰が目を奪う。

                           稜線が見えて来る。頂上は左奥に。

                 

                        水場でいっぷく                             登り切って 

                                            

    - 登山道は川の対岸に付けられているのだが、現在のように登山道が整備されない時代にこの山を目指した者は、きっとこの沢を詰めたことだろうと思った。ザイルといくらかの登攀道具さえあれば結構楽しめそうなルートと感じた。荒菅沢から本格的な急登が始まるが、多くの登山者に踏まれた「100名山の急登」だ。登山道左手に峨々として連なる岩峰を見る。クライマーたちの心を捉えそうな素晴らしい岩壁が。途中しばしの休憩を挟みながら、笹平に到着。頂上はまだだが、きつい登りは終わった。笹平から火打・妙高へと続く尾根筋に、一筋の山道が延びている。この道は、焼山から火打岳へと続いているのだろう。こんな尾根道に、なぜか心惹かれる。
 笹平をしばらく行くと、雨飾温泉側からの登山道にぶつかる。大きな道標の前で記念写真。雨飾山の頂上ももう指呼の間に見える。最後の登りがきつそうだ。 

               雨飾り頂上目で30分とある。最後の登りを頑張って頂上へ。                      

               

      雨飾り温泉からと小谷小谷温泉からとは同じような時間になる。どちらがいいのか?

 
 10時30分雨飾山登頂 1963m。
 まず北峰に立つ。多少風も出て、肌寒さを感じながらシャッターを押す。ガスの中から、越後側の集落が時折顔を覗かせる。素晴らしいはずの眺望も風に乗って立ち上るガスに阻まれる。山とはこんなものだとあきらめる。
 特に100名山を目標とした山登りでは、「早く、たくさん登っておこう」という気持ちが強いから、眺望とか、天候とかを考える余裕がない。
 北峰から南峰に移動する。いわゆる頂上は南峰にあった。三角点があり、すぐ脇に金属製の箱が置かれ、中には登頂した者が記念に記すノートが入っていた。
  狭い頂上に、次々と登山者がやってくる。記念にと登頂ノートに名前を残し下山する。雨飾山は双児峰。北は越後、南は信州。秋を知らせる風が吹き渡っていた。 

                       笹平。 頂上より登って来た道を見て。                       

                                                               

                                               (駐車場7:20~頂上10:30~下山13:40)

 


 13時40分、駐車場着。まだ日も高く、青空が広がりつつあったのだが、「秘湯」にも浸からず一路妙高高原へと車を走らす。急ぐのにはいくらかの理由があった。まず第一は、明るい中に次の目的地に着いておきたいということ。第二の理由は、道路事情である。 雨飾から妙高へは、小谷温泉近くから分かれる林道を行くわけだが、林道というものは、その年々によって大きく条件が異なり、崩落などで突然不通になっていることがある。台風や大雨に見舞われた年は特に要注意だ。事前にしっかりと情報を集めて置けばいいのだが、根がルーズなため「行き当たりばったり」を決め込む者の宿命みたいなものか。
 林道としては結構広く、舗装こそされてはいないが対向車に出会っても安心そうな道に車を走らす。振り返れば、雲の晴れた青空に雨飾山が見える。途中、金山登山口があったが小谷温泉を基地として、雨飾山から金山はぐるりと縦走できるようだ。
 乙見山峠のトンネルを越えると、途端に道幅は狭くなり、小谷側に比べもの凄いでこぼこ道だ。運転も慎重にならざるを得ない。「火打岳」、「妙高山」、「高妻山」などの山々がカーナビに見え出す。途中、何台かの車が止めてあるのは、釣り師のものらしい。

   乙見湖に出るともう妙高高原。笹ヶ峰キャンプ場の駐車場に車を駐める。長野県から新潟県への峠越えは、悪路の割には心配するほどのことは無かった。
 暗くなるまでには時間もあるので、周囲の下見に出る。ここが妙高高原かと、妙に感動する。紅葉には早く、人はまばら。車道脇に記念碑があり行って見る。
 それは、「雪山賛歌」の碑であった。スキー発祥の地でもある妙高高原は、「雪山賛歌」誕生の地でもあったのだ。近くに京大ヒュッテもあるらしく、古きよき時代の学生たちの歌声がこだましていそうな、そんな気がした。

 
 「山小屋明星荘」でビールの乾杯。簡単な食事をする。2名の宿泊客は、釣り師らしく釣の話に熱中しておられた。小屋の方から宿泊を進められたが、愛車で寝ることとする。
 暗くなってから、下山された方がおられた。今朝出発し、火打岳と妙高山を登り今下山したとのことだった。6時はとうに過ぎていたように思う。この季節、5時30分を過ぎると暗くなるから注意しなければいけない。

 


百名山の記録 蓼科山~霧ヶ峰~美ヶ原

2014年09月03日 | 日本百名山

 両神山を下り、一気に蓼科山へ向かう。16時20分駐車場着。 翌3日は、快晴。あまり天気が良いので駐車場にて虫干し。 

  9月3日(月)

 狭い車での生活続きなのでむさ苦しい限りです。しかし、毎日といっていいほど温泉で汗を流し、着替えもきちんとしているので下界にいるより清潔だと思う。  

                             駐車場にて

             

 7時40分、蓼科山七合目にある駐車場をスタート。間もなく将軍平に着く。山小屋がありなぜかここでビールを飲んだ。好天に恵まれ何ともいい気分でした。小屋のおじさんとしばらくお話をする。

                                                   (7合駐車場7:40~下山12:30)

                          蓼科山頂上から見る八ヶ岳

             

 この後、霧ヶ峰と美ヶ原があるけれど立派な道路が整備されていて頂上までの苦労はない。ただ、やたらと人が多い。ビーナスラインで車山の麓まで行き、ロープウエイで頂上へ。先ほど登った蓼科山がよく見える。それでも下りは歩く。夕刻、八島湿原入り口にある駐車場泊。

                   コロボックル小屋と車山 遙かにかすんで蓼科山

             

                            霧ヶ峰(八島湿原)

             

  4日(火) 八島湿原からコロボックル小屋へ向かって歩く。早朝から多くのカメラマンが朝霧の湿原の写真を撮っていた。霧ヶ峰の名前どおり霧の深いところです。しかし、朝霧が出る時は、天気は良いようだ。風景は尾瀬に似ているともいえるかもしれない。

 コロボックル小屋で簡単な朝食を摂る。こじんまりとしたこの小屋は、もともと手塚宗求さんが独力でたてたものだが、一度台風で壊されその後、支援・協力を得て再建されている。霧ヶ峰を訪れる多くの人々に愛されている。

 売店で手塚さんが出された本「邂逅の山」を買う。丁度、手塚さんが出てこられて会計をしてもらった。この出合いが最初で最後となったのはとても残念な気がする。この時、手塚さんは何歳だったろうか。自伝ともいえる「邂逅の山」に登場する、たくましい山男の面影はなく、どこか文人とでもいった雰囲気がただよっていた。「人も多いが花も多いです。一見の価値はありますよ。」といわれた言葉が印象的だった。その季節には、ニッコウキスゲが高原一面を覆い尽くすそうだ。

                      高原は 哀しきところと人の言う

                                     ただマツムシ草の色淡やかに

  多分この詩は手塚さんのものだと思うが記憶がはっきりしない。この辺りには、著名な詩人の碑などがあちこちにあったから・・・。                 

 ビーナスラインで美ヶ原へ向かう。ここも人の多いところ。駐車場から王ヶ頭まで歩く。途中、美しの塔を見る。「尾崎喜八」の詩が刻んであった。

                                                    (八島湿原駐車場5:30~蝶蝶深山6:35~八島湿原駐車場10:40)             

                              美しの塔

             

                     

                                   登 りついて不意にひらけた眼前の風景に

                                   しばし世界の天井が抜けたかと思う。

                                   やがて一歩を踏み込んで岩にまたがりながら、

                                  この高さにおけるこの広がりの把握になおもくるしむ。

                                   無制限な、おおどかな、荒っぽくて、新鮮な、

                                  この風景の情緒はただ身にしみるように本原的で、

                                  尋常の尺度にはまるで桁が外れている。

                                                                                            (尾崎喜八 美ヶ原熔岩台地)

                               王ヶ頭

             

 今日は、山登りというより草原・高原歩きといった感じ。ハイキングかピクニックには最高のコースだと思う。「静観派」と呼ばれる人たちが好みそうな山だろうか。

                                                 (山本小屋12:00~王ヶ頭13:10)

  

 

 


日本300名山(その他の山やスキーなど) 平成26年度の部  (前期)

2014年09月03日 | 200名山・300名山

                   

 

            詳しくは、左下の最新記事をクリック 

     百名山の記録   蓼科山~霧ヶ峰~美ヶ原   

    

        百名山の記録 両神山         

    

              百名山の記録 甲武信岳                                                                 

              

 

       松江しんじ湖 水郷祭 大花火大会      

  

                        百名山の記録 金峰山                   

               

                      百名山の記録 瑞垣山                     

            

                    百名山の記録    雲取山              

 

            百名山の記録 大菩薩嶺         

 

           百名山の記録   霧島山(韓国岳)から祖母山          

             

       百名山の記録  その4 開聞岳・霧島山       

          百名山の記録 その3宮之浦岳        

          百名山の記録  その1・2宮之浦岳        

                  

               荒沢岳                 

                  8月5日(火)

                浅草岳                  

                 8月4日(月)

    

          蒲生岳と河井継之助館 会津朝日岳登山口下見      

                  8月3日(日)

                  渡島駒ヶ岳から立待岬と函館山                     

                  8月1日(金)

             カムイエクウチカウシ山(その2)           

                 7月30日(水)

               この写真はジオラマです

   

             カムイエクウチカウシ山(その1)          

                  7月28日(月)より

     

            いざ夏の陣 北海道へ         

             300名山仕上げスタート  

   

            梅雨開け10日 大山 など          

    

              大山3の沢から頂上剣が峰    

                  7月15日(火)

   

              大平山から三坂山            

                  7月6日(日) 

      

              無事退院です             

 

            しばらく入院ですよ             

                  6月25日より

      

             大山正面 桝水登山道           

                    6月15日(日)

  

                  大山山開き                   

                  平成26年6月

               

              

                 大山東壁                      

                      

                       大山正面登山道と大の沢                        

               

                      大山みち(大山古道)                    

  

                  春の山へ(その6)立山春スキー              

                  5月7日~11日

              

                 春の山へ(その5)奥能登~倶利伽羅峠           

                   5月5日(月)

             

              春の山へ(その4)谷川連峰朝日岳             

                    5月4日(日)

     

         春の山へ(その3) 尾瀬から谷川朝日岳へ       

                     5月3日(土)

   

            春の山へ(その2) 尾瀬景鶴山スキー登山       

                     5月2日(金)

                  

                   春の山へ(その1) 移動日の旅             

            4月30日~5月1日(越前岬~東尋坊)

                 

                     春の山へ  スタート                 

                 4月30日~5月11日

                 

                     大山 振り子沢 スキー            

                    4月7日、8日

     

                    大山正面A沢、B沢を滑る              

                     4月1日・2日

             

                 猿政山 3月28日(金)               

                  

               大山元谷 ユートピア小屋 剣沢             

               3月22日、23日(日)

              

                     

                   大山1の沢                  

                 3月18日(月)

                        

                      吾妻山 スキー               

                  3月11日(火)

                      

                      大山縦走と剣沢                  

                 2月25日(火)

                     

                  大山1の沢滑降                

               2月24日(月) 快晴

          

                     大山 三の沢                   

          2月16日(日)山は曇り 雪に埋もれる三の沢大堰堤

         

                      大山 大の沢滑降                 

                 1月29日(水) 快晴

             

                         大山初滑り                   

                  天気晴朗なれど風つよし

       

                       三陸海岸を南下                

                 人の消えた町 双葉町付近で

          

                  蔵王から三陸海岸へ 奇跡の一本松など       

          

                 年末年始の富士山撮影 黒岳他           

                  写真は、河口湖からの富士

               


百名山の記録 荒島岳(平成7年)

2014年09月03日 | 日本百名山


荒島岳~雨飾山~火打山~妙高山

 2007年9月23日(日)
 

 朝7時15分、勝原スキー場からスタート。スキー場の中に延びた登山道を登る。舗装された登りは歩きづらいが、体馴らしのためにもとゆっくり歩く。
 快晴というほどではないが、天気は良さそうだ。いつもは、明るい中に登山口に到着しているのだが、今回は、松江発が遅かったため日没後の到着となってしまった。 それに、途中荒島岳登山口への道路標識を見落とし、気がついて引き返したりの失敗もあったため、つまらない時間を消費してしまった。
 昨夜は、暗くて周囲の状況が把握できず「狭い駐車場だな」と思っていたが、朝目覚めて初めて周囲の様子が理解できた。駐車場は、登山用というより「勝原スキー場」のために整備されたものなのだろう。すぐ下の広場にも駐車場があり、何台かの車が駐めてあった。朝は、6時頃から、ポッポッと登山者の車が到着しだした。7時前、幾組かのパーティーが頂上を目指して歩き始める。駐車場からでも見えていた人の列も、その高度を増すにつれ林の中に消えていく。
 

 舗装路はしばらく続くが、間もなく途切れ、山道へと変わる。一息入れたいと思う頃、リフト終点の見晴らしの良い広場に出る。汗を拭きながらしばしの休憩。
 ここから荒島岳への本格的な登山が始まる。登路ははっきりしているので、ゆっくりと登る。幾分、山陰の名山「大山」に似ていると感ずるのは、立派なブナの林のせいかもしれない。
 途中、樹間に白山を見る。雲が多く、ハッキリと見えないのが残念だ。結局この日、白山が見えたのは、登りのこの時間帯だけだった。
 シャクナゲ平の手前の水場で休憩する。水場は、すぐ近くにあったが足場がぬかるんでいてクツを汚した。しかし、この水は、少々の犠牲を払ってでも味わっておくべき水だと思う。「名山に名水あり」などとは言わないが、「100名山中の名水」と言っても過言ではないだろう。時々、こんな美味しい水に出くわすことがあるものだ。
 イヌを連れた男性の登山者が、汗を拭き拭き登って来られた。「水」の話をすると、イヌを連れて水場に下りられたが、しばらくすると「美味い、美味い」を連発しながら上がってこられた。イヌが、泥だらけのままではしゃぎ回るものだから、飼い主も大変だ。
 

 シャクナゲ平で、もう一本の登山道とぶつかる。しかし、そちらからの登山者にはあまり出会わなかった。ガイドブックによれば、この登山道は「中出コース」と名付けられている。「勝原コース」よりゆったりとしたコースだが、時間的にはあまり変わらないようだ。シャクナゲ平を少し下ってから、最後の急登にさしかかる。グングンと高度を稼ぎ一気に頂上へ抜ける。10時35分荒島岳登頂。1523m。
 

 頂上は、思ったより狭く、既に多くの人によって要所を占められていた。風弱く、穏やかな天気。しきりにカメラのシャッターを押すのは中高年の方々が圧倒的だ。
 少し遅れて、犬を連れた男性が登ってこられた。しばらく会話をしたが、100名山も後わずかとなり、何だか寂しいとのこと。連れのイヌがくたびれたらしく、声を掛けても元気なく寝そべったままだ。
 昨日の登山で頑張りすぎたためと、夕べ、今日のエサも食べ尽くしてしまったからとのことで何だか可哀想な気がした。おにぎりを一つ分けてやったら、寝そべったまま食べ、また寝込んでしまった。
  登頂の記念写真を撮った後、下山。お昼過ぎの下山なので、これから頂上を目指す多くの登山者に出会う。シャクナゲ平までの早いこと。登りの苦労が嘘のようだ。

                                                          荒島岳にて

                                                      


 

   ここで、一人の女性に出会う。病み上がりなため今日はここまでで下山するとのことだった。地元の方らしく、早く健康を取り戻して登れるようになりたいと話しておられたのが印象に残った。
 下りはおもしろいほどに元気が出て、ブナの根っこが表出した道を飛ばす。しかし、ついに終着近くで力尽きてしまった。足を引きずりながら駐車に着いたのが、13時20分。トイレで汗まみれの顔を洗う。
                                               (駐車場7:15~頂上0:35~下山13:20)

   今回の第一目標を無事クリヤーして、一路雨飾山へ向かう。
 荒島岳から、雨飾山へは一度北陸自動車道福井インターまで引き返し、改めて日本海沿いに北上することとする。富山県を過ぎ、新潟県に入る。糸魚川沿いにしばらく南下する。 糸魚川が姫川とその名を変える辺りからやたらとトンネルが増えてくる。幾つ目かのトンネルを抜けるとすぐに114号線への標識を見る。日の暮れかかった田舎道を、ひたすら飛ばす。明るい中にキャンプ場まで着きたいのだがどうやら今日も無理らしい。
 途中、何軒かの温泉宿を見かけたが目的地に着くことが先決と、お風呂はあきらめることにする。かの有名な「小谷温泉」に浸れないのは残念なことだと思った。
 日も暮れてやっと雨飾高原キャンプ場に到着する。ここは、いわゆるキャンプ場とオートキャンプ場とは区別してあり、どちらにするか迷う。管理事務所の説明を聞き、オートキャンプ場で泊まることとする。
 温水シャワーとコインランドリーが利用できたのは、うれしい限りだ。車の横にテントを張り、ビールで乾杯する。近くでキャンパーたちの声が聞こえる。温泉には入れなかったが、今日はぐっすりと休めそうだ。