山の記憶 (百名山・二百名山・三百名山)

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百名山の記録 高妻山~四阿山

2014年11月01日 | 日本百名山

2008年 5月15日 晴れ

 松江発6時40分、大山は春の霞につつまれる。ふと芭蕉の句が浮かぶ。
       春なれや 名もなき里の 春かすみ (芭蕉)

                                日本海を北上する

                                          

                  尼御前SAにて

                    

  北陸道のパーキングやサービスエリアに芭蕉の句碑を尋ねながら北上し、18時10分戸隠牧場着。夕間暮れの牧場には誰一人見あたらない。駐車場泊。


                   

 

 16日(金) 晴れ
 5時に起床し、6時50分高妻山目指してスタート。牧場の中に延びる登山道を行く。高原の朝の空気は気持ちよい。所々に青々とした葉を茂らせた巨木が、まだ淡い光の中で佇んでいる。放牧された牛の柵を幾つか通り抜けると、いよいよ山に入ったという実感が湧いてきた。足元には、イチゲとニリンソウが眠たそうに頭を垂れ、カンバの巨木の下にちょっとしたお花畑を作っている。ミズバショウに出会うのも久しぶりのことだ。道は、沢沿いに続き、幾回か水を渡る。赤いテープと登山標識に従い、なおも進むと泥をかぶった雪渓が現れ、正面中央の奥まった所に小さな滝が流れ落ちている。

             右手が高妻山。左が黒姫山

                                    

              二輪草の群落

                          

 右手前方に赤いテープが目に入ったので、右手から尾根に取り付く。しかし、道らしき痕跡はなく、しばらく辺りを探すがどうもおかしいのでまた雪渓に下り立ち、滝の下まで行ってみる。
 雪解け水を集めて流れ落ちる小さな滝だ。雪渓の先端に立ってルートを探すしていたが、ふと足下の雪渓を覗いてギョッとなった。真っ暗な闇が大きな口を開いて、一体何処まで続くのか分からないのだが、したたり落ちると水を飲み込んで消えている。今、自分が乗っている雪が崩れでもしたらと、思わず身震いする。先端の雪の厚さは30~40cm位だろうか。
 早々からイヤなことが続くが、とにかく滝の横を回り込み上へと登って様子をみることにする。雪渓から近い岩壁に移り、慎重に滝の横にを登る。いくらか登るともう下る気になれず、上へ上へとヤブこぎとガレ場登りを繰り返す。完全に道迷いの状態になっていたのだが、上へ登れば尾根に出るだろうとの信念でがむしゃらに登る。
 悪戦苦闘の中、クマザサの中に雪渓が現れる。雪渓を詰め、クマザサをかき分けていると見覚えのある避難小屋が現れた。今の位置からだいぶ離れているのだが、なんとかたどり着けそうだ。
  9時25分、一不動避難小屋に到着。ここまでに2時間35分が経過したことになる。約1時間をロスしたことになるが、無事の到着を喜ぶべきだろう。
 ここから、たくさんのピークが続くが、道はハッキリしているので前に進めめばいい。展望も良くなり、戸隠山へと続く急な尾根筋も、眼下に広がる戸隠牧場も指呼の間に見渡せる。 三不動、四普賢、五地蔵と続き、高妻山らしき山頂も幾分近づいてきた。ふと見れば、昨年登り歩いた妙高、火打、雨飾の山々が白い雪化粧に美しい。特に、ここから見る妙高の姿は奇異な感じがする。コニーデ型火山の特徴なのだろうが、ひときわ目に付く。 高妻山山頂直下は雪におおわれ、部分的に夏道が現れている。キックステップで直登する。結構な傾斜だが、靴の先端が雪によく食い込む。何度か息を継ぎながら、十阿弥陀に到着する。ここが頂上かと思ったら、まだ先があり、向こうの頂きに標識らしきものが見える。雪の溶けた岩尾根をたどりやっと頂上に着く。12時10分であった。


               高妻山頂上

                          

 高妻山北東斜面は、まだかなりの雪におおわれて、そのまま乙妻山へと繋がっている。 当初は、乙妻までの縦走を考えていたが、道迷いで帰りコースが気になっていたのでここまでとする。簡単な昼食を済ませ、写真を撮って早々に下山。雪の斜面は、靴のかかとに体重をかけて一気に下る。ワンステップ、ワンステップがしっかり雪をキャッチするので安心だ。頂上がグングン遠ざかる。春の緩んだ雪は、登りにしろ下るにしろ一直線で歩けるから早い。かなりのペースで避難小屋まで帰る。ここからしばらくは未知のルートを辿ることになるのだが、雪の上に残るトレースを頼りに下ることとする。
 鎖のセットされた急な岩角を曲がると、帯岩と呼ばれるスラブに出る。一枚岩の難場だが、スタンスはハッキリしており、要所要所に鎖が固定されているから、一歩一歩確実に渡ればいい。渡りきると、クサレ雪の斜面が続き午前中に迷った沢に下り立つ。
 初めに迷ったのは、沢の左斜面を登るべきを右斜面に入ったり、正面の滝に気を取られたためだ。適当に引き返していたらあんな事にはならなかっただろう。少し無理な登山だったと反省する。
 沢の水に導かれながら、牧場までたどり着く。途中、カタクリの群落を見る。16時牧場着。これで、昨年来懸案であった山が一つ解決した。靴ひもを解き、次の目的地に向かって車を走らす。

 17日(土)四阿山  晴れ
 先日夕刻、菅平牧場に着き登山口の確認を行う。高妻山から一気に菅平に移動し、あずまや温泉(ホテル)で汗を流す。温泉の利用はすでにタイムアウトではあったが、親切な管理人さんのおかげで入れてもらえた。登山者用駐車場にて車中泊。ここからも四阿山への登山口があるようだ。
 翌17日、先日調べておいた登山口へ移動し、6時10分管理事務所前の登山口よりスタートする。先行者あり。昨日同様、牧場の中を行く。広い牧場の中のアスファルトの道を少し歩くと、四阿山登山口の標識があり、本格的に登山道に入ることとなる。

               四阿山を見る

                          

 緑の木々の間を縫うように進むと、やがて視界も開け、大きく波打つような菅平牧場が眼下に広がる。四阿山の裾野には、牧場だけではなく多くのスポーツ施設や宿泊所等の建物があるらしく、それらが新緑の林に包まれるように佇んでいる。
 ダケカンバがおもしろいリズム感で裾野に広がり、あちこちに残雪を見る。次々と現れる大小のピークを越しながら高度を稼ぐ。左手に緩やかなカーブを持つ稜線は、根子岳からのもの。帰りはあの稜線を下ることにしよう。
 高度が上がるに従って、残雪も増えて来る。道を見失わないように気を配る。先行者の足跡を追う。小四阿、中四阿と登り詰めると根子岳との別れに出る。平坦な雪原が広がり、雪解け後にはお花畑となることだろう。間もなく、雪に覆われた木道が現れるが頂上はその上らしい。9時山頂着。

                           

 細長い山頂には2つの祠があり、手前の祠の前で男性が一人休んでおられた。奧の祠を拝、手前の祠と拝した後男性とお話しする。地元の方らしく、山の説明を聞きながら途中まで一緒に下山する。この男性とは、根子岳分岐で別れたが、本来なら自分も根子岳を回りたいがと残念そうな様子。足に痙攣が起きることがあり、遠回りは不安とのこと。
 分岐からは、やや斜度のある樹林の中を残雪を踏みしめながら一気に下りる。かかとで踏みしめるザクザク雪の感覚が気持ち良い。おもしろいように下れるので、今までの疲れが吹き飛びそうだ。途中、根子岳からの団体さんとすれ違う。この登りはきついだろうと思う。十ヶ原は四阿山と根子岳のコルだが、ここから登りとなる。晴れ渡ってきた爽快な山の気にエンジンは全開。根子岳10時40分着。

            根子岳 後ろが四阿山

                           

   四阿山を見ながら朝食とも昼食ともつかない食事を摂る。緩やかに続く稜線をのんびりと下り、12時50分管理事務所駐車場へ着く。荷物の片付けをしていたら、先ほど四阿山の頂上で出会った男性が下りて来られた。お互いビックリしたが、よい思い出になった。 


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