暘州通信

日本の山車

●140 高山市の不正 新飛騨食肉センター問題(2)

2006年01月05日 | Weblog
 キャトル・パークの建設構想が報道されたときのおおよその位置は高山市八日町の西部、清見村牧ヶ洞の北部ということだった。
 折からの不況で、何度か計画の見直しがなされるうち、事業主体の岐阜県は計画の凍結をきめた。
 キャトル・パーク内に建設が決まっていた屠畜場は行き場を失ったことから、高山市は、前原町、八日町をその代替え候補地として選定した。この計画が地元に告げられたことから大騒ぎとなった。
 地元では、あまりにも突然の計画変更に、話を聞いても信じない人の方が多かった。
 何人かの代表を選んで高山市に事情説明を求めたが、高山市の窓口である農林部は「そのような計画はまったくありません」「なんの方針もありません、計画は全く白紙です、間違いではありませんか」と逆に聞かれる始末であった。

 しかし、その後、わずかのあいだに伝えられる話は否定を覆す情報ばかりだった。地元ではとまどいながらも、緊急に対応を協議した。
 そのうち、前原町界隈をうろつく測量会社の社員の姿が目につくようになり、あちこちに測量のあとを示す頭を赤く塗った木杭が打ち込まれているのを見かけるようになった。
 新宮町では当面する問題についてまず、予定地変更をお願いする会」が組織され施設の変更を再考してもらう要望を行うことになった。
 行政主導の事業計画には地元住民の意見を尊重し、充分論議を尽くすのは当然のことである。
 この時期になっても、農林部長は面談を拒絶し、せっかく出向いた新宮の代表たちはむなしく帰宅した。
 暫くすると、八日町では平成十一年の十一月十八日に測量の同意がなされ、下之切でも同年の十月五日に説明会一回目の説明会が開かれたことが伝えられた。
 十二月議会では予算の話も出始めたというのに、新宮地区にはなにも知らされなかった。
 このように、他の地区には何らかの連絡があったようだが、建設予定地である新宮地区にまったく無断で計画が進められたことについて、住民には高山市に対する不信感が募らせていった。一住民は、 このときの印象を、「強力な囲いの中に入れられ、徐々に締め付けられてゆくような不安を抱き、ほんとうにおびえました」と述べている。
 春まで山林内で計画されていた施設が、半年あまりで平地へ降りてくることに決定した、異常ともいえるスピード採決に、はじめは誰しも半信半疑だった。

相手にされなかった新宮町

 東海北陸高速自動車道の完成は次第に北上し、国道一五八号線の交通量が増加している。やがて、中部縦貫道の高規格道路が完成し、清見村に建設されるインターチェンジが完成するころは、名実ともに高山市の西玄関となる。
 新宮町は環境問題を町内会行政の柱としていて、 岐阜県屋外広告物条例による屋外広告物景観モデル地区の指定を受け、新宮まちつくりの会を設立して緑豊かな自然環境を生かしたまちつくりに努力している。
 建設予定地は、高山市内でもアルプスの眺めが最も美しい地域のひとつでもある。
 北野橋から撮影されたJA飛騨、ふる里カレンダーの美しい写真に感動を覚えた人もきっと多いだろう。
 予定地となっている農地は、土地改良事業で整備された優良農地で、今再度開発が行われることに違和感を感じる人も少なくない。周りに何の障害物もなく、最も効率的に農業機械を活用できる場所である。
 地元の人たちを嘆かせているもう一つの理由に、処理場の向かいには先祖の御霊を祀る霊園があることだ。
 霊域と殺生とはあまりにも馴染まない。一般的な常識から考えてもあまりにも常識を逸脱しており、このことにも地元民の怒りをかう一因ともなっている。
 処理場用地には、寺院組内の土地があり、信徒らの集会でも、建設地変更が決まっていた。
 屠場ができたら一角には公園を作って地元の民心を収拾しようという試みの提案も為されている。 ある人は「高山市は、このような姑息な方法で地元が納得すると考えているなら、あまりにも軽薄としかいいようがない。家畜の亡霊が出没するような薄暗い場所へ花見にゆく酔狂な仁はどこの世界を探したっているものか! いるとすれば無神経な高山市長と職員くらいだろう」と怒りをぶつけている。
 環境の悪化は続き、新宮やその周辺近隣に定着しイメージダウンは避けられず、地域の発展を著しく阻害し、不動産の資産価値は下落してしまい、将来の発展性はこれでまちがいなくストップする。  ひとたびきまれば、半永久的に定着するイメージを払拭することの難しさを訴えて、充分時間をかけ、論議を尽くしてから結論づけるべきであった。という批判的な慎重論も出ている。
「高山市は、計画を強行するため住民の間に好餌を撒いて、住民の間に亀裂を生じさせ、地域の連帯と住民意識の断絶をはかる悪辣な手段をとり、このためいままで親しく交際していた人たちの間には挨拶すら交わさなくなる断絶が生じています」。
 また、子供にまで干渉し、「あそこの家の子とは、遊んではいけません」などという親まででてきたというから、地域住民の信頼関係にまで投げかけた問題は深刻だ。
 平成九年の統計によると、高山市の食肉センターでの年間処理数は牛五千八百四〇頭、豚一万六千四百八〇頭、綿羊三十一頭、合計二万二千頭余りとのことである。
 頭書に述べたように、高山市の家畜飼養頭数は年々減少している、新宮で把握した情報によると、平成三十年頃には高山市以外の家畜のための処理場となるのではないかと推定している。


 現在処理施設のある冬頭町では長い間にわたって立退きを要望している。
 新宮に計画されている処理場の条件が高山市の言うように何ら問題のない施設であるならば、冬頭町も、移転を希望することはないはずである。
「かならず見えない問題が伏在している」これが、地域の住民を説得できないもっとも大きな理由の一つでもある。早い話が、土野守高山市長にはそれくらい信用がなくなっている。
 「高山市の話や説明を聞いている限りいいことずくめで、まともに聞けば、反対することが恥ずかしくなるくらいだ」という人もいる。
 だが、
「冷静に判断すれば、なにかおかしいことにすぐ気づくはず」
「何か、大切なことが隠されているような不安を覚える。それは何か出来てしまったあとで、失敗った、と思っても取り返しのつかないことなのではないかという、予想の付かない不安がつきまとう」
 これらについて、だれもが一様に考えていることは、面談を避け、疑問に適切な答えず、地元に明快な説明をしない高山市の行政態度に尽きる。
 このやりかたに、案内の無かった役員や他の地権者は激怒したひともいた。
「案内のあった三名に決定権が与えられてあるならば、それもやむを得ないが、この場合、誰が交渉の窓口となっても、最後は総会できめるのだから、高山市の差別的なやりかたは、反発を招くのは当然で、土野守市長にも山岡壽農林部長にも強い不信感をもった」。
 なんども話し合った結果、食肉処理場は不適当な施設との結論に達した。
 決議文は役員連名により、高山市山岡農林部長に提出された。高山市からは納得のいく説明はなく、話合いもまったく行なわれないのみか、組に対する回答もなかった。「誠実さを欠いた農林部の態度ではとても協力できない」などの意見が相次いだ。



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